第5回公益法人有識者ヒアリング議事概要

公益法人有識者ヒアリング

1 日時: 平成14年6月12日(水)14:00〜16:20
 
2 場所: 内閣府5階527号室
 
3 出席者: 雨宮 孝子 (松蔭女子大学教授)
入山  映 (笹川平和財団 理事長)
太田 達男 ((財)公益法人協会 理事長)
加藤 秀樹 (構想日本代表)
中田 裕康 (一橋大学教授)
(50音順)

4 議事概要
(1)事務局より説明
(2)意見交換
次のような意見があった。

<パブリックコメントを求めるに当たって>
  • 公益法人制度の在り方について国民に意見を問うのであれば技術論ではなく、あるべき改革の方向性をもっと論じていく必要があるのではないか。
  • 「公」の空間を官だけではなく国民みんなで担うという考え方の中の一環として公益法人制度も見直すという姿勢を明確に打出すべき。
<改革の範囲について>
  • 民法改正は時間がかかるからできないという理由で、はじめから非営利法人の一部だけを対象とした改革をしようとするのはおかしい。
  • 特別法を見直すためには、それぞれの制度そのものを見直す必要があるので別途考える問題。例えば学校法人であれば教育制度、医療法人であれば、医療制度そのものを見直すことになる。
  • 特別法の法人も含めて改革するのか、公益法人、NPO法人、中間法人に限定するのかは決めの問題である。ただ、前者は現実的ではない。
  • 特別法の法人も含めて影響が及ぶ法を制定するのであれば、かなり抽象的なものになる。実効的にするために対象範囲を狭めるのも一つの方法である。
  • 最初から特別法に基づく法人を対象としないこととして、改革の対象範囲を狭めるのではなく、特別法の法人については改革に際しての問題点を洗い出す必要があるのでは。
  • 非営利法人の大原則を整理することは必要。
  • 新制度は民法の中に仕組むのか特別法を制定するのか明確にすべき。
  • 非営利一般法をもっと前面に出すべき。
<法人類型について>
  • 第1回から第4回までの有識者の意見は非営利法人で一つにまとめるという意見が多い印象を受けた。
  • 公益性を判断する仕組みを取り込んだ法人類型を作る理由は乏しい。しかし、税制優遇等で公益性を判断することになるなら、いったん制度上から公益性判断を切り離して考えても、議論を先送りしただけである。
  • 第4回の有識者ヒアリングの中で、公益法人で官庁の指導を受けるなら、株式会社で自由にするほうがいいという意見があった。どういう法人形態にするかは国民が選択すること。優遇があるが、制限を受ける法人か、優遇がないが、自由な法人か、国民が選択できるような法人制度にするべきである。そのためには、営利法人、非営利法人という法人形態だけではなく、公益法人という法人形態が必要である。
  • 公益的な法人ということで法人形態を認めて、特別扱いするのであれば、税の減免と「公益法人」という名称を使用できるという恩恵がある。
  • 「公益的な法人」を法人類型として設けるのか、時限的に公益性を認定する形にするのかは論点として重要。両者ともそれぞれ長所、短所ある。
  • 公益法人類型を設ける意味は公益的な事業を行う受託者として必要であること、公的な抑えとしての役目として必要であることが考えられるが、この場合、そもそも官が「お墨付き」を与える必要があるか、という疑問が生じる。
  • 時限的に公益性を認定する形にすると、社会的位置付けが不安定になる、残余財産の分配の扱いが難しくなるといった問題が生じる。
  • 組織は世の中の動きに応じて動くものであり、「公益性をもつ法人」という類型を作って枠を設けると世の中の動きに合わなくなる。
  • 公益的な法人形態を設けることはお墨付きを官が与えること。これでは今の制度と変わらなくなる。法人格とは別に事業内容から官以外(例えば第3者機関など)が判断すればいい。税制優遇はその判断を追認すればいいのでは。
  • NPOとソーシャル・ビジネスなどと呼ばれるローカルな小規模ベンチャーは表裏一体のもの。アメリカなどでも後者の経済効果は大きい。その意味でも、会社と非営利法人の設立のハードルを等しくしておくことは重要。
<公益性について>
  • 公益性を判断する必要性として、ステータスが必要だからという話は一番危ない。ステータスを官が世の中に対して提示するべきではない。
  • 「公益」という定義はどこかに明記すべき。
  • 裁量の余地のない形で公益性を判断することが可能なのかという点は疑問がある。
  • 誰がどのように公益性を判断するかということは様々な意見があるが、ある一定の公益的な活動に対して政策的に奨励をするための措置は必要である。
  • 「公益」として判断を行う限り何らかの形で基準を定めなければいけない。何らかの制限があれば自由に法人を設立することができなくなる。
  • 公益性を時限的に認定するのであれば、認定が取り消され、制限がなくなった後、財産を分配するなど、悪用する法人が出てくる懸念がある。
  • 公益性判断を見直した結果、公益性が失われた場合には、得た恩典は精算すれば問題はない。
  • 単一の行政機関が公益性を判断できるのであればいいが、現実的には難しいのでは。
  • 個別的に公益性を認定すると、かえって法人に対する制限が厳しくなるのではないか。
  • 「非営利」と「公益性」の概念を整理することは重要。
<税制について>
  • 公益法人が行う本来事業は非課税にするべき。
  • 寄附税制は焦点。金銭的な寄附だけではなく、資産の寄附についてよく考える必要がある。総合的な税制の検討が必要。
  • 公益性の判断を行うと、裁量の余地が必ず入るので、税の優遇は営利か非営利かのみで判断し、非営利であれば税は優遇すべき。非営利と優遇は表裏一体である。さらにその上に公益性を判断する必要があれば行う。
  • 非営利全体に税制優遇があるのであれば、法人は全て非営利法人になろうとするだろう。そうなると「非営利法人を行政が認定する必要がある」という議論になり、振り出しに戻る。
  • 税制の優遇についての判断は(法人の公益性の判断とは別に)行ってもいいが、法人制度に組み込むべきではない。もし、法人制度に組み込むのであれば、公益性を定義するのではなく、プロセスとして例えば第3者機関が公益性を判断するという制度を組み込むべきである。
  • 税制の優遇を与える対象を法人形態によって判断するのであれば、現行の制度と同じことになってしまう。
  • 公益的な法人類型を設ける場合と、時限的に公益性を認定する場合を比較すると、後者の方が税の優遇が少なくなるのではないか。
  • 民法上の法人の分類と税法上の収益、非収益は全く別であり、非営利法人でも事業による収益が出ることはある。組織が非営利であっても、営利であっても、事業収益が出れば現在も課税されるし、それは現行どおりでよい。
<その他>
  • 情報開示には2つの観点があり、債権者保護の観点と公益性維持の観点があるが、何のために情報開示を行うのか目的を明確にする必要がある。
  • 情報開示は同窓会のような法人には公益的な法人と同じように適用できない。同窓会であれば、同窓会の会員にのみ情報開示を行えばいいが、公益的な法人はそれよりはるかに高い透明性が求められるべき。
  • 公益的な活動を行っているか否かの判断は運営の透明性を図ればできるのではないか。
  • 現行の公益法人の移行の問題は新しい制度ができれば難しいことではないのではないか。
  • 新しい制度が出来てから、現行の公益法人を他の法人類型に移行することは現実的に大変だと思う。移行期間を設けて、主務官庁の責任で順次整理すべき。
  • お墨付きを受ける代わりに役所の指導監督を受けるのであれば、お墨付きはいらない。
  • 従来のような監督するという意味ではなく、支援し助成を行うための政策を担当する所管官庁は準則主義になっても必要。
  • 主務官庁を設ければ必ず官による規制が強くなる。支援や助成が行政による何のコントロールもなく得られることはあり得ない。
  • 認証制度は難しい問題があるので、議論が必要。
  • 「公益目的である以上、残余財産は分配禁止」と決め付けなくてもよいのではないか。
  • 財産管理の問題については、営利法人と非営利法人の関係もよく考慮する必要があるので、できれば商法学者の意見も聞くべき。

(文責:行政改革推進事務局)


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