第1回公益法人有識者ヒアリング議事概要



1 日時: 平成14年4月24日(水) 9:00〜12:00
 
2 場所: 内閣府2階227号室
 
3 有識者: 安藤俊裕 (日本経済新聞論説委員)
入山 映 (笹川平和財団理事長)
太田達男 ((財)公益法人協会理事長)
加藤秀樹 (構想日本代表)
中田裕康 (一橋大学法学部教授)    (50音順)

4 議事概要
(1)石原行政改革担当大臣挨拶
  • 公益法人の抜本改革については100年来議論がなされておらず議論の緒についたばかり。個人的には時間があるようでないと思っている。それだけ、幅広い分野にわたる問題である。有識者の皆さんから大所高所から御意見をいただき、抜本改革に役立てたい。
(2)熊代内閣総理大臣補佐官挨拶
  • NPO法、中間法人法の制定に携わってきた。今回、公益法人を104年ぶりに見直すことになった。民法の公益法人に関する規定は簡単すぎて、極めて問題があると思っている。公益法人の許可主義については、NPO法では改めたが、今回の見直しでさらに根本的に改正したい。
(3)意見表明 (安藤氏)
  • 公益法人については、役所の許可主義をやめ、原則準則主義にし、ガバナンスとディスクロージャーを徹底すべき。
  • 税の優遇については、税務当局が判断すればいいと考えている。
  • 一昨年来、行政委託型公益法人の問題について取組がなされてきたが、公益法人の問題は、行政委託に限らないため、抜本的な改革が必要である。

(入山氏)
資料1に沿って説明)
  • 不祥事が発生するたびに役所から公益法人に対する指導監督の強化が行われたが、その結果、公益法人のガバナンスの劣化を招いた。指導監督では不祥事は防げない。
  • 指導監督は、法人が悪いことをしないように予防しようという発想だが、法人が行ったことについて法人自身に結果責任を問う事後主義への転換を図るべき。
  • 公益性の有無で税制上の優遇措置を考えるのは合理的ではない。非営利であれば税を取る理由に乏しい。

(太田氏)
資料2に沿って説明)
  • 公益法人改革を行政改革の延長でとらえるべきではない。公益法人の活動はボランタリズムによるものであるという公益法人のポジティブな面を積極的に評価して改革を考えるべき。
  • 公益法人の設立は準則主義にすべき。新公益法人法制は、営利法人・中間法人公益法人の3本立て、営利法人と非営利法人の2本立ての2種類ある。後者の場合、税を優遇する際に公益性の判定をすることになろうが、課税庁が公益性を判断するというのでは抵抗感がある。公益性の判断は税の優遇を受けるという面の問題だけではなく、社会的信頼を高めるというステータスの問題もある。
  • 改革を考えるに当たっては、NPO、公益信託との整合性を図るべき。

(加藤氏)
資料3に沿って説明)
  • 日本では、「公」と「官」がほぼ同じになっている。公的なことはガバメントがやるとの意識を変えていくことが公益法人改革の根底にある。
  • 法人格は登録さえすれば認められ、活動と運営状況のディスクロージャーを徹底して、公益性を事後的に認めるようにするべき。
  • 公益性を定義づけることは不可能であり、そもそも全国一律には決められない。ローカルで公益性を判断する仕組みを作っていくべき。

(中田氏)
資料4に沿って説明)
  • 民法は、公益法人について、民間の公益的活動を積極的に評価している面と規制している面とがあり、主務官庁制の下、そのバランスをとろうという考え方に立っていたが、施行から100年を経て、様々な理由からうまくいかなくなった。
  • 新たな制度を考える際には、法人格の付与、公益性の認定、租税の優遇の3つの問題を、いったん、分けて検討すべきである。
  • 見直しの方向として、第1に、公益法人を廃止し、非営利法人を準則主義で作り、税の優遇は個別にみるという方向が考えられるが、これには公益法人の全廃の是非等の課題が残る。第2に、公益法人制度を残し、公益性認定評価機関を設置することも考えられるが、機関の新設をすることが妥当かという問題がある。第3に、許可主義の基準の明確化等の現行制度の改良も考えられるが、中途半端になるおそれもある。
  • 法人としての同一性を保ったまま、他の法人形態へ移行するには法的整備が必要である。
(4)意見交換
次のような意見があった。
  • 改革の対象範囲は、民法第34条の公益法人。学校法人や社会福祉法人は、特別法で規定されており、目的が定まっているものであるから別の整理が必要である。
  • 改革の対象については、特別法で規定されている法人の代表者が改革の必要性を感じているかどうかによって決まる。公益法人は改革の必要性を感じている。
  • 異なる法人形態への移行については時間をかけてやるべき。ある一定期間を定め、その期間内での移行を促し、最終的には、公益性のチェックと器(法人格)の取得とは別に行う仕組みを構築すべき。
  • 時代の流れとともに公益性が変質し、今行っている活動が公益的であるとはいいがたくなっているものについて見直しの機会が必要である。
  • 公益性の判断は客観性にかけるので、それよりも利益分配できないことをもって税制優遇の対象として、公益性が高いと判断されるものについてはさらに税制優遇を認めるというのが、一番理論的であり、理想的である。
  • 税を優遇するかどうかの認定は、税務当局が決定権を持つが、税務当局が第三者機関の判断に乗ることもあり得る。
  • 税を優遇する際に認定が必要とは思わない。アメリカでは、認定ではなくIRS(内国歳入庁)への登録で税優遇がなされている。
  • 法律の構成については、民法に対するイメージの差によって分かれてくるが、個人的には、民法にはある程度の抽象性をもった基本的なことを書き、詳細は特別法に書くということでいいのではないかと思っている。
  • 「公益法人制度の抜本的改革に向けた取組みについて」(平成14年3月29日閣議決定)にある「民間有識者の協力の下」というのは重要と考えており、何かパーマネント的な組織を作るべき。(→熊代内閣総理大臣補佐官から「大臣とも相談し、 前向きに検討してみたい」旨の発言。)

(文責:行政改革推進事務局)


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