U 内閣機能の強化


1 基本的な考え方

(1) 内閣機能強化の必要性

「行政各部」中心の行政(体制)観と行政事務の各省庁による分担管理原則は、従来は時代に適合的であったものの、国家目標が複雑化し、時々刻々変化する内外環境に即応して賢明な価値選択・政策展開を行っていく上で、その限界ないし機能障害を露呈しつつある。いまや、国政全体を見渡した総合的、戦略的な政策判断と機動的な意思決定をなし得る行政システムが求められている。

これを実現するためには、内閣が、日本国憲法上「国務を総理する」という高度の統治・政治作用、すなわち、行政各部からの情報を考慮した上での国家の総合的・戦略的方向付けを行うべき地位にあることを重く受け止め、内閣機能の強化を図る必要がある。

(2) 内閣機能強化の骨格

内閣が「国務を総理する」任務を十全に発揮し、現代国家の要請する機能を果たすためには、内閣の「首長」である内閣総理大臣がその指導性を十分に発揮できるような仕組みを整えることが必要である。

そのため、まず、合議体としての「内閣」が、実質的な政策論議を行い、トップダウン的な政策の形成・遂行の担い手となり、新たな省間調整システムの要として機能できるよう、「内閣」の機能強化が必要である。

さらに、内閣が内閣総理大臣の政治の基本方針を共有して国政に当たる存在であることを明らかにするため、「内閣総理大臣の指導性」をその権能の面でも明確にする必要がある。

また、以上の強化方策を実効あらしめるため、「内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制」について、内閣なかんずく内閣総理大臣の主導による国政運営が実現できるようにするとの観点から、抜本的変革を加え、その強化を図る必要がある。

(3) 内閣機能強化に当たっての留意事項

内閣機能の強化は、日本国憲法のよって立つ権力分立ないし抑制・均衡のシステムに対する適正な配慮を伴わなければならない。

まず、国と地方公共団体との間では、公共性の空間が中央の官の独占物ではないという理念に立ち返り、統治権力の適正な配分を図るべく、地方分権を徹底する必要がある。

次に、国のレベルでは、国会と政府との関係において、国会のチェック機能の一層の充実が求められ、国会の改革が期待されるところである。

さらに、司法との関係では、「法の支配」の拡充発展を図るための積極的措置を講ずる必要がある。そしてこの「法の支配」こそ、わが国が、規制緩和を推進し、行政の不透明な事前規制を廃して事後監視・救済型社会への転換を図り、国際社会の信頼を得て繁栄を追求していく上でも、欠かすことのできない基盤をなすものである。政府においても、司法の人的及び制度的基盤の整備に向けての本格的検討を早急に開始する必要がある。

なお、司法改革の端緒とする意味も込めて、独立行政委員会等が果たしてきた行政審判機能(準司法手続)の統合(行政審判庁構想)等についても、真剣な検討が必要である。

また、適正な抑制・均衡の観点は、中央省庁の大括り再編成についても生かされなければならない。省間の力のバランスを確保するとともに、省間の政策論議についても、新たな省間の調整システムの確立など、透明なプロセスの確保が必要である。また、行政委員会の存在意義についても、このような観点から再評価がなされるべきであろう。

もとより、内閣機能の強化は、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにし、国民による行政の監視・参加の充実に資することを目的とする情報公開法制の確立と不可分の関係にあることが留意されるべきである。

2 「内閣」の機能強化

(1) 閣議

閣議の議決方法については、本来、内閣自らが定めるものである。この場合、必要とあれば、合意形成のプロセスとして多数決の採用も考慮すべきである。

内閣は、「国務を総理する」機関であり、閣議においては、閣僚間における率直で実のある議論が期待される。現状では、事務次官等会議で了承された案件を閣議にかけることが常例とされ、閣僚があらかじめ議題とされていないことについて発言すると“不規則発言”として忌避される傾向があるが、これを改め、内閣総理大臣や他の閣僚自身の発意に係る案件や事務的に調整が調っていない案件についても閣議に付議し、閣僚が国務大臣としての立場で自由に討議し、主体的に決定していくなど、閣議における議論を活性化する必要がある。

日本国憲法は、転変する政治状況の中で内閣が機敏かつ実効的な意思決定ができるよう、閣議の議事手続等については、基本的に内閣自身の意思にゆだねる趣旨と解される。内閣機能の強化・活性化のため必要であれば、閣議の議決方法について合意形成のプロセスとして多数決の採用も考慮すべきである。

なお、閣僚間での実質的な討議の促進を図るため、閣僚懇談会を活用することが適当である。

(2) 関係閣僚会議

関係閣僚会議は、その実質的意義を発揮するよう、実効性・機動性重視の運営を図る。

設置目的を明確にし、目的達成後は速やかに廃止し、また、構成員は関係の深い閣僚に限定する。また、トップダウン的運用の下で、内閣総理大臣の発意による事案を関係閣僚間で実質的に議論し、その実現の方向付けを与える場としても活用する。

(3) 特命事項担当大臣

特命事項担当大臣を、複数省にまたがる案件などについて、内閣としてのコンセンサスの形成やイニシアティブの発揮のため、活用する。

閣議了解等の形式によって任務(関係大臣との任務分担等)を明確にし、補佐組織を機動的に整備することにより、有効に機能するようにすべきである。

その時々の状況に応じて、内閣総理大臣の判断により、機動的に任命されるものであるが、内閣府 (後述)における担当大臣にあっては、新たな省間調整システムにおける総合調整の重要な役割を担うものである。

(4) その他

@ 国務大臣の数

特命事項担当大臣を設置する意義を考慮し、国務大臣の数は大括り省庁の数に比例して機械的には削減しないものの、その総数(現行は20人以内)を削減し、15人から17人程度とする。

A 各省庁の次官、局長等幹部人事の内閣承認

各省庁の次官、局長等幹部人事については、行政各部に対する内閣の優位性を明確にするため、各大臣に任免権を残しつつ、任免につき内閣の承認を要することとする。

3 内閣総理大臣の指導性の強化

(1) 基本方針・政策の発議

内閣総理大臣の基本方針・政策の発議権を内閣法上明確化する。

内閣は、それぞれの行政各部を分担管理する大臣の単なる集合体ではなく、内閣総理大臣の「政治の基本方針ないし一般政策」を共有しつつ、一体となって国政に当たる存在である。

内閣総理大臣が内閣の「首長」たる立場において、閣議にあって自己の国政に関する基本方針(対外政策や安全保障政策の基本、行政・財政運営の基本やマクロ経済政策、予算編成の基本方針、組織及び人事の基本方針等はもとより、個別事項であっても国政上重要なものを含む。)を発議し、討議・決定を求め得ることは当然である。

現行の内閣法はこの点を明らかにしておらず、内閣総理大臣のこのような発議権を内閣法上明記すべきである。

(2) 行政各部に対する指揮監督

内閣総理大臣の行政各部に対する指揮監督に関する内閣法の規定は、弾力的に運用する。

内閣法の規定は、形式的に受け止めるべきではなく、内閣総理大臣には、内閣のもつ行政の統轄・総合調整の任務を実施するため果たすべき役割がある。

とりわけ、危機管理関係については、当会議においても、「内閣の危機管理機能の強化に関する意見集約」(平成9年5月1日)(別紙)において、「突発的な事態の態様に応じた対処の基本方針についてあらかじめ所要の閣議決定をしておき、総理大臣が迅速に行政各部を指揮監督できるようにすること」を求めたところである。

これを超え、事後の閣議承認を条件に事前の閣議によらずに指揮監督できるようにすることについては、単なる行政上の意思決定手続を超え、幅広い検討が必要である。このような幅広い視野からの検討は、それ自体、重要な課題であり、今後、政府として真摯な検討を進めることが必要である。

4 内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制の強化

(1) 全体的な枠組みと考え方

国政運営における内閣なかんずく内閣総理大臣の指導性を強化する観点から、内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制として、内閣官房、内閣府及び総務省を置く。

@ 内閣官房は、内閣の補助機関であるとともに、内閣の「首長」たる内閣総理大臣の活動を直接に補佐・支援する強力な企画・調整機関とし、総合戦略機能を担う。

A 内閣府は、内閣総理大臣を長とする機関として、内閣官房の総合戦略機能を助け、横断的な企画・調整機能を担うとともに、内閣総理大臣が担当するにふさわしい実施事務を処理し、及び内閣総理大臣を主任の大臣とする外局に係る事務を行う機関とする。

B 総務省は、内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制の強化の一環として設置し、行政の基本的な制度の管理運営を担うほか、同省にふさわしい機能を担う行政機関とする。

(2) 内閣官房

@ 基本的な性格・任務

内閣に置かれる機関とし、内閣の補助機関であるとともに、内閣の首長たる内閣総理大臣の活動を直接補佐・支援する企画・調整機関とし、総合戦略機能を担う。
内閣総理大臣との直接の関係の下で運営され、内閣官房長官がその事務を統轄し、職員の服務を統督する。
内閣官房の基本的な機能は、内閣の補助機関としての機能のほか、1)国政の基本方針(内閣としての総合戦略)の企画立案、2)新たな省間調整システムにおける最高・最終の調整、3)情報、4)危機管理及び5)広報とする。
また、内閣官房は、人事に関する中枢的な機能を担う。(後掲X―3―(3)参照)

A 企画立案機能(総合戦略機能)

ア 内閣官房が企画立案する基本方針は、対外政策や安全保障政策の基本、行財政運営の基本やマクロ経済政策、予算編成の基本方針、組織及び人事の基本方針等はもとより、個別事項であっても国政上重要なものを含む。

イ この国政の基本方針に係る企画立案機能は、内閣官房の任務として法律上明記すべきである。このため、内閣官房の事務に関する内閣法第12条第2項に関し、企画立案を含めるよう改正する。

B 最高・最終の調整機能

国政上の重要事項について、分野、レベルを問わず、内閣としての最高かつ最終の調整の場となる。(後掲V―4―(1)参照)

C 情報機能

情報機能については、1)「情報と政策の分離」の観点及び2)情報分析業務の専門性に照らし、内閣官房に、総合戦略を担う部門とは別に、独立かつ恒常的な組織を設ける。
また、関係省庁間の情報の共有と内閣への集約、分析・評価の相互検証を進めるため、「情報コミュニティ」の考え方を確立する。このため、現在事実上開催されている「合同情報会議」を内閣官房の正式な機関として位置付け、有効に機能し得るよう配慮する。

以上の観点を踏まえ、現在の内閣情報調査室の機能・体制を強化する。

D 危機管理機能

ア 危機管理機能については、内閣安全保障室を改組し、国防に関係する事項や大規模な自然災害を含むすべての危機管理につき、内閣総理大臣を適切かつ有効に補佐できる体制を整備する。
なお、内閣の危機管理機能の強化については、「内閣の危機管理機能の強化に関する意見集約」において、「内閣が政府全体の指令塔としての役割を効果的に果たせるようにするため、内閣官房に、危機管理を専門的に担当する官房副長官に準ずるクラスの職を置くこと」を求めたところである。

(備考)
これを受けて、政府では、国民の生命、身体及び財産に重大な影響を及ぼすなど社会的影響の大きい災害、事故、事件等の緊急事態が発生した場合の対処、対処の準備及びその再発防止に関する事務を担当する「内閣危機管理監(仮称)」の設置を検討している。

イ 安全保障会議の事務局機能は、引き続き内閣官房が担う。

E 広報機能

内閣及び内閣総理大臣の指導性が国民に的確に認識され、内政・外政に関する政策が国民の間で広く理解されるようにするため、広報機能を強化する。
このため、戦略性、機動性、専門性及び国際性を重視し、企画機能を強化する。また、広報に関する専門的知識・技術をもち、国際的なセンスをもった人材を登用する。内閣広報官の政治的任用も考慮する。

F 組織の在り方

ア 行政の内外からの優れた人材の登用
内閣官房は、内閣総理大臣により直接選ばれた(政治的任用)スタッフによって基本的に運営されるべきものとする。そのため、行政の内外から優れた人材を登用するルールを確立する。また、各省庁からの派遣・出向についても、派遣・出向元の固定化や各省の定例的人事への依存を排除する。
また、内閣官房等における指定職の給与上の格付けについては、内閣において適切に決定するものとする。
あわせて、内閣官房の定数管理を柔軟なものとし、必要に応じ内閣審議官等について内閣総理大臣の自由裁量で相当数を任用する。
なお、情報機能、危機管理機能等の専門性の高い分野に関する人材については、在任期間の長期化を図る。

イ 内閣総理大臣の直接のスタッフ体制の充実
内閣総理大臣補佐官の数を増やすとともに、有効な活動を行い得るよう、その執務環境や補助者等の体制を整備する。
秘書官については、現在の派遣元省庁の固定化を排除するとともに、内閣法で定数を定めることを廃止する。

ウ 内部組織の弾力化
内閣官房は、内閣総理大臣との直接の信頼関係の下で機動的に運営されるものであり、その組織は基本的に弾力的なものとする必要がある。また、時々の課題に応じ、内外の人材を随時糾合して編成できるようにすべきである。このため、その内部組織は、現行の五室にこだわらず、時の内閣総理大臣の意向に沿った柔軟かつ弾力的な運営が可能な仕組みとする。

G 新官邸の整備
企画立案機能や危機管理機能等の内閣機能の強化を施設面からも担保するため、今回の行政改革の実施時期を踏まえ、できる限り早期に新官邸の整備を図る必要がある。

(3) 内閣府

@ 基本的な性格・任務

ア 内閣に置かれる機関とし、内閣総理大臣を長として、内閣官房の総合戦略機能を助け、横断的な企画・調整機能を担うとともに、内閣総理大臣が担当するにふさわしい実施事務を処理し、内閣総理大臣を主任の大臣とする外局に係る事務を行う機関とする。

イ 内閣官房長官が内閣府の事務を統轄し、職員の服務を統督する。また、新たな省間調整システムにおける横断的調整事務につき、必要に応じ、複数の担当大臣を置くものとする。この担当大臣については、強力な調整権能を付与するとともに、任命に当たっては、その任務(関係大臣との任務分担等)を明確にするものとする。

ウ 内閣府の機能としては、経済財政政策、総合科学技術政策、防災、男女共同参画、沖縄対策などに関する総合的な企画・調整のほか、皇室、栄典、公式制度等内閣総理大臣が担当することが適切である事務及び内閣総理大臣を主任の大臣とする外局の事務とする。

エ 内閣府には、経済財政諮問会議など、所要の合議体の機関を置く。

A 組織の在り方

ア 基本的な考え方
内閣官房の総合戦略機能を助ける「知恵の場」にふさわしく、経済財政政策、総合科学技術政策などの横断的な企画立案に当たる専門スタッフを糾合した組織とする。
このため、内閣府の企画・調整部門には、民間や学界を含め広く行政の内外から優秀な人材を登用する人事ルールを確立する。

イ 内部部局
a 企画・調整部門
経済財政政策、総合科学技術政策、防災、男女共同参画、沖縄対策等、各省行政に広範にかかわる横断的な企画・調整に当たる部門を置く。担当大臣が置かれた場合は、その大臣を補佐する。
これらの調整事務は、新たな省間調整システムにおいて、各省レベルの調整を第一次的なものとし、これを十分活用すべきこととしたことを踏まえ、これにより難く、政府全体の立場から積極的な調整を必要とするものに限定していく必要がある。
なお、現行の経済企画庁の機能のうち、内閣府の担当部門に移行するのは、マクロ経済政策に係る部分とし、同庁経済研究所も内閣府に移管して、両者が連携して機能するようにする。

b 栄典等実施部門
皇室、栄典、公式制度など内閣総理大臣が担当することが適切である事務及び内閣総理大臣を主任の大臣とする外局の管理に関する事務を行う組織を置く。また、迎賓館を所管する。

ウ 特別な機関
宮内庁は、内閣府に置かれる特別な機関とする。

エ 合議体
「経済財政諮問会議」、「総合科学技術会議」、「中央防災会議」及び「男女共同参画会議」を置く。

オ 外局
防衛庁、国家公安委員会及び金融監督庁を置く。

B 沖縄対策

ア 内閣府に沖縄対策担当部局を設置し、以下の機能、事務を担う。同担当部局の体制は、この機能を果たす上で必要十分なものとする。
○ 沖縄対策に関する企画立案、各省横断的総合調整
○ 沖縄振興開発計画の策定
○ 沖縄振興開発予算の一括計上 など

イ 内閣府に沖縄対策の担当大臣を置く。

ウ 沖縄総合事務局は、内閣府に置き、現行の機能を継続する。

C 北方対策

ア 内閣府に北方対策担当大臣を置く。ただし、他の担当大臣との兼務とすることを妨げない。

イ 北方対策に関する事務は、内閣府の企画・調整部門において処理する。

D 沖縄・北方対策(仮称)担当大臣の設置
上記B及びCに伴い、内閣府に、特命事項担当大臣として沖縄・北方対策(仮称)担当大臣を置く。

E 消費者行政等
消費者行政、物価行政及びこれらに関連してNPO行政は、内閣府が担当するものとし、現行の関係各省庁が所掌する消費者行政に関する事務をできる限り統合するものとする。

F 青少年健全育成行政
青少年健全育成行政については、専ら関係省庁の総合調整に関する事務は内閣府(企画・調整部門)が担い、現行の総務庁が担っているその他の事務は教育科学技術省が担うものとする。

G 内閣府に置かれる合議体

ア 経済財政諮問会議
(任務)
○ 経済財政政策に関する総合戦略の具体化(マクロ経済政策、財政運営の基本、予算編成の基本方針等)
○ 上記のほか、国政上重要な個別事項に係る政策についての政府全体の一貫性、整合性の確保。例えば、社会資本の総合的な整備計画など。
(機関の性格)
内閣総理大臣、内閣府に置かれる担当大臣及び関係大臣の諮問に応じ答申し、又は自ら必要な意見を述べる機関とする。
(構成員)
内閣総理大臣、内閣府に置かれる担当大臣、その他任務に特に関係の深い閣僚のほか、関係機関の長、学識経験者により構成する。
(事務局)
内閣府の調整部局のうち経済財政政策を担当する部門が会議の事務局となる。また、事務局は、案件の内容に応じ、関係省庁のほか、内外の組織の幅広い協力を得て、その事務を行う。
事務局には、行政の内外の人材を幅広く登用するものとする。
(関係各省との関係)
産業、労働、運輸、貿易、財政等をその任務とする省は、それぞれの行政目的の観点から必要な企画立案に参画するものとする。
(関係審議会との関係)
経済財政諮問会議の任務と重複する審議会又は審議会の任務の一部は、同会議に吸収するものとする。これに伴い、審議の専門性を確保するため、同会議の内部組織において必要な工夫を行うとともに、各省に置かれる関連審議会との密接な連携を図るものとする。

イ 総合科学技術会議
(任務)
○ 科学技術に関する総合戦略の具体化
人文・社会・自然科学を総合した科学技術を対象とした総合戦略を策定する。各省の行政に横断的にまたがる科学技術に関する基本事項はもとより、個別省のプロジェクトについても、国家的に重要であり政府全体としてその方向付けが必要なもの等については、審議の対象とする。
○ 科学技術に関する予算、人材等の資源配分の基本方針や、国家的に重要なプロジェクト等についての評価
・ 科学技術振興調整費の配分の基本方針、各省庁の科学技術関係経費の調整の基本方針など
(機関の性格)
内閣総理大臣、内閣府に置かれる担当大臣及び関係大臣の諮問に応じ答申し、又は自ら必要な意見を述べる機関とする。
(構成員)
内閣総理大臣、内閣府に置かれる担当大臣、その他任務に特に関係の深い閣僚のほか、関係機関の長、学識経験者により構成する。
なお、この会議の特性にかんがみ、常勤の委員を現在の科学技術会議より増やすなど構成員の充実を図る。
(事務局)
内閣府の調整部局のうち科学技術を担当する部門が会議の事務局となる。また、事務局は、案件の内容に応じ、関係省庁のほか、内外の組織の幅広い協力を得て、その事務を行う。
事務局には、行政の内外の人材を幅広く登用するものとする。
(関係審議会との関係)
現行の科学技術会議は廃止し、新たに設けられる総合科学技術会議が必要な任務を遂行する。
(教育科学技術省との関係)
総合科学技術会議の策定する科学技術に関する総合戦略を踏まえ、教育科学技術省は、より具体的な研究開発計画の策定・推進や、これに基づく各省間の調整を行う。

ウ 中央防災会議
(任務)
○ 防災に関する総合的な計画を策定・推進するための中枢的機関。
○ 防災に関する行政内外の知見を集約し、災害発生時において、内閣官房の危機管理機能を補佐する機能。
○ 災害緊急事態の布告(災害対策基本法第105条)等に係る内閣総理大臣の判断を補佐する機能。
○ 以上のほか、現行の中央防災会議の機能を継承。
(機関の性格)
内閣総理大臣又は内閣府に置かれる担当大臣の諮問に応じ答申し、又は自ら必要な意見を述べるとともに、災害発生時において内閣官房の緊急事態対処を補佐する機関とする。
(構成員)
内閣総理大臣、内閣府に置かれる担当大臣その他の関係大臣のほか、防災に関係のある公共機関の長及び学識経験者により構成する。
(事務局)
内閣府の調整部局のうち防災を担当する部門が会議の事務局となるものとし、関係省庁の協力を得て、その事務を行う。
事務局においては、各分野の専門家等学界、民間の人材を活用する。

エ 男女共同参画会議
(任務)
○ 男女共同参画に関する基本的な方針等の検討、総合的な計画案等の検討
各省の行政に横断的にまたがる男女共同参画に関する基本事項はもとより、政府全体としてその方向付けが必要なもの等については、審議の対象とする。
○ あらゆる施策への男女共同参画の視点の反映のため、関係大臣に自ら必要な意見を述べること。
○ 男女共同参画に関して講じられる施策の実施状況を調査、監視すること。
(機関の性格)
内閣総理大臣又は関係大臣の諮問に応じ答申し、又は自ら必要な意見を述べるとともに、施策の実施状況を調査、監視する機関とする。
(構成員)
内閣官房長官を会長とし、その他の関係大臣のほか、有識者、学識経験者を含める。
(事務局)
内閣府の調整部局のうち男女共同参画に関する施策の総合調整に当たる部門が会議の事務局となる。
この部門は、会議事務局の機能を担うほか、総合調整及びこれに伴う事務を行う。事務局においては、各分野の専門家等民間の人材を活用する。
(関係審議会との関係)
現行の男女共同参画審議会は廃止する。男女共同参画推進本部は存置する。

H 原子力委員会及び原子力安全委員会に関する事務
ア 現行の原子力委員会及び原子力安全委員会は、内閣府に置き、現行の機能を継続する。
イ 原子力委員会及び原子力安全委員会の事務局機能は、内閣府(企画・調整部門)が関係省の協力を得て処理する。

I 内閣府に置かれる外局

ア 防衛庁
a 現行の防衛庁を継続する。
b 別途、新たな国際情勢の下におけるわが国の防衛基本問題については、政治の場で議論すべき課題である。
c 外局
防衛施設庁
現行の防衛施設庁を継続する。

イ 国家公安委員会
現行の国家公安委員会を継続する。国家公安委員会委員長(国務大臣)は、他の国務大臣の兼務とする。

ウ 金融監督庁
○ 金融監督庁の名称、任務等については、今後検討する。
○ 現行の各省共管とされている金融検査・監督業務については、金融監督庁に一元化する。
○ 現行の大蔵省等との共同省令を廃止し、単独省令化する。

(4) 総務省

内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制の強化の一環として、「内閣官房」及び「内閣府」とともに、「総務省」を設置する。
その具体的な内容については、後掲V―2―(3)―@の総務省の項のとおりとする。

(5) 現行の総理府及び総務庁の所掌事務の帰属

現行の総理府及び総務庁の所掌事務のうち、本報告において、その帰属が定められていない事務については、その事務の必要性について見直した上で、内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制の強化の一環として置かれる内閣官房、内閣府及び総務省の事務にふさわしいものを除き、最もその事務内容に関連の深い各省に担わせることとし、それらの事務のうち調整が必要なものについては、各省が新たな横断的調整システムを活用して調整を行う。
5 内閣法制局、安全保障会議及び人事院

現行の内閣法制局及び安全保障会議は、内閣に置く機関として継続する。
人事院は、内閣の所轄の下に置くものとする。なお、人事院の機能の在り方については、後掲X―3参照。


(別紙)

内閣の危機管理機能の強化に関する意見集約

行政改革会議
平成9年5月1日

1 基本認識
○災害・事故・事件等の突発的事態に際しての、いわゆる危機管理機能の強化については、行政全体の問題として、国民の期待が大きい。
○具体的な対策そのものは自治体や各省庁の責務であるが、早期に行政の総合力が発揮できる態勢を整えることは、内閣の重要な役割であり、また、政府の取組みが国民の目に見えること自体に大きな意味がある。
○「国民の安全・安心」を基本に据え、「危機」の範囲についても、初期的には幅広に把え、事態の推移に応じて順次態勢を手直しする、という考え方に立って、内閣としての危機管理機能の強化を図るべきである。

2 提案
○内閣が政府全体の指令塔としての役割をより効果的に果たせるようにするため、内閣官房に、危機管理を専門的に担当する官房副長官に準ずるクラスの職を置くこと。その任務を例示すれば、次のとおり。
突発的事態に際し、内閣として必要な措置について第一次的に判断し、初動措置について関係省庁に適宜連絡・指示を行い、その他突発的事態への対処につき総理大臣、官房長官等を補佐すること。
平素より、内外の専門家等とのネットワークを構築し、危機の類型別に政府としての対応策を研究しておくとともに、関係省庁における危機管理体制の整備等について、内閣の立場から点検・見直し等を行うこと。
○平素から危機に備えて研究・準備を行うとともに、突発的事態において強力な調整力を発揮するため、内閣官房に、上記の官房副長官に準ずるクラスの職を補佐するための危機管理に関する事務体制を整備すること。
○以上の体制の整備に併せて、突発的な事態の態様に応じた対処の基本方針についてあらかじめ所要の閣議決定をしておき、総理大臣が迅速に行政各部を指揮監督できるようにすること。
○内閣の情報収集・集約・分析機能の強化
多分野の専門職員の配置など内閣情報集約センターの強化を図る。また、幅広い分野の情報収集が行えるよう、各省の協力体制を構築するとともに、情報の集約分析体制を整備する。

3 政府への要望
内閣機能の強化については、引き続き幅広く議論を続けるが、危機管理機能の強化については、事柄の性質上、早期に着手する必要がある。上に述べた事項はいわば当面必要な措置であり、政府において早急に具体的な検討を行うよう要望する。


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