○:委員
●:事務局

第4回 公益法人制度改革に関する有識者会議

−議事録−


平成16年2月4日(水)10:00〜12:30
場所:虎ノ門第10森ビル3階 会議室

○ それでは、皆様お寒い中、お忙しい中、御出席をいただきましてありがとうございます。
 定刻をちょっと過ぎたのですが、ただいまから第4回の「公益法人制度改革に関する有識者会議」を開会いたします。
 田中清委員は、御都合により少し遅れていらっしゃるとのことです。
 中田委員は、御都合により途中で退席されます。
 加藤委員は、御欠席でございます。
 そのことを最初にお知らせしておきまして、本日、予定しております議事、それから配付資料等については、事務局から説明をいたします。

● それでは、本日の議事と配付資料でございます。
 議事につきましては、本日、星野英一名誉教授をお迎えいたしまして、有識者ヒアリングを前半行いました後、公益性の位置付けにつきまして、前回に引き続いてフリートーキングをお願いいたしたいと思います。
 終了予定時刻は12時半目途でございます。
 配付資料でございますが、資料1は星野先生のレジュメ。
 資料2につきましては、前回の資料を一部リバイスしています。
 それから、参考資料として4点ございますが、1つは指導監督基準、運用基準としての閣議決定。
 それから、その運用指針につきまして、法人の目的部分の抜粋。
 参考資料3といたしまして、中間法人法の制定時の法人制度研究会の報告書の抜粋。それから、法律上の効果に関する関係条文の抜粋と、このような資料を準備させていただいております。
 それから、本日の議論の参考にということで、4つの法人の定款・寄附行為をお手元に用意させていただいております。本会議に法人関係者として御参加いただいております4人のメンバーの方々の御出身の社団、財団のものでございます。御協力をいただき御礼申し上げます。
 以上でございます。

○ それでは、本日、4回目でございますが、前回に引き続きまして、お互いの共通の認識を高めるという意味で、まだ勉強中ということでございます。
 そこで今日は、新たな非営利法人制度における公益性の位置付けということについて、皆様に御議論をいただくわけでございますが、その前に、東大の星野名誉教授から御説明をいただくことにいたしたいと存じます。
 例によって、12時半までの長丁場で大変恐縮でございますが、星野先生は、ただいまから50分程度お話をいただきまして、その後、質疑に移りたいと存じます。
 それでは、星野先生、よろしくお願いいたします。

◎星野東京大学名誉教授 星野でございます。座って話させていただきます。

1.はじめに
 早速内容に入らせていただきますが、私の報告は、今日いただきました横長の資料2に従って、できるだけそれに即しながら問題点を挙げていきたいと思います。
 私がいただきましたテーマは、そのちょっと後の方になるわけですが、1ページ目の下の方から始まります。
 「(2)公益性を有する非営利法人の捉え方」というところと、その先の3ページの下の方にあります「2.法人制度上公益性を判断する意義」と、これについて私がやることになっておりますので、大体これに即しながらお話をしていきたいと思います。
 ただし、順序だけはちょっと変えさせていただきたいと思います。この2.の方から先にいたします。その理由は、後に申し上げます。
 それから、特にことわらずに、「資料」と申しました場合は、今の資料2ということになります。これをお手元に置いていただければと思います。
 ここのレジュメでございますけれども、レジュメに二重のかぎ括弧をつけましたのは、そこからの引用ということであります。
 あと、「基準」という言葉を使いますが、これは皆さんがお持ちの『公益法人設立・運営の基準』というこの本ですね。これの最初の方に基準が掲載されていて、後の方に「運用指針」と題するその説明がありますけれども、これにも言及をすることがあります。
 それから、もう一つ、昨年6月27日閣議決定、「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」が枠づけになりますので、「基本方針」として引用することもございます。また、「参考資料」と呼びますのは、この会議で配布される参考資料です。 
 そういうことで、今日は後の方からということになります。

2.「法人制度上公益性を判断する意義」(資料3ページ)というところからお話したいと思います。
 大体資料の順序に従ってまいります。 
 (1)公益性を有する法人を法律上非営利法人一般から区別して扱う必要性
 @ 最初に、公益の価値とか、意味が問題になるわけですけれども、これは実は大変な根本問題でありまして、既に御議論なさっていると思いますし、これからも御議論になる問題かと思います。
 一般論といたしましては、大著述を要するほどの問題になります。
 したがって、今日は詳しく立ち入る余裕がございません。参考資料といたしまして、レジュメの参考文献のFとしました『公共哲学』というシリーズは10巻あります。それぐらいの大変なものだということです。そこでは、公と私の違い、あるいは公共ということの問題を議論しているわけです。
 実は、その前の、この参考文献のEというところに加えておきましたが、自分のもので恐縮ですけれども、岩波新書ですが、この中のある部分に、この問題について、若干調べたものがありますので、ごく簡単に書いておきました。
 ただ、一言だけ申し上げさせていただきます。公と私につきましては、従来、日本、中国、西洋では考え方が違っておりました。
日本で公というのは官と同義に用いられてきたと言われております。ところが、中国や西洋ではそれぞれ違いますけれども、人民みなのことという考え方であったと言われております。中国しかり、それから西洋では英語のパブリックで、これはラテン語から来ている言葉ですが、そういう意味であったとされております。
 日本でも、今日ではそのような考え方に転換すべきだという見方が有力でありまして、私もこれを支持するものであります。そのことをこの岩波新書などに書いているわけです。ところが反対に、民法の公益法人の規定の底には、私が「公益国家独占主義」と名づけた考え方、つまり、何が公益であるかは国家が判断するものだという考え方があったと見られます。この言い方はやや強過ぎるという批判も最近出ているのですが、私には当時の起草者達の言っていることや、書いたものを見ますと、どうもそのように考えられるのです。
 この意味からいたしますと、実は鉄道事業も、あるいは○○委員の化粧品もそうですが、ビール、チョコレートの製造もすべて公益的な事業ということになろうかと思います。作られたもの、提供されるサービスは、みんなのためのものだからです。ただ、それが会社によって行われている場合には、会社の得た利益が配当されますので、会社は「公益法人」でないということです。
 この、鉄道業は公益事業ではないか、そうだとすると、会社がやっている場合にどうなるのか、会社は公益法人ではないのかという議論は、民法典起草の時にありました。これも今日の資料にございます。本日配布された参考資料3に、一部引用されております。
 これは、前に中間法人法をつくりますときに、法務省民事局長の私的研究会で研究いたしました結果が「法人制度研究会報告書」となっております。その一部ですけれども、ここに起草者の一人である梅謙次郎先生の考え方が引用してあります。民法典を起草する過程で、やはりこのことが質問されたのですね。
 それに対して、事業は公益事業だけれども、利益配当し、それによって社員の利益を図るから、公益法人ではないと答えているのです。したがって、事業そのものは公益事業だという考え方であったのです。
 実を申しますと、公益でない事業などは余りないのでありまして、殺人集団とか、麻薬密輸グループ以外には、非公益的事業というものはないと言っていいほどであります。
 ただ、「基準」におきましては、「2.事業」というところにあるのですが、お配りしてありますね。

● 参考資料1の1ページ目の「2.事業」の(2)というところでございます。

◎星野名誉教授 事業内容が営利企業の事業と競合するような状況となっている場合には、「公益法人としてふさわしいと認められる事業内容への改善等に向けて次の措置を講ずる」とあります。
 ここでは、法人がやる事業につきましては、その種類によって公益事業か否かが判断されるという前提で書かれているように読めます。これは、一つの流れがあったのです。公益法人であって、実際に営利企業と同じような仕事をして利益がたまり、内部留保が非常にあるようなものがあるが、けしからぬということです。それらは営利法人に転換すべきだということを盛んに言われたことがありました。
 そこで、先程触れた法務大臣の私的研究会では、ここにいらっしゃる何人かの方と協力いたしまして、営利法人転換の方法を検討いたしまして、それもつくったわけです。そういう流れの中で、事業について、このようなものが出てきているものです。
 ですから、ここでは、事業内容によって、公益法人であるか、ないかが決まるという前提の下に書かれていると見られますが、これはそういう流れの一部としてそうなったと見るべきでありまして、公益というものの考え方が基本的に変わったということではないと私は見ております。
 A 「公益性」のある法人に価値を認めることの理由 
 これは「資料」の3ページの下の方にあるとおりです。 「そもそも公益性を有する非営利法人に何らかの価値を認めるのはなぜか」として、ダッシュを引いて、いろいろ書いてあります。
 ここに、私の言いたいことがほとんど言い尽くされておりますので、改めて繰り返すことは省略いたします。
 ただ、一言だけ付け加えて、二つの面から整理します。一方では、仕事・事業の問題、何をやるかという問題があります。まず、公益性のある事業であって、国家によっては十分に実現しにくいものがあることは言うまでもありません。環境問題、国際問題に多いと言われております。
 次に、公益性のある事業が新しく出てくる場合があり、それらについて、まだ国家が手を付けていないということがあります。社会には新しい需要がどんどん出てくるからであります。
 また、財政的な理由からいたしまして、かつて国家が行っていた事業で、国家がすることができなくなっているもの、あるいはやめるものが現在増加しております。
 介護などをお考えになれば、すぐ分かるでしょう。
 このような、現実に国家でやらないが、非常に重要な事業が多々あります。
 以上は事業の問題でありますが、他方で、現在国家・社会・個人の関係についての考え方といいますか、思想の変更が見られます。
 これは言うまでもなく、社会において私人による自由な活動が重要であるという思想のことで、それがますます強くなっているということであります。個人・社会・国家の関係・役割についての思想、国家観・社会観の大きな変化が現れています。
 以上を一言で申しますと、社会において、遂行されるべき事業という面からいっても、社会における種々の活動の主体という面からいっても、私人による公益性のある活動が重要になっているということであります。
 B「公益を目的とする」法人を「特別扱いする」ということの具体的内容
 これは「資料」の4ページの「どのような効果を念頭に置くのか」と、「○法人制度上公益性を判断する機能」の2番目の「・」のところにあります。
 ここには、2つのことが書いてありますが、更にあと幾つかを足すことができるかと思います。
 (I) 最初に書いてあるとおり、課税における優遇を含めた一定の優遇措置というものであります。税法上の特典のほかに何かあるかという問題もありますが、これは省略します。また、ここでは税法は後ということで扱わないことにいたします。
 (II) 次に、社会的な信用が高められるということが書いてありますが、これは我が国で通常言われていることであります。法律的には若干疑問がありますが、今日は触れないことにいたします。
 以下が、ここには必ずしもはっきりとは書いていないことです。
 (III) まず寄付の問題でありまして、税法に関係しますけれども、法人に対する寄付が、寄付者にとって寄付控除の対象になるということは、かなり重要なことです。もっともこれは必ずしも法人だけの問題ではありませんけれども、特にこういう公益法人については、問題になりやすいということだと思います。
 これは、当該法人に対する寄付を促すインセンティブとなります。また、国が当該法人の活動をサポートするという意思の表明としての意味も持つわけであります。
 長期的には、公益法人の財政を支えるという役割を担い得るわけであります。
 (I)と(III)は、別の面から申しますと、公益法人に対する、言わば国等の補助の一種、援助の一種ということになります。それが一種の補助金であるということは、アメリカなどで言われていることであります。形を変えた補助金ということです。そうなると、結局は国等が私人の活動を援助することになるのですが、国の安上がりの援助とも言えます。間接的なものでして、直接には私人の力によって公益活動をするものですから、私人による公益活動の推進という今回の改正の趣旨に合致するものであろうと思われます。
 (IV) いわゆるガバナンスをきちんとすること
 これにつきましては、レジュメにはかなり長々と書いてありますが、少し細かくなりますので、はしょっていきたいと思います。
 この必要性は、もう多くのところで主張されているわけでありまして、レジュメに引用したとおりです。公益法人は少なくとも中間法人と比べてどこが違うべきかというと、やはりガバナンスがより厳しいということで、そこに特色があろうと思います。
 実は、会社のような営利企業においてすら、というと語弊があるので、そこではまた別の理由でガバナンスが非常に重要とされています。しかし、公益法人においては、ガバナンスは、また別の意味で、かつそれ以上に重要性があるのではないかと考えられるのです。
 この問題もかねてから、つまり今回公益法人制度の改正が問題になる前から、民法の公益法人の規定の現在における不備とされたものの1つでした。
 なぜ、民法のガバナンスに関する規定がゆるやかになっているかというと、別に民法が制定当時から不備だったのではありません。1つには設立の許可主義と、設立後の官庁の監督が厳しいということがありますから、それで間違いないだろうということです。
 もう1つは、それほど大きな法人が考えられていたわけではなさそうでして、大体仲間の社員や理事の間できちんとやっていくだろうという予想があったのではないかと思われます。
 しかし、今日では、一方で優遇措置とか、特典を主張する場合は、一層必要になってくるのではないかと思われます。つまり、具合のいいことばかり主張するのはおかしいので、やはりノーブレス・オブリージュというのでしょうか、つまり、ある高い地位のものは、それだけ重い負担を負わなければならないということだと考えられます。
 (a)『ガヴァナンス』の意義
 比較的最近、商法の学者が、特にアメリカの例を参考にして盛んに言っていることです。これもいつか皆様にお配りしたと思いますけれども、参考文献Bの、昨年10月の日本私法学会のシンポジウムの中で、ある方が非営利団体のガバナンスについて、非常に詳細な報告をされました。私にとっても大変参考になったものであります。
 一言で申しますと、法人の運営に携わる者の義務及び責任であるというふうに、言われております。
 もう少し敷衍いたしますと、法人がその目的を適正、健全、かつ効率的に実現するために、法人の管理について、法人内部の諸機関の組織、行為規範を定め、内部的・外部的にその実行の監視を図るという仕組みということです。
 具体的にここに並べたいろいろなものがあるのですが、例えば意思決定機関と意思執行機関の関係としまして、社員総会と理事の権限の分配とか、一定の者は役員になってはならないとか、理事の法人に対する義務と責任の内容をもう一度考え直してみたらどうか、今よりも重くすべきものではないかとか、理事に対するコントロールをどうするかなどなどです。
 進んだところでは、既に有限責任中間法人には規定されているのですが、社員による株主代表訴訟類似の制度を導入するということが考えられます。中間法人ですらそうですから、まして公益法人では当然ではないかということになると思います。
 この辺は、今申しました中間法人法以外にも、NPO法人法にも既に幾つか入っております。
 レジュメには(b)理事の「内部的」コントロールと、(c)「外部的」コントロールと書いてあります。外部的コントロールとした中のディスクロージャー、情報開示は、別項目にしてありますが、やはり理事のコントロールの方法でもあるものです。コントロールの言わば前提ということになろうかと思います。
 それから、非常に進んで、住民訴訟類似の制度を何か採用できないかと言われることがあります。つまり、公益法人は受益者が一般の国民でありますから、一般国民から何か言えないかということです。私は、ちょっとこれは無理じゃないかとは思いますが、考え方としては十分理解できるもので、検討に値します。
 (d)情報開示でありますが、これも既にあちこちで言われていることであります。法人の在り方や活動を明らかにして、社会による評価を容易にするためです。それは寄付へのインセンティブを高めるものでもあります。人々は、この法人がこういうものならば、自分は寄付しようと考え、こんな法人ではちょっと困るということになるからです。
 これは、「基準」の7で詳細に書かれており、指導も厳しいようです。NPO法人につきましては、明文の規定があります(28条、29条など)。
 (e)プライバシーの確保 「基本方針」にこの項目がありますが、これは私には分かりにくいことです。恐らく情報開示と関係して、その程度、方法を定める場合に、公開される人のプライバシーも考慮しなければならないということかと思います。一般論としましては、情報開示の場合には常に考慮されるべき点の一つであることは確かであります。
 (V)ガバナンスの制度の必要性 これは中間法人法、NPO法、それから「基準」に基づく指導によって、かなり行われているものですから、これを公益法人についてより体系的にきちんと整理することが必要であるし、できると考えております。
 ここでは、一体だれのためにガバナンスが必要なのかという、余りにも基本的なことですけれども、そこに立ち戻って一言だけ申したいと思います。
 ここには、団体内部の問題と外部の問題があります。団体内部の問題というのは、主としては社員のためであります。
 既に現在規定がありますものは、例えば民・商法の少数社員の保護ですが、会社におきましては、社員の利益配当を確保し、それを不十分にしたり害する役員等の行為をコントロールするためです。
 勿論、意思決定つまり総会、脱退、除名など、社員の権利の確保のための多くの制度がありますが、このへんは既に規定のあるものの見直しということです。
 もう一つは、団体と取引する第三者が損失を被ることがないようにすること、つまり債権者保護ということです。そうしないと、団体に金を貸したり、物を売ってくれる人がなくなるでしょう。この点も法人論の古くからの課題で現行法にも多くの規定があります。
 更に最近では、構成員以外の従業員、顧客、地域住民の利益をも考慮すべきだということが主張されています。これが民法によるガバナンスとしてどう規定するかはやや難しいところですけれども、以上挙げたような種々の関係で、団体のやるべきことや、担うべき責任をきちんとしておくのが必要なわけです。
 公益法人についてもう一度見ますと、せっかく集まった社員の利他的な熱意と、それからせっかく提供された財産が法人の目的に適合するように生かされ、運用されることが、社員にとり、あるいは財産の提供者にとって、極めて重要な関心事ですし、ひいては社会一般の関心事です。きちっとしたガバナンスの制度の存在が、寄付を集めるためにも必要なことです。
 社会一般と申しましたが、法人をただ見ている人もありますけれども、当該公益法人の受益者となる可能性のある人、それを期待している人にとって更に大きいのではないかと考えられます。進んでは、自分も公益法人に加わりたいという気持を起こさせる一つの誘因となりうることが期待されます。ガバナンスの適正さというものが求められる所以であります。
 第三者の保護は、別に公益法人に限った課題ではありませんので、すべての法人について基本的な必要事項であり、民法や商法に種々の規定が置かれているところであります。
 (VI)ガバナンスに関する規定の法律的意味 
 これは事務局の方とお話していて気がついたものです。
 ごく一般的なことを申し上げますと、法律が一定の行為、作為・不作為と呼んでいるのですが、それを命じ、実行させるやり方について概観するのがよいと思います。いろいろあるのです。
 最も厳しいものがその違反に対して罰を科するというものであります。刑法がそうです。もっとも刑法は不思議なことのようですが、作為・不作為を命じてはいません。人を殺すと罰せられるとありますが、人を殺してはならないということは書いていないので、一体そのような規範はどこにあるのかなどを学者は議論しているわけです。
 次に、主としては行政権が一定の行為を命じたり、禁止する、あるいは法律に定める条件を充たさなければ当事者の欲する効果が認められないと定める、つまりその条件を充たさなければ法律効果が認められないとか、場合によっては行政罰と呼ばれる比較的軽い罰則が科せられる場合であります。
 第3に、私法的な規制があります。これは一定の作為・不作為をなすべしとの規範があり、通常は裁判所により、その作為・不作為を命じられ、その履行がされない場合に強制的に履行させられるという形で実現されます。それ以前の行為規範としても大きな意味を持っております。
 特に、何らかの意味で組織をつくる場合には、どのような組織をつくるべきか、その構成員はどのような行動をすべきか、ということを法律がきちんと定めておくことによって、一定の型に従った行為が社会に行われるという大きな意味があります。これは講学上、「組織法」と呼んでおりまして、ほとんどが、いわゆる強行規定、つまりそれに違反した法律行為の法律は意味がない、例えば契約をしても無効であるとする規定です。
 分かりやすい例としては、婚姻の制度をお考えになればよいでしょう。婚姻に入るのは自由意思によってですけれども、一旦結婚すると、やめる方は一方の意思だけによってはできないという制度が多くの国で続いていました。今日でも多かれ少なかれそうです。また、結婚すればそこからできた子供を養わなければならないとか、夫婦は相互に扶養しなければならないなど、幾つかの効果が生じます。それを夫婦の合意によっても免れることはできません。そういう一定の枠の中に、いわゆる制度に入るというものです。これは民法上の組織法であります。団体、特に法人に関する規定は、組織法にあたるものです。このような規制は非常に重要であり、今後もますます重要になるものです。なぜかというと、団体における構成員の地位や、構成員間の関係や、団体の第三者との関係には、法律で定めざるを得ないものがあるからです。
 (VII)残余財産の分配における中間法人との差異
 この点が、中間法人との非常に大きな差異であります。
 「営利法人」というのは、事業によって得た利益を構成員、法律では「社員」と呼んでいるものに分配するところに特色があります。
 利益の分配は、法人が生きて活動している時には、配当という形で現れます。NPO法人も中間法人も利益配当は認められません。しかし、法人が活動を止める時、つまり解散して清算する時に財産が残りますと、それを分けることができるかという問題があります。残余財産の分配と呼ばれています。この点でNPO法人、公益法人、中間法人とが違っています。これが非常に重要な点です。
 この点で最も厳しいのはNPO法人で、最も緩やかなのは中間法人です。これがそれぞれの法人の性格をよく示しているものだと見られます。
 公益法人がその中間にあるのです。実のところ、現在の公益法人の制度はその点で少し甘いのではないか、少なくとも問題があるということが、昔から言われていたところです。具体的には、定款・寄附行為で残余財産の帰属者を決めることができることになっている点です。外国の本などにも古くから書いてありました。
 典型的には財団法人の例が挙げられています。公益法人を設立して、相当の財産をそこに移し、その解散の事由として数十年後に生ずる事態を書いておいて、解散の時に、残余財産の帰属者を自分の孫にするといったことです。
 これは実質的に遺言によりある者に特別の利益を与えるのと同じで、濫用されるということです。現に我が国では相続税法65条でその点をちゃんと押さえています。
 この3種の法人を比べましょう。まず言えることは、どの法人についても第一順位として定款に定めるところのものに帰属することになっているのですが、NPO法人においては、帰属者となりうる者を一定の範囲に限っているのです。11条に列挙されています。例えば、NPO法人、国又は地方公共団体、民法上の公益法人その他の計5種の法人です。定款に規定のない場合は第二次的に一定の手続の下に国又は地方公共団体となっています。3種の中で最も厳しいものです。
 公益法人は、第一次的に定款・寄附行為で帰属者を定めうる点で若干問題があると申しましたが、その定めがない場合については、きちんとしておりまして、その法人に類似する目的のために総会の決議を経て理事が処分できることになっております。
 中間法人は、第一次的に定款で制約なく決めることができるばかりでなく、そこで決まらない場合には、有限責任中間法人においては社員総会の決議で、無限責任中間法人においては総社員の同意で決められます。中間法人というのは社員の共通の利益の増進のためのものですから、生きて動いている間は利益配当はできないが、解散の時は残った財産が分配できるのです。
 中間法人法の検討の時に、この点が問題になりましたが、やめたときには、自分が最初に出した財産ぐらいまた戻してくれと言えてもよいではないかといった意見もあり、このようになっています。
 ここが非常に重要な点であり、公益法人法を制定するとすれば、NPO的なものにしなければならないと思います。
 ここが中間法人との大きな差異、法律上非常に決定的な差異だということです。
 (2)「公益性」があるか否かの判断の二段階
 既にお話ししたと思いますけれども、設立の段階と、その後の段階とで分けるべきだろうということです。「資料」の2ページの下の方に書いてあるとおりです。
 要するに、この2つの場合について、判断者と、判断の際に考慮される事項が異なり得るからです。設立の段階では、設立にどういうやり方をするかによりますけれども、いわゆる準則主義をとって、登記によって設立されることになりますと、登記官に判断させることになります。
 しかし、設立後、継続的に公益性のある事業を行っているか、公益法人にふさわしいガバナンスの規定が遵守されているかということを何時も見ている機関が必要になります。これは、登記官ではあり得ないものです。
 理想的に申しますと、全く私人による団体ができればいいわけでありまして、本当は公益法人協会辺りによく考えていただきたいところなのですが、どうもまだ今のところ具体案やその実現策が出ていないようですね。
 それから、英国にあるチャリティー・コミッションというようなもの、独立性の強い国家機関をつくることも一案だと思いますけれども、行政スリム化の時代ですから、難しい問題だろうかとも考えられます。これは、法律論というより、政治的決断の問題ですので、深入りをやめます。
 (3)「公益性」の判断は、各法人の個々の事業について行えば足りるか
 これは、かなり議論があるところです。この方がいいという考え方も勿論あります。指定寄付金に関するやり方ではありますが、法人全般についての「公益性」の認定のやり方としては極めて煩雑なやり方だと思います。
 租税優遇措置とか、指定寄付金についてはこれでいいのかもしれませんが、公益法人についてガバナンス等において特別の規定がなされることや、まして残余財産の分配の問題を考えますと、それぞれの法人について、各法人につき公益事業とそうでない事業とを分けなければならないことになります。これは現在のNPO法人でもある程度なされておりますけれども、一般に広げることになりますと、大変難しい、煩雑ということになりそうです。
 第1に、1つの法人において公益性がある事業と、そうでない事業とが正面から併存することになります。
 そして、公益性のある事業について今のようにすることにしますと、非営利法人のすべてについて、公益事業についてはそうすべきだということになります。
 中間法人においても、公益的な事業をすることは構わないわけです。さらには、営利法人の行う事業についても同じです。一方で優遇措置を講じ、他方でガバナンスなどはより厳しい規定に従うことになります。そうしないと、衡平を失することになります。それなら、優遇措置はいらないから、ガバナンスも厳しいものを適用しないでくれ、そこから得られた利益も配当させてくれ、などと言わせるのは適当ではないでしょう。
 以上の2つの点で、今よりはるかに−数倍も煩雑になり、もちろん官庁にはできませんし、させてもなれない。私的機関でも無理でしょう。つまり、それはとても難しいと思います。やはり公益法人という一つの型を作って、一定の型の法人について全面的にそれらの措置を適用するほかないと思われます。

3 「公益性」を有する非営利法人の捉え方
 ここから資料の1の(2)の方に戻ります。
(1)「公益性判断の要件を考えるに当たっての視点」
 その前提として、幾つかの点を検討する必要があろうと思われます。
 資料の3ページの真中辺りに幾つか列挙されています。
 「客観性」は、まず、法人を設立しようとする者のために必要です。つまり、ある団体が法人となることができるかどうかを判断する必要があるからです。また、設立ができないとされた場合に、やはりそういう法人は設立できるようにすべきであるという立法論をすることになりますが、立法論をするためにも何が何故できないかがはっきり分かることが必要です。こういう要件で設立できるようにしてくださいと、はっきり言えるということになるのです。
 第二に、登記官等、設立ができるかどうかを判断する者のために必要です。これがきちんとしていれば、不動産登記のように、登記官が「公益性」のある法人かどうかを十分に判断できると考えております。現に、会社でさえ、相当登記事項がありますが、登記官のところでこれは登記できないと言われる場合が随分あるのですね。たくさんの通達や回答があり、どうしてもそのようなものが必要にはなります。しかし、それほど細かく考えなくても済むようにすべきだということが、その次にある「柔軟性」です。この点については、「資料」の説明が私の観点からも適切だと思います。3ページの真中辺ですね。
 つまり、ここに書かれているように、「時代の変遷や法人活動内容の変化に応じて」云々という部分です。ただ、ここに書かれていることは、ある種の法人について、ある時代に公益性ありとされても、後の時代には公益性なしとされ得るようにという、事業を列挙する方法をとる場合のことのようにも読めます。しかし、私は、「公益性」の要件を、それ自体柔軟なものとする、という意味で理解したいと考えます。そのためには、こういう法律なり、あるいは政令等あるかと思いますが、ここで「公益性」についての要件として、ごく一般的なものとしておくことが必要と思います。つまり、先の話と同じことで、「事業」を列挙するよりは、「公益」を一般的な表現で言い換える方がよいと思います。
 具体的に申しますと、公益法人の要件として事業を列挙する方法、実はNPO法がそれで、別表で列挙しているのですが、その適否が問題になろうと思います。
 NPO法の批判をするようですが、同法の制定におそらく最も深く関わった熊代昭彦議員の本(『新日本のNPO法』ぎょうせい、平成15年)を見ますと、いろいろないきさつからそうなったらしいので、それはそれといたしまして、これからつくるとしたらどうかということです。そうすると、やはり一般的なものの方がいいだろうと思います。
 事業の種類によって公益性があるかどうかを考えるということは、事業を個別的に見てゆくことを前提としますが、そうなると、公益性のある事業というのは時代によって変化するものと考えざるを得なくなります。そうすると、最初に立法するときに事業を十分書き尽くせるかどうかたいへん疑問であります。現にNPO法におきましては、制定時に12事業を、5年後に別表に5つを加えておりまして、公益性のあるもの一般を対象とするとなると、大変でしょう。アメリカの連邦税法では数百(400とも700とも言われます)の項目があるようです。しかも、これは国会の議決が要りますから、機動性に欠けるおそれがありますし、煩雑でもあります。
 では、政令事項にすればいいかと言いますと、これは勿論理論的には考えられますが、行政庁の介入をできるだけ減らそうという今回の改正の趣旨からいたしますと、この方法は採用しにくいと思います。
 そこで公益性の要件は、「明確性」を保つことができる限りで「柔軟性」のあるものとすること、端的に言えば抽象的なものとするのが適当と思われます。
 実は、これは立法技術の一般論なのです。規定の明確性と柔軟性との両立が常に考慮されるべきことで、どちらの要請をどこまでそれぞれの場合に採り入れるかということが、立法者の苦労していることなのです。
 あと、「透明性」、「自律性」が書かれていますが、「透明性」というのは、設立時の問題というより、その活動を後から評価する場合のために法人が備えるべき事柄の問題だろうかと思われます。「自律性」というのは、公益性ある法人のあるべき姿を言っているのではないかと思われますので、設立の要件とすることもないでしょう。
(2)資料における「定義の仕方」「目的の考え方」「公益性を有するものと判断するための要件」の関係
 「資料」には定義、目的、要件の3点に分けて書かれていますが、第1に、「公益性を有する非営利法人の定義」と、「非営利法人が公益性を有すると判断するための要件」とは、実質的には同じ内容の問題です。定義はきちっとした抽象的なものとし、定款の必要的記載事項、登記事項でさらに詳しく書き、法人となったときにはこうこういう規定に従う、という3段構えの規定の仕方が現行法の仕方で、3種の規定の割振りは、どの種の規定をどこに置くかという立法技術の問題です。もちろん、法律はできるだけ素人に分かりやすく書くべきですが。したがって、これはまとめて検討できると思います。
 次に、「定義」と「目的」とが分かれて書かれておりますけれども、法律に一定の種類の法人の定義を書くか、それを書かないで一定の目的の社団が法人となれるという、民法のような書き方をするかは、書き方の問題にすぎないものです。最近の法律では定義規定を置くことが多いようです。中間法人、NPO法人のどちらもそうです。しかし、大事なことは「目的」です。
(3)議論の大前提及び言葉の意味の確定
 @ 大前提 「営利を目的としない」こと
 ある種の法人を「公益法人」として特別扱いをするならば、それは営利を目的としないものとすべきことについては、どの考え方も共通しております。
 したがって、もう言う必要はないようですが、やはりもう一度改めて営利法人の「営利」とは何かをはっきりさせておくのがよいと思います。これは実は民法ができた直後にかなり議論があった問題だからです。ただ、当時は少数であった方の見解に、その後固まりまして、今でも異論はあるのですが、ほぼ一致してそちらになっています。
 それによると、「営利」法人とは事業によって得られた利益を社員に配分する法人であるということです。より細かく申しますと、法人の存続中には配当その他の形で利益を分配し、法人が解散する時には残余財産を分配することです。
 学問的には、なお問い直すべき問題はありますが、ここでそれを扱うのはもはや適当ではないでしょう。とにかく、収益のあがる事業をすることという意味と解されていません。
 A 民法34条の「ソノ他公益ニ関スル」の解釈
 この「関スル」は、現在では「目的とする」と読み替えるのが、立法後、異論はありますが、ほぼ一致した見解となっております。公益法人というのは、公益を目的とする法人ということで、それを前提として進めます。
 その次に、ちょっと厄介なことが幾つかあります。
 B 民商法における「目的」または「目的トスル」という言葉の使用法の不統一
 これは知っておく必要があります。
 つまり、「終局の目的」という意味で使われる場合と、法人の行う「事業」の意味で使われる場合とがあります。後者は法人が何をするかということです。それを目的と呼ぶ場合があります。今日の参考資料3に書いてあります。民法34条、35条が前者、民法37条、商法63条1号などが後者です。ドイツでは、終局の目的という場合にはツベック(Zweck)という言葉、やっている事業という意味での目的はゲーゲンシュタント(Gegenstand)という言葉を使うそうです。日本では、その「目的」という一つの言葉が違った意味で使われております。
 したがって、中間法人法を作る時も、目的という言葉を使わない方がいいという案を私は出したのですが、漠然とした言葉だからかえっていいし、ほかの法律と揃えるということで、目的という言葉を使ってあります。2条1号に中間法人の定義がありますが、その中に「目的」という言葉が2回使われていますが、両者の意味は若干違うようです。
 C 定款・寄附行為の記載事項、登記簿の記載事項についての実務上の扱い
 現在の実例では、目的と事業を分けて書きます。定款もです。ここにいらっしゃる方々の関係しておられる4つの法人の定款が配布されてます。これを御覧になれば分かりますが、各法人が達成しようとする抽象的な目的を「目的」、それを達成するための具体的な仕事を「事業」と分けて規定されています。この方が、日常の用語法には近いような感じです。なお、「…を目的として、以下の事業を行う」とするものもあります。
 D 民法第43条にいう法人の「目的」
 これがちょっとまた厄介なもので、法人の「目的」は、同条により、法人が権利を有し義務を負う範囲の決定基準として重要な意味を持ちます。登記における目的の所に具体的な事業内容の記載が必要となるのです。これは法人とどのような内容の取引をしてよいかについて第三者が判断するために重要な意味を持ちますから、登記事項となっており、そうなると、参考資料3に、昭和28年の通達などが引用されております。ここでは、「目的」の名のもとに「事業」が意味されるのです。
 その辺の、「目的」とか、「目的とする」という言葉の曖昧性を心得ておいていただきたいと思います。
 もっとも、民法43条は会社には適用されないというのが商法学者の今日ほぼ一致した意見かと思いますが、民法上の公益法人、あるいは中間法人、NPO法人を含め、それらには適用があるとされているので、注意が必要です。
(3)「公益性を有する非営利法人」
 この会議での御検討の対象は、非営利法人法をまずつくり、その中から、どういう形になるかは別として、公益法人としてくくり出すべきものがあるとすればどういうものかという問題だと理解しておりますので、これを考えてみたいと思います。
 @ 「公益」の法律上の意味
 先ほどは、やや哲学的な話をいたしましたが、現行法上の意味は、ほとんど異論がなく、「不特定多数人の利益」と理解されております。
 NPO法では、公益という言葉は使わないで、「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの」としています。一般に「公益」の定義とされていることをそのまま書いてありますが、熊代議員もこの2つは同義だと書いておられます(前掲書39ページ)。
 それゆえにNPO法人は、民法の公益法人の特別法であると、熊代さんも書いておられます。(前掲書39ページ、175〜177ページ。なお、175ページには、NPO法人は現在の中間法人にあたるものの領域には入らないと書いてあります。)
 以下、「不特定多数」の意味について、もう少し考えてみたいと思います。
 まず、多数と言っておりますが、これは適当な表現ではなく、少数でもいいのではないかという議論があります。もっともなことで、ここで「多数」というのは、数の多いことを必ずしも意味するものではありません。これも議員の間でかなり議論されたと聞いておりますけれども、例えば、日本ではまだ数人しか発見されていない難病、いや、日本にまだ一人もいない病気の研究であっても構わないのです。例えば、SARSなどはまさにそれです。さらに、今日では世界に誰もいないとされている病気、撲滅したとされる天然痘などの研究でもいいはずです。
 ここでは、不特定ということが大事なのでして、理論上、誰でもその法人から利益を受け得るという点に意味があるわけです。熊代さんは「社会全体の利益」と考えられるような場合とか、いわば「潜在的な不特定多数性」と言い換えてもよい、とされますが(前掲書40ページ)、全くそのとおりです。簡単に言えば、社会全体のみんなのためということです。
 なお、たまたまその社員が利益を受けることがあるのは別です。ある難病患者のために働く法人で、社員の一人がたまたまその病気になったときに、その法人に世話してもらうのは別に構わないでしょう。
 逆に申しますと、特定の範囲の人々、例えば何々大学生、あるいは何々地方の住民だけの利益を目的とするのではこれにあたらないということです。例えば、それらの者だけが利用できるのではだめです。
 ここでは、限界が若干デリケートな問題になります。例えば、A大学の学生に奨学金を与えるということは、現在の時点では「特定」の人々を対象にすることになりますが、入試を受けて合格すれば誰でもそれを受けられると見れば、「不特定」とも言えそうです。もっとも入試の難しさ等はやはり「不特定」と言えないという考えもあるかもしれません。ある町の住民は使用料が安い施設を営む事業は、「不特定」と言えないとも見られますが、町民税を払っている見返りだから、別に差別がないので、「不特定」の人の利益とも言えます。ただ、その町の住民しか使えない施設ではだめでしょう。(この点は熊代・前掲書41ページと見解を異にします。)どちらにしても、この点ははっきり押さえておくべきだと思います。
 A 中間法人との関係
 要件の方から申しますと、中間法人とは、「社員に共通する利益を図ることを目的とする」ものです。ですから、非営利法人ではありますが、「公益を目的とする」ものではないのです。ここで言う「目的」とは、やっている仕事のことです。
 ここで再び「公益を目的とする」の問題に触れることになります。中間法人も、仲間で歌を歌ったり、俳句をつくったり、運動会をやったりしていい気持ちになれば、社会の安定に貢献します。だから、結局はそれがみんなのためになるのです。みんなのためにならないことなどいうものは、そうないわけなのです。このことを言うと、団体が存在してうまくやっている限り、皆のためになっているのですが、それを「公益」というとしても、「公益性ある法人」の意味での「公益」とは違います。「公益」の意味が広くなりすぎるのです。
 したがって、中間法人の目的とは、そういう意味ではなく、やっている仕事、事業という意味だということがよりはっきりするでしょう。そこで、中間法人とは、自分らだけのための仕事をやっているので、営利法人の方が世の中の人のための仕事を、不特定多数のための事業をやっているのです。ただ、得た利益を社員に分配するから、そこが違うということなのですね。この点もはっきりと押さえておく必要があります。
 法人の「目的」の意味との関係でいうと、直接的な目的といいますか、そのしている事業と、間接的にというか、結局それが誰のためになるかということは分けて考えなければいけないので、これを混同しますと、議論が錯綜するおそれがあるのです。
 つまり、「公益性のある事業」は、どんな種類の法人でも、個人でも行うことができるはずです。それをやっていけないなどというのは、非常識なことです。したがって、この点から法人の種類を分けることはできないのです。各法人における、公益性のある事業の位置付けが法人の種類分けをもたらすものです。
 そうしますと、公益性のある事業を営んでも、終局の目的が営利つまり上がった利益を社員に分配するか否かでまず分けられます。ここで非営利とされる場合には直接の仕事が社員の利益、仲間の利益のためのものと、直接の仕事が他の人のためのもの、みんなのためのものであるものとに分けられるのです。
 B 非営利法人への一本化
 これは、結論的にはちょっと難しいのではないかと思います。というのは、お話してきたとおり、非営利法人の中には、相当性格の違うものがあるからです。現行の中間法人にあたるもの、つまり自分らの利益の増進を図るためのものと、自分ら以外の人、つまり不特定多数の人のために活動するものというのでしょうか、世の中の皆のために働くものとの2種があるわけです。
 その違いは、ガバナンスの点、とりわけ残余財産分配の違いをもたらすはずだからです。
 これは法人を作るとして、その結果の方ですが、ここでちょっと立法する場合にどんなふうに考えてゆくかについてお話したいと思います。立法に際しては、まず立法の目的を考えます。というより、まず現在法律を作るのがよいとか、今の法律のこの点はまずいとかいうことを考えます。そこでは、どういう結果を発生させるかが考えられています。つまり、どういう結果を生じさせるかをまず考えるのです。
 続いて、そのような結果を生じさせるためには、どういうことをすればよいかを考えます。つまり、立法においては、それによって社会にもたらそうとする効果を考えます。その際どういう理念でゆくかを決める、ついで、それに相応しい要件を考えるのです。その後要件と効果をフィードバックしながら検討していく作業を繰り返します。そういうわけで、ここでも効果を先に考えたのです。法人については、もちろん、「公益性のある法人」はこんな要件のものということを大体前提としつつ、どんな効果が伴うべきかをまず考え、それではそのような法人としてどういうものを考えるか、といった具合です。
(4)一つの試案
 抽象論を述べているだけでは進まないので、具体的な条文案を考えてあるところで発表し、参考資料のDのホームページに載っているものです。
 @ 「社員及び役員以外の不特定多数の利益を図ることを目的とし、かつ営利を目的としない社団又は財団」を公益法人とする。
 「公益法人はその行う公益活動を遂行するために必要な限りにおいて、社員、役員、その他公益活動に参加する者の能力の向上、社員の懇親、同種の法人との連絡その他の事業を行うことができる」
 先に説明した、民商法における「目的」の用語との関係で申しますと、これは法人の営む「事業」つまり「直接の目的」に「公益性」つまり不特定多数のためということの存在することが必要であり、「間接の目的」が公益だということではないことを示しています。
 より端的に申しますと、公益性がある法人というのは、社員が利他的な、英語の   altruistic な活動をするものではないかということです。これは中間法人の検討の時に議論をしていたものです。社員も役員も法人の一員として行動する限りにおいては、専ら他の人々のために働かなければいけないということです。
 特に、税等の優遇措置を受ける場合には、きちんとした規制がある法人であることが必要になるのではないでしょうか。
 ついでに、この有識者会議では、余計なことですが、一言だけ申し上げますと、以上のように考えるならば、非営利法人一般を立法することは相当難しいと思っています。公益性のある法人と、中間法人という違ったものを一括して規定するので、両方に共通する要素を考える必要があり、こちらの方が難しいと思われます。
 A この要件の具体的な判断方法
 設立時においては登記官等が定款の記載の目的・事業の所を見て、社員以外の第三者のための仕事だけが書いてあるかどうか、社員のための仕事はないか、ただし目的に必要な限りでの社員のための内部的な仕事がその中にあるか、を見ればよいわけです。この2つをはっきりと書き分けるように規定すれば、登記官もより容易に判断できると思われます。NPOについてはある程度そうなっています(第11条1項3号と11号)。もう少しはっきりと、「第○条第1項の目的を達成するための事業」、「第○条第2項として定める事業」などとしたらよくはないでしょうか。第1項、第2項というのは、先の私案の各項のことです。
 B 実は私は、当初は先の第1項だけ、つまり社員及び役員以外の不特定多数人のみの利益「のみを図る」とだけ書いていました。これに対し若干の批判があったので、今の2項を加えれば「のみ」という言葉を除いてもその意味は全く変わらないので、「のみ」は少しどぎつくて表現としてはまずいと思ってこのようにしてみました。内容は同じつもりです。
 これは一見厳格のようですが、その法人が社員に共通する利益を図るような事業もできるとしますと、現在の実情とちっとも変わらないことになるのです。現在は、理屈の上ではクラブとか、同窓会は公益法人になれないと解されているのですが、実際には多くのものが公益法人として許可されました。皆さんもご存知の学士会とか、ああいう同窓会は、公益的な仕事、例えば集会場を開放したり、一般向けの図書・雑誌を刊行したりもして、公益法人の許可をとりました。許可主義が厳格すぎると考えてかどうかは分かりませんが、戦前は公益法人許可も割合緩やかに与えていたようです。
 それどころか、なぜか分かりませんが、「公益」目的を広くとったか、あるいは「事業」の公益性を判断したのか、例えばゴルフクラブ(これらは中間法人的なものもありますが)、日本相撲協会なども公益法人になっているのですね。その結果、「公益法人」にたくさんのものが入っているため、営利法人でもできるものがかなりあり、同業の営利法人を圧迫している。そこでそれらは営利法人に転換しろということになったのです。そして、ハイクラスの人だけを会員にしているゴルフクラブなどは営利法人になるわけにはゆかないから、中間法人に転換することを考えて中間法人法を作る目的の一つにした。ところが何かの理由で中間法人への転換の規定は作らないことになったのです。
 したがって、もしもここを緩めますと、現状とちっとも変わらない。現状の正当化という意味を持ちます。それどころか、現在は一応公益目的を掲げ、構成員の利益はいわば恐る恐る目的・事業に入れているものを、表からそれをやってよいということになってしまいます。今より悪いわけで、やらない方がましというぐらいです。
 中間法人ないし 非営利法人を認めるなら、公益法人は本来の形に純化する方がよいと思います。
 これに対して、公益性のある事業を主たる事業、社員の利益を図る事業を従たる事業とするというのはどうかという考え方があります。NPO法人は、それに近いのですね。
 NPO法人では、「特定非営利活動」(2条)のほか、「その行う特定非営利活動に係る事業に支障がない限り、当該特定非営利活動に係る事業以外の事業(以下「その他の事業」という。)を行うことができる」とあります(5条1項)。そしてそれは、「特定非営利活動を前提として、それを支援する事業として位置づけられている」とされますから(熊代・前掲書87ページ)、その限りではもっともですが、具体的には、「会員間の相互扶助のための福利厚生、共済等の事業」も入るともされます(同86ページ)。少し広すぎる感があり、もう少し絞り、かつ明瞭に限界を画す(書く)べきものと考えます。現実にはうまくいっているようですけれども、何によって主従を決めるかとか、「その他の」に何が含まれるかが難問で、解釈が分かれ、広がる恐れもあります。公益性のある事業の割合が多いといっても、割合とは何で図るのか、支出の割合なのか、社員等がそのために費やす労力や時間の割合によるのか等々困難な問題です。「その他」はもっと漠然としています。結局同じになってしまうおそれがあるのです。理論的には、やはり主従とか「その他」というのは漠然とした表現ですので、立法上はなるべく使わない方がいい言葉です。
 C ただ、事業を遂行するために社員の能力の養成、研修をしたり、仕事後運動会や懇談会や一緒に酒を飲むなどのレクリエーションは必要ですから、その旨をはっきり書いた方がいいと考えます。
 つまり、NPO法人は少し曖昧ないし説明によれば緩やか過ぎるので、危険性がいずれ明らかになるのではないかと心配しております。
 D 事業の具体的な内容を書くかどうかという問題ですが、これは前に申しましたとおり、具体的な事業を並べるということは、適当ではないと思います。この点については、民法34条に列挙されているではないかと言われますので、その点について一言します。そこにあるほとんどは現在から見ますと、適当でないものです。「祭祀、宗教」は、NPO法では認められず(2条2項2号イ)、宗教法人法が規定しています。「学術、技芸」は、専ら社員以外のためにその関係のことをするのでなく、学会、職能団体のように社員の能力向上のためのものは、本来「中間法人」に適したもので、「公益法人」とは言えないものです。この点で、NPO法人法別表4号は、このように解釈されるべきでしょう。今日の立場からよさそうなのは「慈善」ぐらいではないかと思います。英米の例もあまり参考になりそうにありません。
 E 法人の規律
 これを法人の「公益性」の要件と書くかどうかはかなり議論されており、公益法人協会でもそう言われるのですが、これも先に申したとおり、立法論上はどちらでもいいことです。ただ、立法の傾向としては、従来は、要件を比較的抽象的に書いて、法人となった場合の効果、つまりどういう組織になるかがきちんと書いてあり、その法人になる以上は、その効果を認めなければならないことになっています。
 しかし、最近は、要件の方にあるべき組織を書く傾向があります。分かりやすいからかもしれません。NPO法もそういう傾向があります(2条2項1号)。どちらでもいいことだと思います。
 F 結論
 最後に、レジュメにはありませんが、準則主義をとるかどうかという問題について一言します。私は準則主義でいいのではないかと思います。それについては、熊代さんは絶対に反対と言っていらっしゃいます。準則主義ではなぜいけないのかと言うと、「準則主義イコールすべての収入は課税対象の原則を崩してはならない」とされます(前掲書172〜
173ページ)。
 税法上の優遇措置は、税法の方で決めればよいので、私にはその理屈はよく分かりませんが、その前提を崩さないならば、現実には準則主義と余り変わりないと言われる認証主義という、NPO法人のやり方でも、実際上は大差ないと思います。いずれにしても、この点はそうこだわる必要はないと思います。
 理想的には、準則主義で入口のチェックは十分できると考えます。むしろ、問題は事後のチェックで、ここをどうするかが、いわば天下分け目だと思います。公益法人協会あたりが頑張るべきことでしょう。お金を集めなければいけませんし、組織をどうするか、人をどういうふうに集めるかなどをきちんと詰めなければいけないので、大変なことです。公益法人協会の力量が問われるところだと思っております。
 かなりはしょったのですが、ちょっと時間を超過いたしました。これで終わります。

○ ありがとうございました。大変行き届いたお話をいただきまして、星野先生には、非常にいろいろ教えていただいたところがあると存じます。
 今の星野先生の御説明に対して、御質問があれば、いかがでございましょう。

○ 全体を概観していただきましてありがとうございました。○○と申します。
 不特定多数の不特定という言葉について、若干私の身の回りの経験に基づき説明させていただき、それから質問をさせていただきたいと思います。
 全体のお話をうかがっておりますと、ここで言っている市民とか国民というのは、非常に強い、賢い、正義感あふれる人というのが根底にあると思うのですが、実際にNPOとか、公益法人を運営している仲間の様子を見ていますと、マネージメント面では非常に苦労しています。つまり、いかに会員を維持するかというところで苦労しています。また、会員やボランティアをするという人たちは、確かに高邁な精神を持っているのですが、そこにたどり着くまでにいろんな工夫をしないと、その気になってくれないのです。
 例えば、お誕生日カードをあげるとか、それから特別に事務所を使わせてあげるというように、何らかの特典を、その会員にならなければ得られないような特典を与えることによって会員になってもらって、徐々にその活動に目覚めてもらうというような工夫を、マネージメントの上手な組織はやっています。
 そういう意味では、この不特定に関して、先ほど定義をされましたけれども、やはりその組織に参加して活動しなければ得られないというインセンティブについて、この場合、不特定をどういうふうにとらえたらいいのかという点について質問させていただければと思います。

◎星野東京大学名誉教授 この不特定というのは、やっている仕事がほかの人のためということですね。ですから、自分ら、法律上の社員のためにだけ訓練をする法人は、中間法人だと思います。
 ただ、お話のような事例では、初め中間法人になっていて、後に公益法人に変わってもいいわけです。やはり公益法人として設立をする場合には、今のお言葉を使いますと、ある程度強い人々にやってもらわないといけないのではないかと感じます。
 私も実は中小のグループに関係しているので、おっしゃることは分からないではないのですけれど。人がどんどん減ってしまうとか、何か特典がないと入ってくれないとか。ただ、社団法人でしたら、熱心な人が外のために、また新人の養成のために働くという方法ができるわけです。そして、社団法人の社員や役員はそれらの仕事をしますが、法律上「社員」というのは社団の構成員とされている人で、多くの法人では、「会員」として色々な形でそれを助ける人を置いていますが、初めは「会員」となって養成を受け、後で社員として専ら外のために働く、というやり方も考えられます。「会員」の間は、いくらかゆるやかにできるでしょうから。

○ 今、星野先生のおっしゃったのは、法人としての行動の効果として、社会の不特定に対して、どのような影響を及ぼすかということですね。

◎星野東京大学名誉教授 はい、公益法人というのは、不特定の人のために働くものだということです。

○ ですから、その過程において、法人を構成する人たちの間で多少のことがあっても、それは仕方がないというとおかしいですが、それはあってもいいことではないかということだと。

◎星野東京大学名誉教授 場合によっては必要でさえあると思いますね。外国へ出かけていく医療団などというのは、日本で相当訓練しておかなければできないわけですね。

○ 非常に初歩的な、根本的な問題をお尋ねしたいのです。今、この有識者会議では、NPOを別にした非営利法人という枠組みをどういう内容にしてつくって、しかもそれを二階建てに公益性のあるものについてどう考えるかというふうな議論をしております。
 今年、この会合に出席して2、3回目ですけれども、一体こういうふうな枠組みをつくったならば、誰がこれをどういうふうに利用するのですかと。NPOも、もう既に1万4千位になって、いろいろな問題を起こしているところもあるけれども、既にNPOは発足しているのですね。それはそれで別に存在しています。特別法に基づく場合というのは、とっくに存在するわけです、ほとんど官の領域に近いですけれども。
 そうすると、ここでいろんな経過があって、こういう議論にたどり着いたことは一応分かるにしても、この議論をつくり上げて、枠組みをつくり上げて、精緻な議論をして、誰が利用するのですかと、今までNPOを志向した人たちは、もう既に入っているかもしれない。しかし、あそこに行くのは面倒くさいなと思っている人たちはこっちに来るのかもしれない。ないしは別の考えで、せっかくそういう枠組みができたのならば、我々も利用してみたいなという市民が存在するのかもしれない。よく分からないのですね。
 先生にお尋ねしたいのは、こういう枠組みを作った場合に、一体どの程度のニーズが社会的にあるのか、ないしは枠組みができるので参加する人が出てくるので、自ずから広がっていくのだというふうにお考えなのか、どちらなのですか。

◎星野東京大学名誉教授 これは私が答えるべき問題ではないだろうと思うのですけれども、私なりに申し上げますが、今の御質問はデリケートな問題に入ってしまうので、むしろ皆さんに考えていただきたいことなのです。
 私が考えているところは、ここでは公益法人として理想的なものをとにかく考えるということだと思うのです。今の民法の公益法人制度にはいろいろ問題があり、現実に公益法人となっているものにたくさんの問題がある、中間法人制度だけでは足りない。
 ちょっとデリケートなことですが、私だから言ってもいいと思うのですけれども、現在公益法人になっているもののうち、かなりのものが中間法人に転換しなければいけないと思います。
 そして、現在の公益法人ももっと厳しい規制を受けるべきです。今、民法的な規制は少ないので、「基準」でかなり厳しくやっておりますけれども、指導によるものですから、実際は十分に徹底しにくいのです。法律にかなりの点を書く必要があります。
 それから、NPOがもっとデリケートだと思います。ただ、熊代さんもおっしゃるとおり、NPO法は公益法人の特別法と解されますから、やはり公益法人法をきちんと作ることが必要です。そして、NPO法人法とをもう一回再整理することを後から皆さんに考えていただく必要があると思います。
 それは、理論的にも現実にも難しいのですが、皆さんに考えていただかなければならないものです。ただ、NPO法人法は、先ほど来公益法人法の規定としても立派なものをかなり含んでいると申し上げましたが、すべての規定がそうだとは言えないことも、申し上げました。
 したがって、NPO法人法を参考にしながら、理想の公益法人法をきちんとつくる。1つの理想像をつくってみて、後の始末、今ある公益法人やNPO法人をどうするかは、立法の問題ですが、−もちろんそこで既に政治が絡みますけれども−、政治の問題となります。しかし、その際の考えるべき点をきちんと整理しておかないと、変なものができて、かえって悪くなることさえ恐れられます。
 公益法人の営利法人転換が強く言われまして、私どもが大変苦労して、−ここにおられる何人かの方々に非常に努力していただいたのですけれども−、結局、せっかく転換の方法を考え、「基準」でもそれが勧められているのに、余り転換してくれないのですね。私どもは政府に転換を命ずる権限があるか、その違反の場合に解散命令を出せるかといった点を随分追求したのですが、結局わずかしか転換していないのですね。監督官庁も自分の傘下においておきたいようですし、公益法人自身もそのままでいた方が、簡単に言えば得だと考えているのです。しかし、現状が「得だ」ということがそもそもおかしいのです。
 したがって、法律ができたからといって、そのとおりにみんなが来るということにはならないでしょう。しかし、有識者会議としては、どういう法律を作るべきかをまず考えるのが任務かと考えています。

○ 星野先生に余分なお答えまでさせていただきまして申し訳ないのですが、その問題は、1回目にかなり議論の出たところで、では中間法人とか、NPO法はどうなるのかということでありましたが、現実の公益法人というものが、もう既にあって、そしてまたそれを規制する法律というものが既に賞味期限が切れているというような状況でありますので、まずここのところをきちんとして、それから今度は中間法人なりNPO法人との整合性がどこかで問題になることがあれば、そこのすり合わせを後から考えると、こういうことであったように思いますけれども。
 先生、それでよろしゅうございましょうか。

◎星野東京大学名誉教授 私は、おっしゃるとおりに理解しております。

○ 今の話と関連するのですが、お二人の先生方の御意見をおうかがいしていて、私なりに考えたのは、今日のお話で言うと、非営利法人法をつくるというよりは、公益法人法をしっかり整える方がよいのだということが、今日の星野先生の大前提だととらえてよろしいでしょうか。それが1つ。
 もう一つ、先ほど準則主義で一定程度の公益法人、もしくは非営利法人を設立した場合にも、原則課税ではなくても大丈夫ではないかというような御判断をしていただいたように聞こえたのですが、その辺の論理のところをもう一度教えていただけないかというふうに思っております。質問は2つです。

◎星野東京大学名誉教授 第1の御質問ですが、別に公益法人法を直ちに作る方がいいというのではなくて、ここの有識者会議のマンデートはそうだというようにうかがっておりましたものですから、そしてワーキング・グループが非営利法人法についてのより細かい立法論を検討すると聞いておりましたので、そう申したわけです。 
 こちらの有識者会議では、非営利法人の中から公益法人という制度をくくり出していくことが適当かどうか、適当だとすればどういうものにするかを考えることがマンデートだと理解しておりましたので、かなり具体的な法律論というのでしょうか、立法論に絞って申し上げたのです。だから、別にどっちがいいということではありません。それもやはり皆さんにお考えいただくことかと思います。
 第2番目の御質問ですけれども、私には率直に言って分からないところです。つまり準則主義をとると原則課税でないとおかしいというのは、熊代さんが書いておられますが、その理由が必ずしも分からないのです。
 そして、積極的にこうであるべきだということは私には言えません。ここには租税法の先生もいらっしゃいますけれども、最近税法学で、法人、広く組織に対する課税の根拠とか、在り方についての検討が進められているようです。
 「租税法研究」という学会誌などに、組織に対する課税について、東京大学の増井教授がいい論文を幾つか書いておられます。それから租税法学会でシンポジウムもあったようでして、根本的な検討がされているようですが、そちらの方を見ないと、−私も若干見てみたのですが、やはり専門が違いますもので、なかなか分からないのです−。とにかく、準則主義イコールすべての収入は課税という考え方の根拠が、熊代さんの本を見ても書いてないのですね。
 つまり、準則主義をとっても、公益のみを目的とするものだということが定款・登記事項から明らかに分かるように規定しておけば、それでいいのではないかと考えております。
 しかし、そもそも組織には課税するべきではないという人もありますから、そこは今後検討していただけるとありがたいと思います。

○ ありがとうございます。実は、この問題が将来とも論点になるということは、もう皆さん自覚しているところでありまして、今、星野先生もはっきりしたお答えに必ずしもなっていないわけですが、それこそ我々が更に研究しなければならない問題ではないかというふうに考えております。
 今の○○委員の御質問に対して、ワーキンググループの○○委員の立場から、少し補足をしていただきたいと思います。

○ 今の御質問の中でも、非営利の法人制度というものを広くつくるべきではないかという議論が一応前提にあって、その上で公益性のある団体について、また更にその中から選別というのでしょうか、区別することができるかどうかということが議論になっているわけですが、その前提となる非営利法人についてどういう理念で法人制度をつくるかというのが、実は非常に難しい問題で苦慮しております。
 これは、星野先生の今日のお話の中でも、共益的な、要するに事業の対象が自分たち構成員の利益となることを目的としている、そういう共益的な団体、これも非営利法人の中には勿論入ってくるし、むしろそれが出発点でさえあるかもしれない。
 つまり、非営利法人という制度は、この世の中で各人が自分たちの、むしろ私的な利益を自由に追及していくことができる。そのために法人制度を使って社会を更に活性化していく。そういう自由の理念に基づいた法人制度というのが必要なのではないかというのが、非営利法人制度の基本的な理念として私は適当だと思っています。また多くの方がそういう考え方に基づいて議論しております。
 こういう非営利法人制度をつくったときに、問題は公益的な法人というものが、どういう形でこの非営利法人制度にうまくのっかるのか、また、全体をまとめて一つの理念でもってうまく説明することができるのか、というのが非常に難しいところです。この点については、恐らく非営利法人のワーキング・グループでどんな具体的な議論をしているのかを皆さんに御紹介するときに、更に議論していただくことになると思うのですが、いずれにせよこの点が1つ重要なポイントではないかと思っております。
 今日の星野先生のお話の中で、私が面白いと思ったのは、例えば事業という観点からすると営利法人、例えば鉄道事業のように、非営利法人よりも営利法人の方がむしろ公益法人と近いところがあるという点です。自分たち構成員の利益を追求する、共益的な利益を追求する非営利法人と、公益法人とはちょっと違う側面もある。
 そういう営利法人、公益法人、共益的ないし中間法人の3つの対立図式の中で、現在、非営利法人制度という1つの大きな枠をつくって法人制度をつくろうとしているわけですが、その非営利法人制度の統一的な理念というものに、どういう考え方で臨んだらいいだろうかということが、私は難しい問題の1つだろうと思っています。
 これは、補足であると同時に、また、星野先生が今の点について、もし何か御意見があれば、お聞かせいただければ、私としては非常にありがたいと思っております。

◎星野東京大学名誉教授 私も、それは非常に難しいと考えております。今、現役ではなくてよかったと思っているぐらいなのですけれども、実のところ、今おっしゃったように、中間法人と公益法人は非常に違うと私も思っております。では両者に共通するものは何だろうかということですね。
 理念の方はちょっと後にして、現実の立法の方から申しますと、かなり立法的には薄められた制度になるのではないかと考えています。つまり、私法的規制が少ないものですね。
 そのもう一つの理由は、後で公益法人制度の立法をすることになるならば、公益法人法をつくる場合に、邪魔にならないような制度にしておかなければいけないでしょう。
 具体的には、現在の中間法人、そして今後立法されるべき公益法人−「基準」が参考になります−に共通の規定だけを置けばよいと思います。それならば公益法人法をつくる時に邪魔にならないでしょう。これは案外難しいので、私の本心を言ってしまうので申し訳ないのですが、非営利法人法を先につくれというのは、かなり無理な話だと思っていました。
 ついでに言いますと、堀田さんは、中間法人法をつくるときに、むしろ非営利法人法をつくれと言われたのですね。しかし、当時は私が民法部会長をやっておりましたが、私は必ずしもそれに賛成ではありませんでした。
 というのは、これには長年のいきさつがあるのです。民法には営利法人と公益法人が規定されていて、中間法人的なものがなかったのですが、これが欠陥だということが何十年来言われていたものです。そして、現在、公益法人になっているものの中には公益法人にふさわしくないものがあるとしても、受け皿には営利法人しかなかったのです。営利法人では困るというのは、例えばハイクラスの人の入っているゴルフクラブなどです。その受け皿が要るということが、中間法人法制定の重要な理由の一つだったのです。
 そうだとしますと、中間法人制度が非常に要求されていたので、それをつくれということが国会の附帯決議にもありました。そこで中間法人をつくって受け皿の問題も民法の穴の問題もなくなる。次に公益法人制度の改正に進むのが理の常で、そうなると思っていたところ、非営利法人法をまず作れということになってしまったものです。歴史的には、現在の立法を巡る状況は、プロセスとしては本来あるべき姿ではなかったと私は考えております。
 つまり、一旦中間法人法を作ったすぐ後で中間法人も公益法人も含むような非営利法人を作るのは、至難の技であるばかりでなく、二度手間で、やらなくてもよかった苦労をするという効率の悪いことです。だから、ワーキンググループの方が非常に苦労されていることがよく分かります。
 そこで、両者を含む積極的な理念はというと、大変難しいのですが、○○委員が言われたように、色々な面における個人の自由な活動を尊重することがこれからの社会・国家のあるべき姿だということでしょう。
 つまり、利他的な活動のほか、自分らだけのための活動、スポーツクラブとか、囲碁サークルとかレクリエーションクラブでも法人としてどんどん認めてよいではないかということです。しかも、それによって、更に私人や団体による公益的活動も増えていくことになるのではないかと思います。その点ではフランスの例が一つの参考になるのではないかと考えております。ただ、前者を直ちに「公益法人」と同じ意味での「公益」的なものというのはどうかと思います。

○ ありがとうございました。今の問題の核心のところを、裏話を含めてしていただきまして、理解が深まったと思います。

○ どうもありがとうございました。2つ質問がございます。その前提といたしまして、実際に財団法人の運営に関わっておりまして、私は常に法律と実際の運用との激しい乖離というものに対しての矛盾を多く感じております。その観点から質問させていただきたいと思います。
 先生がまずおっしゃられました、例えば寄附行為、定款等で、時代の変遷、ニーズに合わせて、できるだけ一般的なものの方がよいのではないかと、そういう御指摘があったかと存じますけれども、本当に私は是非そうであってほしいと思っております。
 私ども73年に財団法人になりましたときに、窓口になります○○省の担当課の法令班の方の指示によりまして寄附行為をつくったわけなのですけれども、ある種のモデルのようなものがあったにしましても、非常に細かく目的・事業のところを、書かされたわけです。その当時、私どもがやっていた事業で関わっていた団体の名前まで挙げさせられました。
 反対に○○財団のものを拝見いたしますと、非常に一般的な、いろいろ解釈可能なものになっていて、非常に羨ましいなと思っております。
 実際に、私どもは20年、30年と経つと、もう変わってまいりますので、そこを変えたいと思っても、寄附行為の目的・事業を変えるというのは、要するに財団の性格を変えるようなものだから、まかりならぬという話になりまして、時にはその他の上記の目的を達成する、"その他の"、というのを拡大解釈して事業を実施しています。このようなことが新しい法人制度においても続いていくのは大いに問題だと思います。立法の本来の趣旨、目的と、実際にその運用に当たり、そこを何かつなぐものが、指導監督基準だけではなくて、法律の中で何か読み込めるようなものがないものなのかということを感じます。それがまず第1点でございます。
 第2点は、先生のお話の中にたびたび、例えばNPO法を例にとって、危険ではないかという危険という言葉をお使いになられたかと思うのですが、その裏には公益法人というふうに峻別するのであれば、一定の優遇措置が与えられてしかるべきであって、そういうものを得るのであれば、ある程度きちんとしなければいけないということだと理解しました。現実の今の公益法人の社会の中を見てみますと、許認可のいろいろなもので免許とか、そういうもので一定の補助金が入ってくる法人については余り問題がないのかもしれないのですけれども、いわゆる純然たる民間の法人の場合に、収入を確保するのに大変な苦労をしています。多くの場合、免税の資格もなければ、収入の入り方というものの入りの方が非常に制限されている。あるいは制限されていないにしても、積極的に支援する仕組みになっていない。
 しかしながら、実際に使う出の方だけは、法律をより厳密に適用するというようなことが起こっているわけですね。
 それで、先生が、最後の方で、"のみ"という言葉をお使いになられましたが、そこは非常に重要なポイントであるかと思います。例えば○○委員が財団法人から営利法人に転換されたように、○○委員のお話も私は実際に伺いたいと思いますけれども、本来の状況を実施するために、どこからか収入を得なければいけない。それが寄付そのほかで賄えないとしたら、自分達で収益事業をやらなければいけないわけですね。
 その収益事業は、今はみなし寄付というような形で、ある程度は振り替えることができるようになっています。例えば、駐車場とか、いろいろな全く本来事業とは関係ない収益事業をやって、軽減税率で税金を払って、寄付をするとか、何かそういう方向でやっているわけですけれども、先生も、"のみ"と、あとその他として社員の訓練とか、いろいろ事業を実施するのに必要な事業は認めるというようになったときに、そういうものというものは、やはり除外するべきだとお考えなのか、もしそうだとしたら今言ったような矛盾を解決することができるかをお聞きしたいのですが。

○ 第1の御質問は、先生のお口を煩わさず、その問題があるから、このプロジェクトが走っていると。
 したがって、この間、○○委員の例がありましたように、定款を追加しようと思ったら、別の財団をつくりなさいと、こういうようなことが起きてしまって、それで株式会社だったら自由に色々なことができるということで、やむなくというか、株式会社に移ったということがありましたので、そこのところは全く今の問題意識は私たちが共有しているところだというふうに思っております。
 2番目の方について、ちょっとこれはどうしても星野先生に御説明をいただかないと。

◎星野東京大学名誉教授 分かりました。その点は、実は、今日は省略してしまったのですが、NPO法人にも収益事業ができるとはっきり書いてありますし(第5条)、公益法人についても前から認める解釈がとられており、「基準」にもそれを前提として細かい規則が書いてあります。要するに、得た収入をその法人の公益目的のために使えばいいのです。あとは、質量とも「公益法人」の名にふさわしくないことをするな、といったことでしょう。その点は当然だという前提でお話をしていました。問題は法律に書くかどうかということですね。あるいはNPO法のようにはっきり書いた方がいいかもしれません。
 これは1番目の御質問にも関係しますけれども、どこまで法律的にきちんと書いて、どこからがより下位の法に書くか、指導の基準とするかは、色々あり得ると思います。立法上はかなり大事な問題で、そこを整理することも、今、会長のおっしゃいましたとおり必要だと思います。

○ それでは、○○委員から最後の御質問をいただいて、それからちょっとお諮りしたいのですけれども、この調子でいくと、議論が白熱してしまいまして、次回は10時からということになっておりましたが、大変恐縮なのですが、9時30分から始めさせていただいて、今日の積み残しを次回に整理させていただきたいと存じます。
 大変お忙しい皆さんと存じますけれども、よろしくお願いします。

○ 先ほど星野先生がお話しした公益法人の定義またはその要件として、事業の具体的な内容を書くことについて、消極的な御意見でございましたね。
 今度、新しい法律、制度をつくることについて、準則主義あるいは認証主義で新公益法人法をつくろうといった場合に、やはりその辺の基準をあらかじめ国民が知っておくというようなことを考えますと、あらかじめ公益事業という、公益目的というのは、こういう分野のものだといったことをある程度具体的に書いておいた方が明確になるのではないかという感じがいたしております。
 昨年の夏に、実はイギリスのチャリティについて、調査のため公益法人協会の団体で一緒に参ったのですが、イギリスはコモン・ローの慣習法で法律ができているのですけれども、チャリティについて、今まで4つの分類だけでやっておったのを、やはり国民があらかじめ明確な形で知っておいた方がいいということで、今、改正が検討されている中では、公益目的を12具体的に挙げて、例えば貧困防止とか、教育振興とか、そういうざっくりした目的なのですが、12の目的を挙げて、ただしその中に1つ、その他地域社会に有益なことといったことは必ず書いてあるというようなことで、具体化と一般化と両方図っているような法律にしようという動きがございますが、そういうのを見ると、やはり具体的な形で公益事業というのを書いた方がよいのではないかなという感じがしているのですが、先生の御意見はいかがですか。

◎星野東京大学名誉教授 ごもっともな御意見でして、NPO法がそうなっているわけですね。しかし、私が心配しますのは、NPOの場合にはまず幾つか書いて、後で足りないものを足すというふうにやっているのです。しかし、第1にそこで列挙されたことを一つ一つ調べていきますと、先にも申しましたが、率直に言って、解釈で補わないと困ると思われるものがあります。
 ですから、本当に検討していきますと、一つ一つというほどではありませんが、かなり議論の種になるものがあるような気がします。
 第2に、これは時代によって加えたり削除しなければいけないという問題があります。ちょっとしたところでもどんどん変わってきます。
 ですから、勿論、例示として挙げるのはいいかと思うのですが、例えば日本の民法34条は、法律の規定の仕方としては例示ではないのですが、−つまり「其他公益ニ関スル」とあるので、あそこに挙げられているものにあたれば直ちに公益法人になれるということですが−、全部列挙となると、NPO法人もあれでは足りないくらいですね。アメリカの連邦税法のように細かくすると大変な数ですし、イギリスのは逆に少な過ぎるようです。おっしゃった例だけで足りるのでしょうか。
 つまり、まず立法に際して一つ一つ検討するのが大変だということと、後の柔軟な措置が図りにくいということで、法律としては事業を挙げないほうがよいと考えています。政令という方向もありますが。そうなると行政の介入の問題が出てきますから非常に難しいでしょう。

○ どうもありがとうございました。したがって、この問題も私たちが○○委員を中心として、私たちが議論をしなければならないということだというふうに承知しております。
 星野先生、大変ありがとうございました。御親切にいろいろ教えていただきまして、今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは、ただいまの星野先生の御説明も踏まえつつ、新たな非営利法人制度における公益性の位置付けという問題について議論をいただきたいと思うわけです。
 前回の会議で、3回目ですけれども、公益性の概念について導入部のみを議論していただいたわけであります。
 今日は4回目になりまして、引き続き公益性の概念全般について議論をいただきまして、その後、公益性を判断する意義について御議論をいただく予定でございます。
 まず、事務局から資料と、それから公益性の概念の公益性を有する非営利法人の捉え方について説明をいたします。

● 資料2の「1.公益性の概念」の(2)から御説明させていただきたいと思います。
 「(2)公益性を有する非営利法人の捉え方」でございますが、最初に留意点といたしまして申し上げておきたいのは、ここの御議論は公益性を考える場合に、特に法人に着目して、いわゆる事業ではなくて、法人に着目してこうした公益性を有する公益法人のカテゴリーのものを設けるという前提ではなくて、仮に公益性を有する法人を法制上定義する、あるいは一般的に捉えるといった場合にどう考えるかという問題の設定でございます。 「○ 公益性を有する非営利法人の法制上の定義」ということで、最初の「・」に書いておりますのは問題提起でございます。法制上どのように客観的かつ明確に定義するのかと。
 1枚おめくりいただきまして、先ほど星野先生の方からも御説明いただきましたけれども、公益性を有する非営利法人の定義の仕方ということで、右側の「・」の1つ目は、公益性を有する非営利法人について現行法を踏まえた定義という1つの考え方と。
 それから、法人ゆえに必要となる定款や登記等の内容。具体的には法人の目的、事業、規律等になりますが、それに分けて考えるべきではないかと。
 ただ、ここにつきましては、先ほど星野先生の方から、それをどう書くかといった問題で、余り実績がないというような御指摘があったかと思います。
 2つ目の「・」につきましても、そこを敷衍いたしまして、目的のほかに、法制上定義をする場合にどこまで書くかということでございます。
 ここで御参考までに御関係する委員の方々の御了解を得まして、4つの公益法人の定款や寄附行為をお手元に配付させていただきましたので、先ほど来、お話が出ておりますので、あえて個別に御紹介申しませんが、一応触れさせていただきます。
 それから、もう一つの点は、これも星野先生がおっしゃったとおりで、大事なのは目的だということで、1つ目の「・」は、これは星野先生が以前おっしゃられたのを引用させていただいたものです。
 それによりますと、公益を目的とするのが公益法人であって、その意味は、そのやる事業が専ら直接第一次的に不特定多数の人のためのものだということで、それが間接的に、二次的に不特定多数の人の利益になるのでは足りないというお考えです。
 ただ、先ほど先生のレジュメでは、もう少しやや修正をしておられるようで、先生のレジュメの3ページ目の(4)の試案では、いわゆる専らと申しますか、のみと申しますか、その言葉は扱っておられないようです。
 その下の3つの「・」、これはこの目的を考えるに当たって、現行の公益法人に関する指導監督基準とありますが、そこでは一体どういうことが規定されているかということで、ここにつきましては、参考資料として別途1と2を御用意しておりますので、そこも御覧いただければと思いますが、1つ目の「・」は、まず、いわゆる基準において公益法人は積極的に不特定多数の者の利益の実現を目的とするものでなければならないとされている。
 次の点が、いわゆる構成員相互の親睦・連絡・意見交換、あるいは特定の者のみを対象とする福利厚生・相互救済等を主たる目的とする公益法人は適当でないと。ただ、従たる目的というものは認められると、指針ではそうだと思います。
 3つ目のところは、いわゆる特定個人の精神的、経済的支援、後援会等のようなものは、これは従たる目的としてであっても認められないと、そういうことが決められております。
 それから、ここまでが法制上定義するとどうなるかという話でございますが、ここから後が、いわゆる法令用語といいますか、法制上の話は離れまして、一般的に法人の公益性をどういうふうに考えるかといった話でございます。
 星野先生の方から、この辺は一括して考えられるだろうと御指摘がありました。
 まず、非営利法人が公益性を有すると判断するための要件、その基本的な考え方ということで、最初の「・」は定義とパラレルでございますけれども、そうした法人をどう捉えるかといったときに、法人の目的、それから事業、それからそうした法人に必要な規律の3つの面からとらえることができるのではないかと。この場合の規律は非常に広くとらえて考えております。目的や事業で入らないものは、ほとんどすべて規律という考え方でございます。
 そういう捉え方でよろしければ、次にこうした公益性要件を考えるときに整理をした方がよかろうということで御指摘をいただきまして、それが2つ目の「・」でございます。 時間軸を念頭に置いて、1つ目は公益性を判断する際の要件、言わば一階、二階という言葉がよろしければ、一階から二階へ上がるときの要件。
 2つ目として、公益性が判断されて、それが維持確保されるための要件、二階が維持される要件というふうに分けた考え方がよろしいのではないかという御指摘。
 仮に、こうした整理でよろしければ、それに沿って考えますと、3つ目の「・」でございますが、このうち前者のいわゆる公益性を有すると判断する際の要件につきましては、最初に申しました法人の捉え方としての目的、事業、規律のそれぞれにつきまして、いわゆる一階の非営利法人の要件に加えて、一体どういった要件が必要になるのかという点がポイントになるのではないかと思います。
 その次といたしまして、後者の公益性が判断されてからにつきましては、公益性が判断されるときの要件が、公益性判断の後も遵守されている必要があるということになろうかと思いますが、更に考えますと、その際に定款等に記載されております目的や事業、あるいは規律の内容といった文字的に情報がある、それだけを判断するのではなくて、実際の事業の実施状況でありますとか、規律の遵守状況でありますとか、活動の実態など、いわゆる活動実績についても、その判断の要素とするというのが適当ではないかという点でございます。
 また、これは仕組みのところで、また御議論いただきますが、そうしたことをどういった仕組みで担保するかという御議論があります。
 その次の「・」として、こういうふうに考えてまいりますと、実は、活動実績を判断要素とするという点については、いわゆる公益性の判断をする、一階から二階の際にもそうしたことを判断要素とすることが考えられますけれども、その際、新設の非営利法人ということについて、そういうものを要件とした場合には、御議論があるのかなという点でございます。
 その次の公益性判断の要件を考えるに当たっての視点でございます。ここは、星野先生から補足をかなりしていただきました。星野先生の言葉で言えば、横から見たときの切り口ということで、重複するので申し上げませんが、簡単に申しますと、こうした公益性の判断の要件を考える際に、いわゆる客観性、柔軟性、透明性、自律性が重要であると。
 ただ、自律性につきましては、いわゆる何らかのそういった公益性を判断する機関の関与を最小化するという点ばかりではなくて、先ほどもありましたような、公益性をきちんと担保する、そういう仕組みも同時に考えていかなければいけないので、その調和をどう図るかという点があるということでございます。
 とりあえず、前段の公益性の概念につきましては以上でございます。よろしくお願いします。

○ ただいま、事務局から御説明がございましたが、更に星野先生から詳細な御説明をいただいていましたので、それを踏まえまして、公益性の概念について御意見をいただきたいと考えております。
 この資料2の「(2)公益性を有する非営利法人の捉え方」というのは、極めて論点が多いので、これ全体を論議していると大変なことになりますので、上下2つに区切って議論を進めたいと考えております。
 まず、最初の「○ 公益性を有する非営利法人の法制上の定義」という項目がございます。これにつきまして御発言がございましたら、是非お伺いしたいと存じます。
 星野先生の御説明もございましたので、仮に公益性を有する非営利法人を定義するとして、その目的をどのように考えるかという問題が課せられておりますので、御議論をいただけるとありがたいと思います。

○ すみません、議論に入る前に、1点ここで議論をする際の前提条件のようなものを確認させていただきたいのですが、先ほど星野先生のお話の中では、準則と課税というものは、必ずしも一対ではないのではないかという御意見をいただいています。 今の御説明ですと、一階建て、二階建てという話がありまして、これは公益と認められるものについて峻別をして課税をするということを示唆している説明であると思うのですが、もし、仮に星野先生の意見を参考にしながら議論をするとすれば、必ずしも一階建て、二階建てという区分について、それを前提条件としなくてもいいことなるのですが、今回、どちらの方で議論をすればよいのでしょうか。

○ それは、どちらの立場で御議論をいただいても結構だと思いますよ。今のような主張をしていただいても結構ですし。

○ 同じように、今までずっとどうしても私の気持の中で収まらなかったことが、1つ収まったのは、準則ということではなくて、非営利法人、ここで前提にしている公益性のある非営利法人というのが、どうしても私の気持の中で収まりがつかなかったんですが、非営利法人の中の私どもは公益法人と言い換えた形の公益法人のところをこの回では御議論をさせていただくという形で、前提を先ほど○○委員が言われたような形でいかせていただけると非常にすっきりすると思います。
 ○○委員も常におっしゃるNPOのことが、今回はここでは議論をしないという前提で私たちは閣議決定後の場に就いていますので、そういう意味では、公益法人そのものの改革という形で、今回、事務方の方が皆さん公益性を有する非営利法人というふうに言い換えていただいているのですが、実質上は公益法人の改革であって、それはある意味では一階、二階がなく、今日の星野先生のお話で非常によく分かったのは、登記により一階だけでなく、二階まで行ける可能性があると思っているものですから、そういう意味では一階、二階の議論ではなくて、まさに公益法人、非営利法人と言い換えない方が実はいいんじゃないかなと思っております。
 もう一つ、非営利法人法そのものについては、公益法人法を見定めた上で、もう少し広い概念で非営利法人法を定められたらどうかと、今日、星野先生からも御提案をいただいたということになりますと、このワーキングではない、ここでは公益法人のそのものの御議論を実質上させていただくという方が、私としてはすっきりするなというふうに思ったのですけれども、いかがでしょうか。

○ それは、別に一階建てと二階建てということを想定してここでは議論しておりませんので、それから今の課税か非課税かということも星野先生は関係がつけにくいということをおっしゃっているわけですから、今のような○○委員のような考えで議論していっていただいても差し支えないと思いますよ。
 今のお話のように、公益法人といえども逆に営利法人もあるというようなこともあるわけですから、ここでは公益法人であって非営利法人であるという、その制度の古くなったのを取り替えるということを中心に考えてよろしいのではないでしょうか。

○ 基本的に同じことの繰り返しになりますけれども、私どもの議論の出発点というのは、まず一般的な非営利法人制度をつくるというのが、この有識者会議を設けた出発点の前提です。その公益制度を切り離した形での一般的な非営利法人をつくって、それから後、そこから新しい公益法人の公益性をくくり出して、二階建てと言えるのかどうかなんですけれども、そういういわゆる一般的な非営利法人と、更に公益性をどういうふうに判断して新しい制度をつくっていくかと、それが議論の前提になっているのですけれども、ただし、御議論のやり方というのでしょうか、それを公益性の捉え方とかいうことでここでやっていますけれども、これは必ずしも今の段階では、一階からくくり出しての公益性という議論ではなくて、今の公益法人制度をどうやって変えたらいいのかと、そういう観点からアプローチをして意見をいただくというのは全然構わないというか、その方がやりやすいというのであれば、そういう形でお願いできればということなのです。
 NPOとの関係は議論しないとおっしゃいましたけれども、NPOをどうするかという議論をするのではなくて、まさに中核となる公益法人制度を新しく変えていくときに、NPOとの関係は最終的にどういうふうな整理をすればいいのかということは、当然議論をしていただくと、そういうふうに私どもは整理をしているのですけれども。

○ 手法論の違いだというふうに思いますが。

○ だから、結局のところは同時に考えなければいけないということなのですね。だけど中心は公益とは何かということから出発しなければいけないと、こういうことなのですね。

○ 恐らくいろんな利害が背後にあって、もう少しはっきりさせたいのですが、1つは今回の公益法人の改革と言われているのが、既存の、いわゆる民法上の公益法人の制度がいろいろと問題点があるというので、これを改革したいというのが一つの出発点ですね。
 ところが、他方でNPO法人というのがあって、現行の法律制度をもし全面的に変えるということになると、NPO法人というものも影響を受ける可能性があります。いわゆるNPO法人も公益的な目的で事業を遂行しているわけですから、広い意味では公益的な法人の中に入ってくるわけです。しかし、これはNPOの関係者の方からすると、現在の公益法人の改革に影響されたくないと、NPOの法人制度というのは、自由度は大きいし、それなりにうまく機能しているので、それを触らないで公益法人の改革をしてほしいと、こういう希望があるのでしょうか。
 そういう考え方からすると、NPO法人については、今回の議論から外して考えてほしいという気持が恐らくあるのだろうと思うのです。
 ○○委員の立場は、そういう立場だというふうに理解してよろしいのでしょうか。あるいはご自身の考えではないとしても、そういう考えがあるというご指摘なのでしょうか。
 他方で、○○委員が前から何度も言われているように、あるいは○○委員はもう少し深い意味が別におありかもしれませんけれども、一方でNPOの法人があるので、それと公益法人というものがどういう関係になるのかというのを明らかにしなければいけない。NPO法人の問題を抜きにして公益法人だけを議論するというのは問題ではないかと。ここでNPOの法人のことも一緒に議論すべきだというご意見ですね。
 この2つは大分違うご意見です。おそらくこの会議の中にも両方の御意見があるのだと思うのです。一緒に議論した方がいいというのと、それは別にした方がいいというのと。 実際に、そういう意見の対立があるときに、どうしたらいいかということなのですけれども、これは私の個人的な意見ですけれども、私は、今は、純粋に公益法人について議論すればよく、NPO法人との関係については必ずしも正面からは議論しないでよい。
 今日、星野先生が言われたように、公益法人というものの理想的な形というのは一体何なのかという観点から議論をすればいいことで、後でNPO法人との調整をしなければいけないという問題が出てきたときには、それはそのときにすればよいことです。私は、個人的には、もし公益法人の制度をつくるのであれば、できるだけ現行のNPO法に近くなるような制度がよいのだと思いますけれども、そうなるとなおさらNPOとの関係は考えなければいけないことになりますが、それは後で議論することでよいのではないかと思います。
 当面はあるべき公益法人というものは何かということを考えればいいのだろうと、そんなふうに考えております。これが皆さんの共通の理解なのかどうかはよく分かりません。
 もう一点ついでに申し上げますと、今の問題とも関係するのですが、今回の議論の出発点の1つが現在の公益法人というものはいろいろ問題があるし、仮に準則主義に移行するのであれば、いろいろ手直しをしなければいけないというので、どんな公益法人が適当なのかを議論すべきだということだと思いますが、これは公益法人というものをつくるべきだという前提で考えたときの話ですが。 その際に、従来の公益法人のイメージから出発して議論していくと、今日の公益性の概念も関係しますが、公益性の概念というのは、かなり狭いものになってしまうおそれがあります。しかし、果たして、それがいいのかどうか。公益性の概念についても、もう一回議論し直して、あるべき公益法人ということを考えると、公益性の概念が、従来の公益性の概念よりは相当広がるという可能性もあって、今日は、星野教授は公益法人の純化いうことで、ちょっとニュアンスとしては少し狭くとらえるような御意見だったかもしれませんけれども、逆に私は広くなることもあり得ると考えています。
 今日の資料の、2ページ目のところに公益を目的とする法人の、いろんな従来の指導監督基準での公益性判定基準が出ておりますけれども、これが大分広がる可能性があって、これが広がってくると、さきほど議論になったNPOの法人との関係というのが出てくる可能性があるのですね。
 ちょっと取りとめのないことを言いましたが、1つはNPOとの関係をどういうふうに整理して議論するかということと、それからその問題と実は公益性の概念をどういうふうにとらえるかという問題はやはり関係していて、私は公益性の概念についてできるだけ広く取った方がいいと思いますけれども、そうすると、やはりNPO法人も少なくとも目的というレベルではオーバーラップしてくると、そんな感じがいたします。

○ ありがとうございました。この会議の使命といいますか、マンデートといいますか、位置付けについては、今、先生のおっしゃったようなこと、先生個人的とおっしゃいましたが、皆さん御理解はいただいていると存じます。
 ただ、今、NPOとの関係を論じてしまうかどうかということについては、これは1回目に議論がありましたとおり、私たちは、この公益性を、新しい非営利法人制度ということと同時に、現代における、あるいは将来における公益性のある法人というのは、いかなる性格のものであるかということを議論しているというふうに思っているわけですが、いかがでしょうか。

○ 今の○○委員の御整理で、そういうことだと思いますが、どうもこの理念を考える際に、今、星野教授と○○委員との間で、若干、違うイメージを提示された、これは非常に重要な点だと思うんです。
 恐らく、理念だけで議論していても余り意味がないので、その理念をどう設定するか、次にそれをどうやって担保するか、最後にその理念にどういう効果を結び付けるかと、この三者をセットで考えませんと、単独で取り出してもなかなかうまくいかないのではないかと思います。
 先程の星野教授は、公益概念を純化し、それでガバナンスを強化する。他方で入口は非常に緩やかにする。そうした場合に、今度は、設立後の問題があるということを御指摘になられて、それをどうやって解決するのかというのは、これは今後検討すべきであるというふうにおっしゃっておられます。多分、そういう問題があるのでしょう。あるいは○○委員のようなイメージをお出しになったときに、では効果をどう考えるのかということも出てくるかと思います。ですから、どうも全体をセットで考えなければいけない。
 そうすると、現在ある法人との関係ということを考えると、非常に混乱いたしますので、まずモデルとなるべきものを考える。その際には、勿論いろんなことを考えるわけですけれども、それで現在あるものとの調整、関係ということは次の段階の議論ということでよろしいのではないかと思います。

○ ここで議論していることなのですけれども、法人格を与えるかどうかということだけを考えれば、非営利法人法制ができれば、その中で公益法人もつくれるわけですので、むしろ公益法人の要件を議論することの意味は、星野先生が先ほど御説明なさいましたような一定の優遇措置を与えられるようなものをあらかじめある特定の法人類型としてつくるとしたら、どのようなものとして作るべきかということになるのです。
 突き詰めて言ってしまえば、いろいろな意味での特別の措置、特に税制の優遇措置が受けられるような法人類型を非営利法人の中でつくるとしたら、どういったものでなければ、そういった措置が認められないかという観点で、やはり議論せざるを得ないのではないか。
 単に法人格を与えるためだけのことで考えるのでしたら、さっき○○委員がおっしゃいましたように、広く認めていいと思います。そうすれば、ほとんど非営利法人一般法と変わらなくなってしまうわけでして、やはり税制上等で優遇を与えられるような、社会的に見て、やはり特別の優遇が適当と考えられるような法人をつくるとしたら、どういう要件が必要かという観点で議論をする必要があるのではないかと思います。
 そうしますと、さっきの星野先生のお考えは、多分そういう団体であるためには、かなり目的を絞って、入口をかなりきちんとチェックしないといけないのではないかという立場からの御報告だったように理解しております。私も、そうでないとそういうような優遇措置を受ける範疇としての法人としては認められないのではないかと思います。
 星野先生は、その場合に、入口の登記官がチェックできる要件としてはどういうものがいいのかということをかなり御議論になって、非常に有益な御議論だったと思います。しかし恐らく入口だけのチェックだけでは多分十分ではない。
 登記した後で、実際の活動が登記していることとかなり乖離してしまっているような場合、入口の登記の時点のチェックだけしかないということですと、いろいろ後から非難等も出てくるような活動をすることがあり得ると思いますので、行政庁による監督に変わる別のチェックのシステム、検証をするようなシステムをつくることが大事になってくるのではないかと思っています。恐らく実際の活動を報告させ、それを公開して、社会的にそれがチェックされるような仕組みを考えることが必要になってくるのではないかと思っております。

○ 星野先生も登記のときのチェックだけでいいというようには、私は受け取らなかったのですが、むしろ、その後のフォロー、それからそれを誰が審査するか、あるいはそれをパブリックにさらすといいますか、情報公開するにはどうするかというようなことまで若干お触れになったように私は理解しております。まさに○○委員のおっしゃったとおり。

○ 今の先生のお話で、現実論として私もほとんど同じように考えているわけです。高邁な理念で抽象的な観念的なものをつくるのは勿論結構ですし、それがあって初めて、灯台みたいに将来はなるのですね、NPOの欠点から、既存の官公庁がやっている天下り機関の是正に至るまで、この基準が10年、15年経ったら効くかもしれないという意味だったら、いいのです。
 しかし、その中で公益的な仕事をやっているのです、だから税金をまけてくださいという話をするのであれば、そこはその瞬間から極めて現実的な話になってきます。この設定がうまくでき上がっていないと、ないしはたった一つの基準で税調の方にぽんと玉を投げると、そうすると議論がもたないに違いないと私は予想できるのです、今の話を聞いていますと。2つか、3つの選択肢があって、我々は色々考えてみたと、こういうのはどうだと、従来の税調並びに財務省の見解が違うかもしれないけれど、もう一つ別の観点からどうだというふうな玉を投げてもいいし、全く従来の財務省の役人が考えているような税制論に沿ったような議論をして、誰が基準を満たすかどうかを判定するのかということを含めて、方法論に至って議論するのもいいし、1つの答えを出すのは絶対にだめですね。建設的な議論にならないでしょう、これはいつまでにやるか知りませんけれど、夏から秋にかけて。
 だから、今申し上げたように私は現実的に考えるので、そうすると一体どういうふうに着地点を見定めるのか。これは間違っているかどうか分かりませんけれども、税調というのはあるわけですから、これとどう対抗できるのか。この間の接点をよく考えていただかないと、抽象的で概念的な規定論は構わないから、それはそれで立派にやってもらうということだと思いますけれど、この話は着地ができないのです、このまま放って置けば去年と同じことです。そこのところをしっかりと、色々な選択肢を考えていただいて、部分的には財務省の硬い頭を是正するようなアプローチがあってしかるべきだし、それが難しいと思えば、どこかでやらなければいけないと。

○ それが、○○委員の去年のことを繰り返しているのかと、この間おっしゃったことですね。

○ それは無駄だと思います。活かすことをやらなければ。

○ それについては、一体公益性とは何かという問題をもう少し皆さんで議論していかなければいけないと、捉え方をですね。

○ 星野名誉教授の御意見をうかがって、いろいろと頭の中がはっきりしてきたように思うのですけれども、1つ、やはりここで早い段階で決めておかなければならないことというのは、二階部分についても民法で規定するのかどうかという、民法の規定の範囲の問題というのを、民法は一番基本的な法典ですから、色々な事項について規定しなければならないと思いますが、前からちょっと発言をして、ちょっと意味がはっきりしなかったかもしれませんが、今日のペーパーの参考資料の中に1つ出てまいりますけれども、公益法人であることについて、何か特別の取扱いをするかどうかということについて、どういう法の分野で規定が置かれているかという資料が、今日、参考資料の中に出ておりますけれども、もしも税金だけが問題であるとしたら、非営利法人の中で公益性の強いものは、おそらく税制上の特別優遇を受けるだろうからということで、民法の中で規定しておくのか、それとも非営利法人の一つの類型で、しかも税制上問題になるだけだから、税制上公益法人という規定を設ければいいのかという問題ですね。
 つまり、公益法人について民法で規定しておくのかどうかということは、やはり法制度の在り方として、かなり早い段階で決めておかなければいけない問題ではないか。
 そして民法で規定しておけば、恐らく独立の組織によるいろんな規制とか、判断ですね、そういうものは当然結び付いてくるでしょうし、民法の中で規定しないで、租税法の税制の中でだけ規定すれば、おそらく国税庁が非課税の取扱いをするかどうかというのは個別に判断しなければならないということになって、恐らくは財務省や国税庁がどう言うかということとも関連してくるので、そういうことも考慮に入れた上で、民法で規定した方がいいか、それとも租税制度の中で規定した方がいいのかというような問題、これはかなり早い段階で決めておかないと困るのではないかという感じが私はしているのですが、○○委員がどうお考えか分かりませんが、これは民法の問題ですから、非常に重要な問題。民法はどこまで規定すべきか。
 それで、公益法人というのは、確かに法人の1つの類型だと考えれば、非営利法人の1つの類型だと考えると、民法の中で規定しておいた方がいいということになると思いますし、そうすると、特別の税制上の優遇措置を受けるものについては、何か中立的な組織で決めるとか、さっき星野名誉教授も、できた後のことも重要で、それについてはチャリティのようなものとか、あるいは中立的な委員会で決めることにしたらどうかというようなことをおっしゃいましたけれども、その辺はちょっと、民法の方がどうか、○○委員はどうお考えなのかと。

○ とても重要な御指摘だと思います。ただ、この有識者会議での報告書は、民法の改正の部分も含むかもしれないという前提があるわけですね。民法を改正しなければならないということではないけれども、それが必要な場合には含まれるというふうに判断してよろしいですね。

● そうですね。

○ それから、もう一つは民法で規定しなくても、また、今日の星野先生は、公益法人協会で査定するというか、認定するというようなことが可能かどうかというような議論もありましたけれども、一方、NPOの方では認定NPO法人があって、それは国税庁が決めているわけですね。それとの兼ね合いをどうするかですね。それを一括して、NPOと、これとが一緒になったら、もうNPO法とこちらの考えているのは一緒になっても構わないということになってしまいますし、どうもそうでもないのではないかとも思えますし、いかがでございましょうね。

○ ○○委員の御指摘は、おそらく私の理解するところは、こういうことなのだと思いますが、公益的な目的で活動する法人について、税の優遇措置を与えるということは、とにかくそういうことがある意味でのねらいなのですけれども、そういう優遇措置を受けるための器になる公益法人というものの仕組みとか、いろいろそこに適用されるルールというのが私法的なルールなのかと、それとも税の目的だけのための言わば優遇税制の条件みたいなものなのかということだと思います。
 例えば、一例を挙げますと、残余財産というものの分配というものは、公益的な団体の場合には、寄付などで集まってきているし、それを構成員に分配するのはまずいだろうということで、残余財産の分配などは、おそらく公益的な団体については、禁止するとか、そういうルールが考えられるわけですけれども、こういうルールというのは、おそらく単なる優遇税制の条件ではなくて、やはり法人の在り方についてのルールなので、したがって、○○委員のおっしゃる公益法人というものは、やはり私法的なルールのレベルである程度仕組みがつくられていると。それを民法に規定するか、民法の外の特別法につくるかというのは、ちょっと技術的な問題だと思いますけれども、そういう意味で、単なる税のための条件ではないものがあるのではないかということではないでしょうか。私はそんなふうに理解しております。

○ 私の質問の趣旨はそういうことでございます。

○ 一般にNPOの人もそうですし、税金の話になると、ものすごく感情的になるのです。前に私が一緒に議論した人を知っていますけれども。営利で儲かったら税金を払うのは当たり前です、こんなことは、儲かりもしないことをやるのだったら、それで怖いことは何にもないわけです。怖いのは寄付金だけですよ、もっとはっきり腹を決めてものを言いなさいということです。本当に儲かるのだから、役所の天下りがやるようなことだって、手数料をしっかり固めて、しっかり取っているところはたくさんあるわけだから、それはそれでまた考えなければいかないのでしょう。
 しかし、NPOの諸君みたいに、これから真面目にやろうというときに、本当に営利だったらごまんと儲けてしまって隠しようがないなんていうことをやるのなら、堂々と申告して金を払えばいいのです、怖いことは何もない。NPOをつぶす理由は全くないわけだから、寄付金をどう集めるのかというのは、これはまた別のカテゴリーに入るような話で、これはもっとややこしいかもしれないです。だから、財務省と接点を持つのは大嫌いだとか、財務はみな嫌だというぐらいの議論から実際は始まるのだから、こんなことをやったら、建設的な議論には全くなりません。

○ ○○委員のお話も大変興味深く伺っていたのですが、確かに一部の方は感情論に走っているかもしれないのですけれども、もともと利益をどう考えるかというところは、その配分以前に、非営利組織についての捉え方が違うのではないかと思います。
 つまり、利益というのは、単純化してしまえば、所得から経費を引いたものですが、非営利組織の場合は、その経費の中に、多くは無償のボランティアの方達の労働力ということが全く計算されませんので、もしこれらの経費を金銭に換算して出した場合には、結構赤字になっている、あるいは、利益が上がっていない活動の方が多いのです。
 そこのところを、いわゆる営利企業で人件費をきちんと換算して計上しているものと同じように考えるというのは、非営利法人の特徴、あるいは、性格をよく理解していないのではないかと思います。

○ という意見もあります。ただ、それをボランティアで皆さんが働く部分を経費として換算すべきものであるかどうかと、これも問題です。

○ これは、議論を絞らない方がいいですよ、向こうだって色々考えているわけですから、これ一本でぎりぎり優遇してほしいなんていうことを言ったら、ちょっと待ってくださいという答えが出るのは当たり前です。

○ 今、皆さんの前提認識というのは、今日少しはっきりしてきたと思うのですが、その先になると、幾つかの選択肢がある。二階建てを含めてですね。それ以外については、幾つかの選択肢を書き込むような報告書をつくるという落とし込みをするということですね。

○ 先ほど述べました公益性の概念を広く捉えるということについては、同僚といいますか、法律家の方からも批判というわけではないにしても、御意見がありましたので、補足説明をしたいと思います。戦術的なことを考えると、財務省が税の優遇措置を認めるような公益法人の内容ができればいいと思うわけですけれども、そのための理論的な検討もいたしますが、この問題はかなり政策にも影響されるところがあって、そのためにこれはという決定的な制度はなかなかつくりにくい。
 私は、公益的な団体について、一方で広く捉えるのが適当だと考えています。広くというのは、そんなに広くするわけではなくて、例えば、具体的に挙げられているものとしては、学会などのようなものがあります。これも定款の書き方によって、主たる目的を学問の発展であるとすれば、学会は公益目的ということになるのでしょうけれども、会員相互の共通の利益を図ることが中心となりますと、これは公益目的とはちょっと違ってきます主務官庁によっては、現在の制度のもとで学会を公益法人にするところもあれば、そういうものは公益法人になれないという指導をしているところもあるようです。この部分は、なりグレーゾーンです。私は、このグレーゾーンを含めるような公益性の概念というのが必要ではないと考えています。
 少し戦術的かもしれませんけれども、一方で少し広げた形の公益的な団体、公益法人制度というのを考える。他方で、少し狭めた、財務省がそこら辺だったらいいだろうと考えるような落としどころというとちょっと語弊があるかもしれませんけれども、少し狭い公益性の概念に基づいた公益法人制度を提案する。そういう2つのモデルを用意することは考えられるのではないでしょうか。
 そして、最も広く公益性をとるのであれば、先日お話いただいた大村教授のように、非営利法人の活動も何らかの意味では公益につながるので、非営利と公益を全部一連のものだという考えもあると思います。そうすると、モデルとしては、3つぐらいがあるのだと思います。
 それで、○○委員が言われたように、これら幾つかのモデルを検討して、その長所、短所と両方あると思うのですけれども、それをこの会議で十分に議論して提案するというのが現実的なのではないかと思います。

○ ありがとうございました。だんだん予定の時間が経ってしまうわけですが、先程事務局から御説明をいただいたペーパーの3ページでしたか、この公益法人の位置付けですとか、あるいは今の複数案といいますか、選択肢をつくったいろいろな考え方を、これから構造をつくっていくということについては、これまでほぼ皆さんの合意をいただいたと思いますが、それで今日、本当は御議論をいただくはずでありました、公益性を判断する意義というのがあるわけですが、これは今日は事務局からお話をいただいておいて、次回、大変恐縮でございますが、9時半からにしていただいて、そのときにお答えを持ってきていただくようにしたいと考えております。

● では、資料2の3ページ目になりますけれども、「2.法人制度上公益性を判断する意義」と、こちらについて御説明を差し上げます。
 2つに分かれておりまして、まず、前段が「○ 公益性を有する法人を他と区別して扱う場合の考え方」ということで、留意点に並べております2つの「・」は問題提起でございます。
 どのような考え方に基づいて、公益性を有するものを他と区別するのか。そもそも公益性を有する非営利法人にはどういった価値を認めるのかということでございます。
 その下に2つほどバーを引いておりますが、前回お配りしたときには入っておりませんでしたが、○○委員の方から御指摘をいただきまして付けたものでございます。
 こういった制度設計をする際の、いわゆる思想哲学に関わる部分でございますけれども、そこについて2点ほど御意見をいただいております。
 1点目は、いわゆる市場経済では十分に供給することが困難な財やサービス、それを提供し得るといった機能、それを非営利法人が担いますが、更に公益性を有する観点から、それにふさわしいしっかりした規律、ガバナンス等を持つ法人の受け皿の仕組みをつくることによって、そうした財やサービスを安定的、効率的に供給する基盤となるのではないかという御指摘です。
 もう一点目は、もう少し個人レベルの活動に視点を落としまして、そうした仕組みが私人のいわゆる寄付等の、あるいはボランティアもあると思いますが、そうした善意の行為の受け皿になるといったことを通じて、私人の公益的な活動が促進されるといった面もあると思います。
 なお書きのところでは、前回、総論の御議論のところで御意見があったことを書かせていただきました。こういったことによって構成員、社員のモチベーションが高まるといった面もあるのではないかと。
 同時に、制度設計の考え方として、星野先生もおっしゃっているような公益国家独占主義といった考え方を脱却するのかどうか。
 それから、最後の「・」は、前回も御説明いたしましたけれども、特に公益性を切り出す場合に、法人ではなくて事業に着目するという考え方もあるけれども、どう考えるか。この点につきましては、星野先生からも御説明、御指摘があったかと思います。
 それから後段が、いわゆる制度設計の効果というところでございますが、法人制度上公益性を判断する機能でございます。
 まず、1点目は、これは○○委員の方から、先般、レジュメを使いまして御説明いただいたときの内容をまとめさせていただいたものでございます。
 2つ前段と後段に分かれておりまして、国等の機関が公益性を判断する場合に、法人の社会的信用が高まるといった効果があるのではないかと。
 同時に、その公益的活動を継続するための組織が整っている組織について、そうした判断がなされるとすれば、ますますそういった社会的信用が高まる効果があると。
 それから、後段が、そうした公益性の判断を国等の機関がすることに対して、積極的にとらえる考え方と、それから批判的に考える見方と両方ございます。
 積極的にとらえる立場に立ちますと、寄付をする方の情報収集コストを少なくすることができるといった効果、そういった指摘がございます。
 それから、批判的に見る立場からは、そうした公益性を国が判断するとなると、いわゆるお墨付きになりかねない。あるいは前回も御議論いただきましたように、公益性そのものは非常に多義的でございますので、そうした曖昧な概念をきちんと判断することができるのかといった御指摘もあるかと思います。
 2つ目の「・」が、どのような効果を念頭に置いて公益性を有するものを区別して取り扱うのかということで、ここでは3つほどバーを付けさせていただいております。
 1点目は、いわゆる税の効果でございます。税の効果につきましては、ここにございますように、もう既に現行の公益法人制度の下で、いわゆる営利法人とは異なる課税上の取扱いがなされております。今回、新たな非営利法人制度で公益性を有する法人について、何らかの仕組みを設けるなり、特別の取扱いをするといった場合に、それを現行からどう変えるのかといった点がポイントになろうかと思います。ただ、その点につきましては、税制上の話でありますので、最終的には政府税調の場で検討されると。
 2点目は、いわゆる看板と言われるようなものでございます。非営利法人法制におきまして、いわゆる法制上は名称が既に与えられるとしても、それとは別に何らかの呼称でもって、その他の法人と区別する仕組みを設けることによって、そうした公益的な法人の社会的信用が高まり、その活動が促進されるといった効果が考えられます。
 3つ目が、それ以外に何かあるのかということでございまして、この点につきましては、先ほど○○委員からも御紹介いただきましたが、参考資料の4を御覧いただきたいのでございますけれども、一番最後の資料でございますが「現行の公益法人制度に係る主な法律上の効果」ということで、法令検索をいたしまして、それを整理したものでございます。 最初から簡単に御紹介いたしますと、主な法律上の効果として、1つ目がいわゆる法人格の付与、いわゆる民法の規定でございますけれども、その前提として主務官庁の許可がございますが、それによって法人格の付与という効果があると。
 2点目が名称の使用制限。
 それから、民法を離れまして、次が税制上の取扱いということで、ここでは法人税法だけ参考に挙げております。その他のものもございますが、いわゆる税制上の取扱いの効果があると。
 1枚おめくりいただきまして、その他に何があるかというので調べますと、いわゆる指定法人制度に当たるものがかなりございます。
 これは特別な法律でもって、いわゆる主務官庁、特定の官庁が特定の業務を行う法人を指定する際に公益法人を指定しているということでございます。
 あるいは、指定法人制度には、必ずしも当たりませんけれども、その下の社会教育法を参考として挙げておりますが、ここでは公民館になっておりますけれども、考慮する際に、その要件として公益法人であることが規定されているといったものがございます。
 今回の例で言えば、現行との比較で申しますと、先ほど御説明した最初の法人格の付与は、これは非営利法人法制によって与えられます。それから名称の必要性についても、おそらくその方向かと思います。
 こういった中で、公益法人、あるいは公益性を有する法人について、特別な取扱いをする際には、どういった考え方で制度設計をするのかということかと思います。
 戻っていただきまして、最後に5ページ目、いずれにしましても、こうした効果をどのように考えるかということによって、いわゆる公益性を判断する仕組みのありようというものの根っこが固まってくるのではないかということでございます。
 とりあえず、私からの説明は以上でございます。

○ ありがとうございました。次回は今のような問題、つまり、もう一度、公益性とは何かと、あるいは公益性を担保する団体とは何かと、法人とは何かというようなことを始めに御議論いただいて、それからその後、公益性を取り扱う仕組みとはいかにあるべきかということを御議論いただくことにいたしまして、次回はお話しいただく先生をお呼びしてございませんので、先ほど9時半からということをお願いしましたから、3時間たっぷり皆さんで議論していただくことができると考えておりますので、どうぞ御協力をいただきたいと思います。
 それでは、最後に、事務局から次回の日程についてお願いします。

● 今、○○委員のおっしゃられたとおりでございますので、よろしくお願い申し上げます。2月23日でございます。場所はこちらの会議室でございます。

○ 例によって、12時30分までですので、色々御多用と思いますけれども、御用意をいただきたいと存じます。ありがとうございました。


-
もどる