1.日時:平成16年5月26日(水)18:00〜20:00
2.場所:虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座 長) 能見善久(東京大学教授) (座長代理) 中田裕康(一橋大学教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
金子宏(東京大学名誉教授)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 検討課題(社団関係)について事務局から、「非営利法人WG資料14」について説明があり、以下のような意見が出された。
- 拠出金に関する(1)から(5)までの規律と有限責任中間法人の基金制度とはどのように異なるのか。中間法人では、300万円以上の基金が法定されているのに対し、非営利法人では、金額を含め拠出金制度は定款で定めるとされていることのほかに違いがあるのか。(←ご指摘の部分以外は、ほぼ同じ内容である。)
- 出資型非営利社団を認めてほしいというニーズとして、@単なる会費や貸付金という扱いではなく、「出資して活動に参加している」という扱いにしたい、A企業は「貸付」という扱いでは資金を出してくれない。「出資」であれば出してくれるといった声を聞いている。
- 貸付金という扱いになると、企業としては無担保・無利子の貸付という扱いになるので、企業内部や株主に対して説明が難しいが、それが拠出金ということだと企業として出しやすいのかどうかという問題ではないか。
- 本来NPO法人の形態で出資をしたいが、NPO法人は出資を受ける仕組みがない、中間法人でも公益活動はできるが、NPO法人とは違うものになってしまい、公益性認定を受けるものとはならないという要望側の意識もある。(←また、制度として残余財産分配の禁止を求めており、拠出分のみの返還でよいとの考えのようである。)
- 残余財産の帰属に関する規律の主張は、税制と関係する。残余財産を社員に帰属させることが可能な法人だと課税されてしまう。
- 拠出について、資料のような制度とすることに賛成である。有限責任の法人制度を作るのであれば、拠出を法律で可能とすることは望ましく、その規律は中間法人の規律を基にしてよいと思う。拠出を定款で定めるだけでは、倒産手続における劣後性が法律的に安定しない。残余財産に関する規律はオープンにしておくことが望ましい。
- 非営利団体がする活動にも、資金が必要なものがある。
- 残余財産を社員に帰属させてはならないということまで法律で書き込むとすると立法の負担が大きい。残余財産の帰属は定款で定め、社員に帰属させないと定めた場合には、税効果が連動することができるとし、それで要望側のニーズを満たせるのであれば、そうしたほうがよい。定款が変更される場合もあるが、それは、公益性認定がされた後に公益性の要件を満たさなくなった場合として、公益性認定の枠組みで検討すべき。
- 拠出金を取り戻すということは、公益性のある非営利法人(2階部分)の議論とも関係する。民法の規定上は、定款で残余財産の帰属を定めることができ、社員が拠出分の返還を受けることも可能であるが、行政解釈では、それができないこととされている。なぜ、そのような運用となっているのかを考える必要がある。残余財産が拠出金に相当するものなのか、租税の減免によって蓄積された財産であり、公益に使われるべきものなのかの判断が難しいといわれている。
- 仮に、税優遇により、本来減少しているはずの財産が減少していなかったものとされるときに、その残余財産を誰に返すべきか。上積み部分は拠出者には行かないと法律に書き込むべきかどうか。
- 拠出を法人の債務とし、残れば拠出した額面を上限に返還してもらえるとすることが社会的に受け入れられるかどうかである。額面の限度であれば返還することを禁止しなくてよいのではないか。
- 拠出金の返還については、法人法制上は定款の記載にまかせることでよく、公益性認定において議論すべき事項であろう。
- 利息をつけることを野放図に認めると商事会社と混同されるので、無利息を原則とすべき。利息をつけることに社会的なニーズがないのであれば禁止すべき。
- 中間法人法制定の際にも付利の議論があったが、ニーズがないとして禁止した。
- 利息をつけないと、金融論的には価値が目減りしたことになるが、政策的には禁止したほうがよいのではないか。
- 拠出は、社員の地位と連動しない、つまり、第三者も拠出でき、返還請求の譲渡もできるとすべき。そうすれば、より持分と結びつかなくなる。
- 現物拠出における検査役などの規定については緩くしてもよいのではないか。
- 脱退時には返還してもよいのではないか。ただし、2(2)※のような制限を設けるべきで特に2(2)※のAは重要。
- 「出資型」という用語に代わる、より適切な表現はないか。
- 認識をそろえるために、要望している側から、利息の付与など細かな点に関するニーズを改めて聞いてみてはどうか。
● 検討課題(財団関係)について事務局から、「非営利法人WG資料15」について説明があり、以下のような意見が出された。
- B案は公益性を求めており、法人格と公益性を切り離すということを議論のスタートとすると、B案は異質である。
- B案は、公益性と切り離された財団がどのような事業でもできるのはおかしいので、やはり、公益性によるチェックをするべきだという考えであろう。
- 公益性を要求すると、「公益性とは何か」が問題になる。また、公益性のチェックが難しい。
- 社団と同じ「狭い意味での公益」を問題とすれば別だが、同窓会のための財団を認める「広い意味での公益」といった場合、公益の限界を定めるのは難しい。
- A案(2)Aアのような消極的な要件ならばあり得るだろう。
- 財団制度への疑念から、B案も論理的にはあり得るが、B案からの批判もふまえて、A案を検討していくということが重要だろう。
- 準則主義で財団を設立できるとすることに社会的にどういう意義があるのか。以前のWGでは同窓会や証券化の際の財産所有の器などとしてという議論があった。ただ、後者は補強的には主張できようが、積極的な理屈付けにはならない。
- 態度を決定することが難しいが…ドイツでは、日本の財団と異なり、公序良俗に反しない限り何でもできるとされている。ただし、すべての財団に行政の関与がある。 親会議では、当初は家族財団的なものが、後に公益的なものになることもあり、家族財団に消極的でない意見があった。
- 準則で設立できること、法人に対する監督がないとする前提では、A案(2)Aア〜ウのような制限をおいても、エンフォースメントが難しく、かえって問題がある。相続税回避やマネーロンダリングなどへの対応は、それぞれの制度で対応すべきと考える。しかし、財団を広く認めるべきではないという説からは、非営利社団にはニーズがあるから弊害があっても認めるものの、財団についてはニーズがないなら認める必要がないということになろう。
- 現行の公益法人制度では、地域が狭くなると公益性が認められにくい。一定地域の福祉を図るものを財団でやりたいというニーズはあり得よう。ただ、公益性の認定基準を改め、解決するという方法もあり得る。
- 社団と財団のシンメトリーをどのくらい維持するか。社団と財団は違うものなので自ずから財団には限定があるとするか、社団とのシンメトリーがあるほうがよいとするか。抽象的には、規定がない場合に類推できるよう、社団と財団とでシンメトリーがあるようにしたほうがよいだろうが。
- 「広い意味の公益」と「狭い意味の公益」という考え方をとると、シンメトリーは崩れるだろう。あるいは、親会議で、公益にも段階があるという結論になるかもしれない。
- 当面の作業としては、@親会議で、家族財団についてそれほど否定的ではなかったこと、A現在の公益財団がすべて公益性のテストをクリアするとも思えず、その場合に、法人格を喪失して権利能力なき財団になるというのは相当でないことから、当面は一般的な財団を認めることを議論すべきだろう。
- 制度の理念は、社団より財団のほうが弱く、公益性のない財団にあまりニーズがないのに、濫用の可能性は、社団より財団のほうが大きい。さらに、財団については、相続法制との整合性も検討すべき。その場合には、相続人がエンフォースする機関になりうると思う。
- B案からの批判もふまえつつ、A案を軸にするという意見が大勢と思われる。A案(2)@Aの中のどのタイプをとるかについては議論が必要だろう。
- B案からの批判に応えるために訓示的な規定を置くこともあり得るが、A案(6)後段のような規定や存続期間の制限を設けるなど政策的な対処をすることはできないか。
- 出捐者に出捐額以上に戻ってくるというのは違和感がある。
- 財団の範囲を制限する理由が営利法人の規律の潜脱への対応であれば、解散時に残余財産を設立者に帰属させることを禁止しなくてもいいのではないか。
- 財団の目的・事業の範囲についてはもう少し検討したい。
以上