特殊法人等の事業見直しの論点整理行政改革推進事務局
特殊法人等の事業見直しの論点整理(特殊法人等改革の意義) 特殊法人等は、行政に関連する公的な事業の遂行のため、特別の法律により設立された法人である。昭和30年代には、とりわけ多くの特殊法人等が設立され、以後、行政ニーズの多様化、高度化に対応して、公共事業、政策金融、研究開発など幅広い分野において、各省庁等との緊密な連携のもと、様々な政策実施機能を果たしてきている。 その一方で、特殊法人等については、従来からその抱える問題が各方面から指摘され、幾次にわたる改革も行われてきた。しかしながら、依然として多くの問題が解決されることなく残っており、平成9年12月3日の行政改革会議最終報告において、@経営責任の不明確性A事業運営の非効率性・不透明性B組織・業務の自己増殖性C経営の自律性の欠如などが、特殊法人等の問題点として厳しく指摘されているところである。 また、特殊法人等に対しては、平成13年度予算ベースで約7兆5800億円の補助金等や約24兆4100億円の財政投融資が予定されており、中長期的な財政支出の縮減・効率化の視点や財政投融資改革との関連等をも踏まえた抜本的な見直しが求められている。 (行政改革大綱の方針) 昨年12月1日に閣議決定された「行政改革大綱」においては、特殊法人等改革に係る基本的考え方として、「特殊法人等の事業が現在及び将来にわたる国民の負担又は法律により与えられた事業独占等の特別の地位に基づいて実施されていること等にかんがみ、全ての特殊法人等の事業及び組織の全般について、内外の社会経済情勢の変化を踏まえた抜本的見直しを行う」とされている。 同大綱においては、この基本的考え方に基づき、各特殊法人等の個々の事業について見直しを行うことにより、その廃止、整理縮小・合理化、民間・国その他の運営主体への移管等、整理合理化を図るとしており、見直し基準として@事業の意義が低下していないかA目的を既に達成していないかB著しく非採算ではないかC事業効果が乏しくないかD民業を圧迫する等、政策的再評価を要しないかE特定の対象を過度に優遇していないかF民間と競合していないかG他の特殊法人等で、類似の事業を実施していないかH民営化の方が効率的ではないかI政府の直接処理で対応できないか、等を掲げている。 そして、これらの基準に基づく事業の見直し結果を踏まえ、特殊法人等の組織形態について、廃止、民営化及び政策実施主体としてふさわしい独立行政法人などの組織形態への見直しを行う方針を同大綱は定めている。 (行政改革推進事務局の取り組みと今後の検討スケジュール) 行政改革推進事務局では、本年1月の発足以来、77の特殊法人、86の認可法人を対象に、その事業について直接、法人等からヒアリングを行った。 特殊法人等は、様々な事業を実施しているが、その性格や機能の類似性等から、概ね別表のように事業類型をとりまとめることができる。また、ヒアリング結果によれば、類型ごとに問題点に一定の傾向が見られることから、今回、それらを前記大綱の10項目の事業見直し基準を踏まえた事業類型別の見直しの論点として、以下のように整理した。 当事務局としては、この事業類型別の見直しの論点を公表し、各省庁及び特殊法人等においても自ら積極的な事業見直しの検討を行うことを求めるとともに、この論点整理に寄せられる各方面のご意見も参考としながら、引き続き特殊法人等の事業の見直しを精力的に進めていく予定である。 今回の特殊法人等改革は、単に法人の組織形態、すなわち「器」の見直しにとどまるべきではなく、「中身」である特殊法人等の事業の徹底した見直しが極めて重要である。すなわち、政策的必要性、事業手法の合理性等の観点から、事業の内容はもちろん、その仕組み、更にはいわゆる子会社等を含む事業実施の方法等に遡った上で、ゼロベースから厳しい事業見直しを行うことが大前提であり、その上で各法人の組織形態の在り方が検討されるべきである。 この事業類型別の見直しの論点等を踏まえ、今後、各省庁等における検討を含め、6月を目途に今次特殊法人等改革の一定の方向性を中間的にとりまとめ、更に行政改革大綱に定められた平成13年度中の「特殊法人等整理合理化計画」の策定を進める。 −事業の類型別論点−
(公共公物等建設・管理) 公共の用に供する営造物(道路、空港、ダム等)を建設し、一般の利用に供させるため管理するもの。 (公共公物等建設・譲渡・貸付) 建築物の敷地の整備、宅地の造成、建築物の建設等を行い、それを第三者に貸付又は譲渡するもの。 ○ 借入金等により事業を行い、事業完了後、事業収入により事業費を回収する長期的事業については、採算性に問題がないか。また、採算性の見通しが適切・妥当か。 ○ 社会経済情勢の変化等により、当初の計画どおり事業が進捗しなかったり、採算性に問題が生じたりしていないか。 ○ 一部の利用者からの収入により他の利用者のための事業費が賄われることなどによる不公平が過大になっていないか。 ○ 社会経済情勢の変化等により、既に事業の意義が乏しくなっていないか。 ○ 国の直轄事業との役割分担が明確かつ適切か。 ○ 当初、国家的事業としての位置付け等から国が関与している事業について、現時点においても依然国の関与の必要性が明確になっているか。 ○ 地方公共団体、他の特殊法人、民間等において類似の事業が行われているものについては、事業を実施すべき必要性が明らかになっているか。また、事業間の調整がなされているか。 ○ 国の命令・指示により実施する事業については、国の政策としての必要性にまでさかのぼって議論する必要があるのではないか。
資金の貸付、出資、債務保証等を行うもの。 ○ 社会経済情勢の変化等により、既に事業の意義が乏しくなっていないか。 ○ 民間金融機関と競合しているのではないか。 @ 民間で現に提供しているものはないか。 ○ 特にいわゆる特別貸付については、コスト(国の財政負担)・民業圧迫の観点から、現時点において見直すべきものはないか、貸付制度の時限を明確に切る必要はないか。 ○ 特殊法人等の間で事業が重複していないか。 ○ 民間並みの自己査定を行い、貸付資産等のリスク管理を厳格に行っているか。 ○ 実態を反映した引当金の開示が必要ではないか。 ○ 金利決定について、決定責任主体が明確になっているか。 ○ 繰上償還を含めた政策コストが過大になっていないか。 ○ 政策金融について評価手法を検討し、その結果を事業に反映させているか。 ○ 出資、融資、債務保証等それぞれの政策目的に応じた適切な選択が行われているか。
試験研究・技術開発、政策調査研究等を行い、又は行わせるもの。 ○ 費用対効果の分析が十分に行われているか。その上で、政策的必要性が認められるか。 ○ 研究課題の設定、実施体制の決定、研究期間終了後の研究成果(長期にわたるものについては中間時点の進捗状況)について、厳格な外部評価の実施や、評価結果を研究資源配分等に反映させる取組みが十分か。 ○ 研究成果及び外部評価の内容の公表が適切かつ十分か。 ○ 研究機関相互における、研究テーマ・内容の重複がないか。 ○ 国の主導の下に実施しているものについては、国と研究機関の責任関係が明確になっているか。国が研究機関に対して設定している目標が具体的なものとなっているか。 ○ 事業の実態を的確に開示しているか。 ○ 研究成果から生じる収益が適正に還元される仕組みになっているか。
技術協力等国際協力に関するもの。 ○ 客観的な事業評価の指標があるか。また、外部評価がなされているか。 ○ 社会経済情勢の変化等により、既に事業の意義が乏しくなっていないか。 ○ 地方公共団体、他の特殊法人等において類似の事業が行われているものについては、事業を実施すべき必要性が明らかになっているか。また、事業間の連携・調整がなされているか。
A.員内福利厚生 特定の事業に係る構成員を主たる対象に福利施設等を利用に供させるもの。 ○ 員内利用目的を超えて、民間で実施している同種の業務との競合関係にあるものはないか。員内外で適切な料金格差が設定されているか。 ○ 需要が減少し、著しい不採算に陥っている施設はないか。 ○ 施設管理に係る定型的・単純業務について、競争条件を付した民間委託を進めているか。 B.医療・療護 特定の政策目的をもって医療や療護を行うもの。 ○ 事業の民営化又は全面的な民間委託化を行った方が効率的なものはないか。 ○ 事業の民営化又はそれに準じた自律的運営になじまないものについては、果たすべき役割・政策目標を明確化し、事業の重点化を図っているか。 ○ 事業の実施について、客観的な事業評価の指標に基づく評価や、厳格な外部評価 が実施されているか。 ○ 施設管理に係る定型的・単純業務について、競争条件を付した民間委託を進めているか。 C.教育・指導・訓練 特定の政策目的をもって教育や職業訓練等を行うもの。 ○ 事業の民営化又は民間委託や外部の人材活用の拡大を行った方が効率的なものはないか。 ○ 地方公共団体等への移管を行った方が地域の実情に即したものとなり得るものはないか。 ○ 社会経済情勢の変化により、政策的意義の乏しくなったものはないか。 ○ 社会経済情勢の変化に対応して、適時適切にメニュー等の見直しを行っているか。 D.その他提供管理 特定のサービスを提供することを目的に施設等(劇場、運動場等)を管理運営するもの。 ○ 事業の民営化又は全面的な民間委託化を行った方が効率的なものはないか。 ○ 事業の実施について、客観的な事業評価の指標に基づく評価や、厳格な外部評価が実施されているか。
需給・価格の安定を図るため、特定物品の売買、備蓄等を行うもの。 ○ 政策的必要性が認められるか。 @ 制度創設当初に比較して事業の意義が低下していないか。 ○ 国の直接執行のほうが効率的な事業があるのではないか。 ○ 事業者が一部負担している場合、国と事業者との負担割合が適正か。 ○ 費用対効果の分析・公表が行われているか。
補助金等の給付を行うもの。 ○ 政策的必要性が認められるか。 @制度創設当初に比較して事業の意義が低下していないか。A 効果はあがっているか。 B 基金、特別会計収入、公営競技の交付金等、事業量とは直接関係なく収入が確保されている場合について、いわゆるバラマキ(あるだけ使う)になっていないか。 ○ 助成について、第三者機関による審査・評価の実施、助成先の公表を行っているか。 ○ 国の責任と特殊法人等の責任は明確化されているか。振興・助成・給付の対象の決定について、実質的な決定権者と形式的な決定権者とが乖離していないか。国が明確な目標を定めているか。 ○ 振興・助成・給付の対象となった事業について適切に評価を行い、その結果を事業に反映させているか。 ○ 国、他の特殊法人等又は地方公共団体との間で事業が重複していないか。 ○ 国、地方公共団体又は民間団体が実施すべき事業があるのではないか。
社会保険、簡易生命保険等の資金の運用を行うもの。 ○ 明確な運用目標が設定されているか。 ○ 適切な事後評価が実施されているか。 ○ 組織内の運用管理・チェック体制は万全か。 ○ 上記の点について、適切な情報公開や被保険者・事業主(の代表)等のチェックが確保されているか。
政策立案等のため情報を収集し、又は、国民の安全等のため特定の情報を一般に広く周知させるもの。 ○ 客観的な事業評価の指標があるか。また、外部評価がなされているか。 ○ 社会経済情勢の変化等により、既に事業の意義が乏しくなっていないか。 ○ 地方公共団体、他の特殊法人等において類似の事業が行われているものについては、事業を実施すべき必要性が明らかになっているか。また、事業間の調整がなされているか。 ○ 国、地方公共団体又は民間団体が実施すべき事業があるのではないか。
公益目的を有する事業を、利潤をあげることを前提とした特別の会社形態等により行うもの。 ○ 各法人が有する事情を踏まえ、民営化するための前提条件、民営化に向けたスケジュール等をより明らかにする必要があるのではないか。
競馬、競輪、競艇等公営競技に関するもの。 ○ 補助金交付事業について、国等の補助事業との関係を明確化する必要があるのではないか。 ○ 補助金交付事業について、積極的な情報開示を行う必要があるのではないか。 ○ 業務独占により、管理経費の削減などの事業効率化に向けたインセンティブが十分に働いていないのではないか。
国家公務員等の共済事業に関するもの。 ○ 年金積立金の運用体制は整備されているか。 ○ 施設の運営その他の福祉事業については、組合員のニーズ若しくは事業の意義が低下し、又は事業効果の乏しいものは整理すべきではないか。
公認会計士、税理士等からなる職能団体に関するもの。 ○ 業務、財務等に関する情報公開を推進すべきではないか。 ○ 国民一般からの懲戒処分の請求を認めるべきではないか。 ○ 公正有効な競争の確保等の観点から、報酬規定を会則記載事項から削除するとともに、会則による広告規制について見直すべきではないか。 ※ いずれも、規制緩和推進3か年計画の記載事項(「検討」を含む。)。
事業者団体等の中央組織に関するもの。 ○ 事業者団体の有する人的・物的資源、組織の状況等を踏まえ、各団体を国の政策実施主体として活用することの妥当性・有効性がどの程度あるか。 ○ 市町村の単位会、都道府県の連合会及び全国団体という事業者団体の構成について、効率性の観点から見直すべき事業者団体はないか。 ○ 国の政策実施主体として事業者団体を活用していることによって、当該事業者団体を活用して行う施策と、他の事業者団体又は地方公共団体を活用して行う施策とが重複していないか(特に補助金)。
○ 独占的に事業を行っている立場を踏まえて、事業が適正に実施されているか。 ○ 事業の実施について、客観的な事業評価の指標に基づく評価や、厳格な外部評価が実施されているか。
○ 関連法人に事業の一部を行わせている結果、当該関連法人に過大な利益が生じていないか。その結果、特殊法人等自体の収支を悪化させ、更なる国庫補助金の増加等を招いていないか。 ○ 委託先が関連法人に固定化し、委託費が過大になっていないか。 ○ 出資会社の財務状況の把握をしているか。累積赤字がある場合、何らかの見直しを検討しているか。 |