V 新たな中央省庁の在り方


1 基本的な考え方

中央省庁の再編を中心とする今回の行政改革の基本的な目的は、制度疲労に陥りつつある戦後型行政システムから、21世紀にふさわしい新たな行政システムへ転換していくことにある。

欧米先進国へのキャッチアップを課題とした時期に形作られた現行制度は、今日にあっては、その総合性、機動性、効率性、透明性、国際性等の各側面において様々な機能不全を生じている。

その背景には、各種の社会経済的要因が複合的に存在していることは言うまでもないが、改革を進めるに当たっては、
○ 行政の責任領域の肥大化と重点領域への取組みの遅れ、
○ 政策の企画と事業の実施の渾然一体化に起因する企画・実施双方の機能の硬直化、
○ 客観的政策評価機能の欠如
といった問題点の解決が焦点とならなければならない。

(1) 国の果たすべき役割の見直し

@ 21世紀の日本にふさわしい行政組織を構築するには、まず、国家行政の機能とその責任領域を徹底的に見直すことが前提となる。「官から民へ」、「国から地方へ」という原則がその基本とならねばならない。規制緩和や地方分権、官民の役割分担を徹底し、民間や地方にゆだねられるものは可能な限りこれにゆだね、行政のスリム化・重点化を積極的に進める必要がある。
今日、公共性の空間は、もはや中央の官の独占物ではなく、地域社会や市場も含め、広く社会全体がその機能を分担していくとの価値観への転換が求められている。

A 具体的には、国の行政の果たすべき役割を、以下のような観点で見直す必要がある。(詳細は後掲「W 行政機能の減量(アウトソーシング)、効率化等」参照)

ア 官民の役割分担
国の事務・事業は、官民の役割分担の適正化の観点から、行政改革委員会の「行政関与の在り方に関する基準」を基本とし、民間でできるものは民間にゆだねる、市場原理と自己責任原則にのっとり、民間活動の補完に徹する、との基本的な考え方をとるべきである。具体的には、社会情勢変化などにより存続意義の失われた事務・事業からの撤退、自立的精神と自己責任の原則の下での過度な行政の関与の廃止、特定産業の保護・育成行政からの撤退、所得再配分事業の限定などに努めなければならない。

イ 国と地方の役割分担
国と地方の役割分担の観点から、地方分権を推進し、国の事務・事業は、国家の存立に直接かかわる事務、全国的に統一されていることが望ましい基本ルールの制定、真に全国的規模・視点で行われることが必要な施策・事業に純化すべきであり、地域行政は、基本的に地方公共団体の手にゆだねられるべきである。
具体的には、機関委任事務の廃止、国から地方への権限委譲、国の関与や必置規制の廃止・縮小、補助金の整理・縮小、地方財政の自立性の強化などに努めなければならない。

B さらに、行政の在り方全体を、内外環境の変化に対応したものとすることが必要である。

ア 国際社会・経済情勢の環境変化、経済社会のグローバル化の進展の中で、わが国のみが国際的なルールや基準と離れ、独自の官民関係や行政システムを維持することは許されない。わが国の経済社会のシステムを国際的に通用するようなシステムとしていくとともに、自由経済社会や地球社会の一員として、国際社会の平和の維持、国際的なシステムやルール作り、地球規模の問題解決などに主体的な役割を積極的に果たすことが求められている。

イ また、価値観の多様化と国際化の進展の中で、行政の役割は、従来のように単一の目標の下に、官民、国・地方をあげてそれに取り組むというものではなく、時代時代で重要と考えられる行政の課題を遂行する上で、国民に対して、多元的なビジョン、政策の選択肢を提示する役割を果たしていくべきである。

C 新たな中央省庁の在り方は、このような国の果たすべき役割の見直しの上に立って見定められる必要があり、これに当たっては、国の行政として担うべき機能とともに、制度、政策の在り方も大きく見直される必要がある。
以下、本章においては、新たな中央省庁の再編の姿を中心に検討するが、その一環として、併せて、その機能や政策・制度の見直しも進める。
なお、特に機能の見直しに関連しては、行政の減量(アウトソーシング)、効率化に関する方策が重要となるが、これについては後掲Wによるところとする。

(2) 政策の企画立案機能と実施機能の分離

@ 新たな中央省庁には、政策の企画立案機能の高度化と、公正・中立・透明な行政の確保、国民のニーズに即した効率的な行政サービスの提供が求められる。政策立案機能と実施の機能とは、一面において密接な関係をもつものであるが、両者にはそれぞれ異なる機能的な特性があり、両者が渾然一体として行われていることは、かえって本来それらが発揮すべき特性を失わせ、機能不全と結果としての行政の肥大化を招いている。新しい行政組織の編成に当たっては、政策立案機能と実施機能の分離を基本とし、それぞれの機能の高度化を図ることとすべきである。

A 具体的には、政策立案機能と実施機能の組織的分離によって、次のような改革を進める必要がある。

ア 異なる機能特性に応じた組織の編成、管理
それぞれの機能特性に応じ、最適な組織編成を行う。

イ 政策立案部門と実施部門の責任分担の明確化
渾然一体となっている政策立案機能と実施機能を組織的に分離し、それぞれの部門の役割と責任の分担関係を明確化する。

ウ 高い視点と広い視野からの政策立案機能の確立
○ 政策立案部門の実施上の責任の負担を軽減し、政策立案に専念できるようにする。
○ 政策立案部門が実施部門との距離を保ち、実施部門の利害にとらわれない高い視点と広い視野からの企画立案ができるようにする。

エ 公正、中立、透明な行政執行と効率的で国民のニーズへの即応を重視した行政サービスの提供を確保できる実施機能の確立
○ 実施に関する明確な権限付与により、責任の明確化を図る。
○ ルール、政策実施基準等の明確化を図る。
○ 実施事務の性格に応じた行政サービスの質の向上を目指す。

B 以上の考え方の下に、新しい中央省庁にあっては、政策の企画立案機能は主として本省に、実施機能については可能な限り外局、独立行政法人等の組織に分離することとする。

(3) 政策立案部門と実施部門の連携と政策評価

@ 政策の企画立案部門と実施部門は、もとより緊密な連携関係の下におかれなければならない。政策立案過程への実施段階の情報の提供や問題点の反映が不可欠であり、一方、実施部門においては、政策の企画立案過程における意図と目的が十分に伝えられ、的確な行政の実施が図られなければならない。
このため、両者の責任関係の明確化の上に立って、両部門間の十分な意思疎通を確保するとともに、必要な人事交流が図られるべきである。

A 同時に、政策は、その効果が常に点検され、不断の見直しや改善が加えられていくことが重要である。実施過程における効果の検証も欠かせない。政策の評価体制を確立し、合理的で的確な評価を進め、その結果を迅速かつ適切に反映させていく仕組みと体制が重要である。もとより、これに当たって、情報の公開が不可欠であることは言うまでもない。

2 省の編成

(1) 基本的な方針
以上の基本的な考え方に基づき、本省を政策の企画立案機能に重点化し、新たな省庁編成に当たっては、以下の原則によることとする。

@ 目的別省編成
取り組むべき重要政策課題、行政目的・任務を軸に再編し、事務の共通性・類似性にも配慮することとする。

A 大括り編成
高い視点と広い視野からの政策立案機能を発揮させ、縦割り行政の弊害を排除するため、行政目的に照らし、可能な限り総合性、包括性をもったまとまりとして、大括りの編成とする。

B 利益相反性への考慮
基本的な政策目的や価値体系の対立は、極力同一省庁内にもち込まず外部化し、政策立案が恣意的となったり、大きな価値対立の調整が内部化し不透明に行われることを防止する。

C 省間バランス
各省間の健全な政策論議を確保するため、事務のまとまりに着目する場合にあっても、省の大きさや省間の力のバランス(予算、権限等)の確保について留意する。

D 省間の相互調整(省の目的・任務に即した相互調整)
目的別省編成とすることに伴い、新たな省は、その省が追求する行政目的・価値について、他の省との間で積極的な調整を進めるべきこととなる。
省間の調整については、後掲4において詳述するが、この新たな省間調整システムにより、各行政目的において中心となる省が、関係省と第一次的な調整を主体的に行うことを基本とする。
もとより、内閣総理大臣及び内閣官房の強力なリーダーシップはこの前提であり、内閣として、必要に応じ、省間調整に先立ち具体的な指示を与え、省間で決着のつかない事項について裁定を行うことは言うまでもない。

(2) 行政組織の編成の柔軟化

内外情勢の変化や行政需要・政策課題の変化に応じ、行政組織編成を柔軟に改組できるような工夫が必要と考えられる。このため、組織編成を固定的なものと考えることなく、状況の変化に応じ、臨機応変に対応できるような仕組みを今後検討する必要がある。
また、省の内部組織にあっても、その編成は可能な限り弾力的なものとし、多様な展開を可能とすべきである。

(3) 具体的編成

本会議においては、21世紀において国家行政が担うべき機能は何かを明らかにした上で、それに基づき省庁再編案の検討を行ってきた。
この国家機能論については、橋本総理による国家機能の四分類、

すなわち、
T 国家の存続
U 国富の確保・拡大
V 国民生活の保障・向上
W 教育や国民文化の継承・醸成
を出発点とし、

21世紀の主要行政課題として、
T 国際社会の平和と繁栄への貢献、国家主権の確保
U わが国の平和・安全秩序の維持・確保
V 健全な財政の確保、通貨の安定、金融秩序維持
W 産業競争基盤の維持・向上による強靱な経済の形成
X 国土の整備・開発・利用・保全
Y 食料・エネルギーの安定供給の確保
Z 環境の保全と自然保護
[ 少子高齢社会における国民生活・福祉の向上
\ 創造的な人材の育成と先端科学技術、学術や文化の振興

等を認識した上で、

国家行政機能・目的の再分類を行い、これをもとに、中央省庁を行政機能・目的別に編成することとし、諸機能の間の共通性、相反性をも考慮して、中間報告に規定した省庁再編案の合意に至った。

中間報告後、本会議では、さらに同再編案に基づき、新たな省庁の名称、主たる任務・行政目的、行政機能、他省事務との関係整理、実施事務の分離・効率化等の精査を行うとともに、再度組織編成上必要な議論を行い、与党における議論をも踏まえつつ、以下の編成案につき合意を見た。

なお、今回の報告においては、各省の基本的な任務・行政機能を規定することとし、局等の詳細な内部組織まで具体化することは避けることとした。これは、時間的制約があったことにもよるが、同時に、今回の省庁再編が国家行政組織の基本的な変更を伴うことにかんがみ、ともすれば、現行省庁の事務・権限の分担を前提とした論議に陥り、議論の枠組みが現状維持的・技術的なものとなることを懸念したからである。各省の内部組織の在り方については、今回の報告の全体を踏まえ、今後、政府において、精査を行うべきである。

< 省庁編成案 > (注)省庁等の並べ方は、とりあえずのものである。

@ 総務省

ア 任務・行政目的
○ 内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制の強化の一環として位置付け
○ 行政の基本的な制度の管理運営、地方自治制度の管理運営、電気通信・放送行政、郵政事業、及び固有の行政目的の実現を任務とした特定の省で行うことを適当としない特段の理由がある事務を遂行

イ 主要な行政機能
○ 行政の組織及び運営の管理、人事管理、行政評価・監視(行政監察)、地方自治制度(地方行政、税財政)、選挙制度、電気通信・放送行政、郵政事業の企画立案及び管理、恩給行政、統計行政(他の省に属するものを除く。)など。
○ 郵政事業、消防行政、公正取引行政、公害等調整

ウ 機能・政策の在り方の見直し
a 人事管理機能
(後掲X―3―(3)参照)
b 行政評価・監視機能(行政監察)
○ 現在の総務庁における行政監察機能を引き継ぎ、さらに充実を図るものとする。この場合において、各省の評価部門との連携、客観的で公正な評価方法の確立、評価の迅速化と結果の公開、評価結果の政策立案部門への適切なフィードバック、調査対象の拡充と権限の明確化など、評価・監視機能の十全な発揮のための工夫を行う。
○ 公共事業における費用対効果分析の重要性にかんがみ、その仕組みの確立と実効性確保について、行政評価・監察機能を活用する。
○ 独立行政法人に関する評価委員会を設置する。
(後掲W―2―(2)―A―カ参照)
c 統計行政
○統計の総合調整
・ 統計に関する総合調整機能は、総務省の内部部局において行う。
・ 統計行政の重複は、統計の総合調整を行う部局が指導性を発揮して是正する。また、各省の利用にとどまっている調査結果の共有化を推進する。
○統計の実施
統計行政については、各種統計が各省の専門的な企画立案のリソースとなっていることを十分認識した上で、大規模統計(センサス)についてはその専門性を踏まえ、それ以外の統計は各省が企画及び実施を行うことを前提として、必要な一元化を行う。
○その他
現行の総務庁統計センターの事務及びその他の省庁が行っている統計事務について、可能な限り民間委託を進める。

エ 国の地方自治に関する行政機能の在り方
地方自治は、憲法上位置付けられた国の根幹を形作る基本的な制度であり、これを確立し、維持することは重要な国の役割である。
ただし、地方分権の推進に伴い、地方自治に関する国の地方に対する機能は縮小するという基本的な考え方の確認が必要である。
この観点から、以下の考え方に従い、国の地方自治に関する行政機能の在り方を見直すこととするが、これに当たっては、地方分権は未だその本格的推進の途上にあることから、その推進の状況を踏まえつつ、中期的な観点にも立ってこれを進める必要がある。
a 考え方
ア) 地方分権の推進には相当のエネルギーを必要とするが、そのために地方自治に関する国の地方に対する機能が固定化・肥大化することがないよう、十分なチェックが必要である。この観点から、各省の行政の内容の見直しと併せ、地方自治に関する国の行政機能の見直しが必要である。
イ) 地方分権により自立性の高まった地方公共団体と国との調整機能の充実については、地方分権推進委員会の勧告にある係争処理機構を整備し、対等・透明な関係の中で調整の充実を図ることが基本となる。
ウ) 地方公共団体の「駆け込み寺」としての国の機能については、地方分権はこのような機能の必要性をなくするためにこそ進められているのであり、地方公共団体が各省と直接調整することが原則となるべきである。仮にそのような機能が残るとしても限定的・例外的なものである。
エ) 地方自治制度の企画・立案機能については、国の基本的な制度を形作るものとして当然必要なものであるが、地方分権が地域住民の自己決定権の拡充を図るものであることを踏まえると、このことをもって地方公共団体への関与が正当化されるものではなく、制度の管理を行う立場から、国と地方公共団体の間の調整、チェックアンドバランスの確保等に限定されるべきものである。
b 具体的見直し
以上の考え方の下に、国の地方自治に関する行政機能の在り方について、以下のとおり見直す。
○地方行政関係
・ 地方公共団体の組織運営に関する事務については、基本的に地方公共団体の自主性にゆだね、広域行政制度の整備等、必要最小限のものにとどめる。
・ 現行の自治省の地域振興に関する事務については、基本的に地方公共団体の創意工夫を尊重した政策的取組みを行うこととし、国の役割は必要最小限のものとする。
○地方財政・地方税制関係
・ 地方公共団体の歳入・歳出に関する個別の関与については、財政破綻団体等に関するものを除き、基本的に地方公共団体の自主性を尊重する観点から必要最小限のものとする。
・ 地方税制については、地方公共団体の課税自主権を尊重し、個別の関与については必要最小限のものとする。
・ 地方公共団体間の財政調整については、税源偏在を是正し、標準的な行政水準を確保するというその本来の目的に照らし必要な範囲に限定し、その算定事務についても一層の簡素化・透明化を進める。
○地方公共団体への出向
・ 地方公共団体への出向については、その恒久化、ポストの固定化を排除し、国と地方公共団体の相互性・対等性を確保する。

オ 電気通信・放送行政
現行の郵政省の通信政策局、電気通信局及び放送行政局は、2局に再編し、総務省の内部部局とする。
なお、これに伴い、現行の郵政省と通商産業省との分担は、変更せず、総務省及び経済産業省に引き継がれるものとする。

カ 郵政事業
総務省に、郵政三事業に係る企画立案及び管理を所掌する内部部局として郵政企画管理局(仮称)を置き、同事業の実施事務を所掌する外局(実施庁)として郵政事業庁を置く。郵政事業庁は、5年後に新たな公社(郵政公社)に移行する。(後掲W―2―(1)―A参照)

キ 外局
a 郵政事業庁
郵便事業、郵便貯金事業・郵便為替事業・郵便振替事業、及び簡易生命保険事業等の実施。5年後に新たな郵政公社に移行する。
b 消防庁
・ 現行の消防庁を継続する。
・ 消防制度の企画立案事務及び全国的見地から広域的に対応する必要のある事務に、その機能を集中させる。
・ 個別地方公共団体に対する関与や補助については、真に必要がある範囲にとどめる。検査、検定、安全規制については、社会的規制として必要最小限のものとする等の規制緩和や、大幅な民間能力活用を進める。
c 公正取引委員会
・ 現行の公正取引委員会を継続する。
・ 独占禁止法の厳正な執行確保の重要性にかんがみ、審査体制等の充実を図る。
d 公害等調整委員会
現行の公害等調整委員会を継続する。

ク その他
日本学術会議は、当面総務省に存置することとするが、今後その在り方について、総合科学技術会議で検討する。

A 法務省

ア 任務・行政目的
基本法制の維持・整備、法秩序の維持、国民の権利擁護など

イ 主要な行政機能
司法制度、民事行政(国籍、戸籍、登記、供託)、刑事・民事法の立案、検察、矯正、更生保護、国の利害に関係する争訟、人権擁護、出入国管理、公安調査など

ウ 機能・政策の在り方の見直し
○ 人権擁護行政の充実・強化
○ 公安調査について、破壊活動防止法を含め、その在り方の見直し
○ 行政審判機能を含め、司法制度改革への支援

エ 他省事務との関係
○ 出入国管理機関と他のボーダーコントロール機関との密接な連携の確保

オ 外局
a 司法試験管理委員会
現行の司法試験管理委員会を継続する。
b 公安審査委員会
現行の公安審査委員会を継続する。
c 公安調査庁
公安調査庁については、憲法秩序維持のための団体規制機能の必要性は認めつつ、内外の情勢変化に対応して組織のスリム化を図るとともに、相当数のマンパワーを在外における情報収集活動の強化、内閣における情報機能の充実に充てる。なお、団体規制の実効性確保など現行の公安調査庁の機能の見直しを含め、今後、政府において具体的に検討を行う。

B 外務省

ア 任務・行政目的
国際社会の平和秩序維持、良好な国際環境の主体的形成、国際社会における国益の追求と調和ある対外関係の維持・発展など

イ 主要な行政機能
安全保障政策、対外経済政策、経済協力政策、国際交流政策など外交政策

ウ 機能・政策の在り方の見直し
○ 総合的な外交戦略策定機能の充実・強化
○ 情報収集・分析・ブリーフィング機能の充実・強化
○ グローバルなルール作りへの主体的参画
○ よりきめ細かな地域政策対応
○ 経済協力(開発援助)のより効果的・効率的な推進、民間人材の活用

エ 他省事務との関係
a 経済協力(開発援助)
○ 被援助国に対する総合的な戦略など、経済協力に関する全体的な企画については、外務省がコアとなって総合調整を行う。
○ 有償資金協力(円借款)の企画立案機能については、外務省をコアとし、総合調整を行う。なお、OECF(海外経済協力基金)と日本輸出入銀行は統合が予定されているが、その場合にあっては、両者の経理等を区分し、OECFについては、外務省が中心となり関係省との関係を緊密化する。日本輸出入銀行については、従来どおり財務省が担当するが、外務省等との関係を緊密化することとする。
○ 技術協力に関する企画立案機能については、外務省がコアとなって一元的に総合調整を行う。ただし、留学生関係については、教育科学技術省の主導性を確保する。
○ 技術協力の実施については、JICA(国際協力事業団)を中心とするが、各省庁は、JICAと緊密な連携・協力を行う。
○ 国際機関を通じた協力は、現行の体制を基本としつつ、財務省等と外務省との連携を緊密化する。
b 対外経済政策については、通商政策機能等を担う各省との人事交流など、協力体制の充実と役割分担の明確化を図る。
c 国際文化交流については、教育科学技術省との連携をさらに緊密化し、文化庁がより重要な役割を果たす。
d 安全保障については、外交政策と防衛政策を始めとした各省政策との密接な連携を確保することにより、総合的な安全保障政策の構築を目指す。

オ 内部部局等
○ 現行地域局については、それぞれ今後の役割の重要性にかんがみ、適切な分担に再編し、よりきめ細かな地域政策対応を可能とする。
○ 大使・公使への外部人材の積極的登用を推進する。

C 財務省

ア 任務・行政目的
・ 健全な財政の確保、通貨制度、為替の安定確保など
・ 金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案については、今後検討。

イ 主要な行政機能
・ 予算・決算、税制、国庫・通貨制度、財政投融資、国有財産管理、国際金融・為替管理など
・ 金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案については、今後検討。

ウ 機能・政策の在り方の見直し
a 財政構造改革の推進
b 金融制度改革の推進
○ 「金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案」については、今後検討。
○ 行政の関与は、基本的に市場の自主性・自律性にゆだねるものとし、行政の関与は必要最小限のものに限る。
c 財政投融資制度の改革
財政投融資制度を抜本的に改革する。郵便貯金等の資金運用部への預託を廃止するとともに、既往の貸付けの資金繰りに配慮しつつ、資金調達は市場原理にのっとったものとし、新たな機能にふさわしい仕組みを構築する。

エ 他省事務との関係
税関と他のボーダーコントロール機関との密接な連携を確保する。

オ 内部部局
財政投融資制度の抜本的改革及び国有財産管理事務のアウトソーシングに伴い、これら担当部門(現行の理財局)の整理等内部組織を見直す。

カ 外局
a 国税庁
○ 当面、現行の国税庁を継続する。
○ 徴税における中立性・公正性の確保を図るため、税制の簡素化を進めるとともに、いわゆる通達行政は縮減する。必要な通達については、国民にわかりやすい形で公表する。
○ 国・地方を通ずる徴税の一元化については、地方自治との関係、国・地方を通ずる税制の在り方を踏まえ、今後検討する。
○ 国税庁の人事については、幹部職員への内部登用を拡充し、その独立性を確保する。

D 経済産業省

ア 任務・行政目的
民間経済の活性化、対外経済関係の円滑な発展を中核とした経済・産業の発展、エネルギー(原子力を含む)の安定的・効率的供給の確保など

イ 主要な行政機能
通商・貿易政策、産業政策(産業構造政策、産業組織政策)、経済取引ルールの整備、中小企業政策、エネルギー政策、技術開発、工業所有権保護、産業保安など
(注)情報通信に関し、現行の通商産業省と郵政省との分担は、変更せず、経済産業省及び総務省に引き継がれるものとする。

ウ 機能・政策の在り方の見直し
a 経済構造改革の推進
b 産業政策
○ 個別産業振興的施策、産業間所得再配分的施策の撤退・縮小と市場原理の尊重
○ 市場ルールの策定・整備や知的財産権保護、技術開発といった業種横断的政策への重点化、円滑な産業構造転換の推進
c 通商・貿易政策
○ 新たな国際経済秩序の形成への積極的貢献(地域・多国間スキームの形成)
○ 国際的な産業調整の展開
d 中小企業政策
中小企業保護的行政・団体支援的行政の縮小、地域の役割の強化、新規産業創出環境の整備への重点化
e 地域振興施策
地域の役割の強化、国の関与の縮小
f エネルギー政策
○ 省エネルギー・新エネルギー施策への重点的な取組み
○ 事業者の需給調整的規制の大幅な撤廃・緩和
○ 危機管理的政策、環境政策との連携の強化
○ 原子力の開発利用に関する適切な方向付け
g 技術開発
 国家的見地から戦略的重要性のあるものに重点化

エ 他省事務との関係
a マクロ経済政策については、経済財政諮問会議が担当するが、経済産業省は、産業政策、経済構造改革、民間経済の活力維持・強化を図る観点から、必要な企画立案に参画する。
b 独禁政策を中心とした競争政策については、産業政策とは利益相反関係にあり、産業政策当局には包摂しない。
c 大規模プロジェクト等技術開発については、主として商業化・実用化に向けた技術開発を経済産業省が担当するものとし、主として学術研究及び科学技術に関するものは、教育科学技術省が担当する。
d エネルギー利用関係の原子力に関する技術開発は経済産業省が担当するものとし、原子力の学術研究及び科学技術に関するものは、教育科学技術省が担当する。
e エネルギー利用関係の原子力安全規制は、一次的には経済産業省が担当し、二次チェックについては、現行のシステムを維持することとし、原子力安全委員会による。

オ 内部部局
産業政策の転換を踏まえ、個別産業振興担当部門(現行の基礎産業局及び生活産業局)の整理等内部組織を見直す。

カ 外局
a 資源エネルギー庁
現行の資源エネルギー庁を継続する。
b 特許庁
現行の特許庁を継続する。
c 中小企業庁
現行の中小企業庁を継続する。

E 国土交通省

ア 任務・行政目的
国土の総合的、体系的な開発・利用、そのための社会資本の整合的な整備など(現行の建設省、運輸省、国土庁及び北海道開発庁を母体に設置)

イ 主要な行政機能
国土計画、都市整備、住宅・土地、治水・水利、公共施設整備・管理(道路、鉄道、空港、港湾等)、北海道開発、運輸事業、安全規制、海上保安、気象、観光など

ウ 機能・政策の在り方の見直し
○ 総合的な国土形成に向けた体系的な取組みの推進
○ 社会資本整備の整合的・効率的な推進(後掲W−3−(2)参照)
○ 社会資本整備に関する地方の主体性強化、国の役割の見直し(後掲W−3−(2)参照)
○ ハード・ソフトの両面からの総合的な交通体系整備
○ 運輸事業関連行政における需給調整規制の撤廃、市場原理の徹底による行政関与の大幅な縮小
○ 航空管制業務の機器整備等における民間能力の活用

エ 他省事務との関係
○ 社会資本の総合的な整備計画については、経済財政諮問会議の議を経るものとする。
○ 北海道開発行政は、国土交通省が現行の北海道開発庁の任務、機能を継承し、関係予算の一括計上を行う。この場合にあって、農林水産省への予算の移し替えや北海道開発局に対する指導監督は従来と同様とする。
○ 交通安全行政について、各省横断的調整のコア機能を担う。
○ 船員労働行政を担う。

オ 本省及び地方支分部局
国土交通本省は、原則として企画立案、総合調整業務を行い、公共事業等の事業実施については、徹底的な地方分権、民間能力活用を図る。この一環として現行の建設省地方建設局、運輸省港湾建設局等をブロックごとに統合し、当該地方支分部局に予算の一括計上、公共事業の執行権等を与える。現行の北海道開発庁の北海道開発局は、この考え方に立ち、国土交通省に置き、引き続き現行どおり予算の一括計上を行う。

カ 事務・権限の分権化・分散化
機能の集中に伴う関連事務・権限の肥大化の懸念を払拭し、かつ、効率的で透明な事務・事業の執行を確保するため、徹底した規制緩和を図った上で、以下のように、地方公共団体への権限の大幅委譲、公共事業の実施に関する事務の地方支分部局への全面委任を進める。(後掲W−3−(2)参照)
a 地方公共団体への権限の委譲
国土交通省行政の全般にわたり、地方分権推進委員会の勧告を着実に実施するとともに、さらに、地方への権限の委譲、国の関与の縮減等を積極的に進める。
b 地方支分部局への権限の委任
国土交通省のブロック単位の地方支分部局として、国土の整備・管理に係る事務を実施する「地方整備局(仮称)」を設置する。
同局に予算の一括計上、公共事業の執行権等を与えるとともに、地方計画等の策定に必要な調査及び計画案の調整、直轄施設の管理と災害予防・復旧対策及び国土整備に係る許可・認可等の事務を行わせる。
c 民間委託の推進及び事業実施の透明化、客観的評価の徹底等
直轄事業について、今後さらに事務の効率を高める観点から、民間委託を徹底するとともに、事業実施に係る透明性を確保するため、入札・契約制度のさらなる改善、整備プログラムの策定・公表、客観的評価に基づく事業の策定・公表、事業の事前、事後の評価システムの充実等を推進する。

キ 外局
○ 船員労働委員会
現行の船員労働委員会を継続する。
○ 海上保安庁
現行の海上保安庁を継続する。
○ 海難審判庁
現行の海難審判庁を継続する。
○ 気象庁
・ 現行の気象庁を継続する。
・ 気象庁が行う天気予報等の社会経済活動に必要な気象情報の提供(無償)の範囲は、公的な責任として必要なものに限定する。
・ 民間気象業者に対する規制(気象予報業務の許可、気象予報士の業務独占、気象測器の検定等)については、社会に対し広範な影響を及ぼすものに限定するなど必要最小限のものとし、規制緩和を進める。また検定等については、民間の主体性にゆだねる。

ク 特別の機関
現行の国土庁の小笠原総合事務所は、国土交通省に置き、その機能を継続する。

F 農林水産省

ア 任務・行政目的
食料の安定供給の確保、農村・中山間地域等の振興、森林の保護・育成など

イ 主要な行政機能
食料生産・輸入・備蓄、食料加工・流通・消費、農村・中山間地域等の振興、水産、森林・治山など

ウ 機能・政策の在り方の見直し
○ 食料安定供給確保の観点からの国・地方・生産者の役割分担の明確化
○ 農業生産、流通加工、農村・中山間地域対策等における地方の役割の拡大、地方分権の徹底
○ 政策運営における消費者・原料需要者の視点の重視
○ 高生産性農業実現のための農業構造改善の推進
○ 自由で効率的な経営展開を可能とする施策の推進と、生産者所得保障政策への転換の検討
○ 国土・環境保全、景観保全等の農林水産業のもつ多面的機能の位置付けの明確化
○ 農業関係公共事業の事業内容の重点化、事業の効率化、地方の主体性の強化(後掲W−3−(2) 参照)
・ 事業内容を精査し、国が自ら実施し、又は補助を行う必要がある事業等(種類、内容)を見直す。
・ 国・地方の役割分担、本省・地方支分部局の間の事務・権限配分の見直し、効率化等を図る。
○ 農林統計調査の実施における地方及び民間能力の大幅活用

エ 他省事務との関係
○ 森林行政において、環境行政との緊密な連携を確保する。
○ 食品行政において、労働福祉省との間の責任分担を明確化するとともに、緊密な連携を確保する。
○ 構造改善事業(公共事業関係)については、真に食料の安定供給に資するものに限り、必要やむを得ず整備するものについては国土交通省との相互協議を通じ、その整合的な実施を図る。
○ 農村・中山間地域等の振興において、インターエージェンシーの活用等により、他省行政との総合性を確保する。
○ 動植物検疫機関と他のボーダーコントロール機関との密接な連携を確保する。

オ 外局
○ 食糧庁
現行の食糧庁を継続する。
○ 林野庁
現行の林野庁を継続する。
○ 水産庁
現行の水産庁を継続する。

G 環境省

ア 任務・行政目的
人間にとって良好な環境の創出と保全など

イ 主要な行政機能
○ 自然環境保全(国立公園等を含む)、地球環境保全、公害防止、廃棄物対策など
○ 環境行政に関する環境省の所管と関与
a 環境保全を目的とする制度、事務・事業(一元化)
大気・水質・土壌汚染規制、騒音等規制、環境保全のためのモニタリング、公害健康被害の補償等、特定有害廃棄物等の輸出入等規制(貿易管理に関する所管を除く)、野生動植物の種の保存、廃棄物対策など
b 他の目的・機能を有する制度、事務・事業であっても、その目的・機能の一部に環境保全が含まれるもの(共管)(注)
化学物質等の審査製造規制、リサイクル、オゾン層保護、CO2排出抑制、森林保全、公害防止施設・設備整備、工場立地、海洋汚染防止、緑地保全、河川・湖沼、下水道等、放射性物質に関するモニタリング、環境影響評価 など
(注)環境省に係る要素としては、環境面からの基準、指針、方針、計画等の策定、規制等がある。
c 環境省の所管ではない各省所管事務・事業についても、環境保全の見地から関係行政機関に対し、勧告等を行うことが必要なもの
各行政分野

ウ 機能・政策の在り方の見直し
○ 環境行政の立場からの関係行政への調整・連携の強化等を通じた環境行政の総合的展開
○ 地球温暖化防止など環境行政における国際的取組みとその機能・体制の強化

エ 他省事務との関係
○ 環境行政の横断的調整機能を十全に発揮するため、総合科学技術会議と密接に連携する。
○ 省間の第一次的な調整の充実を図るため、インターエージェンシーの積極的活用を図る。
○ 他省事務との関係については、上記イのa、b、cによる。

H 労働福祉省

ア 任務・行政目的
雇用の確保・労働条件の整備と社会保障の向上・増進など

イ 主要な行政機能
労働基準・安全衛生、労使関係調整、職業安定・雇用確保、男女雇用機会均等、職業能力開発、医療供給体制整備、保健医療対策、医薬品安全、麻薬取締、社会福祉・公的扶助、高齢者・障害者保健福祉、児童家庭対策、医療保険、年金、社会保険・労働保険、援護など

ウ 機能・政策の在り方の見直し
a 社会保障構造改革の推進
b 少子高齢社会、男女共同参画社会などに対応した労働政策と社会保障政策との統合・連携強化
c 社会福祉、保健、雇用等における地域の役割の強化
d 福祉サービス分野における民間能力の活用と利用者の選択の拡大
e 公的年金制度の一元化
f 職業紹介事業等の規制緩和による労働市場を通じた需給調整の促進
g 労働環境の変化に対応した労使関係調整行政の見直し・縮小
h 社会保険と労働保険との徴収事務の一元化
i 医薬品安全審査・許可等の体制の在り方
・ 医薬品の安全審査及び許可等については、より透明性、客観性、中立性を高めるべく、体制の見直しを行う。

エ 他省事務との関係
○ 少子高齢社会への総合的対応に関する横断的調整のコアとなる。
○ 薬事、公衆・食品衛生、水道に関する行政は、労働福祉省が担当する。
○ 保育所及び幼稚園は、両施設及びその運営の総合性を確保する。教育科学技術省との共管とする。
○ 検疫機関と他のボーダーコントロール機関の密接な連携を確保する。

オ 外局
a 社会保険庁
現行の社会保険庁を継続する。
b 中央労働委員会
現行の中央労働委員会を継続する。

I 教育科学技術省

ア 任務・行政目的
創造的な人材の健全な育成、学術・文化の振興、科学技術の総合的な振興など

イ 主要な行政機能
生涯学習、初等・中等・高等教育、学術、体育・スポーツ、文化、科学技術振興など

ウ 機能・政策の在り方の見直し
a 教育改革の推進
b 学術・科学技術行政に関する総合的・戦略的取組みの強化
c 高等教育の改革
d 初等中等教育行政の改革(能力主義の導入、教育の多様化、地方の自主性尊重など)
e 生涯学習の推進
f 国立大学の自律的、主体的な組織・運営体制の整備、各大学の自己責任体制及び評価制度の確立
g 大学行政・科学技術行政の統合による、学術・科学技術研究の調和、総合性の確保
h 文化行政の機能の充実

エ 他省事務との関係
a 国際文化交流については、外務省との連携をさらに緊密化し、文化庁がより重要な役割を果たす。
b 幼稚園及び保育所は、両施設及びその運営の総合性を確保する。労働福祉省との共管とする。
c 青少年健全育成行政については、専ら関係省庁の総合調整に関する事務は内閣府(企画・調整部門)が担い、現行の総務庁が担っているその他の事務は教育科学技術省が担うものとする。

オ 外局
文化庁
現行の文化庁を継続する。

3 内部部局及び外局

(1) 内部部局

@ 本省は主として政策の企画立案機能を担うことから、機動的、戦略的な意思決定が可能な機能的な組織とするとともに、評価機能の確立を図る。

A 本省の内部部局として、官房及び局を置くこととするが、局の編成に当たっては、新しい省の行政目的・機能に即し、総合的かつ機能的な行政の遂行が可能となるように編成することが必要である。
また、新しい省の本省(内部部局)においては、基本的に、政策立案業務を担当することから、できる限り、課は廃止し、状況に応じて担当業務を変更できるスタッフ制(いわゆる「分掌官」)を導入する。

B 省ごとの内部部局の編成に当たっては、現行の省の組織編成を単純に合体させることなく、また、省ごとの局数についても、大規模な省にあっても基本としては、10を超えることがないことを目標とすべきである。

(2) 外局

@ 類型と制度設計

ア 類型
外局については、政策立案機能と実施機能の分離という基本的な考え方に立って、次のように組織類型を区分することとする。

a 準省(仮称)
○ 省に準ずる組織とし、内閣総理大臣を主任の大臣とするが、それぞれの組織に長たる国務大臣を置く。
○ 政策立案機能及び実施機能を併せもち、その傘下に、必要に応じ、省と同様に、実施庁等の組織を置くことができる。

b 実施庁(仮称)・行政委員会
府・省の傘下に置かれ、政策立案機能と実施機能の分離の観点から、実施機能を主として担う。
ア) 実施庁
主に実施事務を行うものであって、一定の事務量のまとまりのある組織
イ) 行政委員会
事務の性質上、公正中立性や専門技術性等を必要とされるものの実施に当たる組織

c 政策庁(仮称)
ア) 省の傘下に置かれる庁は、実施庁とすることを原則とするが、政策立案機能を担う現行の外局のうち、次の諸条件をすべて満たすものについては、例外的に主に政策立案を行う外局(政策庁)として存置する。
a) 担当する事務・事業が、内容・性質面において当該省の他の事務・事業とは明確に区分され、一定のまとまりをもつこと。
b) 政策立案を内局で行わず、当該外局に担わせることについて、他の事務・事業とは異なる特段の必要性があること。
c) 担当する事務・事業の独立行政法人化又は業務の大幅な縮小が行われるものではないこと。
イ) 政策庁について、実施事務を分離することが非効率であると考えられる場合には、実施機能を併せ担うこととするが、実施事務の効率的な運営について十分配慮することとする。

イ 類型に基づく活用
a 以上の区分による類型化を踏まえ、既存の外局を見直すとともに、実施機能の分離の観点から、実施庁の活用を図ることとし、必要に応じ、新たな実施庁及び行政委員会を設けることとする。

b なお、宮内庁については、従来外局として位置付けられてきたが、その業務の性格にかんがみ、内閣府に置く特別な機関として位置付けることとする。

ウ 実施庁における自律性・効率性の確保
実施庁における業務実施の効率化を図り、自律性を高めるため、その制度設計に当たっては、以下の措置を講ずることが必要である。

a 実施庁の長に対する業務実施権限の法律による明確な付与
日常的業務に関する実施権限については、法律により実施庁の長に委任する。この場合、主務大臣は、業務の実施基準その他業務の実施に必要なルールについて明確に定めるとともに、これを公表する。また、主務大臣の監督は、このルール及び b の実績評価の範囲に限定することを基本とする。

b 目標の設定、評価による管理手法の導入
主務大臣は、実施庁が達成すべき目標を定めるとともに、達成目標に照らして、実績を評価し、その結果を公表する。

c 人事の独立性の確立
組織的に分離する趣旨に照らして、外局の長の人事権の独立性を確立する。

d 内部組織の弾力的な編成
現在でも内部の組織編成権(省令レベル未満のもの)は外局の長にあるが、業務の独立性の強化に照らして、その内部組織の編成に当たり、弾力性を高める。

エ 実施庁の総合性の確保
実施庁を編成するに当たっては、省庁の枠にとらわれず、効率性、国民の利便性等を考慮の上、業務・対象の類似・同質性等に着目し、編成することを基本とする。また、担当する業務によっては、複数の大臣から指揮監督を受けることがあり得ることとする。

オ 独立行政法人との関係
外局は、国家行政組織の一部を成すものであり、この点において、独立行政法人とは明確に区別されるものである。
ただし、本来であれば独立行政法人化の検討対象となるものであって、諸般の事情により、当面、実施庁の形態を選択するものについては、合理化目標の設定と達成の義務付け、組織・業務の在り方の見直しの義務付けなど、条件整備を検討することとする。

A 省別の外局

以上の考え方を踏まえ、今回の省庁編成において置くこととされた準省(仮称)、実施庁(仮称)及び政策庁(仮称)を、府・省別に整理すると、次のとおりである。
なお、実施庁及び政策庁にあっては、今後とも、業務のアウトソーシング、政策の企画立案機能と実施機能の分離の観点から、その在り方について、必要に応じ見直していく必要がある。

<準 省>内閣府に置かれる防衛庁、国家公安委員会

【総 務 省】【法 務 省】【財 務 省】【経済産業省】【国土交通省】【労働福祉省】
<実施庁>【内 閣 府】金融監督庁(名称、任務等については、今後検討)
防衛施設庁(防衛庁の外局)
郵政事業庁(5年後に新たな郵政公社に移行)
公安調査庁
国税庁
特許庁
海上保安庁
海難審判庁
気象庁
社会保険庁

【教育科学技術省】
<政策庁>【総 務 省】消防庁
【経済産業省】中小企業庁
資源エネルギー庁
【農林水産省】食糧庁
林野庁
水産庁
文化庁

(3) 行政委員会

@ その性格と機能

行政委員会については、従来、事務の性質上、その処理に当たって、公正中立性や専門技術性等を必要とされるため、内閣から独立した地位にある機関に行わせる必要がある場合に設置されてきたが、今後とも、このような趣旨から、行政委員会を活用することとする。

A 省別の行政委員会

以上の考え方を踏まえ、今回の省庁編成において置くこととされた行政委員会を省別に整理すると、次のとおりである。

【総 務 省】公正取引委員会、公害等調整委員会
【法 務 省】司法試験管理委員会、公安審査委員会
【国土交通省】船員労働委員会
【労働福祉省】中央労働委員会

別途、人事院が内閣の所轄の下に置かれる。


4 新たな省間調整システム

現行法体系下における、各省庁の特定行政分野についての排他的所掌を前提とした分担管理原則は、ややもすれば所掌範囲内の政策の独占と縦割りの硬直性、省庁をまたがる政策課題への対応力の欠如を招いている。また、大括り省編成により、各省がさらに巨大化し、相互の政策連携が現状に比しても不十分になることへの懸念も存在する。

そこで、従来、原則として内閣官房及び総理府外局にのみ存し、実態的には有効に機能していなかった各省間の調整システムについて、次に述べるように、内閣官房による総合調整、内閣府(担当大臣)による総合調整、さらに省間の相互調整という、三類型の調整の組合せによって抜本的に機能強化を図る必要がある。

特に、行政目的別大括り再編成後の新たな省には、担当する行政目的の遂行に照らし必要な分野について各省との調整権を付与するほか、所管外の事務・事業に関しても、当該省の行政目的実現の観点から、互いに意見を述べ、提案を行い得る仕組みを創設することとする。

以上により、異なる行政目的間の開かれた政策論議を促し、政府全体としての政策形成を活性化し、その過程の透明化を実現するとともに、併せて、大括り省における政策調整の内部化や縦割りの弊害の懸念も解消することが可能となる。

(1) 内閣官房による総合調整

@ 国政上の重要事項について、分野、レベルを問わず、内閣としての最高かつ最終の調整プロセスとして位置付けられる。

A 内閣官房は、内閣総理大臣の活動を直接に補佐・支援する組織として、内閣総理大臣の国政に関する基本方針の企画立案及びその推進の任を担う。

B 次項以下の内閣府(担当大臣)による総合調整及び省間の水平調整に対するイニシアティブの発揮、及び調整の最終処理を行う。

C 機動性、柔軟性をもった組織運営を基本とし、部外資源を積極的に活用する。

(2) 内閣府(担当大臣)による総合調整(*)

@ 担当する主たる省を特定することが困難な課題であって、全政府的に調整が必要なものについて、恒常的又は臨時的に政府全体の見地から各省の上に立って総合調整(受動的調整のみならず、企画、積極的発議、調整を含む)を行う。

A 必要な調整課題について担当大臣を置き、当該担当大臣には、内閣総理大臣を補佐し、強力な調整権(提案、資料・報告の徴収、拒否、指示)を付与できるよう措置する。

B 調整の場として、関係閣僚会議その他の調整会議を設置し、計画の策定、推進等を行う。

C 内閣又は内閣総理大臣は、必要に応じ、総合調整内容について報告等を求め、又は指示、承認する。

D 各課題に対応し、必要に応じ内外の人材や情報の積極的な活用を行い、調整の実効を高める。

(*)このレベルの総合調整については、経済財政諮問会議等の活動が含まれる。

(3) 省間調整システム

@ 各省にそれぞれ、その主たる行政目的達成のための調整権を付与する。
A 各省は、内閣、内閣総理大臣若しくは内閣官房の指示又は自らの発意により機動的な調整を行う。この場合にあっては、可能な限り円滑な調整を実現する行政運営慣行の確立が必要である。
B 調整プロセスについては、以下のA〜Dのとおりとする。

C 上記両タイプともに活用する調整の場(インターエージェンシー)

○ 従来から存在する関係閣僚会議、本部、協議会等の省間調整の場については、メンバーを実質的な関与の大きい省に限定することや、サンセット方式の導入により会議の形骸化を防止する。

○ さらに、より迅速かつ実質的な省間協議・調整を制度的に担保するため、以下のような各省調整委員会(インターエージェンシー)の仕組みを活用する。
・内閣官房又は調整省の主導によりメンバーを選定し、公式の調整の場として設定。
・従来の省庁連絡会議に比し、より小規模かつ実質的なものとする。
・基本的にアドホックなものとし、調整が終了した段階で委員会は解散するものとする。

D 情報公開による調整の透明化

以上、A〜Cを通じて、その過程においては、非建設的な権限争いなど、縦割りの弊害を排除するとともに、政策協議の透明性の向上を図るため、情報公開の趣旨に沿い、可能な限り、省間の協議過程を明らかにする。

5 評価機能の充実強化

(1) 評価機能の充実の必要性

@ 従来、わが国の行政においては、法律の制定や予算の獲得等に重点が置かれ、その効果やその後の社会経済情勢の変化に基づき政策を積極的に見直すといった評価機能は軽視されがちであった。

A しかしながら、政策は実施段階で常にその効果が点検され、不断の見直しや改善が加えられていくことが重要であり、そのためには、政策の効果について、事前、事後に、厳正かつ客観的な評価を行い、それを政策立案部門の企画立案作業に反映させる仕組みを充実強化することが必要である。

B また、評価機能の充実は、政策立案部門と実施部門の意思疎通と意見交換を促進するとともに、その過程において政策立案部門、実施部門の双方の政策についての評価や各種情報が開示され、行政の公正・透明化を促す効果があることも忘れてはならない。

(2) 各省における評価機能の強化

@ 政策の企画立案には、政策の効果分析や評価が不可欠なものであり、政策の評価は各省の重要な機能となるべきである。このため、各省の本省組織に、明確な位置付けをもった評価部門を確立すべきである。

A 評価の客観性を確保するため、評価指標の体系化や評価の数値化・計量化など合理的で的確な評価手法を開発していく必要がある。

B 同時に、全政府的な観点から、政策評価の総合性とより厳格な客観性を確保するため、各省における評価機能とは別に、各省を超えた全政府レベルの評価機能の充実強化を図る必要がある。
このためには、現行の行政監察機能の充実強化に加え、民間有識者などを加えた第三者的評価を可能とする仕組みが是非とも必要である。

C なお、実施部門については、目標の設定と達成度評価といった仕組みを導入するが、これは評価機能の充実方策の一環と位置付けることができる。また、実施段階での実情や問題点の把握は、政策評価の一部と考えられ、これらの情報が政策立案部門に適切に提供される必要がある。

(3) 評価結果の公開

@ 政策評価の眼目は、政策に必要な修正を加えるとともに、評価過程を通じて、可能な限り透明に、政策の目的、内容、実現状況、修正の必要性の有無などの議論を明らかにし、幅広く政策選択の在り方についての国民的議論を喚起していくことにある。その意味で、評価機能の的確な発揮に当たっては、評価の迅速化や情報の公開を積極的に進める必要がある。

A 政策評価は、評価が政策に反映されてこそ意味があるものである。政策評価の実効性を確保するためにも、評価結果の政策への反映について、政策立案部門による説明責任を明確化することが必要である。

(4) 会計検査院による評価

評価は、政府部内のそれとともに、政府の部外からもなされることが重要である。
国会におけるその機能が期待されることは当然であるが、会計検査院の果たす役割への期待も大きい。この見地から、国の収入・支出の検査、会計経理の適正化という観点を主体として遂行されてきた同院の機能は、今後、国の施策や事務・事業の効果、効率性、合理性といった観点からの評価も重視していく必要がある。このために、同院の機能の充実強化を図るべきである。

6 審議会等

(1) 改革の基本方針

審議会(国家行政組織法第8条に基づいて設置された審議会等をいう。)や懇談会等行政運営上の会合は、行政の民主化や専門知識の導入において従来一定の役割を果たしてきたが、その数が膨大になり、いわゆる隠れみのになっているのではないかとの批判を招いたり、縦割り行政を助長するなど、その弊害も目立つようになってきている。こうした問題点を解決し、行政責任を明確にするため、従来の審議会等を思い切って整理し、設置は必要最小限にとどめるとともに、その運営の改善を図る。

(2) 具体的措置

以下を基本とし、審議会等の整理合理化を進めることとする。これに際し、別紙1の指針によるものとする。

@  審議会の整理

ア 最近の活動実績に乏しい審議会及び設置の必要性が著しく低下している審議会は基本的に廃止する。

イ 現在各省庁に多数置かれている政策審議、基準作成を行う審議会は原則として廃止するものとする。その設置を必要とする場合にあっては必要最小限のものとし、設置に当たっては、省庁の枠にとらわれることなく総合的なものとする。また、審議事項を具体的に限定するとともに、可能な限り時限を付すものとする。

ウ 不服審査、資格・検定、調停、行政処分等への関与等を行う審議会は、必要性を厳密に検討し、最小限のものに限定する。

A 審議会の運営の改善

ア 審議会の構成と委員の資格要件は、審議会の本来の趣旨・目的に照らし、厳正に定められなければならない。

イ 会議又は議事録は公開することを原則とし、運営の透明性を確保する。

B 懇談会等行政運営上の会合の適正化

懇談会等行政運営上の会合については、安易な設置を厳に抑制するとともに、審議会に準じてその運営の適正化を図る。

(3) パブリック・コメント制度の導入

各省が基本的な政策の立案等を行うに当たって、政策等の趣旨、原案等を公表し、専門家、利害関係人その他広く国民から意見を求め、これを考慮しながら最終的な意思決定を行う、いわゆるパブリック・コメント制度の導入を図るべきである(制度のイメージ等については、別紙2参照)。


別紙1

審議会等の整理・運営等に関する指針

1 審議会の整理の指針
審議会については、以下の基準により整理することとする。

(1) 活動実績の乏しい審議会及び設置の必要性が著しく低下している審議会
@5年以上にわたって委員が選任されていない審議会は廃止する。
A開催回数が著しく少ない(年0〜1回が目安)審議会は原則廃止する。
B社会情勢の変化、規制緩和の推進等により所掌事務の必要性が著しく低下している審議会は廃止する。なお、設置後10年以上を経過した審議会は、重点見直し対象とする。
(2) 政策審議、基準作成を行う審議会
@現在、各省庁に多数置かれているこの種の審議会は原則廃止するものとする。その設置を必要とする場合にあっては必要最小限のものとし、設置に当たっては、省庁の枠にとらわれることなく総合的なものとする。この場合、必要に応じ、審議会に部会等を設置できるものとする。
A@による場合のほかは、特段の必要性がある場合に限り、審議事項を具体的に限定した上で、時限(例えば2年)を付して審議会を設置することができるものとする。
B必要的付議の規定は廃止し、新たに置かないものとする。
C審議会の設置は、政令によることを原則とする。
(3) 不服審査、資格・検定、調停、行政処分等への関与等を行う審議会
@不服審査等を行う審議会は、その審議案件の性質、審議の実態等を踏まえて必要性を見直し、最小限のものに限定する。
A資格・検定、調停等を行う審議会は、特段の必要性があるものに限定するものとする。なお、紛争の当事者が民間のみの調停は扱わないものとする。
B行政処分等への関与を行う審議会は、不利益処分にかかわるものなど特段の必要性があるものに限定する。なお、必要的付議の規定も同様の範囲に限定する。

2 審議会の運営等の改善の指針
審議会については、以下の基準により運営等を改善するものとする。

(1) 資格要件
@審議会の委員は、1)非常勤とし、2)当該審議会の不可欠の構成要素である場合を除いてア)国会議員、行政機関職員、当該省庁出身者及びイ)地方公共団体、地方議会の代表等(職指定)をもって充てないものとする。また、3)その事務の性質上、特段の必要性がある場合を除き、国務大臣をもって審議会の会長等としないものとする。
A委員がその職責を十分果たし得るよう、高齢者又は兼職の多い者を極力避けるものとし、兼職数は最高4とする。
B委員は10年を超えて一の審議会の委員の職を継続することはできないものとする。
(2) 構成
@委員の任命に当たっては、当該審議会の設置の趣旨・目的に照らし、委員により代表される意見、学識、経験等が公正かつ均衡のとれた構成となるよう留意するものとする。この場合にあって、行政経験者(特に当該省庁出身者)の任命については、特にその必要があるものに限るなどにより、厳に抑制する。
A委員への女性の参画を促進し、10年以内にその比率を30%に高めるよう努める。
B委員の数は原則として20名以内とし、これを上回る必要がある場合であっても、30名を超えないものとする。
(3) 庶務
審議会の庶務は所管省庁内の既存の部局において行うことを原則とし、特段の必要性のあるものを除き独自の事務局を設置しないものとする。
(4) 公開
@審議会の設置、改廃、委員の氏名等については、あらかじめ又は事後速やかに公表する。部会等についても、同様とする。
A会議の開催予定に関し、日時、開催場所等について、審議会等が別段の取扱いをすべきこととしている場合を除き、公表する。
B会議又は議事録を公開することを原則とし、運営の透明性を確保する。なお、特段の理由により会議及び議事録を非公開とする場合には、その理由を明示するとともに、議事要旨を公開するものとする。
C議事録及び議事要旨の公開に当たっては、一般の閲覧、複写が可能な一括窓口を設けるとともに、一般のアクセスが可能なデータベースやコンピュータ・ネットワークへの掲載に努める。

3 懇談会等行政運営上の会合の適正化の指針
懇談会等行政運営上の会合(*)については、あくまでも行政運営上の意見交換、懇談等の場として性格付けられるものであることに留意した上、審議会の公開に係る措置及び以下の基準により、その設置及び運営の適正化を図ることとする。

(1) 安易な設置を厳に抑制し、その運営に当たっては審議会との区分を明確にする。
(2) 恒常的な設置を認めない。原則として、1年を超えて置かないものとする。
(3) 以上の視点から、現在の懇談会等行政運営上の会合については、これを整理する。
* 行政運営上の参考に資するため、大臣等の決裁を経て、大臣等が行政機関職員以外の有識者等の参集を求める会合であって、同一名称の下に、同一者に、複数回、継続して参集を求めることを予定しているもの(@顧問、参与等特定の官職にある者(過去に当該官職にあった者を含む)のみの参集を予定しているもの、A懇談のみにとどまり、懇談等の結果を整理した報告書等の作成を予定しないものを除く)。



(参考)
別紙2

パブリック・コメント制度について

1 問題意識及び目的

各省庁によって政策形成が行われる場合、民意の反映、専門的知識の導入、利害調整等が不可欠な場合が多く、また、その政策形成過程の公正と透明性を確保することが必要である。
上記目的を達成するための方策として、各省庁が政策の立案等を行う際、原案を公表して、専門家、利害関係人その他広く国民から意見を求め、これらを考慮しながら意思決定を行う仕組みを作ることが必要である。

2 パブリック・コメント制度の概要

(1) 対象

パブリック・コメントを求めるものの例としては、次のようなものが考えられる。
@ 基本的な政策の樹立、変更
A 国民の権利義務、国民生活に影響を与える新たな制度の導入、変更
B 国民の権利義務、国民生活に影響を与える行政運営の基本的なルールの設定、変更
C 多数の者の権利義務に影響を及ぼす事業等の計画の策定及び変更

(2) 方法

@ 既に個別法によりパブリック・コメントを求める制度があるものについては、これを積極的に活用すべきである。
A 個別法による制度がない場合にあっては、行政運営上又は新たな制度の整備により、以下のようなことを可能とすべきである。
ア 政策等の趣旨、原案等の公表
イ 政策等の趣旨、原案等に対する国民からの意見の聴取
ウ 当該意見及びこれに対する対応結果の公表
エ 以上のほか、必要に応じて、専門家、利害関係人等からの意見聴取、公聴会、討論会の開催等を行う。



7 特別の機関

国家行政組織法第8条の3に規定する「特別の機関」とは、審議会等、施設等機関以外の機関で、特に必要がある場合に省庁に置かれる機関をいう。現在これに属する33種類の機関には、目的、機能、組織態様等の面で多種多様なものが混在しており、その見直しに当たっては、それぞれの性格に応じて個別に考える必要がある。(「特別の機関」の分類については、以下の「参考」を参照。)

そこで、「特別の機関」の在り方については、中央省庁の再編と併せ、政府において、現存する「特別の機関」についてその目的、機能、組織態様等を個別に検討し、それぞれの性格に応じた見直しを行うべきである。

上記見直しに当たっては、内閣府、現業等他の項で見直しの方針が述べられているものについてはそれによることとするほか、本部、各種会議等については、経年による当該政策課題の重要性の変化等を踏まえて、その必要性を見直す。

(参考)
現在「特別の機関」とされている33種類の機関の性格については、例えば以下のような分類が可能であろう。

@ 各省横断的な特別の課題に対処するため、関係者により構成される本部機関(国際平和協力本部、阪神・淡路復興対策本部、地震調査研究推進本部、青少年対策本部、北方対策本部)

A 各省横断的な特別の課題に対処するため、関係閣僚や学識経験者等で構成される合議制の機関(日本学術会議、中央防災会議、中央駐留軍関係離職者対策協議会、公害対策会議、消費者保護会議、中央交通安全対策会議、高齢社会対策会議)

B その他、調査審議、利害調整その他の活動を行う合議制の機関(日本ユネスコ国内委員会、日本学士院、日本芸術院、中央選挙管理会、連合海区漁業調整委員会)

C 現業又はまとまりのある実施事務を行う機関(印刷局、造幣局、調達実施本部、国土地理院)

D 試験研究機関を統轄する機関又は合議制の機関(技術研究本部、工業技術院、農林水産技術会議)

E 行政委員会の下で、実質はその内部部局である機関(警察庁)

F 司法機能と関係する機能若しくは準司法的機能又はこれと関係する機能を有するため、高度の独立性を有している機関(検察庁、国税不服審判所、海難審判理事所)

G 総合的な地方支分部局又はこれに類似する機関(小笠原総合事務所、在外公館)

H 自衛権の行使を目的とする特殊な実施機関及びその助言、調整機関(幕僚監部、統合幕僚会議、自衛隊の部隊及び機関)

8 今後の検討課題(行政審判庁構想)

(1)行政審判庁構想の趣旨・目的

私人相互間又は行政庁と私人との間に生ずる紛争については、裁判所ではなく行政機関が裁断を行うこととされている、いわゆる「狭義の行政争訟」が多数存在している。これらは、事案の性格にかんがみ、当該事案に関し専門技術的な知識・経験を有する者が紛争解決に参与することにより、裁判所の負担を減らし、簡易・迅速・低廉・適正な解決がなされることを期待して設けられているものであるが、こうした機能は、徹底的な規制の撤廃と緩和の断行という今次の行政改革に伴い、司法機能の充実強化とともに、ますますその重要性が高まるものと考えられる。
そこで、これらの諸制度が果たす裁判制度の補完機能を積極的に評価し、これをさらに改善することを目的とし、併せて行政組織を簡素化するため、現行法上多岐にわたって分散しているこれらの行政争訟の裁断機関(注)を統合することが検討に値する。これが行政審判庁構想であり、司法改革の端緒としての意義をも有するものである。

(注)現行法上の行政争訟制度としては、行政不服審査法により、一般的に処分庁の直近上級庁への審査請求手続が定められているほか、特別法により、いわゆる準司法的な審判手続及びそのための特別の審査機関が定められ、制度的に一部裁判判決に代替する機能を与えられているものがある。そのすべての審査機関の一元化も考えられるが、当面、後者のうち現に裁判機能の一端を担っている行政審判についての統合を検討することも考えられる。この場合、検討の対象となるのは、公正取引委員会、公害等調整委員会、特許庁、海難審判庁及び電波監理審議会による各審判ないし審理である。

(2) 行政審判庁構想について検討すべき問題点

統合が検討される行政審判の中には、その組織、審判対象、手続等において多様なものがあり、以下に見るように留意・検討すべき点が多々存在している。

@ 組織については、上記の5機関のみを取ってみても、行政委員会(公正取引委員会、公害等調整委員会)、外局としての庁(特許庁、海難審判庁)及び8条機関(電波監理審議会)が混在し、所掌事務についても、もっぱら審判のみを行うもの(海難審判庁等)から一定の企画立案機能も担わされているもの(公正取引委員会、特許庁等)まで様々である。形態の違いそのものについては、それぞれが理論必然的に現在の形態でなければならないというものではないが、これらの組織が現に所管している事務の範囲の違いは問題であって、審判業務のみを集めて新たな行政審判庁に統合した場合に、それぞれの機関が現在担っている審判以外の事務をどうするかを別に考えなければならないことになる。その際、例えば特許庁の行っている特許出願審査と特許審判のように、後者を前者から組織的に切り離すことが果たして合理的であるのかどうか、なお、精査を必要とする問題が存在する。また、公正取引委員会のように極めて包括的な権能を有する行政委員会という組織形態の意義につき、なお本格的な検討を進めることが前提となろう。

A 審判業務そのものについても、不服の裁定等いわゆる「覆審的争訟」を扱うもの(特許審判、電波監理審議会の審理、公害等調整委員会の裁定)、いわゆる「始審的争訟」により第一次的な行政処分を行うもの(公正取引委員会の審決、海難審判庁の裁決等)のほか、私人相互間の争いを裁断する機関(公害等調整委員会)もある。こうした状況の下で「行政審判庁」を構想するとき、果たして、現行の手続上の類似性に着目した統合が合理的であるのか、例えば「覆審型」と「始審型」に分け、後者はむしろ一般行政手続法の世界の問題として考えて対象から外す方が適当であるのか等なお慎重に検討しなければならない問題が存在する。

B その他、組織統合の真のメリットを考えるならば、これら各種の審判相互に手続上の一元化を図り、また、審判官相互間の流動性が可能となるのでなければならず、これらのためになお多くの準備作業が必要である。また、行政審判が裁判制度の補完である以上、行政審判庁構想の実現は司法の側における制度改革と組織的機能的に連動するものでなければならないが、司法改革が必ずしもその緒についていない現状で、問題を行政改革の見地から先行させることが果たして可能かつ適当であるかどうかも、考慮を要する。

(3) 今後の検討要請

上記のように、なお検討すべき問題点が少なからず存在するため、行政審判庁構想は当面の省庁再編の対象から除外することとする。
しかしながら、本構想は、司法改革の端緒として重要な意義を有するほか、「事前調整型行政から事後監視型行政へ」という基本的な行政スタンスの転換との合致や、行政の簡素化への貢献等、多くの優れた特質を有していることは、否定しがたく、本会議としては、今後、政府において、近い将来の構想の具体化を目指し、早期に真剣な検討に着手することを要望する。


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