未来に向けて(結びにかえて)


行政改革の理念と目標に、「この国のかたち」の変革をうたったのは、われわれのこころである。

われわれは、この1年間、各々の専門領域の立場を超え、あくまで一国民として、できる限り先入観を排して、今、何が日本にとっての真の大事であるかを常に自らのこころに問い、議論をしようと心がけてきた。そのことにこそ、行政の専門家集団たる官僚ではなく、われわれが、行政改革の審議を行う意義が存すると考えたからである。

本報告をまとめるに当たっては、多くの困難な問題が存在し、委員間で最後まで意見の対立をみた論点や、最終的には高度の政治判断にゆだねざるを得ない問題も少なからず存在した。しかしながら、その際、われわれは、ある時は、国民の意見の動向や立法府における論議に心を配り、また、ある時には、専門家や各省庁の訴えにも耳を傾けつつ、力の及ぶ限りにおいて、この国の行末に思いを致し、ひとつひとつの問題について自らの良心と常識に照らし、妥当な結論を得ようと努めてきた。

本報告は、基本的に西暦2001年初頭に始動する新たな行政組織の在り方を提言するものであるが、「この国のかたち」の変革としては、未だ途半ばであるという思いを強くしている。政府にあっては、本報告の実現とともに、2001年に向けて、さらなる規制緩和や地方分権、官民分担の徹底などに取り組み、個人の知的創造性と活力に富んだ自由で公正な社会の構築に向けて全力を尽くすことを強く要請したい。このような努力が同時かつ一体的に行われてはじめて、「この国のかたち」は、緩やかであっても、大きく弧を描き、動きはじめるものと信ずる。

本日、この報告書の提出をもって、われわれの基本的な任務は終了する。行政改革会議は、今後の具体的行政改革案の策定と実行を、政府、そして国会にゆだねるものである。

われわれは、政府に対し、本報告に従って改革案を具体化し、関連制度改革をも含めた総合的な行政改革案を可及的速やかに策定することを強く要請したい。われわれは、本報告の趣旨が個別的利害によって捻じ曲げられることなく、実効性ある形で現実のものとなるよう、重大な関心をもって今後の展開を見守りたいと思う。

国民にとって必要な改革には、もはや時間の猶予はない。時はすでに議論の時期を過ぎ、実行を希求している。この国の未来に思いを馳せ、自律的個人を基礎とした社会への転換を求めるであろう国民と、そうした国民の代表者からなる立法府の理解と支援を今一度求めて、本報告の結びにかえる。


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