1.日時:平成16年3月16日(火)10:00〜12:00
2.場所:虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座 長) 能見善久(東京大学教授) (座長代理) 中田裕康(一橋大学教授)
岩原紳作(東京大学教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
金子宏 (東京大学名誉教授)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 検討課題(財団関係)について事務局から、「非営利法人WG資料11」について説明があり、以下のような意見が出された。
- WG資料11のA案〜D案は議論をしやすくするためのもので、このうちのどれかに決めるという趣旨ではない。
- 以前に家族世襲財団を認めることは適当ではないと言ったことがあったが、ドイツでは認めており、日本でも神経質になるべきではないのかもしれない。そもそも「家族世襲財団とは何か」という問題がある。家族世襲財団とそれ以外の財団との区別が難しい。
- 家族世襲財団には@家族世襲財団を認めるべきか、A認めないとした場合に実効的に排除できるか、という二つの問題がある。家族世襲財団を認めることにより、特定の相続人が排除されたり、家制度の復活につながるなど、相続法秩序との関係で問題が生じるおそれがあるのではないか。ただ、家族世襲財団を認めないこととしても、準則主義の下では、実効的に排除することは難しいかもしれない。情報公開やガバナンスを高めることによって、家族世襲財団としては使いにくい制度にしておくこととすべきか。
- 家族世襲財団の効用として、文化的、社会的に意味のある財産の切り売りを防ぐという面がある。それは公益と紙一重のものといえるのではないか。公益目的ではなくともマイナス面ばかりではない。
- 相続法秩序の観点から家族世襲財団を制限するならば、家族世襲社団も制限すべきこととなるのではないか。
- 家族世襲財団を認めないとしても、限定する具体的なやり方が分からない。
- 理念のレベルで私益目的を不可とする場合には、少なくとも登記簿上の「目的」欄には、私益を掲げることはできないことになる効果はあるのではないか。
- 解散命令に結びつくという効果が考えられるかもしれない。
- 社団のみならず信託でも財団と同じことができる。財団だけ制約を課すならどのような理由になるのか。
- 信託の場合には、存続期間の問題があり、永久とすることは許されない。この考え方を財団に持ってくることが考えられるかもしれない。
- 公序良俗に反する場合には、家族世襲財団を排除するという考え方もあり得る。民法典に掲げられた権利で存続期間が規定されているものは少ないが、規定されていない権利でも存続期間を公序良俗の中で考えるべきということもあり得る。
- 寄附行為の定めを民法第90条の公序良俗違反でコントロールしようとしても、寄附行為にはあからさまに公序良俗違反となるような定めを書かないので、実効的には働かないのではないか。
- 公益性を要件としない財団については、法定の存続期間を設け、公益性を有する財団については、存続期間の定めがないという考え方もあり得る。
- 存続期間が満了した場合、もう一度同じ目的の財団を創設することができるようにすることは考えても良いのではないか。存続期間満了時の財産処分については、寄附行為の定めに従うことになろう。
- 今の2段階論については、次にできる財団法人の寄附行為も最初の法人の寄附行為に縛られるのではないか。また、最初の法人はその寄附行為の目的の範囲内でしか、次にできる財団を設立できないのではないか。
- 最初の法人の寄附行為に、次にできる法人の寄附行為も最初の法人の目的の範囲内で目的を決めるように、と定めていればそうなる。自由に決めてよいとしていれば自由にもできる。
- 財団の存続期間を法定することの実効性を考えると、残余財産の処分方法について、法律上、寄附行為をしばる強行規定を置く必要があるのではないか。そうしないと骨抜きにさせられる。
- 設立者の意思があまりにも長く続くのは良くないと考えるのであれば、例えば設立者の意思に拘束される寄附行為のもとで50年、あとは理事が変更できるようにする、という仕組みも考えられる。できるだけ法人を解散させない方法を考えるべき。
- 家族世襲財団ばかり念頭におくと、一定期間後、法人は解散すべきということになるが、他の法人のことも考えると、規制としてはいきすぎかもしれない。
- 税金に関して言うと、相続税、贈与税回避に使われることがある。相続税法には、相続税逃れを目的として法人に寄付した場合に、課税できるようにするための制度が置かれている。
- 強制執行逃れ、マネーロンダリング、銀行の預金口座の不正利用なども考えられる。税は条文で規律を置けるが、法人格自体の不当利用は対応することが難しい。執行逃れ等を防止するために、ある程度基本財産の額を一定程度要求する等、財団法人制度そのものを使いにくくしておく必要がある。
- 強制執行逃れのために法人格を取得するケースについては、執行法制において手当てをすべきであり、社団か財団かにより異なる問題ではない。
- 強制執行逃れに対しては、基本財産の額を多くしてもあまり効果がない。むしろ、財団の財産構成等を開示することによって担保すべきではないか。
- 財産に着目して法人格を与えるという点から考えると、一定の金額が必要と考えてよい。現行会社法の最低資本制度が目安にはなるのではないか。
- 額についての理屈付けは難しい。財産の集合体なら額はいくらでもいいのではないか、という観点もありうる。
- 社会的に新しい非営利財団法人がどう評価されるかということが重要。何でもできる財団法人についてのマイナス面をどう説明するのか。信託については、信託終了の方法が決まっている、私益信託については、期間が制約されうる等、財団法人と全く同じではない。
- ガバナンスについては、各国の制度も理事、監事、評議員の3つぐらいではないか。
- ドイツだと財団の設立は認証で行われている。非営利財団を準則で設立できる国はないのか。
(← カリフォルニア州では準則で社員0人の法人を作ることができるらしいが、いわゆる財団法人の制度ではない。)- 社団では事業自体には格別の制限をしないという議論になったが、財団には構成員が存在しないため、非営利に限定すること自体が意味のない制約であることを考え、かつ、事業も何でもできるとすると、財団には何の制約もないことになるのではないか。
- 財団でいう「非営利」はむしろ「収益事業はしない」という意味というべきか。
- 「実質的な利益分配」といえば、役員の報酬がこれに該当すると考えることもできる。
- 「非営利」に関しては、「利益の分配」という話と、「収益事業」という話の二つがあるが、概念はすっきりさせたほうがいい。
● 資料12「非営利法人(仮称)制度の創設に関する検討課題(議論の整理)」について事務局より説明があった後、以下のような意見交換がなされた。
- 財団法人における営利・非営利の概念をどのように考えるか。法律的な議論に耐えうるような形で整理しておく必要がある。
- 財団法人には構成員が存在しないため、そもそも営利・非営利の概念はありえないとした方がいい。ここで「非営利法人」というときは、「営利法人でないもの」とすれば整理されるのではないか。
- 将来名称の問題をどうするかといったときに仮に社団法人の方を「非営利社団法人」としても、財団法人の方は営利・非営利の定義があてはまらないのであれば、あえて「非営利財団法人」と言わないで、ただ「財団法人」とするのはどうか。
(← 営利法人における「会社」に相当するような名称があれば、「非営利法人」と言わなくて済むのだが、「非営利法人」に代わる適当な名称が思い浮かばない。)- 「非営利法人」という名前は社会的信用を伴うことがある。非営利法人法一般について「完全な準則(主義)はよくない」と言う議論が時々ある。「非営利」を除いて単に「社団法人」と言えばこの問題は解決するが、名称の問題も念頭に置いた方がいい。
- 非営利社団法人の理念としては、WG資料12の記述で過不足はないと思うが、財団の理念としてみた場合、「私人の自由な財産処分」ということを含む表現とすべきではないか。
- 制度創設の意義、理念については、社団と財団とを分けた方が分かりやすいのではないか。一緒にすると社団法人はこの表現だと趣旨が薄まってしまうし、財団法人の方も特別な意義が曖昧になってしまうのではないか。
- 「私人の自由活発な活動」というとかなり広い。「非営利」の活動である趣旨を入れた方がいいのではないか。
(← 冒頭の「非営利活動」で限定している。ここでは、「利益の分配」をしないタイプを念頭においている。)- 「営利活動」は何を意味しているのか。民商法上の伝統的な理解としては、「営利・非営利」は「収益事業をするかどうか」ではなく、「利益を構成員に分配することを目的とするか否か」という問題。したがって、そもそも「非営利」の「活動」というのはない。
- 法人の活動は何でも自由。ただ、「収益事業を自由活発にやるため」にこの非営利法人がある、ととらえられると違う気がする。事業にも何らか制約あると考えるべきか。「本来の活動目的である非営利活動を支えるものとしての収益事業」はよい、と考えるべきか。
- 「非営利」の概念については、「利益(剰余金)を構成員に分配しない」と整理しているということを強調した方がよい。
- ドイツでは「非経済的」という語が使われている。これは「営利的な活動を排除する」という意味か。利益を分配する(しない)という意味では使わないのか。
- 財団については、営利・非営利の意味をよく考えなければならない。
● 次回は4月に開催し、引き続き財団関係の検討課題について討議を行う予定(詳細は未定)。
(文責 内閣官房公益法人制度改革推進担当)