特殊法人等に係る「欠損額等」の公表について


平成13年11月7日
行政改革推進事務局

○本資料は、小泉首相の指示により、9月末に各特殊法人等から公表されたH12事業年度の「行政コスト計算書類」(民間企業並みの会計基準に準拠)をもとに、「欠損額等」を集計、並びに「将来コストとして発生するもの」、「将来コストとして発生する可能性があるもの」を抽出・推計したものである。

○本資料では、まず、@各法人の資本・出資等の劣化である行政コスト計算書類上の欠損金等を全法人について集計(「欠損額等」)し、次に、A将来コストとして発生するもの、並びに貸借対照表上にあらわれていないもの、例えば簿価と時価の乖離、別途重要な会計方針の中に記載されているもの等、将来の国民負担につながる可能性があるものについて抽出・推計(「将来コストとして発生するもの」「将来コストとして発生する可能性があるもの」)を行った。@については、行政コスト計算書作成対象の全法人につき、同書類作成に係るプロセス面のチェックを行うとともに、累積損失等を集計し、Aについては、規模が大きく、国民的関心も高い 「先行7法人(道路4公団・住宅公庫・都市公団・石油公団)」や政策金融機関等を対象とした。

○なお、今回の推計については、一般に公正妥当と思われる手法に基づいて概ね行ってはいるが、資料や時間等の制限もあり十分に網羅的・横断的な調査ができたとは言いにくい。各法人とも監査法人の指導を得つつ、「行政コスト計算書作成指針」に基づいた対応がなされているが、一部には改善の余地のある処理が見受けられ、また元来時価評価が難しく、信頼に足る外部の評価を入れたほうが望ましい性質の資産もある。
 よって今後、信頼性を高めるための外部のチェック、例えば監査法人による監査等により、より資産内容の査定を厳格に行ってゆくことが望ましいものと考える。

○また、法人によっては、収益・債務償還計画が下方にぶれた際に追加的な国民負担が生じることも想定され、本資料では特に道路系4公団について、こうした「下振れリスク」を参考に推計している。

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行政コスト計算書上の欠損額等について

 (単位:億円)
 
 仮定B/S上の欠損金等・・・▲252,999
 仮定B/S上の剰余金等・・・+213,727
 
 差           引・・・▲39,272

 ※欠損金等・剰余金等については、原則的に民間企業仮定貸借対照表上の (資本の部合計)-(資本金合計)とした。


行政コスト計算書上、将来コストとして発生するもの(例)

 (単位:億円)
 仮定B/S上に資産計上されているが、将来の国民負担を前提としているもの。
 
 住宅金融公庫 ・・・ ▲3,414
 
 (注)過去の繰上償還に伴って発生したコストの一部について、財政上の交付金措置を担保とした
特別損失金として資産計上処理したものであり、将来の国民負担が必要となるもの。


行政コスト計算書上、将来コストとして発生する可能性があるものの推計(例)

 (単位:億円)
 (1) 政策金融機関で貸出債権の引当不足懸念があるもの。
 
 中小企業金融公庫 ・・・ ▲358
 
 (注)他の2銀行・5公庫は、自己査定に基づき引当金額を算出しているが、当公庫は要注意債権の
把握をしていない。仮に、同様の他の政策金融機関を参考として要注意債権額を算出し、これに民
間並の引当率を乗じた場合、約358億円の引当不足と試算される。

 
 (2) 事業用資産の廃棄費用が特に大きいもの。
 
 
日本原子力研究所・・・▲3,700
核燃料サイクル開発機構
 
・・・
 
▲8,500
 
 (注)現時点では、廃炉及び放射性廃棄物処理等の費用を合理的に見積もることが困難であるため、
一定の仮定のもとで法人が試算したものである。将来、これを研究対象とし、研究開発費用として計
上することがあり得るものである。




(参考:道路4公団において未償還となるおそれがある額の試算)

 借入金等により事業を行い、事業完了後、事業収入等により事業費を回収する事業を行う法人については、将来予測の変動リスクにより、予定どおり償還できない可能性がある。
 例えば、道路4公団について、将来の交通需要の変動リスクについて、事務局において機械的に試算を行ったところ、結果は以下の通り。

[ 試算の概要 ]

○この試算は、「償還見通し」における交通量予測を実際の交通量が下回るケースをいくつか想定し、それにより発生した収入の減少分について、料金収入により償還できないものとして位置付け、各年度発生分の合計を求めたものである。


名  称償還
期間
交通量増加分の減少率
▲10%▲20%▲30%▲50%
日本道路公団(高速自動車国道)50年+約4兆2,000億円+約7兆円+約9兆8,000億円+約15兆4,000億円
首都高速道路公団50年+約6,600億円+約1兆100億円+約1兆3,600億円+約2兆600億円
阪神高速道路公団(阪神圏)50年+約2,900億円+約6,100億円+約9,400億円+約1兆5,800億円
 
名  称償還
期間
交通量増加分の減少率
▲10%▲30%▲50%▲100%
本州四国連絡橋公団66年+約6,500億円+約1兆3,800億円+約2兆1,300億円+約4兆7,000億円
 
上記の欄の単純合計+約5兆8,000億円+約10兆円+約14兆2,300億円+約23兆7,400億円

注1)交通量増加分の減少率:償還見通しでは、今後交通量が増加すると予測されているが、その交通量の増加分が減少する割合
   例:現行交通量100、予測交通量140→ 50%減少による交通量は120
→100%減少による交通量は100
注2)表の未償還予測額は将来の償還期間終了時までの価額で試算しており、現在価額に置き直すと約1/2〜1/3程度の額となるもの。