各府省の若手職員等に対するヒアリングの結果（概要）について

ヒアリングの目的等 本ヒアリングは、内閣官房行政改革推進事務局で現在行っている公務員制度改革の検討の参考とするため、各府省に現在勤務する若手職員（１１４名）及び各府省を早期に退職した元職員（１２名）を対象に、日頃業務を行っている中で感じている問題意識（元職員については、当時感じていた問題意識）や今回の公務員制度改革に期待すること等について聴取したものです。 本資料の性格等 本資料は、上記ヒアリングにおいて若手職員等から出された意見について、事務局の責任で網羅的にとりまとめを行ったものです。 なお、本ヒアリングは、組織としてではなく、個人としての率直な意見を聴取する目的で実施したものであるため、個々の意見について、それを述べた者の氏名や所属府省名等は記載していません。 その他 本資料も含め、公務員制度改革についてご意見等がございましたら、本ホームページの「メールボックス」にお寄せください。（※本意見募集は終了しています。）

目　次

Ｉ．各府省の若手職員の意見等

１．現状

（１）若手職員の閉塞感

（２）若手から見た政策の企画立案・実施の行き詰まり

２．公務員制度等改革に期待するもの

（１）人事制度等の改革

1. 信賞必罰の徹底
   
2. 勤務条件の改善
   
3. 多様な人材の育成・確保
   イ）職員の採用（試験制度・キャリア制度の見直し）
   ロ）職員の養成（任用、研修、留学、交流）
   ハ）外部人材の活用（民間の人材の登用、退職者の復帰）
   二）女性の登用
   
4. 退職管理の在り方
   
5. 倫理法の見直し
   

1. 各府省の行政の進め方の見直し
   
2. 内閣機能の強化
   
3. 企画立案部門と実施部門の分離
   
4. 組織・人事制度の設計・運用の弾力化等
   

（４）その他

II．早期退職者の意見等

１．早期退職の理由等

（１）再就職先との関係

（２）役所の仕事の在り方の問題

２．公務員制度等改革に期待するもの

（１）信賞必罰の徹底

（２）キャリア制度の見直し

（３）多様な人材の育成・確保

（４）その他

ヒアリングの結果（概要）

Ｉ．各府省の若手職員の意見等

１．現状

（１）若手職員の閉塞感

忙しすぎて時間的・精神的な余裕がない、当初の志とは異なり自分の仕事が国のた めに役立っているという実感が持てない、政治主導の名の下に政策が歪められること があり空しく感じる、専門性を高められずキャリアアップが図れない等の意見があっ た。

• 定員の大幅な削減や業務量の増大により、雑務の処理に追われ、政策をじっくり考えたり勉強する余裕がない。
  
• 近年、行政改革対応等の業務が増大しており、個別の行政課題に関する企画立案を行う余裕がなくなっている。
  
• 国会議員から要求された資料の作成等に関する作業が膨大である。また、国会議員の質問通告が遅いため、深夜（早朝)に及ぶ超過勤務や休日出勤を行わざるを得ない。
  
• 政治主導の名の下に、本来あるべき政策の立案・実施が歪められることがあるが,公務員バッシングもあって、それを改めることができず、空しく感じられる。自分の行っている仕事が国のためになっているという実感を持てない。
  
• 与党内の意見調整に各府省の幹部職員が走り回るなど、本来は政でやるべき業務まで官に担わされている気がする。
  
• 公務員バッシングで公務員を見る国民の目が極めて厳しくなり、昔と違って尊敬されない職業になっている。それもあって、公務員という職業に誇りを持てない。
  
• 厳しい勤務状況であるにもかかわらず、民間に就職した大学の同期と比べて、給与を含めた処遇のレベルが低い。また、超過勤務に見合う手当が支給されていない。
  
• 自らの専門性を高め、それを行政に活かしたいと考えて公務員を選択したが、そのために必要な研修が十分でなく、また、専門性を要求されるキャリアパスが明らかでないため、キャリアアップを図ることができない。
  
• 留学から帰国した者に対する処遇等を見ると、せっかく留学で身に付けた知識が活かされているとは考えられない。それもあって、職員が自分自身に対する評価・期待に疑問・不満を持つことがある。
  
• 将来の目標となり得るような立派な上司が職場に少ない。
  

（２）若手から見た政策の企画立案・実施の行き詰まり

国際的にも評価されるような理論的なバックボーンを持った政策を立案できず、調整型・思いつきの政策が多い、前例踏襲主義から脱却できない、無駄な作業を自律的に減らせず業務執行が非効率である等の意見があった。

• 日本の政策には、国際的に見て理論・実証面のバックボーンを欠いているものが多い。
  
• 忙しすぎて２・３年先を見た政策の仕込みを行う時間的余裕がなく、また、現場の１次情報が不足しているため、調整型・思いつきの政策が多くなってきている。
  
• 政策を企画立案、実施するためには、省内各局、他府省等との調整を要することが多いが、調整に莫大な時間がかかっており、また、その過程で大胆な政策が当たり障りのない政策に変質してしまう。
  
• 前例踏襲主義から脱却できず、また、行政の無謬性の問題もあり、時代の変革に対応した政策が立案できない。
  
• 国会対応、予算・機構定員要求、各省協議、法制局審査等のための業務が膨大なものとなっているが、コスト意識に欠けた無駄な作業が多い。優先順位をつけて定員に見合った業務を選択し、それを効率的に執行することができていない。
  
• 省庁統合もあって、幹部の数が増えており、それが迅速な意思決定を妨げ、職員の業務量を増やす原因にもなっている。

２．公務員制度等改革に期待するもの

（１）人事制度等の改革

1. 信賞必罰の徹底

   年次一律主義は時代遅れ、公務員にも信賞必罰を徹底すべき、評価結果を任用・給与等に反映させ職場に競争原理を導入すべきとの意見が多かった。

   • 年次一律主義等現行の公務員制度は時代遅れであり、公務員においても信賞必罰を徹底すべきである。そのためには、業務目標の明確な設定や客観的な評価が必要である。
     
   • 現在の公務員制度は、仕事をしない（できない）人を外す仕組みが十分でないところに問題がある。降格、免職等をもっとフレキシブルに行い、競争原理が働く制度にすべきである。
     
   • 幹部登用に当たっては、プレーヤーとしての評価だけではなく、マネージャーとしての評価が反映されるようにすべきである。
     
   • 能力主義の徹底に当たっては、女性職員の意欲を減退させないよう、出産・育児期間の取扱いについては一定の配慮をする必要がある。
     
   • 能力主義を徹底することにより、かえって職場全体の士気を低下させることのないよう、複数のキャリアパスを用意するなど、後からの挽回が可能な制度とすべきである。
     
   • 評価については、上司からの評価だけでなく、上司、同僚、部下が評価を行う制度（いわゆる「３６０度評価」）を導入すべきである。
     
   • 評価すること自体を目的とするのではなく、意欲のある優秀な若手が業務にチャレンジする機会を増やす観点から、各府省がそれぞれの事情に応じた必要な評価の仕組みを作れるような制度を設計すべきである。また、評価に係る費用対効果についても十分考慮すべきである。
     
   • 自分自身への評価を職員がしっかりと認識してキャリアパスを考えていくためにも、上司との面接を通じた評価の確定、評価結果の本人へのフィードバックを行うべきである。
     
   • 信賞必罰を徹底するため、給与をその性格に応じて「年功給」「職責給」「成果給」の３つに分けるべきである。
     
   • 公務員においても個々の能力・成果に見合った報酬を得るのが当たり前であり、きちんと仕事をしている人については給与面で優遇すべきである。その際、仮に本俸で差をつけることが難しいとしても、ボーナスでは明確に差を付けるべきである。
     
   • 昇進試験の導入については、評価の客観性を担保する観点から前向きに検討すべきである。
     
   • 昇進試験を導入した場合、試験勉強に専念し仕事を疎かにする職員が出る可能性があるため、その導入については、慎重に検討すべきである。
     
   • 職員のチャレンジ精神を鼓舞する観点から、一定のポストを公募とすることについて検討すべきである。ただし、公募するポストの数を各府省に義務付けることは、人事の弾力性を低下させるという問題がある。
     
2. 勤務条件の改善

   超過勤務を縮減すべき、給与を含めた処遇水準の抜本的な改善を行うべきとの意見が多かった。

   • 超過勤務があまりにも多いため、職員が心身に異常を来たす等の問題が起きている。管理職に勤務時間管理を徹底させる等、早急に改善を図るべきである。
     
   • 超過勤務を縮減するためには、i)超過勤務時間の上限を設定し、その範囲でできない業務があれば管理職自らが改善策を考える、ii)超過勤務により霞ヶ関で１日に使用せざるを得ないタクシー券の使用金額を公開し国民的な議論に対応を委ねるなど、ドラスティックな取組みを行う必要がある。
     
   • 超過勤務の縮減が困難であれば、職員の健康管理の観点から、フレックスタイムを導入し、登庁時間を遅く設定することができるようにすべきである。
     
   • 役所では、皆が協力して仕事を進めないとうまくいかないことが多く、職員が業務執行の手段と時間配分を自由に決定できる裁量労働制の導入は不適当である。
     
   • 勤務実態に処遇が追いついていないのは問題であり、給与を含めた処遇水準の抜本的な改善を最優先課題として取り組むべきである。
     
   • 超過勤務手当については、一部の自治体で実施しているように、全額支給すべきである。全額支給をしていないことが、かえって公務員の時間の感覚を麻痺させ、コスト意識の欠如につながっている。
     
   • 部署や会計の別により、超過勤務手当の支給額、夜食の補助の有無、タクシー券の支給枚数等が異なるのは不合理であり、早急に改善すべきである。
     
3. 多様な人材の育成・確保

   イ）職員の採用（試験制度・キャリア制度の見直し）

   司法制度改革や民間の採用活動の現状を踏まえ、優秀な人材を確保する観点から、試験の在り方について抜本的に見直すべき等の意見があった。なお、キャリア制度の見直しについても、様々な意見が出された。

   • 官庁訪問に来る学生の数が減っているわけではないが、人材のレベルが確実に落ちてきている。今後司法制度改革が実施されれば、問題がさらに深刻化する恐れがある。
     
   • 民間で就職協定がなくなり、民間の就職内定がかなり早い段階で決まっている。公務員試験はそれよりも後になるため、従来のように、学生が官と民の話を両方聞いた上で就職先を判断することができなくなっているのは問題であり、早急に対策を講じる必要がある。
     
   • 公務員試験の合格者数を増やす等により、公務員になるための間口を広げ、幅広い多様な人材を各府省が採用できるようにすべきである。
     
   • 多様な人材を確保できるよう、採用試験を教養中心の問題とすることも検討すべきである。専門的な知識の有無等を試験で見たいという府省があれば、それぞれの府省において独自に試験を実施すれば良いのではないか。
     
   • 事務官と技官の区別は必要ないのではないか。
     
   • Ｉ・II・III種の区分の見直しについては、現行の制度を維持すべきという意見があったほか、Ｉ種とII種を統合すべきという意見、II種とIII種を統合すべきという意見があった。
     
   • Ｉ・II・III種の職員が担うべき仕事をどうするのか、また、その処遇をどうするのかについて、各府省の判断で行えるような制度にすべきである。
     
   • キャリア制度を廃止すると、Ｉ種で確保できていた高い士気を有する人材を確保できなくなる恐れがある。
     
   • 批判の多いキャリア制度はやめて、入省後の競争で優秀な人を選抜、登用していく方式に改めるべきである。
     
   • 入口でＩ・II・III種の区別があっても良いが、入省後に入れ替え戦があるような仕組みにすべきである。
     

   ロ）職員の養成（任用、研修、留学、交流）

   入省後に試験区分間を円滑に異動できるようにすべき、複線型人事により多様な職員の養成を図るべき、研修・留学・交流の充実を図るべきとの意見が多かった。

   • 入省時の試験区分でコースが決まってしまうことの弊害が出ている。試験区分にかかわらず、優秀な人材については登用し、優秀でない人材についてはＩ種であっても登用しないようにすべきである。
     
   • キャリアパスが画一的すぎるという問題がある。複線型人事により、中途半端なジェネラリストではなく、スーパージェネラリストとスペシャリストの育成を図るべきである。また、その際、職員にコース選択の機会を節目節目できちんと付与すべきである。
     
   • 行政としての専門性を確保するため、一定の専門分野を柱に据え、そこでの在任期間を長くしたり、他の分野へ異動したとしても柱の分野に繰り返し任用するような人事上の工夫が必要である。
     
   • 政策の企画立案機能を高めるため、府省横断的な研修の充実（例えば２年程度の長期の政策立案研修）、自己啓発休業制度の創設等が必要である。
     
   • 民間に優秀な人材が豊富にいるというわけでは必ずしもない。民間の人材の登用を適切に行いつつ、職員の養成にもっと力を入れるべきである。問題なのは、民間と比べて公務員の人材養成が立ち遅れていることである。
     
   • 以前はОＪＴで若手を育てていたが、業務量の増大で管理職にも余裕がなくなってきているため、職業公務員が育ちにくくなっているという問題がある。
     
   • 留学から帰国後すぐに退職する者に対しては、留学費用が税金で賄われていることにかんがみ、一定のペナルティーを課すべきである。
     
   • 留学については、もっと多くの者を派遣して国際感覚を養わせるべきである。また、Ｉ種だけでなく、II種、III種の職員も留学に数多く行けるような工夫について検討すべきである。
     
   • 府省間交流をもっと積極的に行うべきである。府省間交流は、府省間の縦割りの打破につながるし、個々の職員の将来の登用の幅を広げることにもつながる。
     
   • 現場感覚を養うためにも、若手職員にもっと地方経験を積ませるべきである。
     
   • 官民の移動をもっと自由にできるような制度にすべきである。仕事のスピード感を学ぶという意味でも大いに勉強になる。
     
   • 公務員についても、一生公務員でいる者、官民間を行き来する者、パートタイムで働く者等、多様な働き方を許容するような制度にすべきである。
     

   ハ）外部人材の活用（民間の人材の登用、退職者の復帰）

   優秀な民間の人材をもっと登用すべき、そのため登用の障害となっている再就職規制等を見直すべき、一度公務員を辞めた人の再登用の円滑化に取り組むべき等の意見があった。

   • 技術革新が進む中で、今いる職員だけで専門的な行政課題を全てカバーするのは困難な分野が増えてきており、民間の人材を適切に登用することが不可欠である。
     
   • 民間の人材の短期登用は定員外というくらいの整理をして、登用の促進を図るべきである。
     
   • 優秀な民間の人材を採用するためには、まず給与等の条件案を示した上で交渉し実際の条件を決定するというプロセスを踏む必要があるが、現行制度上はそのプロセスを踏むことができないという問題がある。
     
   • 民間の人材に活躍してもらうためには、相当のポストに就いてもらう必要がある場合もあるが、適切にポストを用意できているとは言いがたい状況である。各府省の判断でもっと自由に組織改編等を行えるような制度にすべきである。
     
   • 優秀な民間の人材に来てもらうためには、役所から退職後２年間は関係業界に再就職できない、民間から来た場合に退職金が切れてしまう等の障害を解決する必要がある。また、役所に勤めることがキャリアアップになるようにすることが必要である。
     
   • 優秀な民間の人材が必ずしも優秀な行政官になるとは限らないということを念頭に置いた上で、外部人材の活用について検討することも必要である。
     
   • 公務員にも民間の人材に負けないくらい優秀な人が多数おり、高給の民間の人材の登用を増加させることがかえって職場の士気を下げることのないよう、給与の改善等必要な対策を講じるべきである。
     
   • 公務員を辞めて一度民間等に出た人について、優秀であれば公務の職場に円滑に戻れる仕組みを考えるべきである。
     

   二）女性の登用

   女性の登用を増やすため、女性の採用数を増やすべき、超過勤務の縮減、休職・休 暇制度の充実等により男女ともに働きやすい職場を作るべき等の意見があった。

   • 女性の登用を進めるためには、女性の採用数を増やすことが一番の近道である。例えば、同じ能力なら男性よりも女性を優先的に採用するという方針を政府として明確に打ち出すべきではないか。
     
   • 超過勤務が蔓延しているため、体力・家庭の制約から女性の職域が限定されたり、安心して出産・育児ができないのは問題である。女性が働きやすい職場は男性も働きやすい職場という意識で職場改善に取り組むべきである。
     
   • 女性の公務員に対する人気は依然として高いものがある。少子化が進行している中で、人材を確保する観点からも、引き続き女性が働きやすい環境の整備に努めるべきである。
     
   • Ｉ種の女性については相当程度登用されているが、II・III種の女性の登用が遅れているので、重点的な取組みを行う必要がある。
     
   • 育児休業を取得すると、職場のマンパワーが落ちるので、そういう意味で女性が歓迎されない面がある。
     
   • 育児休業、介護休暇の期間を延長すべきである。
     
   • 夫の転勤等の事情で職場を離れざるを得ない間は休業できるような制度を作るべきである。
     
4. 退職管理の在り方

   いわゆる「天下り」の問題については、見直しの論議があり将来が不安、正すべきところは正しつつ能力活用型の再就職であれば自由に行えるようにすべきとの意見が多かった。

   • 「天下り」については、見直しの論議があり、人生設計がはっきり描けないことに職員は不安を感じている。正すべきところは正しつつ、能力活用型の再就職については自由とする方向で将来像を明確に示すべきである。
     
   • 能力開発型の適正な再就職は、若手職員に早期にチャンスを与える意味でも必要である。個人的にも、役所に長く在職し続けるより、役所で培った専門性を活かして、いずれは新天地で能力を発揮していきたいと考えている。
     
   • 再就職を絞りこむことにすると、役所で多くの高齢な職員を抱えざるを得なくなるため、人件費がかさむ、組織の活力が失われ停滞するなど、弊害が大きい。
     
   • 公務員時代は給与を安く抑えられ、退職後は再就職もできないとなると、人生設計が立たないとみなされ、その結果優秀な人材を確保できなくなるおそれがある。
     
   • 一定の年齢を超えた職員を対象とする能力開発制度の創設や、割増退職金による転職の促進を図るべきである。
     
   • 特殊法人への役員の現役出向については、特殊法人の独立性の確保について議論する必要はあるが、行えるようにすべきである。
     
   • 公務員に対する国民の信頼を回復するため、「天下り」は禁止すべきである。それが困難だとしても、「天下り」先での給与を下げる等の措置は講じるべきである。
     
5. 倫理法の見直し

   倫理法については、職員の士気を低下させ、行政に必要な情報の収集の障害にもなっていることから、抜本的に見直すべきとの意見が多かった。

   • そもそも倫理法は、公務員は法律で縛らないと倫理も守れない人達であるという性悪説から成り立っており、法の存在自体が職員の士気を低下させ、公務員としての誇りを持ちづらくしている。廃止を含め抜本的な見直しを行うべきである。
     
   • 倫理法の解釈・運用が不明瞭で、職員を過度に萎縮させている。
     
   • 倫理法において、割り勘でも関係者との飲食を禁止しているのは行き過ぎである。
     
   • 倫理法により、行政を行うために必要な情報の収集ツールが減っているのは深刻な問題である。現実離れした政策の立案を防ぐ観点から、倫理法の見直しを行うとともに、行政における新たな情報収集システムの確立について検討すべきである。
     
   • 倫理法があるからといって、特に困るという意識はない。むしろ、民間企業と契約を結ぶ部署については、国民からあらぬ疑いをかけられないためにも、倫理法で厳しく行為を制限しておく方が望ましいのではないか。
     

（２）業務執行の改革

1. 各府省の行政の進め方の見直し

   無駄な作業を止めることを評価するシステムにすべき、前例踏襲主義を打破すべき、府省横断的なプロジェクトチーム方式を積極的に活用すべき等の意見があった。

   • 組織の長が行う業務の中で、組織のマネージメントは重要な仕事である。管理職は日々の調整業務に追われるのでなく、組織としての目標の明確な設定や不断の業務改善等にもっと意を尽くすべきである。
     
   • 役所の事務方のトップである事務次官が毎年のように代わり、マネージメントが確立しないのは問題である。せめて３〜４年は在職するようにすべきである。
     
   • 必要性の薄い法律は作っても評価しないシステム、無駄な作業をやめることを評価するシステムに転換すべきである。
     
   • 業務改善のため、業務に優先順位をつけて効率的な業務運営を目指すべきである。
     
   • 決裁の印の数を減らす等、業務改善のための地道な積み重ねを引き続き行っていくべきである。
     
   • 制度改正が多すぎて、国に制度の運用状況をフォローする余裕がないのは問題である。運用面の実態把握にもっと力を入れるべきである。
     
   • 前例踏襲主義では時代の変革に対応できない。その意味で、内閣法制局の法制審査の在り方を見直すべきである。
     
   • 府省横断的な政策の立案が必要なケースが増えてきており、その際には、府省を超えた実務レベルのプロジェクトチーム方式を積極的に活用すべきである。この場合、権限と責任を明確にしておくことが不可欠である。
     
   • 政策の企画立案のプロとして活躍、成長していく上で、大臣スタッフのアイデアは魅力的である。
     
   • 大臣スタッフについては、大臣の在任期間が短い現状の下では活用しにくいという問題があり、工夫が必要である。また、大臣スタッフとして他府省の職員を登用することは、混乱を招くので避けるべきである。
     
   • 省庁統合もあって、幹部の数が増えており、それが迅速な意思決定を妨げ、職員の業務量を増やす原因にもなっているので、フラットな組織に変えるべきである。
     
2. 内閣機能の強化

   内閣に優秀な若手を集め国家的な政策を立案させるべき、内閣の仕事は各府省だけでは行えないものを期限を決めて集中的に実施することとすべき等の意見があった。

   • 政策の企画立案のプロとして活躍・成長していく上で、内閣の戦略スタッフ群のアイデアは魅力的である。
     
   • 内閣出向を各府省のエリートコースにして、内閣に優秀な若手を集め、そこで国家的な政策を立案させることにより、内閣機能を強化すべきである。
     
   • 内閣機能を強化するためには、ポストを一定の府省に固定化することなく、内閣で人事権等を留保することが必要である。
     
   • 内閣機能の強化の鍵は、内閣を１つの役所とせず、各府省からどれだけ優秀な人材を集めることができるかにかかっている。各府省の政策に精通している人が内閣にいないと、内閣は各府省から出された政策をホッチキスすることしかできなくなる。
     
   • 内閣に集めた若手を２年で出身府省に戻すのではなく、内閣にそのままとどめることができるようにすべきである。それによって、出身府省の意向にとらわれることなく国家戦略等をじっくり練ることが可能となる。
     
   • 内閣においては、各府省のこれまでの業務に基づく蓄積を大事にしつつ、今まで各府省だけでは行えなかったものを内閣主導で行うという方式で仕事を進めるべきである。
     
   • 内閣の仕事の進め方としては、明確なミッションの下で期限を決めて組織を設置し、そこで集中的に業務を進め、役割を終えれば即廃止するという方式がふさわしいのではないか。それにより、各府省の仕事を徒に増やすことも防止できる。
     
   • 危機発生時に迅速に対応できるよう、そのための人材を内閣に一定数プールしておけるようなシステムを作るべきである。
     
3. 企画立案部門と実施部門の分離

   企画立案部門と実施部門を分離する場合には、両部門間で適度な人事交流を行うことが必要である等の意見があった。

   • 企画立案と実施を分離する場合には、適度な人事交流を行うことが必要である。
     
   • 相互の意思疎通が円滑に行われることが担保されずに企画立案と実施を分離すると、現実離れした政策の立案を助長したり、実施部門の安住を許してしまうおそれがある。
     
   • 企画立案と実施の分離については、理念としては理解できるが、現実問題として、全ての府省において行うのは難しい。その意味で、企画立案と実施の分離の進め方等については、各府省の裁量に委ねるような制度設計にすべきである。
     
   • 実施部門という整理で独立行政法人化した研究所等の今後の動向を見守る必要がある。
     
4. 組織・人事制度の設計・運用の弾力化等

   緊急の案件に適切に対応できるよう、各府省がそのミッションに応じて機動的に組織改編、人事配置換等を行えるような仕組みにすべきとの意見が多かった。

   • 緊急の案件に適切に対応できるよう、各府省がそのミッションに応じて機動的に組織改編、人事配置換等を行えるような仕組みにする必要がある。中央人事行政機関に対して組織等を要求する作業のために、各府省が膨大なエネルギーを費やしている現状は問題であり、官官規制は緩和・撤廃し、中央人事行政機関の機能は事後チェック機能に転換すべきである。
     
   • 企画予算ということで人件費や外部委託費等を一括りにし、各府省が自由に支出できるようにすることはできないか。
     
   • 定員について、一律に削減をするのではなく、行政の状況に応じてメリハリをつけた削減とすべきである。また、そもそも、現在の定員配置自体適正なものになっていないという問題がある。
     

（３）政と官の関係の在り方

政と官の役割分担を明確化すべき、官としての考えを直接世に問えるようにすべき、国会関係業務の改善を政治の側に働きかけるべき等の意見があった。

• 選挙で選ばれ、価値判断を国民から負託された「政」と、知識・専門性で選ばれ、経験を蓄え、政策の選択肢を作り立法府が通した制度を中立的に施行する「官」というように、政と官の役割分担を定義すべきである。その上で、官は必要な知識・専門性に磨きをかけるべきである。
  
• 政と官の領域があいまいであるため、政にお伺いを立てないと官は何もできないような状況になっている。例えば、与党内の調整についてまで官が行っている現状は改めるべきではないか。
  
• 英国のように、政党との調整を行うことのできるメンバーを限定し、官が政策の企画立案に専念できる仕組みを確立すべきである。
  
• 「政治主導」が「政治家主導」に履き違えられているのではないか。「政治主導」とは、内閣総理大臣及び大臣がそれぞれの責任を持って行政を行うということであり、政治家が役所の言うことを否定するとか局長をすぐに呼びつけるということを意味するものではないのではないか。
  
• 縦割りの弊害を打破するような大胆な改革を行うためには、政治の側の指導力が必要である。
  
• 政治主導の名の下に、骨太な施策（＝国民に負担を求める施策）が適切に打ち出せず、また、本来あるべき政策の企画立案・実施が歪められることがあるのは問題ではないか。与党との調整を図る前に、内閣としての意見を世に問えるようにすべきではないか。
  
• 情報公開法が施行される中で、政策の企画立案、実施において、政が官に何を要求しているのかを公表すべきではないか。
  
• 国会の質問通告を答弁日の２日前に行うというルールを徹底してもらう必要があるのではないか。通告が遅れることによって霞ヶ関（及び国民）が支払っているコストは膨大であり、その実態を公表すべきではないか。
  
• 政治主導の流れの中で、官が政に関わっていけるような仕組みが必要である。例えば、公務員の身分を保有しつつ政の世界に触れられるような仕組みを考えるべきではないか。

（４）その他

• スト権について、職場が倒産する恐れのない公務員に付与することは不適当である。
  
• 若手の早期退職者を減らす意味でも、転籍希望者のリストを各省で作成し、それを交換するなどの工夫をすべきである。
  
• 地方公務員制度についても、きちんと改革を行うべきである。

ＩＩ．早期退職者の意見等

１．早期退職の理由等

（１）再就職先との関係

• ベンチャーから誘いがあり、以前から興味を持っていたインパクトの大きいインフラビジネスを手がけるチャンスは２度と来ないと思ったため。
  
• 役所で主に法律の仕事を担当しているうちに、法律の専門家としてずっと仕事を　　していきたいと思うようになったため。
  
• 法律や答申を作るだけでは満足ができなくなり、もっと血の通った仕事をしたいと思ったため。
  
• インターネット等を通じて、国内外の情報に誰でもアクセスできるようになり、また、国会議員や自治体が大学やＮＧＯの提言を真剣に聞くようになってきたことから、役所以外でも政策提言は行えると思ったため。
  
• 技術屋として現場での経験を積むプロフェッショナルであり続けたいという気持ちが強く、中央省庁よりもその希望を満たし得る職場を見つけたため。
  
• 海外での留学生活を通じ、自分にとって公務員よりもふさわしい選択肢（外資系企業）を見つけたため。転職すれば今の何倍もの給与を得られる可能性があるということにも、大きな魅力を感じた。
  

（２）役所の仕事の在り方の問題

• 仕事量に見合った人員が確保されておらず、過酷な超過勤務が続く中で、健康面に不安を感じた。
  
• 過酷な超過勤務等、女性が仕事を続けていくにはきつい職場だと感じた。
  
• 仕事自体は面白かったが、拘束時間があまりにも長く、司法試験の勉強等、自分の時間が十分にとれなかった。
  
• 日々の調整業務に追われ、政策をじっくり考える余裕がなかった。
  
• 目標となるような上司、先輩が職場におらず、公務員として仕事を続けていくモチベーションが薄れた。
  
• ２年程度でポストを転々とする中で、自分自身に何も専門性が身に付いていないことに気づき、将来に不安を感じた。
  
• 政治主導と言われながら、実際には政治のリーダーシップが十分ではないため、役所として、また、役人として、何をすれば良いのかが不明確になっていると感じた。
  
• 予算が硬直的であるため、制度と現実とが大きく乖離しているにもかかわらず、それが改められないことに空しさを感じた。
  

２．公務員制度等改革に期待するもの

（１）信賞必罰の徹底　　

• 行政の目標を明確にした上で、目標の達成に必要な人材の確保、目標の達成に貢献した人間への正当な評価がきちんと行われるようなシステムを作るべきである。
  
• 給与カーブを若手に手厚くする、本省と出先機関の給与水準にもっと差を付ける等により、給与を働きに見合ったものに改め、職員の士気の高揚を図るべきである。少なくとも、賞与については見直すべきである。
  

（２）キャリア制度の見直し

• 採用時のみでコースが決まる現在のキャリア制度は問題である。入口でＩ種･II種の区分けをすることは必要だが、入省後に頻繁に入れ替え戦があるような仕組みにすべきである。
  
• Ｉ種職員に、若いうちからもっと現場経験を積ませるべきである。
  
• Ｉ種のキャリアパスが画一的なのは問題である。ジェネラリストとスペシャリストのコースを用意し、職員が自由に選択できるようにすべきである。
  
• Ｉ種職員については、コピー等の雑務をやらせず、企画立案業務に専念できるような体制を整えるべきである。
  

（３）多様な人材の育成・確保

• 公務員の採用については、特定の大学、学部に偏ることなく、個性的で多様な人材を確保することが必要である。
  
• 仕事量に見合った人員が確保されていないのは問題である。特に仕事のできる補佐クラスの数が絶対的に不足しているので、他省庁からの出向・転籍の円滑化等により、即戦力を確保すべきである。
  
• 職場の閉寒感を打破するため、２０代の民間の優秀な人材を課長に登用したり、若手職員が民間企業で最先端の専門性を身に付けることができるような官民交流制度を構築すべきである。
  
• 民間の優秀な人材に来てもらうためには、給与等の処遇面の改善だけでなく、行政として新たにチャレンジする特定のプロジェクトのリーダーとして募集する等の工夫が必要ではないか。
  

（４）その他

• 職場において、非常に忙しい人と暇な人とが併存しているので、役割分担を見直し、業務量の平準化を図るべきである。
  
• 留学から帰国後すぐに退職する者に対しては、留学費用が税金で賄われていることにかんがみ、一定のペナルティーを課すべきである(自分も帰国後すぐに辞めてしまったが、それを許す今の公務員制度は甘いと感じている。)。