はじめに

 本行政改革会議は、平成8年11月28日、第1回の会合をもち、@21世紀における国家機能の在り方、Aそれを踏まえた中央省庁再編の在り方、B官邸機能の強化のための具体的方策、を主要な検討課題とすることを確認し、爾来、このたびの行政改革がもつ歴史的文脈を意識しつつ、かつ、既に進められてきている経済構造改革や財政・社会保障改革等の検討状況を視野に入れ、鋭意審議を行ってきた。この間、われわれは、有識者との意見交換や海外事情調査、地方における一日行政改革会議の開催、各省庁からのヒアリング等を経て、本年8月18日から21日、11月17日から21日にかけての二度にわたる集中審議を含め、延べ50有余回の会議を開催し、真剣な討議を重ねた結果、今回の合意に到達した。

 今回の行政改革の要諦は、肥大化・硬直化し、制度疲労のおびただしい戦後型行政システムを根本的に改め、自由かつ公正な社会を形成し、そのための重要な国家機能を有効かつ適切に遂行するにふさわしい、簡素にして効率的かつ透明な政府を実現することにある。そのような観点に立って、具体的には、まず第一に、内閣・官邸機能の抜本的な拡充・強化を図り、かつ、中央省庁の行政目的別大括り再編成により、行政の総合性、戦略性、機動性を確保すること、第二に、行政情報の公開と国民への説明責任の徹底、政策評価機能の向上を図り、透明な行政を実現すること、第三に、官民分担の徹底による事業の抜本的な見直しや独立行政法人制度の創設等により、行政を簡素化・効率化すること、を目指すものとする。徹底的な規制の撤廃と緩和を断行し、民間にゆだねるべきはゆだね、また、地方公共団体の行うべき事務への国の関与を減らすことが、その大前提となる。そして、こうした行政機構の再編成と並んで、その運営を支える公務員の任用の在り方について適切な工夫をこらすものとする。

 われわれの取り組むべき行政改革は、もはや局部的改革にとどまり得ず、日本の国民になお色濃く残る統治客体意識に伴う行政への過度の依存体質に訣別し、自律的個人を基礎とし、国民が統治の主体として自ら責任を負う国柄へと転換することに結び付くものでなければならない。

 「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」(憲法前文)という日本国民の願いは、このような政府を基盤として、国際社会に対して独自の提案や価値の発信を行い、公正なルール作りに向けて積極的な参画を行うことによってはじめて実現され得るものと信ずる。

 国民各位・各層におかれては、日本が直面する困難な事態を認識され、本報告に対する理解と支援を寄せられることを願うものである。


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