1 基本的な考え方
行政改革会議においては、内閣機能の強化や省庁の再編と併せて、組織を支える「人」の問題についても議論してきたところであり、その結果を以下の三点を要点として、公務員制度の改革の基本的な方向として提示する。
(1) 行政改革は、内閣機能の強化と省庁の再編成とともに、人材・任用に係る制度の改革によって達成されるものである。
(2) 省庁の再編成は、新たな人材の一括管理システムの導入に向けて踏み出す機会とすべきである。
(3) 内閣及び内閣総理大臣を補佐する内閣官房、内閣府を支える人材を確保するための適正なシステムを確立する。
なお、公務員制度の改革については、関連制度を踏まえた幅広い検討が必要であり、専門的調査機関である公務員制度調査会において早期に具体的成果を得るべく、当会議は、同調査会に対し、以下の基本的な課題と検討の方向に基づき検討を進めるよう要請する。
2 主要な改革の視点と方向
(1) 省庁の機能再編に対応した人事管理制度の構築
中央省庁の機能再編に伴う公務員制度の改革については、組織を支えるものは「人」であるとの認識に立って、政策の企画立案機能と実施機能の分離に伴い、それぞれの機能の特質に応じた人事管理制度を構築すべきである。
@ 政策の企画立案部門及び実施部門の人事制度について、それぞれの特性を生かし、人材の確保・育成、処遇を多様化する。この場合、実施部門のうち外局については、運用上、人事権の独立性を確立することとする。
A 政策の企画立案部門と実施部門の組織的分離がなされても、両部門が対等な立場で、お互いの業務遂行に資するために行う人事交流は必要であり、交流の円滑と適正を確保するルールを整備する。
(2) 新たな人材の一括管理システムの導入
省庁再編の機会をとらえ、基本的には人材の一括管理の方向に向けて踏み出すこととすべきである。
@ 事務系、技術系を問わず、課長など一定の職以上の職員について、政府全体として一括管理を行うべきである。
A 一括管理の在り方については、当面、公務員制度調査会の意見(平成9年11月11日)に従い、大括り省庁内における人材管理の一括化、人材情報の総合的管理、幹部職員昇任等に関する政府における総合調整、幹部職員等の計画的育成、省庁間移籍制度の新設、人事交流の一層の推進、退職後の人材活用システムの検討等を具体的に進めるべきである。
B 一括採用については、一括管理システムの検討状況をも踏まえ、引き続き検討を進める必要がある。なお、関係省庁による共同採用や、採用数の少ない専門的職種についての省庁の枠組みを超えた人事運用や処遇についても検討を進めるべきである。
(3) 内閣官房、内閣府の人材確保システムの確立
内閣官房等政府全体の立場から企画立案、総合調整を行う機関の職員については、人物本位で優秀な人材を登用するルールを確立することが必要である。
@ 内閣官房は、内閣総理大臣により直接選ばれた(政治的任用)スタッフによって基本的に運営されるべきものである。その際、行政の内外から優れた人材を登用し、処遇するための人事ルールを確立するとともに、各省庁からの派遣・出向についても、派遣・出向元の固定化や各省の定例的人事への依存を排除する必要がある。
A 公務員制度調査会の意見では、外部から専門的知識を有する人材を登用する場合に、処遇面を配慮して新たな任期付任用制度の導入を検討すべきであること、その際、任期が終了した後の復帰が保証されるような仕組みとすることが重要であることなどが指摘されており、具体的な検討をさらに進めるべきである。
B 秘書官については、派遣元省庁の固定化を排除するとともに、内閣法で定数を定めることを廃止する。
C 内閣府の部局についても、それぞれの特性を踏まえつつ、民間や学界を含め広く優秀な人材を集めることが必要である。
(4) 多様な人材の確保と能力、実績等に応じた処遇の徹底
@ 多様な人材の確保
公共的課題に公正に、かつ、高い客観性、専門性をもって取り組む能力を強化するため、公務部門に多様な人材を確保するとともに、公務部内、部外の人事交流を積極的に推進すべきである。
ア 国内外の学位を取得した人材の採用の拡大を進めるとともに、学界、民間等外部からの人材登用の拡大を図る。
イ 国際的課題に取り組む能力の強化を図るため、海外の学位を取得した人材の採用の拡大等を進める。
ウ 採用試験の種類、区分等を見直す(技術系試験区分の見直し・統合等)。なお、外務公務員試験については、一般公務員試験と統合の方向とする。また、特殊言語専門家の養成・確保に留意する。
エ T種試験合格者の採用数の適正化を図る。
オ 省庁間、地方公共団体、民間企業等との人事交流の積極的推進を図る。これに当たっては、相互性、対等性を確保し、ポスト固定化を排除する。
A 能力、実績等に応じた処遇の徹底
職員の業務遂行意欲を高め、公務の活性化を図るため、能力主義を徹底し、各人の専門性や能力等を昇進や処遇に的確に反映させる仕組みを導入することが必要である。
(5) 退職管理の適正化
@ 退職管理の適正化は、公務員制度の改革において極めて重要な問題であり、その前提として、これまでの人事慣行(年功序列型昇進体系、右肩上がりの給与体系、定年前の早期退職等)を根本的に見直すとともに、高齢者の能力発揮を重視した人事管理システムを構築すべきである。
ア 社会経済情勢を踏まえた定年年齢の見直しを行う。
イ 定年まで公務部内で勤務できる条件・制度の整備(年功序列型人事管理体系の見直し、高齢職員の専門性・経験に着目した処遇体系の創設など)を図る。
A 各省単位の再就職支援がセクショナリズムの弊害を生むとともに、「天下り」との批判を受けやすいことを踏まえ、公正・透明な再就職管理システムを導入することが必要である。
ア 営利企業への再就職規制を強化する。
イ 再就職管理を各省庁単位でなく政府全体として統一的かつ公正・透明に行うための仕組み(人材バンク等)を導入する。
3 中央人事行政機関の在り方
中央人事行政機関については、労働基本権の在り方も含め、検討する必要がある。また、内閣総理大臣及び人事院の機能については、中立第三者機関としての人事院の役割は重要であるが、両者の性格にふさわしい機能分担とすべく、整理、見直しを行うべきである。
(1) 労働基本権の制約と中央人事行政機関
@ 公務員の労働基本権の在り方については、幅広く専門的な検討を行うことが重要である。その際には、労働基本権制約の代償措置としての機能を有する人事院の在り方についても併せ検討する必要がある。
A 現行の労働基本権制約の現状を前提とする限り、公正な人事行政の推進及び職員の利益保護の観点から、政府が行う人事管理に対し適切なチェック、勧告、意見具申を行うとともに、人事行政の公正性、中立性の確保のための基準の設定を行う中立第三者機関としての人事院の役割は重要である。
B 一方、中央人事行政機関としての内閣総理大臣の機能についても、その任務、権限をより総合的なものとし、内閣のリーダーシップの下で情勢の変化と国民の要請に応えた的確な人事行政の効果的な推進を可能とすることが必要である。
(2) 中央人事行政機関の機能分担 @ 人事院は、労働基本権制約の代償措置としての「人事行政の公正の確保及び職員の利益保護」のためにふさわしい機能に集中し、その実効的な遂行を目指すことが重要である。このため、本来、行政執行に責任を有する政府が行うべき機能(個別の人事運用や組織運営にかかわる事項など)との整理を行うとともに、各任命権者による人事管理をより弾力的なものとする等人事院による統制の緩和を進めることも必要である。 A 中央人事行政機関としての内閣総理大臣については、各任命権者の行う人事管理の事務の統一保持のために必要な機能を担うこととし、総合的・計画的な人事管理、国家公務員全体として整合性のとれた人事行政等総合調整機能の充実を図っていくことが必要である。 B 具体的な機能分担については、公務員制度調査会の意見に従い、政府において具体的な検討を進めるべきである。 C また、中央人事行政機関としての内閣総理大臣の補助部局は総務省に置かれるが、その部局においては、公務員制度等に関する企画立案機能を充実させるとともに、行政執行責任及び公務員の使用者としての責任を負う観点から、政府部門全体を通ずる人事管理施策について統一保持上必要な総合調整機能と政府として本来果たすべき人事管理機能を総合的に担うことが必要である。
(3) 内閣官房及び総務省の機能分担
内閣官房は、人事に関する中枢的な機能を担うものとし、内閣官房及び総務省の機能分担は次のとおりとすべきである。
@ 内閣官房
ア 人事に関する政府全体の基本方針の策定、最終調整
人事運用に関する基本的な方針の策定及び同方針のフォローアップ。なお、人事面のみならず組織面についても同様。
イ 各省庁中枢に関する人事運用
各省庁の次官、局長等幹部人事(任免)についての内閣の承認の補佐
ウ 新たな一括管理システムの導入に伴う人事機能
エ 内閣官房及び内閣府(企画・総合調整部門)に関する人事運用、人事ルールの設定
内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制を支える人材を確保し、その機能を強化するために自ら行うべき人事運用
A 総務省
ア 公務員制度に関する企画立案
イ 政府全体を通ずる人事管理の方針、計画等に関する総合調整
内閣官房が策定する人事運用に関する基本的な方針を踏まえ、企画立案・総合調整を行う。
ウ 行政執行責任及び公務員の使用者としての責任を負う政府として本来果たすべき人事管理機能
各省における人事管理施策の統一、基準の設定、各省横断的な人事管理事務の実施等
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