第2回公益法人有識者ヒアリング議事概要

公益法人有識者ヒアリング

1 日時: 平成14年5月15日(水) 9:00〜12:00
 
2 場所: 内閣府5階特別会議室
 
3 有識者: 樫谷隆夫 (日本公認会計士協会理事)
田中一昭 (拓殖大学教授)
中里 実 (東京大学教授)
山内直人 (大阪大学教授)    (50音順)

4 議事概要
(1)石原行政改革担当大臣挨拶
 
(2)熊代内閣総理大臣補佐官挨拶
 
(3)意見表明
(樫谷氏)
資料1に沿って説明)
  • 公益性の判断は国が行うのではなく、民間の第三者機関が時代背景に即して判断すべき。公益性は時代によって変化するので、時代の要請に応えられないものは事業の廃止、転換や他の法人形態への移行など法的整備を図る。期限を切った事業も考えられる。
  • 公益性に関する税の免除・減免は「国」ではなく、民主体による「独立機関」で判断すべき。個人の意思によりお金を社会貢献に使うなど使い方を選べるようにするべき。
  • 公益的なことは官でないとできないということはない。アウトソーシング可能な部分について、民に出来るものは民で行うものとし、出来ないものだけを存在意義を明確にした上で行政代行法人を設けて行わせる。官か民か分からない法人を作るべきではない。
  • 統一された非営利法人会計基準を作るべきである。現在は、同じ事業を行っていても法人形態によって会計基準がバラバラであるため、統一した物差しが必要である。
(田中氏)
資料2に沿って説明)
  • 行革事務局が作成した「公益法人制度の抜本的改革の視点と課題」はよく整理されている。これにしたがって検討を深めるべき。
  • 中間法人法は新たな法人しか手当てしていないため、すでにある法人をどう整理するかが問題である。
  • 公益法人だから守るべきという考え方に立つのではなく、公益法人も競争させるべきである。
  • 指導監督を強化しても同じことを繰り返す。指導監督を強化するより、誰が見ても分かるような形で徹底した情報公開、透明化を行うことが必要。各省庁ばらばらにするのではなく、「公益法人庁」を設置して一元的に対応すべき。
(中里氏)
資料3に沿って説明)
  • 課税の問題は経済実態から考える必要がある。経済実態の同じものは税も同じというのが原則。
  • 法人制度の基本を見直すなら、税制度もゼロベースで考えるべき。公益性があるから課税が優遇されるとは限らない。課税の公平性の観点を忘れてはいけない。また、公益法人の税制のみ他の法人制度と切り離して議論するのは不公平である。
  • 法人制度自体をつめてから税を議論すべき。税優遇をまず念頭においてから法人制度を見直すべきではない。
  • 税の優遇を与えるに当たっては、主体の種類と行為の2つの面から考えていく必要がある。
  • ある分野を限定して減税すれば悪用する人も出てくるのは当然。また、限定すればどうしても恣意的になる。客観的に考えていくことが重要。
(山内氏)
資料4に沿って説明)
  • 非営利セクターは今後の成長のポテンシャルが大きい。雇用創出効果、生産誘発効果は無視できない。
  • 公益性の概念があいまい。官の裁量が大きすぎる。同種の法人の設立を認めたがらないなど公益法人の中で競争を促進しようとする発想が官にはない。
  • 法人格は容易に取得できるようにするべきだが、法人格の取得と税制優遇は別に考えるべき。
  • 税制優遇の認定は客観的基準に立ってできるだけ明確にすべき。公益性の有無の議論は不毛であり、客観的なパブリックテストによる定量化が必要。
  • 現状で指導監督を徹底するためには膨大なコストがかかる。それより徹底した情報公開を進めることによるパブリック・インスペクション(国民による監視)が効果的である。アメリカでは、より大きな税制優遇の適用対象としてIRS(内国歳入庁)の承認を受けた非営利団体は役員報酬の上位5人の個人名・住所を公開している。
(4)意見交換
次のような意見があった。
  • 国に税金を払う代わりに民で公益的なことをやるという選択肢もある。それが本当に公益的であるという判断ができればよい。
  • 公益性の判断が難しいが、ガバナンスや情報のディスクローズについて明確なルールを作って判断する方法もある。
  • 行っている事業が同じなのに法人形態の違いによって税制面での差があるのはイコールフッティングの点から問題である。
  • 個人の意思で社会貢献のために寄附をするという文化を高めたらいいのではないか。
  • アメリカでは一人の人が財を提供する法人よりも、コミュニティーみんなで財を提供して作る法人の方が公益性が高いとみなされる。財を提供するのが一人だけだと、脱税の蓋然性が高くなる。
  • 税制は中立性を高めるように担保されていればいい。
  • もうけないから善というのはおかしい。どっちでも悪いことはできる。
  • 法人に対する課税の問題と法人制度の問題については、法人制度の議論が先に来るべき。法人形態は法人形態として検討するべきで、その上で、法人と経済実態とのあり方を見て、租税を考えるべき。税の論理と法人形態論は切り離して議論すべき。
  • 法人単位で課税か非課税を決めるので難しくなる。事業単位で考えるべき。
  • (アメリカでの非営利法人スタッフの報酬公開に関し)個人のプライバシーは本来は守るべきものだが、公益的なものとして寄附されたお金の使い途の一環として、当然、情報は開示しなければいけない。
  • 非営利団体に財産が集中すると、誰のものでもない財産が増える。財産が死蔵されると有効に使われない。
  • 財団の基本財産の運用益だけでは法人の運営ができずに、会費を毎年集めないと運営できない財団があるなど、社団と財団の違いは不明瞭になってきている。
  • 財団は財に法人格を与えているので、基本財産には手をつけられないことになっているが、場合によっては取り崩すことを許容してもいいのではないか。
  • 公益法人の財産の運用は自己責任でもっと自由に運用できるようにすればいい。
  • 今の公益法人制度は官庁の裁量が多すぎる。法で規定していることと、そうではないことがごちゃごちゃになっている。
  • 公益法人の抜本的改革に当たっては、社会福祉法人、学校法人等周辺の法人制度の在り方も取り込んで検討すべきである。

(文責:行政改革推進事務局)


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