国の行政機関の定員の純減につけて
 

国の行政機関の定員の純減方策について(最終取りまとめ)

平 成 1 8 年  5 月  3 0 日
行政減量・効率化有識者会議
 

  政府は、簡素で効率的な政府の実現に向け、「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定。以下「重要方針」という。)において、国・地方を通じた総人件費改革の実行計画を定めた。また、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(以下「行革推進法」という。)の成立により、総人件費改革は法定事項となった。国の行政機関の定員(33.2万人)について、厳格な定員管理に加えて業務の大胆かつ構造的な見直しを行うことにより、5年間で5%以上の純減を実現することは、その重要な一環である。
  「行政減量・効率化有識者会議」(以下「有識者会議」又は「当会議」という。)は、国の行政機関の定員の純減に向けた個別具体的な取組を検討するため、内閣総理大臣の委嘱を受け、本年1月末に発足した。当会議としては、発足以来、業務の大胆かつ構造的な見直しを行うこととされた重点8事項及び追加検討要請事項について、仕事のやり方自体を見直すことを含め関係各省から集中的にヒアリングを実施し、3月30日には中間取りまとめを行った。その後も関係各省からのヒアリングを重ね、定員の純減に向けた検討を行ってきた。この最終取りまとめは、そうしたこれまでの検討結果を取りまとめたものである。
  当会議は、中間取りまとめの段階では、一部の論点を除き関係各省自らが改革に取り組む姿勢が極めて不十分であると評価せざるを得なかった。その後、検討を重ねることにより、関係各省の定員純減に向けた取組状況は一定程度評価し得るものに改善された。
  しかしながら、業務見直しの取組に終わりはない。政府においては、今後とも、厳格な定員管理はもちろんのこと、この最終取りまとめの指摘事項を始め事務事業の更なる見直しに取り組み、改革を推進する必要がある。その際には、事務事業が必要とされる政策の在り方にまで踏み込んで見直しを行うべきである。
  重要方針では、上記の目標の実施に向けて個別具体的な取組の検討を要するものについて、遅くとも6月頃までに行政改革推進本部において成案を得、政府の方針として決定することとされている。その際、この最終取りまとめにおける当会議の指摘を最大限活用することを期待する。

有識者会議の基本的考え方
 
(1) 総人件費改革の実現に向けた更なる努力
   現下の国・地方を通ずる厳しい財政状況に照らせば、総人件費改革の実現は避けて通れない重要な課題である。国民の期待は、単なる人員削減でなく公務の生産性向上にある。このため、国で行っている業務を、「民間にできることは民間に」、「地方でできることは地方に」を可能な限り追求する観点から抜本的な見直しを行っていくべきである。今回の総人件費改革を単なる人員削減に終わらせないためにも、今後とも様々な手段により、公務の生産性向上に努めていく必要がある。
 行政機関全体として5年間で5%以上の純減を確保していくためには、とりわけ有識者会議で取り上げた事項について、5%をはるかに超える純減を行っていくことが欠かせない。また、総人件費改革では、地方公務員についても5年間で4.6%以上の純減確保に向けた取組を要請している。有識者会議としても、各地方公共団体などの他の主体における積極的な取組が行われることを期待したい。
 なお、総人件費改革については、国民の厳しい目が向けられてきたことの1つの表れとして、インターネットを通じて国民から4,000件超に及ぶ様々な御意見を頂いた。その内容は総じて、行政の活動が国民の負担で賄われていることを踏まえ、国民のニーズに応じ、必要な部分は公務に残しつつも、簡素で効率的な行政を期待するものであったといえる。当会議が検討を行うに当たっては、国民から寄せられた御意見を毎回参考とさせていただきながら議論を進めてきた。今後の政府における業務見直しの検討に当たっても、国民の視線を十分意識して取り組むことが重要である。
 
(2) 総人件費改革における事務事業の見直しの意義
   重要方針に示された5年間で5%以上の定員の純減の目標を達成するためには、何より毎年度厳格な定員管理を行うことにより、定員の純減を確保していく必要があるが、これにより確保し得る純減の規模には自ずから限度がある。したがって、目標達成のためには、社会経済情勢や行政ニーズの変化に適切、的確に対応し、業務を大胆かつ構造的に見直して、国が行うべき事務か、国家公務員が担うべき事務かなど事業の要否及び主体について仕分けを行い、業務の大胆な整理、包括的・抜本的な民間委託(官から民へ)、非公務員型独立行政法人化などの事務事業の削減を強力に進める必要がある。
 検討に当たっては、二つの意味で組織マネジメントの効率性向上が重要である。第一に、国民に対する直接的な行政サービスの提供ではなく行政機関に対する調整業務等を行う部門について、その在り方を積極的に見直して業務効率を向上させるべきである。第二に、そうした間接的な行政部門に限らず、各部門内の管理業務について、ITの活用と業務フローの見直し等により抜本的なスリム化を図るべきである。
 
@) 行政ニーズの変化に合わせた業務の大胆な整理
   これまで実施している事務事業であっても、社会経済情勢の変化、政策の大きな転換に伴う行政ニーズが変化した場合、それに合わせて業務を大胆に整理することが必要である。その際には、引き続き国が業務を行うことが必要又は適当であるかどうかを検証し、国が行う必要がないか又は国が行うことが適当でない業務については、業務そのものを廃止するなど抜本的に国の役割を縮小し、定員の純減を行うべきである。
 
A) 包括的・抜本的な民間委託等
   引き続き国が責任を持つべき業務分野であっても、そのすべてを国家公務員が直接実施する必要があるわけではない。民間に委ねることが可能と考えられる分野であるか、国が直接行うよりも、民間の知見やノウハウを活用することにより、国民に対してより効率的・上質なサービスの提供が可能と考えられる分野については、これまで以上に民間委託の手法を積極的に活用すべきである。
 民間委託は、これまでも業務の一部について実施されているが、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律に基づき市場化テスト(官民競争入札)が導入されることなどを踏まえ、今後は、できる限り業務全体について包括的・抜本的な民間委託を進めるべきである。その際、官における事務事業の見直しは、公共サービスの提供が効果的かつ効率的になっているかについて自ら見直すことが必然となってきていることに留意する必要がある。
 
B) 非公務員型独立行政法人化
   国の行政機関が行っている業務のうち、政策の企画立案と実施とをできる限り分離し、後者のうち、国として直接実施する必要はないがなお完全に民間に委ねることが適当でない業務を独立行政法人化することを検討すべきである。その際、公権力の行使の主体は公務員でなければならないとの反論がしばしばなされるが、非公務員型の独立行政法人であっても、法律上の権限付与により公権力の行使の業務を行うことは可能であり、これまで国が実施している業務が円滑に実施できなくなるとの懸念は、法的な手当てを適切に講じることにより対処可能である。
 実施業務を独立行政法人化することにより、行政機関の本体を簡素で効率的なものとすることが可能となる。法人化される部門にとっても、工夫により国民へのサービスの効率性や質を一層向上させ得る仕組みとして有効である。
 独立行政法人の職員の身分は、非公務員が原則である。公務員であることに伴う制約がなくなることで、民間企業・研究者との自由な人事交流の実施や、インセンティブを引き出すような給与体系が可能となるメリットがある。また、業務の性質に応じて民間資金の導入等も可能となる(注)。
    (注) 独立行政法人には運営費交付金が交付されるため、人員削減に実質が伴っていないとの批判がなされることがあるが、非公務員型独立行政法人化は、民間委託の推進等と同様、組織マネジメントで重要な要素である職員の人事管理面を含めて、効率性を高め低コストで事業が実施できるように、より民間に準じた業務運営を促すことができる仕組みである。
   今回の検討では、一部の事項の非公務員型独立行政法人化について結論が得られたが(注)、これは、有識者会議として、その他の部分の業務について独立行政法人化がなじまないと判断したものではない。そもそもこのような検討が必要な業務は、今回有識者会議で取り上げた事項に限られるものではない。政府のあらゆる業務について不断の見直しを行い、政策の実施に当たる業務について、引き続き非公務員型の独立行政法人化について検討を行うことが望まれる。特に、重要方針の特別会計改革等に基づき独立行政法人化の検討を行う際には、非公務員型独立行政法人化について検討すべきである。
    (注) 今回、非公務員型独立行政法人化の検討を要請したもののうち、結論が得られたのは、北海道開発関係のうち技術開発関連業務等、森林管理関係のうち人工林関係業務、国立高度専門医療センター関係及び気象庁の気象研究所である。
 
C) 業務の執行体制や運営方法についての不断の見直し
   政府全体としての定員の純減目標の達成を確実なものとするためには、当会議が検討対象として取り上げた事項以外についても、今後、総人件費改革の実施期間を通じて、業務の執行体制や運営方法について不断の見直しを行い、業務運営の効率化を通じた定員の削減を進めることが必要である。
 この関連で、重要方針にも挙げられている地方支分部局等の見直し及びIT化による業務のスリム化という横断的な取組が重要である。後者については、特に人事・給与等、共済、物品調達、物品管理、謝金・諸手当、補助金、旅費等の各省共通の内部管理業務についてスリム化を進めるべきである。
 こうした取組は、毎年度の予算編成過程等を通じて、国の行政機関の定員・組織の管理や電子政府の推進を担当する総務省行政管理局が徹底していく必要がある。
 
有識者会議における検討結果
 
   有識者会議としての指摘は、以下の(1)及び(2)のとおりである。以下の各事項に共通して、業務内容の見直しに合わせて管理業務の一層のスリム化を進め、組織マネジメントの効率性向上に努めるべきである。
 
(1) 重点8事項等について
   重要方針に列挙された重点8事項については、1月6日の閣僚懇談会において、行政改革担当大臣から関係閣僚に対して、業務の大胆かつ構造的な見直しを行い、定員の大幅な純減のための具体的な方策を検討し、報告するよう要請を行った。その後、3月にヒアリングを一巡し、必要に応じて4月以降再ヒアリングを行った。重要方針に列挙された重点8事項に対する有識者会議としての指摘は、以下のとおりである。
 
<行政ニーズの変化に合わせた業務の大胆な整理>
 
@) 農林統計関係
 
農林水産省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員(平成17年度末。以下同じ) 統計部門4,132人、情報部門876人の計5,008人
  (注) 地方農政局(7)統計部、統計・情報センター(266)等に配置
 
@  統計部門4,132人について、品目横断的経営安定対策への転換等の農政改革を踏まえ、以下のとおり、1,904人の定員を純減する。
  −  実査業務2,563人について、国の職員による実地調査を原則廃止することにより、1,167人を純減
  −  企画・取りまとめ業務1,174人について、実査業務の合理化に合わせて業務の大幅な合理化を行い、538人を純減
  −  管理業務395人について、業務の合理化に合わせて199人を純減
A  情報部門876人について、業務内容の重点化により、502人の定員を純減する。
 
有識者会議としての指摘
@  農政改革の進展に応じて、期間中においても統計調査の必要性や情報業務の内容を見直すこと。
A  職員による実地調査を当面存続させる統計調査について、農業者が自ら記帳できるようにするなどの方策を進め、調査員調査、郵送調査への移行を更に進めること。
B  今回の定員純減を踏まえて、統計・情報センター等の関連組織の統廃合を大胆に実施すること。
C  情報部門について、今回の業務見直しと定員純減を踏まえ、既存の広報業務との関係を整理し、部門の廃止を含めて、在り方を抜本的に見直すべきであると考える。
 
A) 食糧管理関係
 
農林水産省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 主要食糧部門3,297人、消費・安全部門4,096人の計7,393人
  (注) 地方農政局(7)及び地方農政事務所(39)に配置
 
@  主要食糧部門3,297人について、米政策改革の具体化の状況や農政改革を踏まえ、以下のとおり、1,647人の定員を純減する。
  −  主要食糧の備蓄運営・国家貿易業務983人について、事務手続に係るシステム最適化により266人を純減
  −  農産物検査業務381人について、民間検査の精度向上・定着状況を踏まえた国の関与の縮減により123人を純減
  −  米穀の生産調整及び米麦の生産・流通調査業務1,384人について、生産調整及び調査業務の見直しにより921人を純減
  −  管理業務549人について、業務の合理化に合わせて337人を純減
A  消費・安全部門4,096人については、業務の見直し・効率化により、549人の定員を純減する。
  −  食品表示監視業務2,027人について、実施方法等の見直しにより314人を純減
  −  食品価格・需要動向調査業務94人について、調査方法の見直しにより47人を純減
  −  管理業務601人について、業務の合理化に合わせて188人を純減
 
有識者会議としての指摘
@  米政策改革や農政改革の進展を踏まえ、期間中においても仕事のやり方自体を見直すなど、今後とも不断の業務見直しを行うこと。
A  主要食糧の備蓄運営・国家貿易業務について、ITの活用、民間委託の推進により、一層の減量・効率化を推進すること。
B  農産物検査、米穀の生産調整業務について、国が行う検査から民間検査への移行及び農業者・農業者団体が主体的に行う需給調整システムの趣旨を踏まえ、国による関与を極力限定し、一層の減量・効率化を推進すること。
C  今回の定員純減を踏まえ、地方農政事務所等における関連組織の統廃合を大胆に実施すること。
D  食品表示監視業務について、事業者による法令遵守を基本として、巡視対象の選定を工夫することや非公務員の活用など、仕事のやり方自体を不断に見直すとともに、消費・安全部門のその他の業務についても、業務定着に合わせて効率化を進めるべきであると考える。
 
B) 北海道開発関係
 
国土交通省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 北海道開発局の定員6,283人
  (注) 道路部門約2,300人、治水部門約1,100人、港湾空港部門約460人、農業・水産部門約1,180人、総務部門その他約1,250人
 
事務事業等の見直しにより、以下のとおり、計1,003人の定員を純減する。
  −  事務所・事業所等の統廃合の推進、開発建設部の内部組織の統合等、組織体制・業務処理体制の抜本的見直しにより355人を純減
  −  現場技術業務、道路巡回業務等の民間委託を大幅に拡大することにより400人を純減
  −  札幌開発建設部と石狩川開発建設部を統合し、内部管理部門を合理化することにより50人を純減
  −  「道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律案」の施行及び北海道による所定の事業の委譲受け入れにより60人を純減
  −  防災・技術センター等で実施している技術開発関連業務等を独立行政法人土木研究所に移管することにより138人を純減
 
有識者会議としての指摘
@  開発建設部について、今後とも統合による組織のスリム化等の体制の見直しを検討すること。
A  北海道の開発に関して、実施主体別や事業種別ごとの縦割りを排して、総合的かつ効率的な事業の実施に努めるべきであると考える。
 
<包括的・抜本的な民間委託等>
 
C) ハローワーク関係及び労働保険(労災)関係
  (注) 追加検討要請事項のうち、「労働保険(労災)関係」についても合わせて検討した。
 
厚生労働省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 公共職業安定所の定員12,164人、労働保険(労災)業務関係定員5,121人(うち、107人は公共職業安定所の定員と重複)の計17,178人
 
@  事務事業の見直しにより、定員管理による純減のほか、以下のとおり、計738人の定員を純減する。
  −  職業紹介関連業務約6,000人について、定型的な相談対応やセミナー実施業務等の民間委託、人材銀行や求人開拓業務の市場化テストによる民間委託により、501人を純減
  −  労働保険の適用・徴収関連業務約2,700人について、入力・発送等の定型的業務の民間委託化、社会保険との共通滞納事業所に対する滞納整理の一元化等により、202人を純減
  −  雇用保険三事業の助成金の審査・支給業務約500人について、業務の効率化により、35人を純減。また、今後結論を得ることとしている雇用保険三事業の見直しの結果に従い、関連する定員の更なる見直しを検討する。
A  滞納整理や調査の一元的実施等により、社会保険・労働保険の徴収事務等の一元化を更に進めるとともに、保険料の計算・賦課・納付に関し、事業主の利便性の向上等を図る観点から、賃金総額に着目する方法を社会保険に活用することを含め、引き続き、その在り方の検討を行う。
 
有識者会議としての指摘
@  職業紹介業務については、国がセーフティネットの機能を維持するとしても、社会経済情勢の変化に応じて、条約との整合性を検討しつつ、民間参入の拡大や包括的な民間委託など、その業務の在り方について抜本的な見直しを行うこと。
A  雇用保険三事業については、国民の批判を真摯に受けとめ、廃止を含めた徹底的な見直しを行い、できる限り早期に結論を得るとともに、検討結果に応じて抜本的な定員の純減を行うこと。
B  社会保険・労働保険の適用・徴収業務については、整合的な情報システムを構築しつつ、必要な制度整備を含めて一元化の取組を着実に進めること。また、組織や庁舎の統廃合を念頭に置きつつ、実施体制の効率化や利用者の利便性の向上を更に推進すること。
 
D) 社会保険庁関係
 
厚生労働省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 社会保険庁の定員17,365人
  (注) 本庁870人、地方社会保険事務局約3,700人、社会保険事務所約12,800人
 
@  「社会保険庁の組織・業務改革に伴う人員削減計画」(注)に基づき、最大限の前倒しをして実施することにより、以下のとおり、今後5年間で計3,000人以上の定員を純減する。
  −  政府管掌健康保険の公法人への移管で2,000人程度を純減
  −  業務の外部委託化等で1,000人以上を純減
  (注) 平成17年12月策定。平成18年度から7年間で、政府管掌健康保険の公法人(非公務員型)への移管(約2,000人)を含めて、17年度の人員に比較し、常勤公務員の定員を20%以上(約3,500人)純減する。
A  滞納整理や調査の一元的実施等により、社会保険・労働保険の徴収事務等の一元化を更に進めるとともに、保険料の計算・賦課・納付に関し、事業主の利便性の向上等を図る観点から、賃金総額に着目する方法を社会保険に活用することを含め、引き続き、その在り方の検討を行う。
 
有識者会議としての指摘
@  社会保険庁改革を急ぎ、現行の業務フローの見直し、法令遵守の強化も含め、仕事のやり方自体の改革を早急に進めること。
A  新組織の発足後も、事業運営の効率性等を厳しく評価しつつ、不断に改革を進めていくこと。また、総人件費の改革期間が5年間であることを踏まえ、改革のスピード感を重視し、前倒しの努力を引き続き行うこと。
B  社会保険・労働保険の適用・徴収業務については、整合的な情報システムを構築しつつ、必要な制度整備を含めて一元化の取組を着実に進めること。また、組織や庁舎の統廃合を念頭に置きつつ、実施体制の効率化や利用者の利便性の向上を更に推進すること。
 
E) 行刑施設関係
 
法務省による業務見直しの内容
  関係定員 17,645人
(注1) 総務部門約2,400人、処遇部門約10,550人、医務部門約900人 等
(注2) 刑務官等の公安職職員 16,739人、行政職職員 333人、医療職職員 573人
 
@  従来から民間委託を実施している非権力的な業務について民間委託数を平成18から22年度の間に719ポスト増まで拡大(17年度の617から1,336へ)する。
 内訳としては、行刑施設本所において、(1)総務系業務の庶務について115ポスト増、会計事務について117ポスト増、用度事務について316ポスト増、(2)処遇系業務について140ポスト増、(3)医務系業務について31ポスト増である。
A  平成19及び20年度開所予定のPFI刑務所2か所については、職員必要数(法務省想定人数)627人中290人(46%)を民間委託の予定である。
B  今後も新設刑務所や新設と同等の大規模な修繕・改築を行う刑務所において、特区制度を活用した大幅な民間委託を積極的に検討していく。また、PFI方式による包括的民間委託以外にも、特区制度の活用が可能な具体的事案について、地方自治体等から提案があれば、積極的に検討していく。
C  行刑施設は、被収容者の増加を背景に近年職員定員の大幅な増が行われている分野であるが、以上の措置により増員幅の抑制に努める。
 
有識者会議としての指摘
@  PFI方式や構造改革特区の活用など、考え得る手法を総動員して、民間委託の拡大を積極的に検討することにより、増員幅の一層の抑制に努めること。
A  特に、行政職職員の配置も含め総務部門等の非権力的な業務について更に見直しを行い、民間委託を行う業務の範囲及びポスト数の拡大を検討すること。
 
<非公務員型独立行政法人化等>
 
F) 森林管理関係
 
農林水産省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 国有林野事業特別会計の定員5,264人
  (注) 林野庁国有林野部189人、森林管理局(7局)5,056人(このうち、森林管理署(98署)、森林事務所(1,256か所)等に計3,800人程度)
 
@  業務・定員のスリム化により440人の純減を行う。
A  非公務員型独立行政法人へは、人工林の整備、木材販売やそれと一体的に実施することが合理的な業務を移行することとし、治山事業、森林計画の策定、天然林の管理・保全等は、引き続き国が責任をもって実施する。法人には1,970人が移行する。
 
有識者会議としての指摘
@  国に残る業務にせよ、法人に移行する業務にせよ、具体的な組織体制の検討に当たっては、各組織が非効率な形態にならないよう精査すること。
A  区分経理の在り方など、今後の特別会計改革の中で検討される事項についての結論を踏まえ、更に精査し、それに応じて定員の合理化を図ること。
 
G) 国立高度専門医療センター関係
 
厚生労働省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 国立高度専門医療センターで計5,629人
  (注) 国立がんセンター1,325人、国立循環器病センター996人、国立精神・神経センター1,062人、国立国際医療センター1,074人、国立成育医療センター740人、国立長寿医療センター432人
 
@  ナショナルセンターとしての役割・位置付けを充実発展させるための条件を担保するのに必要な制度的・財政的な措置(センターの意見の主務大臣による尊重の担保、借入金(約2,300億円)の償還等)を講じた上で、非公務員型独立行政法人とすることを検討する。
  (注) 国立国際医療センターの国際医療協力に係る定員(61人)の一部等については本省移管を検討するとしている。
A  独立行政法人化された国立高度専門医療センターの形態をセンターごとの個別の法人とするか統合した1個の法人とするかについては、法人の詳細設計の段階で最終的な結論を得るべく、各センターの果たす機能を踏まえながら更なる検討を行う。
 
有識者会議としての指摘
@  法人化するまでの間及び法人化した後の姿を含め、業務の効率化や債務の返済計画などについて積極的な検討を行い、必要な措置を講ずること。
A  法人の形態の検討に当たっては、法人を統合して共通業務の集中による効率化を図ることが大きな方向であることに留意するとともに、どのような法人形態であっても、主務大臣の定める中期目標の下で、業務運営の効率化を図っていくこと。
 
(2) 追加検討要請事項等について
   追加検討要請事項については、関係各省において自ら定員の純減に向けた業務の大胆かつ構造的な見直しを行い、個別具体的な取組方針を検討し、報告するよう、2月10日の閣僚懇談会で行政改革担当大臣から関係閣僚に対して要請を行った。その後、4月の会議において、関係各省から検討状況の報告を聴取した。また、防衛施設関係については5月に防衛庁から報告を聴取した。追加検討要請事項等に対する有識者会議としての指摘は、以下のとおりである。
 
@) 登記・供託関係
 
法務省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 登記・供託関係で計10,253人(登記関係9,982人、供託関係271人)
  (注) 法務局(8)、地方法務局(42)、支局(287)、出張所(262)に配置
 
 以下の業務見直しにより、計1,588人(定員合理化計画による削減数を一部含む。このうち、業務見直しによる純減数についてはなお精査を要する)を削減目標数とする。
  −  登記事項証明書交付等の証明事務(乙号事務)における市場化テストの実施により民間委託を実施することで、乙号事務専従職員について1,181人を削減
  −  平成19年度から22年度に約120庁の登記所を統廃合することにより、57人を削減
  −  登記のオンライン申請率の向上の取組により、不動産登記、商業法人登記等申請事件処理事務(甲号事務)のオンライン利用率50%を実現することで、350人を削減
 
有識者会議としての指摘
@  市場化テストの実施に当たっては、発注内容等を最大限に工夫して、できるだけ多くの企業が入札に参加できるようにするとともに、入札企業の業務上の工夫が活かされるようにすることで、民間活力を最大限に活用すること。
A  オンライン申請の利用促進のため、利用者にとって使いやすいシステムの改善に積極的に取り組むこと。
B  登記の甲号事務について、民間の生産管理手法を参照するなどにより、業務フローを抜本的に見直すこと。
C  地図情報システムの導入による効率化に伴う定員削減及び登記所の統廃合による定員削減の更なる積増しの検討について、できる限り早期に結論を得て、定員を合理化すること。
 なお、限られた時間の中で今回結論を得るに至らなかったが、有識者会議として、この業務について非公務員型独立行政法人化がなじまないとの判断をしたものではない。
 
A) 国有財産管理関係
 
財務省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 1,777人
  (注) 財務局等(10)、財務事務所(40)、財務出張所(13)に配置
 
@  業務の見直しと定型的業務の更なる民間委託の実施により、以下のとおり、計181人の定員を純減する。
  −  行政財産関係について、ITの活用等により76人を純減
  −  普通財産関係について、ITの活用等及び民間委託により81人を純減
  −  公務員宿舎関係について、ITの活用等及び民間委託により24人を純減
A  今後5年間は、新規増員要求を行わない。
 
有識者会議としての指摘
@  政府の資産・債務改革の一環として、国有財産の有効活用・民間活用、売却促進を進めることが重要であり、この観点から、定型的業務の民間委託に限らず、高度利用等のノウハウを有する民間部門などの知見を活用するための工夫を行うこと。
A  財務出張所の業務の整理・縮小に努めるとともに、その在り方を見直して、統廃合を実施することが望まれる。
B  資産売却を進めていくことにより管理対象である国有財産のストックが減少すると考えられることから、これに合わせて、一層の減量・効率化を推進することが望まれる。
 なお、限られた時間の中で今回結論を得るに至らなかったが、有識者会議として、この業務について非公務員型独立行政法人化がなじまないとの判断をしたものではない。
 
B) 官庁営繕関係
 
国土交通省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 国土交通省の官庁営繕部門の定員1,199人
  (注) 本省官庁営繕部226人、地方整備局営繕部866人、北海道開発局営繕部107人
 
 以下の事務事業の見直しにより、計122人の定員を純減する。
−  保全の基準の設定及び実施の勧告・指導に関する業務217人について、「保全業務支援システム」の利用の普及促進により、保全の実地指導に関する業務の40人を純減するとともに、保全実態調査の評価・分析等に関する業務を25人純減
−  位置・規模・構造の基準の設定及び実施の勧告、危険庁舎等の改築・修繕の勧告に関する業務421人について、基礎的調査業務の民間委託の拡充により、36人を純減
−  国家機関の建築物の企画・調達に関する業務363人について、企画段階における関係機関との調整の充実強化により、発注条件の設定に関する業務の10人を純減するとともに、入札契約の運用に係るマニュアル化の促進により、調達に関する業務を11人純減
 
有識者会議としての指摘
 国の建築物の整備・保全について、施設管理者や民間との役割分担を踏まえ、引き続き合理化・効率化に努めるべきであると考える。
 なお、限られた時間の中で今回結論を得るに至らなかったが、有識者会議として、この業務について非公務員型独立行政法人化がなじまないと判断をしたものではない。
 
C) 国土地理院関係
 
国土交通省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 国土地理院の定員797人
  (注) 本院562人、測地観測所(2)10人、地方測量部(9)216人、沖縄支所9人
 
@  以下の事務事業の見直しにより、計70人の定員を純減する。
  −  公共測量の指導・調整に関する業務約90人について、業務の外部委託により、13人純減するとともに、測量成果に係る審査業務について第三者機関による検定の活用の拡充による業務の合理化により、7人を純減
  −  国土の位置・形状の規定及び提示に関する業務約300人について、地図の修正に係る基本情報調査業務等の外部委託を含む業務の合理化により、13人を純減
  −  地理情報の共有化・高度利用の推進に関する業務約120人について、GISの開発・導入等による業務の合理化により、10人を純減
  −  内部管理業務約180人について、電子処理の推進、業務処理の集中化等により、27人を純減
A  大規模災害等現状では予測し難い状況への対処を除き、今後5年間は、新規増員要求を行わない。
 
有識者会議としての指摘
 引き続き管理部門の合理化・効率化に努めるべきであると考える。
 なお、限られた時間の中で今回結論を得るに至らなかったが、有識者会議として、この業務について非公務員型独立行政法人化がなじまないと判断をしたものではない。
 
D) 自動車登録関係
 
国土交通省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 930人
  (注) 運輸支局等(52)、自動車検査登録事務所(36)に配置
 
@  業務の見直し、更なる民間委託の実施により、以下のとおり、計138人の定員を純減する。
  −  登録業務のうち登録事項等証明書の交付業務について、民間委託により10人を純減
  −  その他の登録業務について、業務効率化により108人を純減
  −  回送運行許可等の登録関係業務について、業務効率化により20人を純減
A  今後5年間は、新規増員要求を行わない。
 
有識者会議としての指摘
@  自動車検査登録特別会計及び自動車損害賠償保障事業特別会計の統合後に、自動車登録業務を含む両特別会計の業務について重要方針に定められた検討を行う際には、非公務員型独立行政法人化についても検討すること。
A  自動車保有関係手続のワンストップサービスの拡大及びその利用率の向上に努め、着実に定員の合理化を図ること。
 
E) 気象庁関係
 
国土交通省による業務見直しと定員合理化の内容
  関係定員 気象庁の定員5,958人
  (注) 本庁1,201人、地方支分部局4,188人(管区気象台(5)、地方気象台(47)、測候所(46)等)、施設等機関569人(気象研究所、気象衛星センター、高層気象台、地磁気観測所及び気象大学校)
 
 以下の事務事業の見直しにより、定員管理による純減のほか、192人の定員を純減する。
  −  気象庁の研究部門である気象研究所174人について、研究者の積極的な人材交流及び多様な研究資金の活用の実現の観点から非公務員型独立行政法人に移行する。
  −  測候所46か所計454人について、解説業務の遠隔化、観測業務の可能な限りの自動化を実施することとし、平成18年度から22年度までの5年間で原則廃止することにより、18人を純減(測候所の原則廃止による削減数全体は338人)。
 
有識者会議としての指摘
@  気象大学校において、4年間職員の身分で給与支給しつつ毎年15人の地方気象台の中核的な要員を育成するシステムについて、その必要性や効率性について評価を実施し、結果を公表すること。
  (注) 気象大学校の卒業生は、毎年15人である。このほか、気象庁では、主に地方気象台要員として、約60人のU種(理工系)採用者(普通大学卒業者)がある。
A  機械化・自動化の進展等を反映した予報・観測業務の一層の効率化について、毎年度の厳格な定員管理の枠組みの中で厳しくチェックを行い、更なる定員の純減数の確保に取り組むこと。
 なお、気象研究所を除いて、限られた時間の中で今回結論を得るに至らなかったが、有識者会議として、この業務について非公務員型独立行政法人化がなじまないと判断をしたものではない。
 
F) 防衛施設関係
 
防衛庁からの状況報告の内容
  関係定員 防衛施設庁の定員 3,103人
  (注) 本庁552人、防衛施設局2,551人
 
@  防衛施設に係る競売入札妨害容疑で防衛施設庁の現職幹部が逮捕された事案を受け、防衛施設庁を解体するとともに、全庁的な観点から見直しを行い、新たな防衛組織を構築することとし、検討を進めている。
  −  防衛施設庁の業務について、原則として、総務・会計などの組織管理業務と、基地周辺対策など地方自治体や国民との関係に焦点を当てた業務は内部部局に、施設取得を中心とする調達に係る業務は透明性の高い実施部門に移管する。
  −  防衛施設局を地域と防衛行政の接点を担う地方支分部局に再編し、また、全庁的な立場から監査・監察を行う組織・部局を新設する。
A  6月末までに組織改編案の概要を提示した上、8月末に概算要求を行う予定。
 
有識者会議としての指摘
@  新たな防衛組織の構築の検討に当たっては、組織・定員の徹底したスリム化を基本方針として明確にすること。
A  調達に係る業務を処理する「透明性の高い実施部門」の組織の在り方については、所管省庁との間には相互牽制機能が働かないといった独立行政法人制度の特性に十分に留意して検討すること。
B  概算要求時の新組織と関連定員については、組織・定員管理当局においてこれを厳格にチェックすること。
 
(3) 地方支分部局等の見直し及びIT化による業務のスリム化
   地方支分部局等の見直し及びIT化による業務のスリム化については、5月に総務省行政管理局からその取組状況について説明を聴取した。同局では、例年機構・定員審査過程で行っている「減量・効率化方針」の改定作業を前倒しして実施し、地方支分部局については、その業務を見直し、「厳格な定員管理」分として、地方支分部局の系統ごとに改革期間中(平成18〜22年度)の定員合理化数を明示するとともに、IT化については、業務・システムの「最適化計画」策定による各府省の定員合理化効果を算定した。
 当会議が取り組んだ上記(1)及び(2)の重点事項等に加え、このような地方支分部局の見直しやIT化による業務のスリム化に重点的に取り組むことによって定員合理化を図るとともに、メリハリをつけつつ増員を厳しく限定することにより、純減目標が確実に達成されることを期待する。
 なお、同局では、当会議で取り組んだ事項も含め、地方支分部局の見直し全体の取組内容を明らかにすることとしているが、これは国民の理解を得つつ改革を進める上からも重要であり、適時に取りまとめられることを望みたい。
 
配置転換、採用抑制等の枠組みについて
 
   個別事項について事務事業の見直しを行い、国の行政機関の定員の純減を進めるに当たっては、行革推進法第45条第2項にも示されたとおり、これら事務事業に従事する職員の異動を円滑に行うため、府省間を含む配置転換や研修、採用抑制の仕組みを構築し、実行していくことが必要である。配置転換、採用抑制等の取組を進めるに当たっては、職員の雇用の確保を図ることが重要であると同時に、公務能率の維持・向上にも十分配慮することが必要である。また、その円滑な推進のため、職員及び職員団体の理解と協力が得られるよう努めることが必要である。
 これについては、3月31日の行政改革推進本部において、「総人件費改革の実行に伴う国家公務員の配置転換、採用抑制等の枠組みについて」が了承された。その内容については、配置転換、採用抑制等を円滑に進めるための全体計画を策定し、内閣に国家公務員雇用調整本部(仮称)を設置して政府全体で配置転換、採用抑制等の取組を進める体制を整えるなどとともに、国の行政機関以外への移籍等に係る措置にも取り組むなど、職員の雇用確保を図りつつ多様な選択肢を提示することにより円滑な異動を進めることが検討されているものと考えるが、国家公務員雇用調整本部の早急な体制作り等一層の努力が求められる。
 要合理化部門からの配置転換の受入れのために、平成19年度から22年度までの間、職域・職種によっては少なくとも3割程度の採用抑制が必要と見込まれているが、具体的には個別事項の定員純減により必要となる配置転換数に見合った分の採用抑制が必要となるものであり、人数の早急な精査が必要である。
 配置転換の円滑な実施のためには、地域、年齢、職種などの要素をも考慮しつつ進めるとともに、受入れ機関等における適切な育成・研修や配置に努めるなど、公務能率の維持・向上にも配慮することが求められる。
 

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