W 行政機能の減量(アウトソーシング)、効率化等

1 基本的な考え方

(1) 「V 新たな中央省庁の在り方」で述べたとおり、国の行政の役割を見直す基本的な視点は、「官から民へ」、「国から地方へ」にある。
この観点から行政を見直すことは、同時に、組織、事務・事業について、官民の役割分担、地方分権、民間能力の活用の見地からの見直しを徹底的に進めていくことでもある。

(2) これに当たり、行政機能の減量(アウトソーシング)は、重要な課題となる。事務・事業の民営化、民間移譲を行うとともに、それが困難な事務・事業であっても、政策の企画立案機能と実施機能の分離という基本的な考え方に立って、実施機能については、外局(実施庁)制度及び独立行政法人制度を活用し、その自律的、効率的な運営の徹底を図る。
また、事務・事業において、行政機関自らが行う必要性が乏しく、民間に委託した方が効率的な事務・事業は、その委託を大幅に進める必要がある。

(3) 同時に、国の行政の果たすべき役割を見直す観点からは、行政による民間活動や地方行政への過度の関与を改め、規制の撤廃・緩和や補助金等の大幅な整理を行うべきことは言うまでもない。規制行政や補助行政の見直しが徹底して進められなければならない。

(4) 上記のような見直しは、当然、組織・定員の減量に結び付く。本省、外局、施設等機関、地方支分部局等を通じ、これに対応して組織の整理・簡素化を積極的に進めるとともに、定員についても、大幅な削減を進めるべきである。


2 減量(アウトソーシング)の在り方

(1) 現業の改革

@ 基本的な考え方

ア 現在、現業としては、郵政事業、国有林野事業、造幣事業及び印刷事業があるが、これらの現業については、以下により抜本的に改革すべきである。

イ 現業は、国民経済上必要なサービスを提供する公的責任をもった「国の経営する企業」であり、基本的に採算性、企業的性格を有するものであるため、次のような視点による見直しを行う。
a 主体的で創造性に富む柔軟な業務運営を認めることを通じて、効率化を推進する。
b 任務の適正な遂行を基本としつつ、組織・人員のスリム化、民間委託等を推進する。
c 国が責任をもって実施する必要のある部分については、そのために必要な仕組みを整備するとともに、国民に必要なサービスを確保するため、必要に応じ、制度的な手当てを行う。

ウ 以上の観点に立ち、検討した結果、下記のとおりの結論とする。

A 郵政事業

ア 郵政三事業一体として新たな公社(郵政公社)とし、法律により、直接設立する。(5年後に郵政公社に移行)

イ 新たな公社とすることにより、以下の点を実現する。
a 独立採算制の下、自律的、弾力的な経営を可能とすること。
(事前管理から事後評価への転換)
・ 主務大臣による監督は、法令に定める範囲内に限定。
・ 予算及び決算は、企業会計原則に基づき処理するとともに、国による予算統制は必要最小限(毎年度の国会議決を要しない)。
(年度間繰越、移流用、剰余金の留保等を可能)
・ 中期経営計画の策定、これに基づく業績評価の実施。
(経営に関する具体的な目標を設定)
・ これらにより、民営化等の見直しは行わない(国営)。
b 経営情報の公開を徹底すること。
・ 財務、業務、組織の状況、経営目標と業績評価結果など経営内容に関する情報の徹底公開。
c 職員の身分については、設立法により、国家公務員としての身分を特別に付与すること。
・ 団結権、団体交渉権を付与し、争議権は付与しない。
・ 一般職の国家公務員と同様の身分保障を行う。
・ 総定員法令による定員管理の対象から除外する。

ウ 剰余金の国庫納付については、その是非を含めて合理的な基準を検討する。

エ 資金運用部への預託を廃止し、全額自主運用とする。

オ 郵便事業への民間企業の参入について、その具体的条件の検討に入る。

カ 報奨金制度については、経営形態の見直しに併せて検討する。

B 国有林野事業

森林行政には、国有林、公有林、私有林全体を対象とする森林一般行政と、国有林野事業に関する行政が存在することを踏まえ、今後の国の行政として、森林全体に対してどのようにかかわるかを整理すべきである。
国有林野事業について、莫大な累積債務が生じ、事実上の破綻状態に陥っている状況を冷厳に受け止め、現行の事業形態・組織にとらわれず、国の関与や財政負担の在り方、管理組織等について、抜本的な改革を行うことが必要である。

ア 森林の機能及び森林行政一般に関する考え方
a 森林の機能には、国土保全、水資源涵養、環境保全、保健休養等の公益的機能と、林産物供給機能とがあるが、木材自給率の現状や木材市場の実態等を踏まえれば、今後の国の森林行政全体及び国の所有する森林への関与は、林産物供給機能よりも、公益的機能の発揮に重点を移行していくべきである。
b 森林行政の重点を公益的機能の発揮に移行するとしても、国の政策的関与は必要最小限とし、可能な限り、国から民間、地方公共団体等に対してゆだねていくべきである。
c 国の森林所有管理についても、公有林、私有林を通じた流域ごとの森林管理の考え方の下で行うべきである。

イ 国の森林所有管理の在り方
a 国の森林所有管理に関する実施部門については、現在の独立採算制を前提とした現業としての形態は廃止する。
b 国の森林所有管理実施部門の役割は、森林管理計画の策定、森林管理業務の企画、森林管理業務の発注、森林の公益的機能発揮のための規制等に限定する。
c 実際の森林の維持管理に直接かかわる現場業務については、基本的に、国の森林管理実施部門により直接行わず、民間、地方公共団体等に対して委託、発注する。
d 国の森林管理実施部門は、可能な限り、効率的で主体性のある業務の実施を行い得るものとするとともに、組織要員の規模は必要最小限のものとし、効率的な組織を構築する。

ウ 組織・要員の合理化、財務健全化
a 現在の組織・要員については、雇用問題及びこれまでの労使関係に十分配慮しつつ、徹底した合理化、縮減を図る。
b 現在国が所有管理している土地、立木等については、処分可能なものは、民間、地方公共団体等に対し売却し、財務健全化にも寄与すべきである。
c 累積債務については、財政構造改革会議の検討結果に基づき適切に処理する。

C 造幣・印刷事業
造幣・印刷事業について、今後、経営形態の在り方を検討する。

(参考)

新たな公社及び独立行政法人について

性格新たな公社一般の独立行政法人
国の企業(国営)国の事務・事業
基本的な考え方独立採算の下に置かれ、企業的性格の強い事業について、法人格を付与し、企業的な組織・業務運営を行う公共的な事務・事業について、独立の法人格を有する法人を設け、弾力的・効果的な組織・業務運営によって、効率性・質・透明性の向上を図る
対象業務の性格国民経済上必要なサービスを提供する事業であって、採算性、企業的性格を有するもの完全に民間の主体にゆだねることのできない公共的な性格を有する業務であって、国が自ら直接実施する必要があるとまでは言えない業務
職員の身分国家公務員業務の性格に応じて、国家公務員であるもの、国家公務員でないものの両類型あり
財源等 独立採算が基本独立採算によることが適当でないものについては、国からの交付金など所要の財源措置
設立形式個別の設置法により設置共通法に基づき、法令により設置
その他 独立行政法人の仕組みのうち、中期的目標管理、評価など、新型公社においても応用可能なものについては、極力取り入れる 

(2) 独立行政法人の創設

@ 基本的な考え方

ア 目的
国民のニーズに即応した効率的な行政サービスの提供等を実現する、という行政改革の基本理念を実現するため、政策の企画立案機能と実施機能とを分離し、事務・事業の内容・性質に応じて最も適切な組織・運営の形態を追求するとともに、実施部門のうち一定の事務・事業について、事務・事業の垂直的減量を推進しつつ、効率性の向上、質の向上及び透明性の確保を図るため、独立の法人格を有する「独立行政法人」を設立する。
イ 制度の基本概念
a 独立行政法人制度においては、各法人の目的・任務について、それぞれの設置法令において明確に定めるとともに、この目的・任務を達成するための業務及び組織運営の基本的な基準・仕組みについては、当該法令又はこれに基づく規則によって定めることとする。また、主務大臣の独立行政法人に対する監督・関与は、法人の業務及び組織運営に関する基本的な枠組みに限られるものとする。

b これらの仕組みにより、各法人の目的・任務は明確化され、各法人が自らの判断・裁量により国民のニーズとは無関係に自己増殖的に業務を拡張することは防止される。
また、主務大臣の監督・関与を制限することにより、法人運営の細部にわたる事前関与・統制を極力排し、組織運営上の裁量・自律性(インセンティブ制度)を可能な限り拡大することにより、弾力的・効果的な業務運営を確保して、効率化・質の向上といった国民の求める成果の達成を重視する事後チェックへ重点の移行を図ることも可能となる。

c さらに、業務の結果について評価し改善する仕組みを導入するとともに、業務内容、業績、評価等についての情報公開を徹底し、事業継続の必要性、民営化の可否等について、定期的な見直しを実施することとする。
(注)これらに際し、憲法上の財政民主主義の観点等から、国の一定の関与は要請されるが、これについては、独立行政法人の自律性・自主性を損なわないよう、必要最小限のものとすることが必要である。
ウ 対象業務
a 行政改革の趣旨にのっとり、現在国が実施している事務・事業については、次の観点から、実施主体について所要の見直しを行うこととする。
ア) 民間の主体にゆだねることが可能なものについては、極力、民間の主体にゆだねる。
イ) 一方、専ら強度の公権力の行使に当たるなど、国の行政機関が直接実施すべき事務・事業については、国が直接の主体となって実施する。

b 現在国が実施している事務・事業の中には、上記のいずれにも該当せず、国自らが主体となって直接実施しなければならないものではないが、民間の主体にゆだねた場合には、当該事業が必ず実施されるという保証がなく、実施されないときには、国民生活や社会経済の安定等に著しい支障を生ずるものが存在する。
こうした事務・事業について、その公共的性格にかんがみ、独立行政法人を設けて、その実施を行わせることにより、事業の確実・適正な実施を確保する。
エ 職員の身分に関する考え方
独立行政法人の職員の身分は、原理的には現行と同じままの国家公務員とは相容れないものと考えられる。しかしながら、独立行政法人制度の創設に伴い、円滑な移行その他諸般の事情にかんがみ、職員の身分について、国家公務員の身分を与えることとし、併せて、国家公務員としない類型も設けることとする。
a 職員身分の類型
○ 国家公務員型と非国家公務員型の2つの類型を設ける。
○ 国家公務員型のものは、一定の要件に該当する場合には、非国家公務員型となり得ることとする。この場合、国家公務員型から非国家公務員型への移行に際しては、当該法人の設置法の改正を要する。したがって、移行の必要性・妥当性について、国会の審議(国民の判断)を経た上で、移行が実施されることとなる。
○ また、当初から非国家公務員型であるものも、当然、あり得る。

b 類型区分の基準
○ 個別の業務が国家公務員型と非国家公務員型とのいずれに当たるかについては、当該法人の目的・任務や、業務の性質等を総合的に判断して決まることとなる。その場合における不可欠な区分基準として、以下の点がある。
ア) 当該業務が停滞等を生じた場合、国民生活・社会経済の安定に直接、著しい支障を来すと認められるものについては、争議権の行使により業務停滞が生ずることは不適当であるため、職員の身分は国家公務員とする。
イ) 一方、争議権行使による業務停滞等があっても、直ちに国民生活・社会経済の安定に著しい支障が生ずるとは認められないものについては、非国家公務員とする。
○ 個別の具体的な業務が上記のいずれに該当するかは、その時々の社会経済情勢や国民の意識により決まることとなる。したがって、上記の ア) に該当する業務が、社会経済情勢や国民意識の変化によって、イ) に移行することもあり得るものである。

c 身分の付与の形式
○ 全ての独立行政法人に共通する設立根拠法において、職員の身分について、国家公務員型・非国家公務員型の2類型を規定する。
○ 個別の業務がいずれの類型に該当するかは、個別の設置法令において規定する。

d 職員の身分と制度設計の関係
○ 職員の身分が国家公務員であるか、国家公務員でないかによって、労働基本権、給与等勤務条件、服務、刑罰、定員管理等について差異が生じるが、それ以外の制度設計(中期的目標管理、財務運営、情報の公開、定期的見直し等)については、職員の身分の相違は影響を及ぼさない。
オ その他
独立行政法人の対象となる業務及び当該業務に従事する職員の身分の類型を具体的に決定するに当たっては、これまで維持されてきた良好な労使関係に配慮することが必要である。

A 具体的な制度設計

制度の基本概念を踏まえ、各法人の目的・任務を明確化する一方、各法人に対して極力自律性、自発性を与えるような制度設計とする。さらに、客観的な評価体制を確立し、国民のニーズに的確に応えるよう、業務の定期的な見直しを制度化する。

ア 法人の運営
a 基本的な枠組みの設定
法人の目的・任務については、各法人の設置法令において定め、この目的・任務を達成するための業務及び組織運営の基本的な基準・仕組みについては、当該法令又はこれに基づく規則によって定めることとする。
法人の業務及び組織運営に関する基本的な枠組みは、これらの法令等に基づき、長が定めることとし、長は案を作成し、主務大臣の認可を経るものとする。(設立時においては、設立行為の一環として決定する。)
こうした仕組みを通じて、各法人の目的・任務を明確化するとともに、本体業務及び附帯業務以外への出資等を認めないことを明らかにすることによって、法人の業務や関連組織等が、資本関係、取引関係、人的関係を通じて、国民のニーズとは無関係に自己増殖的に膨張することに対し、厳しい歯止めをかけることとする。
一方、主務大臣の独立行政法人に対する監督・関与は、基本的に以上の範囲に限り、それ以上の細部にわたる監督・関与は行わないものとし、法人の自主的・自律的な運営を可能とすることが必要である。

b 中期的目標・業務計画による管理
ア) 主務大臣による目標の付与
中期的な期間(3〜5年)で達成すべき、財務、サービス水準の向上、合理化等に関する目標(以下「中期的目標」という。)を主務大臣が長に提示する。なお、中期的目標は、できる限り、数値による目標とする。
イ) 中期計画の策定
長は主務大臣が提示した目標を達成するための中期(3〜5年)の業務計画(以下「中期計画」という。)の案を策定し、主務大臣の認可を受ける。
主務大臣は、中期計画の認可に当たっては、各省の運営評価委員会の審議を経るとともに、財政担当大臣に協議するものとする。
ウ) 年度計画の策定
長は中期計画にのっとり、各年度の業務計画(半期の計画を含む)を策定するとともに、これを主務大臣に提出する。
イ 独立行政法人のトップマネジメント
長(1名)、監事(複数)及び運営会議を置く。ただし、監事については、外部の者の起用を義務付ける(いわば社外監査役)。なお、業務の性格、規模等により、別途の方式(理事会等)を採ることもあり得るものとする。
長及び監事は主務大臣が任命することとし、長については、公募により選任することができることとする。
ウ 組織機構・人事
a 組織機構
基本的な枠組みは各法人の設置法令及びこれに基づく規則において定め、詳細事項については長の権限において定める。

b 職員の処遇等
給与水準、人事制度等については、基本となる仕組み及び基準は各法人の設置法令及びこれに基づく規則において、詳細事項は中期計画において、それぞれ規定する。また、職員の任免、異動、人事評価等は、長が行うものとし、職員の給与・賞与、昇進等について、各人の業績が反映される仕組みの導入及び運用を行う。
エ 職員の身分・制度設計
a 国家公務員型
ア) 労働基本権、身分保障の扱い
○ 団結権及び団体交渉権(協約締結権を含む)は付与し、争議権は付与しない。
○ 身分保障については、法定事由でなければ、意に反して、降任、休職、免職されない。
イ) 勤務条件の決定
○ 給与・勤務時間等の勤務条件及びこれらに関する規程については、独立行政法人の長が中期計画の範囲内で裁量により決定する。
○ これらの勤務条件は労働協約の対象とし、労使交渉が不調の場合、中央労働委員会の調停、仲裁へ移行する。
ウ) 服務等
○ 法令及び上司の命令に従う義務、争議行為の禁止、信用失墜行為の禁止、秘密を守る義務、職務専念義務、政治的行為の制限、兼業の制限、営利企業の役員等との兼業禁止、離職後における営利企業への就職に関する制限等を課する。(国家公務員法の適用)
○ 刑法の虚偽公文書作成、公務員職権濫用、収賄、公務執行妨害、名誉毀損の特例等の適用がある。
エ)定員管理
○ 行政機関職員定員法等の法令定員制度の対象としない。
○ 主務大臣が毎年国会に実員報告を行う。
○ 中期計画及び年度計画の目標の中に人員及び人件費の効率化目標を掲げ公表する。

b 非国家公務員型
ア) 労働基本権、身分保障の扱い
○ 労働三権を付与する。
○ 降任、休職、免職等の身分保障については、就業規則において規定する。
イ) 勤務条件の決定
○ 給与・勤務時間等の勤務条件及びこれらに関する規程については、独立行政法人の長が中期計画の範囲内で裁量により決定する。
○ これらの勤務条件は、労働協約の対象とする。
ウ) 服務等
○ 服務については、就業規則等により決定する。
○ 業務の性質に応じて、「みなし公務員」規定又は個別の罰則の適用規定を置く。
エ) 定員管理
○ 中期計画の範囲内で長の裁量により決定する。
○ 中期計画及び年度計画の目標の中に人員及び人件費の効率化目標を掲げ公表する。
オ 財務・会計
a 企業会計原則の適用
財務に関しては、原則として企業会計原則によることとする。

b 運営費の交付
法人が行う事業の運営費(対象事業に係る手数料等の事業収入を除く。)については、必要な場合、各省の運営評価委員会の評価を経て、一定のルールに基づき算定した金額を、国が交付する。

c 固定的投資経費
中期計画に規定された投資計画に要する費用で国が支出するものについては、国は、運営費の交付とは区分して、法人に交付等を行う。

d 剰余金の取扱い
剰余金については、中期計画期間中において、留保(積立て)を認める。法人の経営努力により生じた剰余金(各省の運営評価委員会が認定した額に限る。)については、中期計画期間中、当該計画に規定した使途の範囲内における使用を認める。
中期計画完了時における累積剰余金については、次の中期計画策定時に、各省の運営評価委員会の審査を経て、主務大臣が処分(国庫収納又は継続留保)を決定する。

e 予・決算等の提出
法人は、毎事業年度、予算、財務諸表、決算報告等を作成し、主務大臣に提出する。この場合において、主務大臣は、所要の確認等を行うものとする。
カ 評価体制
a 評価機関
独立行政法人の評価の客観性を担保し、恣意性を極力排除するため、総務省に置かれる全政府レベルの評価機関と各省に置かれる評価機関を設置する。また、それぞれの評価機関の機能の重複を避けるため、役割の峻別、明確化を図ることとし、具体的には以下のとおりの機能分担とする。
ア) 総務省に置かれる評価委員会
a)独立行政法人の民営化、主要業務の改廃等の勧告
b)各省の運営評価委員会の評価結果に関する意見の表明
c)各独立行政法人に関する公表資料の取りまとめ及び公表(「独立行政法人白書」;毎年1回作成) 等
イ) 各省に置かれる運営評価委員会
a)独立行政法人の中期計画、年度計画の審査
b)独立行政法人の業務に関する評価基準の設定及び評価
c)業務、組織運営に関する改善措置等の大臣への勧告
d)各大臣が独立行政法人に対して設定する中期目標に関する意見の表明
e)独立行政法人の長、役職員に対する報奨等、必要な措置の勧告 等

b 評価機関の組織
評価機関の組織については、専門性、実践的な知見を重視するとともに、客観性、中立性を担保できる体制とする。
ア) 総務省に置かれる評価委員会
a)委員  外部有識者から総務大臣が任命。
b)委員長 総務大臣の任命又は委員の互選による。
c)事務局 総務省内の行政評価・監察を担当する部局を事務局とする。
イ) 各省に置かれる運営評価委員会
a)委員  外部有識者から各大臣が任命。
b)委員長 各大臣の任命又は委員の互選による。
c)事務局 各省の当該省全般にわたる評価機能を担当する部局を
事務局とする。

c 評価結果の反映
評価委員会の評価結果については、以下のとおり、法人の運営等に反映させるものとする。
ア)中期的目標・中期計画への反映
評価を踏まえた改善点等について、次年度計画はもとより、次期の中期的目標・中期計画にも反映させる。年度ごとの業務実績に係る評価を踏まえ、期間途中であっても必要に応じ、中期的目標・中期計画の変更・改善を行う。
イ)トップマネジメントへの反映
評価結果を長・役員等の人事に反映する。必要な場合には、任期途中の交代もあり得るものとする。
ウ)職員の処遇への反映
評価結果を踏まえ、職員のボーナス等に一定の増減を行うなど、職員の処遇に反映する。
キ 公表
透明性を確保する観点から、法人は、徹底的な情報公開を行うものとし、具体的には、毎年度、以下の事項について、公表するものとする。
a 業務の概要
b 財務諸表
c 決算報告
d 中期計画・年度計画
e 各省の運営評価委員会の評価結果
f 監事の監査結果
g 役員に関する事項       等
ク 定期的な見直し
中期計画の期間終了時において、業務継続の必要性及び組織形態の在り方について見直しを行い、その結果に基づき、所要の措置を講ずることとする。また、見直し結果は、公表する。
この定期的な見直しは、当該法人の関連組織・業務の全容を対象とすることとし、これにより、国民のニーズからかけ離れた、法人の業務・組織の自己増殖については、直ちに廃止・縮小の措置が採られることとなる。
見直しに当たっては、各省の運営評価委員会による業務成果の評価を踏まえ、当該運営評価委員会の議を経て、主務大臣が所要の措置を決定することとする。
定期的な見直しについては、独立行政法人の設置根拠法に明確に位置付け、制度化する。
ケ 人事交流
政策の企画立案部門と実施部門の連携を図り、実状を踏まえた政策の立案、政策の迅速・的確な実施への反映を確保する観点から、必要に応じ、省庁と独立行政法人の間の人事交流を行う。
人事交流に当たっては、省庁の一方的な判断によることなく、両者が対等の立場で、合意に基づき行われることが必要である。
コ 設立形式
全ての独立行政法人に共通する設立根拠法を設け、独立行政法人の組織・運営に関する基本的な事項及び共通的事項を規定し、共通原則を制度化する。
個々の独立行政法人の設立については、原則として、各法人の設置法令によることとする。なお、独立行政法人の対象業務には、多種多様なものが想定されることから、設立根拠法においては、個々の独立行政法人の業務運営に関し、特性に応じた組織・運営が可能となるよう、弾力的な仕組みとする。

B 独立行政法人の対象業務と設立の考え方

ア 対象業務の考え方
次の要件を満たす事務・事業を、独立行政法人化により業務の効率性、サービス等の質及び透明性の向上が図られるものとして、独立行政法人の対象とする。
a 業務の性質上、次の要件を満たす事務・事業であること
ア) 国民生活・社会経済の安定等の公共上の見地から、その確実な実施が必要とされること
イ) 国が自ら主体となって直接実施しなければならない事務・事業(注)ではないこと
ウ) 民間の主体にゆだねた場合には必ず実施されるという保証がないか、又は公共的な事務・事業として独占して行わせることが必要なものであること

b 独立の組織とするに足るだけの業務量のまとまりがあること
(注)国が自ら主体となって直接実施しなければならない事務・事業
○ 私人の権利義務に直接かつ強度の制限等を及ぼす公権力の行使に当たる事務・事業
○ その性質上、国が自らの名において行うのでなければ成立しない事務・事業
○ 災害等国の重大な危機管理に直結し、直接国の責任において実施することが必要な事務・事業
イ 設立の考え方
a 独立行政法人の対象業務については、事務・事業の対象、地域、性質等の類似性・同質性に着目し、できる限り統合・一元化するとともに、利便性等国民のニーズに即応した編成とする。

b 独立行政法人とする場合においても、その業務については、民間委託、指定法人の活用等、徹底した民間能力の活用と業務の効率化を図るものとする。

c 独立行政法人は、担当する業務に応じ、複数の省庁から監督を受けることがあり得るものとし、その場合にあっては、そのうちの中心的な省庁が主管省庁として、独立行政法人の管理に関する部分を所管する。
ウ 対象となる具体的業務
a 上記の考え方を踏まえ、独立行政法人化の検討対象は、幅広く設定すべきである。その上で政府は、独立行政法人化に向けて、具体的検討を進めるものとする。(なお、独立行政法人化の検討対象となり得る業務として、当会議の論議で取りあげられたものを整理して、別表1・2に掲げた。)

b 検討に当たっては、各業務類型ごとに以下の点に留意する。
ア)試験研究
○ 直接行政活動に携わるなど特別な業務に当たるもの及び政策研究機関を除き、原則として独立行政法人化を図る。その際、可能な限り統廃合を進める。
○ 独立行政法人化に当たっては、研究機関間で柔軟な資源配分等を図る必要性等を勘案し、複数機関を括り法人格を付与することを検討する。
イ)文教研修
○ 国立学校以外のものであって広く民間人を対象として研修を実施しているものについては、民営化又は地方移管を検討する。
(注)国立大学については、人事・会計面での弾力性の確保など種々改善する必要があり、現行の文部省の高等教育行政の在り方についても改善が必要。しかし、大学改革は長期的に検討すべき問題であり、独立行政法人化もその際の改革方策の一つの選択肢となり得る可能性はあるが、現時点で早急に結論を出すべき問題ではない。
○ 民営化又は地方移管が困難な場合にあっては、一定規模以上のまとまりのある研修施設は単独で、小規模の研修施設は統合して、独立行政法人化の検討を行う。
○ 行政機関の職員のみを対象とする研修施設は、独立行政法人化の対象としない。
ウ)医療厚生
○ 国立病院・療養所については、今後、計画的な整理・統廃合を進め、高度かつ専門的な医療センターやハンセン病療養所等を除き、独立行政法人化を図る。これに当たっては、国立病院・療養所の政策医療ネットワークの機能を阻害しないように留意する。
○ 国立更生援護機関については、業務の性格にかんがみ、独立行政法人化の対象としない。
エ)作業施設
○ 民営化、民間移譲、廃止又は地方移管が可能なものを除き、業務の性格を勘案し、原則として独立行政法人化を図る。
オ)その他の公的事務・サービス業務
○ 検査検定業務については、規制緩和を徹底し、廃止又は民営化するものを精査した上、残ったものについて独立行政法人化を検討する。
○ 航空管制については、保守点検等の業務の民間委託を積極的に進める必要がある。

◆ この表は、独立行政法人の検討対象となりうる業務として行政改革会議の論議で取り上げられたものを整理したものである。

別表1

独立行政法人化等の検討対象となりうる業務

●試験研究 ●文教研修・医療厚生 ●検査検定
開発土木研究所
航空宇宙技術研究所
金属材料技術研究所
放射線医学総合研究所
防災科学技術研究所
無機材質研究所
国立環境研究所
醸造研究所
国立科学博物館
国立国語研究所
国立文化財研究所
国立健康・栄養研究所
農業研究センター
農業生物資源研究所
農業環境技術研究所
畜産試験場
草地試験場
果樹試験場
野菜・茶業試験場
農業工学研究所
農業試験場
蚕糸・昆虫農業技術研究所
家畜衛生試験場
食品総合研究所
国際農林水産業研究センター
森林総合研究所
水産研究所
養殖研究所
水産工学研究所
【*は、工業技術院研究部門】
産業技術融合領域研究所*
計量研究所*
機械技術研究所*
物質工学工業技術研究所*
大阪工業技術研究所*
名古屋工業技術研究所*
生命工学工業技術研究所*
地質調査所*
電子技術総合研究所*
資源環境技術総合研究所*
北海道工業技術研究所*
九州工業技術研究所*
四国工業技術研究所*
東北工業技術研究所*
中国工業技術研究所*
船舶技術研究所
電子航法研究所
港湾技術研究所
交通安全公害研究所
通信総合研究所
産業安全研究所
産業医学総合研究所
土木研究所
建築研究所
消防研究所
国立公文書館
国立オリンピック記念青少年総合センター
国立婦人教育会館
国立博物館
国立近代美術館
国立西洋美術館
国立国際美術館
国立病院・療養所
工業所有権総合情報館
肥飼料検査所
農薬検査所
農林水産消費技術センター
動物医薬品検査所
食糧事務(食糧検査は民営化)
製品評価技術センター
自動車検査
船舶検査
航空機検査
無線等検査

別表2

●下記については、廃止、民営化、地方移管等を検討した上で、なおこれらになじまない場合に、独立行政法人化の検討対象とする。

●文教研修・医療厚生 ●作業施設その他 ●検査検定
職域病院→民営化
国立青年の家→民営化又は地方移管
国立少年自然の家→民営化又は地方移管
農業者大学校→民営化
水産大学校→民営化
海技大学校→民営化
航海訓練所→民営化
海員学校→民営化
航空大学校→民営化
建設機械工作所→民営化又は廃止
種苗管理センター→民営化
家畜改良センター→民営化
林木育種センター→民営化
さけ・ます資源管理センター→民間移譲
食糧事務のうち食糧検査→民営化
真珠検査所→廃止

C 特殊法人との関係

独立行政法人制度を創設するに当たっては、特殊法人との関係を明らかにしておくことが必要であるが、これについては以下のように整理される。

ア 特殊法人の意義

特殊法人とは、行政に関連する公的な事務を遂行するために、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された公団、事業団、公庫などの総称であり、その定義は極めて形式的な基準によっている。このため、特殊法人とされる法人には、極めて多種多様なものが含まれる結果となっている。
これらの法人は、一面において、行政組織外に独立の法人格を有することにより、行政組織内部では達成されない効率的な業務運営の確立等を目指したものであるが、個々別々の法律に基づき設立されてきたため、組織、運営等についての共通的な準則が存在せず、また、その運営等や在り方にも様々な問題が指摘されるところとなっている。

イ 特殊法人の類型とその整理・民営化

特殊法人の業務の性格は、行政代行的なもの、民間事業者的なもの、組合的なものなど様々であり、その業務内容としても、金融機関、営利目的の特殊会社、基金、共済、財団、研究機関など多種多様なものが混在している。
このような特殊法人の中には、設立当初の社会的要請を概ね達成し、時代の変遷とともにその役割が変質、低下しているもの、民間事業者と類似の業務を実施しており国の関与の必要性が見出し難いものなどが存在している。まず、特殊法人については、その存続の必要性を徹底して見直すとともに、民営化、事業の整理縮小・廃止などが積極的に進められなければならない。
また、個々の特殊法人の中には、その業務の特殊性から現在の特別の形態を維持すべきものもあろう。
このような徹底した見直しを経て、なお存続が必要であると判断されるものについては、存続する法人としてふさわしい組織形態、業務内容としていく必要がある。

ウ 特殊法人の問題点の克服

特殊法人については、上記のような時代の変遷に伴う役割の低下などに加え、主務官庁による強い事前関与・統制による自律性・自主性の欠如、事業運営の非効率性・硬直性の顕在化、経営内容の不透明性、組織・業務の自己増殖、不要不急な業務の拡張、経営責任体制の不明確性など、従来から様々な問題点が指摘されてきたが、その大きな原因は、これらの問題点を解消するような共通の制度的枠組みが存在しないところにあると考えられる。
今回創設される独立行政法人制度においては、各法人の目的・任務及び業務・組織運営の基本的な基準などが法令等によって明確化され、国民のニーズとは無関係に自己増殖的に業務を拡張することが防止される仕組みとなっている。さらに、目標設定や評価に関する仕組みの導入、弾力的な財務運営、組織・人事管理の自律性の確保、効率化やサービスの質向上に対するインセンティブの付与、徹底的な情報公開、業務の定期的な見直しなど、組織・運営に関する共通の原則が制度化されており、現行の特殊法人について指摘されている問題点は克服される仕組みとなっている。

エ 独立行政法人と特殊法人の関係

独立行政法人制度は、国の行政事務を政策の企画立案事務と実施事務とに区別し、実施事務のうち一定のものについて、行政組織外の独立の法人格を有する主体に実施させることによって、効率性の向上、質の向上、透明性の確保などを実現することを目的として創設されるものである。同時にこの制度は、国家行政組織外の主体によって担われる公的な事務・事業について、その組織、運営等に関する新たな基本原則を確立するものである。
したがって、従来の特殊法人等についても、先に述べた徹底的な見直しをまず実施し、なお維持・継続すべきと判断された業務については、独立行政法人化の可否についての検討を視野に入れるとともに、特殊な法人として存置すべきと判断された法人についても、独立行政法人制度のねらいとするところが生かされるよう、適切な運営が図られなければならない。

(3) 施設等機関の見直し

各省庁等の国の行政機関には、現在、試験研究機関、検査検定機関、文教研修施設、医療厚生施設、矯正収容施設、作業施設等の各種の施設等機関が置かれている。
これらの機関については、真に国として必要なものに限定し、それ以外のものについては、民間や地方への移譲を進める必要がある。
また、国の機関として存置する必要性の認められるものについても、中央省庁の再編と併せ統廃合を行うとともに、それぞれの機関の性格に即応して、独立行政法人化を検討する必要があるが(W−2−(2)−B参照)、それに先立ち、あるいはそれと併行して、次のような組織の見直しを進めるべきである。

@ 国立大学

ア 国立大学改革の基本的な方向
国立大学は、国際化、少子化、高齢化、情報化、産業構造の変化など社会が大きく変化する中で、教育研究の質的向上や組織・運営体制の整備、各大学の個性の伸長、産業界、地域社会との有機的連携、教育研究の国際競争力の向上等に積極的に取り組むことが必要になっている。
イ 具体的な大学改革の方策
a 国立大学の自主的改革の推進と情報公開、評価システムの充実
国立大学の多様性にかんがみれば、各大学が主体性と責任を有し、競争的な環境の中で、特性を生かしつつ諸課題に取り組んでいくことが求められる。このためには、各大学ごとの情報公開と透明性の確保、評価システムの充実をさらに推進する必要がある。

b 組織・運営体制の整備
各大学が主体性と責任を有し、組織として適切な意思決定を行い、実行に移すためには、組織・運営体制の整備が不可欠である。
具体的には、外部との交流促進も含めた人事制度及び会計・財務面での柔軟化を図る必要がある。この際、高等教育行政と各大学の関係を見直し、各大学の自主性を高めるための方策として、外部資金の積極的導入、国費投入・配分基準の明確化・透明化、競争的資金の充実等についても早急に検討を行う必要がある。

c 大学組織の権限と責任の明確化、事務組織の見直し
学長、学部長などの執行機関の管理運営機能の強化を図るとともに、評議会や教授会などの審議機関についての在り方を見直し、執行機関との間の権限と責任の明確化、意思決定手続の明確化を早急に行う必要がある。また、事務組織の簡素・合理化、専門化についても、早急に整備する必要がある。
ウ 大学改革の進め方
国立大学については、上記のとおり、高等教育行政の見直しも含めた、組織・運営の在り方の改革を早急に推進する必要がある。
さらに、独立行政法人化は、大学改革方策の一つの選択肢となり得る可能性を有しているが、これについては、大学の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上を図るという長期的な視野に立った検討を行うべきである。また、大学の機能に応じた改組・転換についても、併せて積極的に検討する必要がある。

A 国立病院・療養所

ア 国立病院・療養所のおかれた状況と目指すべき方向
国立病院・療養所については、公私立医療機関の充実や医療の高度化・専門化など医療をとりまく環境の変化を踏まえ、昭和60年以来取り組まれてきた再編成に関する方針を、真に国として行うべき医療に特化する方向で見直すべきである。
イ 再編成方針の見直し
a 政策医療の範囲
上記の基本的な考え方に照らし、現在、国立病院・療養所の役割とされている政策医療の範囲の純化を検討すべきである。例えば、
ア) 緊急・広域の災害医療については、国立病院による対応が不可欠な場合を除き、公私の医療機関に任せることを基本とする。
イ) がん、循環器病、免疫異常等の疾病に対する先駆的医療については、高度専門医療センターや大学附属病院等の高度の研究機能との連携を視野に入れつつ、研究と診療との一体性の確保の可能性を検討し、明確な位置付けのできない施設は再編成の対象とする。
ウ) 結核については、最低限、現在進められている「原則各都道府県1ヶ所」に集約・合理化するなど、その必要性に適合するよう大幅に整理縮小する。
エ) 重症心身障害については、「社会福祉法人等への経営移譲をモデルとして実施」との現在の方針をさらに徹底し、具体的に社会福祉法人への移譲を進める。
など、政策医療の範囲について、民間による供給が不可能か、あるいは民間にゆだねては極めて問題が生じる分野を除いて、機能の縮小・廃止を進めるとともに、全国的な規模・視点で統一的に行われる必要がない診療等について、地方移管を進めるべきである。

b 臨床研修の見直し
臨床研修については、研究と研修を第一義的に行う大学附属病院との連携を今後さらに深めていくこととする。

c 再編成促進のための措置
国立病院・療養所の統廃合・経営移譲を一層推進するため、従来の再編成特別措置のさらなる拡充が必要である。
ウ 国立病院・療養所の組織・運営の見直し
国立病院・療養所については、積極的・主体的な効率化やサービス向上、各施設の連携・協力による自律的な活力の維持・増進、各施設の経営内容の公表及び適切な評価を基礎とした経営の改善などが求められている。
このような要請に応え得る組織とするため、高度かつ専門的な医療センターやハンセン病療養所等を除き、独立行政法人化を図るとともに、各施設の事業体としての経営管理体制の確立や、各施設ごとの収支区分の明確化が必要である。また、統一的な経営管理指標に基づく自己点検・外部評価の実施及び公表の仕組みを検討すべきである。
なお、組織の見直しに当たっては、国の医療機関としての責務を果たし得る組織運営体制、今後の再編成計画の策定・実施との整合性、社会情勢の変化に即応して柔軟に組織運営を見直し得る体制の確保に留意する必要がある。

B 国立試験研究機関

ア 国立試験研究機関の見直し
既存の各省庁が所管する約90の国立試験研究機関については、類似研究機関、必要以上に細分化されている小規模研究機関、地域別の研究機関、業種別の研究機関等を原則的に統廃合する。これに際しては、省庁再編に対応し、国として本来担うべき機能にふさわしい業務とするとともに、適切な規模のものとする。また、事務部門、研究支援部門の集約化や重複・共通研究部門の見直し等を行い、組織・人員を効率化するとともに、一方で重要領域に組織・人員を重点化する。
このような国立試験研究機関全体にわたる省庁の壁を超えた統廃合と併行して、国として重要かつ総合的に取り組む必要のある研究分野、広範な行政目的に関係する横断的な研究分野を担う中核的な研究機関を育成することにより、今後のわが国の科学技術への取組みを充実させる。
イ 管理・運営、評価システムの改革
各研究機関の活動の自律性、柔軟性、競争性を高めるために、所長の裁量拡大、人事・予算の弾力化、人材交流の活発化等、管理・運営の仕組みの改善を図る。
また、外部専門家・有識者等も含めた厳正な評価体制を確立して評価結果を公表し、その結果を組織や研究領域の見直し、研究の進め方、予算・定員の配分の見直し、処遇等、さらには政府全体を通じた研究開発政策に反映させる。
ウ 独立行政法人化の必要性
以上のような諸改革を実現していくために、国立試験研究機関(直接行政活動に携わるなど特別な業務に当たるもの及び政策研究機関を除く。)について独立行政法人化すべく、具体的な検討を進める。独立行政法人化に当たっては、基本的に研究機関単位で自律性を発揮しながら業務を遂行していく必要がある一方、研究機関の間でその業務の性格に応じ柔軟な資源配分等を図っていく必要があること等の諸条件を勘案して、法人格を付与する単位を設定する。いずれにしても、競争的な研究が行われるように、できるだけ組織に柔軟性(改廃を含む)をもたせることを重視する。
なお、国立試験研究機関の中には研究開発を行う機関や試験・検査を行う機関の他に、政策研究を行う機関があるが、政策研究を行う機関については、本省が政策機能に重点化していくこととの関連性を踏まえ、全政府的見地からその活用及び組織の在り方を見直す。

C その他の施設等機関

上記のほか、以下のような見直しを進めるべきである。

ア 検査検定機関
検査検定機関については、その事業の必要性を厳しく見直した上で、民間移譲、廃止を進めるとともに、中央省庁の再編と併せ統廃合を進める。
また、事業の性質に応じて独立行政法人化を検討するとともに、国の事業として残す場合においても、可能な限り部外委託を進め、効率化を図る。
イ 文教研修施設、作業施設
国立学校以外の文教研修施設及び作業施設については、国の行政として行う必要性を見直し、民営化、民間移譲、地方移管等を進めるとともに、中央省庁の再編と併せ統廃合を進めるほか、独立行政法人化など運営の効率化を図る。
ウ 矯正収容施設
矯正収容施設については、矯正収容施設の有する特性を十分考慮しつつ、可能な限り運営の効率化・質の向上を進める。

(4) 民営化、民間委託等の推進

@ 基本的な考え方
ア 国の行政として直接実施する必要が失われ又は減少している業務、あるいは行政サービスとしての存在意義を失い又は存在意義が縮小している業務については、民営化、民間移譲、地方移管又はその廃止を進める必要がある。

イ 行政として必要な業務であるが、当該業務を行政機関自らが(国家公務員が)行う必要性に乏しく、民間に委託した方が効率的である事務・事業については、大幅に民間委託する。
A 民営化、民間移譲の推進
既に前掲(2)−B−イの項で述べたとおり、事務・事業については、何よりもまず、民営化、民間移譲の可能性を十分検討する必要がある。この上に立って初めて、独立行政法人化などの選択肢が検討されるべきである。
民営化、民間移譲の検討対象については、前掲(2)−B−ウの別表に掲げたとおりであるが、アルコール専売、工業技術院の標準実施部門、食糧検査等については、積極的に民営化、民間移譲を検討する必要がある。
B 民間委託の推進
ア これまでも、以下に掲げる業務については、民間委託が進められてきているが、今後にあっては、個々の業務における部分的な委託のみでなく、一連のまとまりとして、包括的に民間に委託する手法を積極的に採用すべきである。
(民間委託が考えられる事務・事業)
・社会資本整備(直轄事業の調査、建設、運営、管理業務等)
・営繕・国有財産管理
・設備、施設等の管理業務
・情報処理、統計の処理(集計、データベースの作成・提供等)
・各種検査検定業務
・各種国家資格・認定業務
・国際交流業務
・普及啓発業務、広告活動
・各種調査(統計調査*、資料収集、分析等)
* 農林統計等の調査(実査等)

イ 民間委託を進める場合、以下の点に留意する必要がある。
・受託可能な民間組織が存在すること。
・民間委託を実施することにより総体として効率性が拡大するか否か
(サービスの質とコストの比較分析)を検証すること。
・検証は可能な限り定量的に行うこと。
・選択した手法を公表し、それが最適なものであることの説明責任を負うこと。
・合理的な理由なく、委託組織の長期固定化、業務の独占などが生まれることのないよう透明性をもった委託手続をとること。
・定期的に見直しを実施するシステムを確立すること。

3 規制行政、補助行政等の見直し

(1) 規制行政、補助行政の見直し

@ 規制行政の見直しの方向

規制行政については、政府において、個別具体的な規制及びその運用の在り方を、引き続き、徹底して見直す必要があり、その継続的かつ着実な推進を求めていく必要がある。この場合において、以下の点を重視する。

ア 規制緩和・撤廃の推進
社会、経済情勢の変化等を踏まえ、経済的規制については原則自由、社会的規制については、本来の政策目的に沿った必要最低限のものとする。
また、規制の国際整合化(グローバル・スタンダード化)を進める。
イ 事後チェック型行政への転換
いわゆる事前規制型の行政から事後チェック型の行政に転換する。
ウ 検査・検定、基準・規格行政の民間移行
検査・検定、基準・規格について、可能な限り、民間の自主的な活動にゆだねる。
エ 規制行政の責任の明確化、効率化の推進
規制実施部門を企画立案部門から基本的に独立させ、両者の適切な緊張関係を維持しつつ、責任の明確化を図るとともに、規制事務における民間能力の活用を進め、効率化を追求する。
オ 規制行政の透明化、説明責任
規制のルールを明確にするとともに、ルールの公表はもとより、その適用結果についても原則として公表し、説明責任を明確にする。
なお、設置法のみを根拠とする行政指導などの民間への関与は、できる限り、廃止する。
カ 国民の利便の追求と負担の軽減
関連した許認可行政の窓口・手続の一元化や、許認可に係る手続、書類等の簡便化等、国民の利便の追求と負担の軽減を徹底する。

A 補助行政の見直しの方向

補助行政については、政府において、個別具体的な補助及びその行政の在り方を、引き続き、徹底して見直す必要があり、その継続的かつ着実な推進を求めていく必要がある。この場合において、以下の点を重視する。

ア 補助金等の整理・縮小
a 「財政構造改革の推進について(平成9年6月3日閣議決定)」に従い、補助金等の整理・縮小を着実に推進する。
b 上記に併せ、地方公共団体に対する補助金等については、地方分権推進委員会の勧告に沿って、負担金と補助金の区分を明確にした上、補助負担金の整理合理化方針に従い、着実に補助金等の整理・縮小を推進する。
c 地方公共団体に対する補助金等については、地方分権の趣旨に基づき、基本的に、制度上、国が一定の基準に基づき負担(支出)を義務付けられているものを除き、一定の基幹的、広域的なものに限定し、その規模、効用が地域的なもの、一定の規模以下のものについては、一般財源化する。
d 振興、助成関係の補助金等については、施行後長期間を経過し、実体的な効果が乏しくなっている補助金等、及び一件当たりの金額の総額、あるいは、一交付先当たりの金額が少額の補助金等は、原則として、廃止する。
なお、振興、助成に関し、施行後長期間を経過し、実体的な効果が乏しくなっている振興助成のための法律や租税特別措置、政策金融措置についても、原則として廃止するものとする。
イ 補助効果の評価
補助効果を可能な限り数量的に評価し、公表するシステムを確立する。
ウ その他
新規補助金等の抑制、補助金の総合化、補助の条件・基準等の明確化・透明化、申請・交付等の手続の簡素化等を推進する。

B 規制行政、補助行政の見直しの計画的な推進

規制緩和については、現行計画による実施時期が平成10年度以降とされているものは、原則として、その時期を遅くとも、平成13年3月31日までとする。
また、現行計画の期間満了後においても、引き続き規制緩和を推進すべく、政府として新たな計画の策定を早急に進めるべきである。
補助金等の整理についても、「財政構造改革の推進について」の趣旨を踏まえ、かつ、地方分権推進委員会の勧告に従い、整理合理化計画を早期に策定し、着実に推進すべきである。

(2) 公共事業の国・地方分担の見直し、効率化

@ 基本的な考え方

現在の財政状況、社会資本の整備水準等を踏まえれば、「財政構造改革の推進について」にも述べられているように、今後の公共事業については、国の直轄事業、補助事業とも、徹底的な見直しを図る必要がある。また、事業の実施に当たっては、民間活力の大幅な活用を進めるべきである。

A 国と地方の分担

ア 公共事業に関する今後の国の役割は、全国的な政策・計画の企画・立案や、全国的見地から必要とされる事業の実施に厳しく限定し、その他については、基本的に地方公共団体にゆだねていく必要がある。
イ 公共事業について、基礎的・広域的事業を国の直轄事業として施行するとともに、補助事業は、直轄事業や国家的プロジェクトの関連事業、先導的な施策に係る事業、短期集中施行を要する事業等に限定することとし、それ以外の事業については、できる限り、個別補助金に代えて、適切な目的を付した統合補助金を地方公共団体に交付し、地方公共団体に裁量的に施行させる。

B 地方支分部局への大幅権限委譲

ア 事業の執行に関する本省と地方支分部局の関係について、従来までのように、本省が地方支分部局を仔細にコントロールする仕組みを抜本的に見直し、本省が企画立案、総合調整に重点化すると同時に、ブロック別の地方支分部局が、直轄事業及び補助事業を含めた事業の実質的な決定・執行機能を有するような仕組み、即ち公共事業ブロック単位執行制度ともいうべきものを確立すべきである。
イ これに当たっては以下の点を実現し、実効ある仕組みとすべきである。
a 事業の決定・執行に関する本省の権限は、可能な限り地方支分部局に委任することとし、その委任は、明確な法令上の規定によること。
b 地方支分部局における組織・人事運営の主体性を高めること。
c 予算は、各地方支分部局に一括した計上・配分を行うこととし、その実施については、各地方支分部局が主体的な決定・執行を行い得ること。
d 事業間、地域間の調整を、調整枠等の工夫により、本省及び地方支分部局において円滑に行い得るような運用上、制度上の措置を講ずること。
e 各地方支分部局は、地域における直轄事業の計画・実施、補助事業の計画・補助金交付等を一体的に行い得ること。
(別紙イメージ図参照)

C 直轄事業の実施部門の効率化

直轄事業の実施組織については、徹底的な業務の効率化を図るべきである。さらに、直轄事業の業務は、立地及び計画の決定等の事務に重点化し、他は施工監理を含め、民間委託をさらに徹底すべきである。また、事業完了に至るまでの一連のマネジメントを、包括的に民間企業に委託するような新たな契約方式の導入も進める必要がある。

D 決定過程の透明化と評価

公共事業に関しては、計画等における決定過程等の客観化、明確化等を図ることが重要である。
非効率であったり効果に疑問がある事業が、不透明かつ裁量的に採択・実施されることのないよう、社会資本整備に関する計画等において、総事業量等のみならず、主要な個別事業の実施箇所や実施時期の見込みをも明らかにし、その内容をできる限り明らかなものとする必要がある。
また、事業の優先順位を付ける根拠となる客観的な費用対効果分析も、可能な限り計量化して情報を公開し、事業実施後にあっても、そのフォローアップ結果を公表していくことが必要である。

(3) 地方支分部局の整理

@ 地方支分部局の整理に関する基本方針

ア 地方支分部局については、その事務・事業の内容を厳しく精査し、現地レベルでなければなし得ない業務に限定することとし、その設置及びその事務・事業は必要最小限のものとする。
この見地から、現行の地方支分部局にあっては、その設置及び事務・事業の必要性についてあらためて厳しく見直し、可能な限り整理すべきである。
イ この場合にあって、なお存続するものについては、できるだけ総合化するとともに、府県単位以下のものは、可能な限り整理する。

ウ 地方支分部局の事務権限については、可能な限り現地完結性(中央との二重性の排除)を実現するほか、関連事務に関する関係機関の諸手続の窓口についても、可能な限り一元化を図る。

A 具体的推進に当たっての留意点

ア 総合化
a 基本的に、新たな省庁編成に併せ、可能な限り、省ごとに、ブロック単位において総合化することを原則とする。府県単位機関のみの系統にあっては、当該単位で同様とする。
この総合化に併せ、組織を簡素化する。
b 各省庁の地方支分部局のもつ地域の振興・施設整備等についての調査、企画立案、助言等の機能をブロックごとに調整する仕組みを創設し、各地域の官民からの求めに応じ、各省庁を通じた包括的・横断的な立場からのノウハウの提供、新規施策への橋渡し等を行う。
イ 業務の合理化に対応した整理
統計調査事務、公安調査事務、食糧関係事務などのように、業務の合理化を進めるものについては、これに対応して、組織、定員を整理合理化する。
ウ 社会経済圏の変動・拡大に対応した整理
交通手段の発達、社会活動・経済活動の変化に対応し、再配置、統廃合などを進める。
エ 地方支分部局への権限委譲
許認可等の処分及び補助金等の交付手続において、地方支分部局を窓口とする場合は、原則として、地方支分部局で手続を完結させるものとする。

B 整理合理化計画の策定

以上の基本方針及び留意点を踏まえ、政府において、個々の地方支分部局の整理合理化の具体策を早急に検討し、実施に移すべきである。

4 組織の整理・簡素化、定員の削減

減量、効率化方策の実施に対応し、かつ、省庁の大括り再編成の実施にともない、以下により組織の整理・簡素化、定員の削減を進めるべきである。

(1) 組織の整理・簡素化

@ 本省内部部局

ア 省庁再編に当たっては、単に機械的な官房等の統合にとどまらず、新たな任務や機能に従い、内部部局を機能的・総合的に編成することとなる。官民の役割分担を明確にし、地方分権と徹底した規制緩和を車の両輪に、大括りによる合理化効果も加えて、官房及び局の総数を大幅に縮減し、現在の総数128をなるべく90 に近い水準にまで削減する。
また、官房及び局の総数の縮減と併行して、各省庁内部部局の課・室についても、大幅にスリム化する。
まず、省庁再編時において、再編に伴う業務の見直しや小規模な課の大括り化等により、1,200近くある課・室を15%程度削減し、1,000程度とする。
さらに、民営化、独立行政法人化、規制緩和、地方分権等の進展に応じ、省庁再編後5年で10%程度を縮減することを目標に、最終的には、900(23%程度減)に近づけるよう努力する。
イ なお、外局については、V―3―(2)に述べるとおり、政策立案機能と実施機能の分離という基本的な考え方に立って、実施庁としてその活用を図ることとなるが、もとより、これによる組織の肥大化は抑制すべきものである。
また、現行外局で存置されるものにあっては、本報告で指摘した業務の見直し等を着実に進めるほか、その内部組織の整理・簡素化を、上記アの一環として進める。さらに、実施機能を主体とする外局にあっては、V―3―(2)―@―オにより、合理化目標の設定などを行い、その着実な実施を図る。

A 施設等機関、地方支分部局

上記2の(3)及び3の(3)に従い、施設等機関及び地方支分部局の組織を大幅に整理・簡素化する。

(2) 定員の削減

省庁の再編と事務・事業の減量、効率化方策の実施に対応し、定員の大幅な削減を進める。これに当たっては、新規採用や増員の抑制、退職者の不補充などを通じて、国家公務員の雇用に不安を与えることのないよう進める。
省庁再編の開始年である2001年(平成13年)には、総定員法を改正し、新たな定員削減計画を策定する。この計画においては、最初の10年間で少なくとも10%、できればそれを超える削減を実現する。


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