1.日時:平成16年3月2日(火)10:00〜12:40
2.場所:虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座 長) 能見善久(東京大学教授) (座長代理) 中田裕康(一橋大学教授)
岩原紳作(東京大学教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
金子宏 (東京大学名誉教授)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 検討課題(財団関係)について事務局から、「非営利法人WG資料6、9、10」について説明があり、以下のような意見が出された。 [1 基本財産制度の要否]
- 財団は、設立者自らが活動したいということではなく、活動のための財を拠出しようというところに社団との差異を見ることができる。
- 設立の段階で基本財産を要求するかどうか。事業型の場合、事業による収益を使って活動を行うので、社団と変わりない。活動のレベルで社団と財団でどう違うのか。
- 非営利財団を認める@必要性とAその副作用を検討すべき。Aを検討する際のポイントは次の3点。1つ目は目的(設立者意思)を公益性によって吟味しなくてもよいのか、2つ目は債権者との関係で詐害的設立があるのではないか、3つ目は非営利財団を創設する理念をどう考えるか。非営利社団を創設する理念は、団体としての活動の促進であるが、非営利財団の理念はより抽象的なものとなり、理念が希薄化してしまう。
- 公序良俗に反するとまでいえない目的であれば、すべて財団の設立を認めるのか。例えば、家産財団なら税の問題で処理することでいいのか、また、限界があるのかどうかを検討すべき。
- むしろ半永久的に財産を拘束することの方が問題ではないか。
- 非営利財団の例として、利益を享受すべき者が狭い範囲にとどまるもの。例えば、家族、企業だけの利益のため(例えば、ある企業のためのスポーツ施設の運営)というものがあるのではないか。
- 町内会のメンバーの1人が財産を拠出し、地域の道路の混雑を緩和するためのパーキングプレイスを運営するケースなど、実際には公益目的のものでありながら、公益性の認定自体は受けないために優遇措置を受けないというものの意義もある。
- 2階(公益財団)となるためにも、1階の制度を設ける必要があるのではないか。
- 非営利財団を認めるとすると、それは諸外国の法制に比して先進的といえる。ヨーロッパではそこまで広く認めていない。
- 社団タイプのほかに、基本財産が実質1円というような財団を認める必要があるのか。
- 財団の目的には純粋に自分だけのためという意味の自益と他益とがあると整理した場合、他益は認めるメリットがかなりあるが、自益は弊害の方が大きいかもしれない。設立者意思をどこまで認めるかの問題。
- 非営利財団の創設で懸念されている弊害は、財産拠出型の社団でも生じ得る。既に財団法人があることを考えると、非営利財団を積極的に考えてもよいのでは。比較法的に突出しているとすると、どこかに落とし穴があり得るかも知れないが。
- 比較法的な観点からよく見ておくべきであろう。ドイツでは持株会社的な財団が認められているようだ。
- アメリカでも大株主がその権利を維持するために財団(foundation)を設立する場合がある。ただ、そのような財団は助成活動も大いにしている。
- 財団では拠出者の意思が尊重されるため、財の効率的な活用を阻害するおそれがある。
- それは非営利に広げ、準則主義をとることにより起こる特有の問題ではない。
- 公益財団であれば、公益性が時代によって失われることがあるが、非営利だと公益性がなくなったからという制約が働かない。
- 他益のための財団の設立に公益性を要求しない可能性はある。ここでは、準則主義で専ら自益というものをどうやってチェックするかを検討すべき。あるいは、別の仕組みを考えるか。
- 少なくとも理念としては、純粋私益を除くべきではないか。そのほうが制度を積極的に位置付けやすい。
- 基本財産は必須であり、額は政策的な問題となるのではないのか。
- 基本財産を要求する理由は、社団と比べても、財の塊であるという理論的なところのみに依拠するのではないか。基本財産は柔軟に考えてもいいのでは。
- 債務超過の財団法人に存立の意味があるのか。また、もっぱら事業を行うことを目的とする財団法人を認める必要があるのか。
- 財団でも理事者が従業員を雇って事業を行うことは可能であり、その収入によって債務超過が解消される可能性もある。財団と社団の違いは、社員総会がなくて、理事者に対する社員総会のモニターができない、ということだけではないか。
- その場合、理念をどう説明するか。技術的な説明になるか。財産処分の自由と結びつけることもできるか。社員が2人以上、1人なのと、0人でもいいというのであればその積極的な位置付けも必要。
- 技術的には、社員を0人にしてあまり自由に動けないようにした財産の拠出があってもいい。ただ、存続期間を設けることは考えてもいいかもしれない。
- 事業を行うタイプの財団も設けたほうがいい。財団には、@事業型、A財産そのもの(その中には不動産や財産的な価値はないが本人にとっては思い出の品として価値のあるものなどもある)を拠出するタイプ、B助成型がある。Bのタイプだと、一定の額以上必要かと思われるが、なくなれば解散すればいいことを考えると、あまり額の規制は必要ないかもしれない。
- 基本財産の規模として、一定以上の財産が必要ではないか。基本財産が1円の財団に社会的な説得力はあるのか。Aのタイプも取り込む必要があるのか。
- 一定の額を法定するのではなく、「目的を遂行するのに必要とする財産」とする方法もある。その場合、チェックできるのかという問題はあるが。
- 最初の基本財産はあまり高額ではないが、法人を作ってから寄附を集める法人も考えられる。そういうものについては、当初から基本財産のハードルを低める意味がある。
- 基本財産の有無や維持を官庁が確認する制度をとることはないが、公衆縦覧する等の手当てが必要。
- 公益を要件としないのであれば、財産の種類の制約はなくていい。ドイツの財団では基本財産を寄附行為に記載していることが多いが、法律上の縛りは特にないと思う。
〔2 非営利財団法人(仮称)のガバナンス〕
- 評議員をどう位置付けるかが難しい。財団における理事と評議員の関係をどう考えるか。社員総会と理事との関係と同じでいいのか。
- ガバナンスが誰のため、何のためにあるかによる。評議員は設立者意思を担保するためのものか、債権者との関係で置かれるものか。
- 理事と評議員が相互に選任し合う形になっている関係には違和感がある。
- 新たな財団の機関として考えると、理事は執行機関、評議員は意思決定と理事の監督という役割分担もありうる。
- 評議員会の構成員としては、ある程度人数がいる。
- 設立者の意思を体現するものとして、理事の選任は評議員会が行うことを法定することとしてはどうか。
- 小さい財団もあるので、どこまで法定するか。どのような制度設計が望ましいか。
- 寄附行為の変更など、設立者の合理的意思を聞きたいような問題は評議員会に聞く。そうすれば財団法人のもつ柔軟性を欠くところに対応できるか。コストがどのくらいかかるかという問題もある。
- 財団は設立者の意思の体現を理事が行う。理事を多めの人数にするということも考えられる。評議員会は今も実際上機能していない。
- 権力分立ができる。理事会と評議員会で相互に選びあうとしても、それ自身で選ぶのではなく、役割分担をすることができる。
- 自益のための財団を認めるかどうかにもよる。自分の財産の自由な処分権を認めるなら、寄附行為の自由も認める。社会的にしっかりしたものを期待するのであれば、ある程度強行法的にする必要がある。今までは監督官庁があったが、準則になるならそれなりにガバナンスをしっかりする必要がある。
- 今までの議論を整理すると寄附行為自由原則強調主義と法定原則強調主義とあるように思う。どちらが軸足か。
- 絞りをかけるとして、目的か、基本財産か、ガバナンスか。そもそもそういう絞りをすべきなのかもさらに検討すべきか。
- 3つとも絞るのは基本的な理念と合致しない気がする。基本財産で絞った方がいいのか。目的遂行のための財産であればいいのか。
- 基本財産とガバナンスで縛るのはあり得ると思う。目的ではどうか。
(← 準則主義に立った場合、基本財産、ガバナンスで縛る方が実際的ではないか。目的どおりの活動が行われているかのチェックは登記所では難しい。)- 目的と財産は密接不可分ではないのか。目的を裏付ける財産が必要。組織を規定することは重要。評議員会は置いた方がよい。
- 仮に家産的なものが入ったときに、評議員会まで設ける必要はないのではないか。
- 結局、家産的なものを認めるかの判断。それによる。
- 評議員会は、最低でも任意の機関として規定は必要。2階(公益財団)に行きたいという法人は目的・財産はしっかりしておいて、ガバナンスもきちっとしたものにしておくこととする。
- 財団に拠出された財産に税金がかかるのかという問題がある。社団の場合、出資と同様で税金がかからないが、財団の場合の税金はどうなるのか。
- 重要な論点である。株式会社は現物出資に譲渡税かかる。税の問題は税調での議論となろうが、論点としてテイクノートしておく必要がある。
- 非営利財団は、一部非公益目的のものもあろうが、公益目的のものが主になるはず。非営利(非公益)の財団は法人税のメリットがないと作られないし、使われないのではないか。非営利ということで残余財産の処分について「取り戻せる」ということであれば税金がかからないようにできるのではないか。
- 公益法人であれば、益金に算入しないが、新たな非営利法人だと、性質が違う。
(← 現行の公益法人については、非収益事業が非課税となっており、設立時の拠出に法人税はかからない。現存しない非営利非公益財団の場合、それが資本等取引に該当するかといった議論がありうるが、税調で検討されるべき課題。)- いきなり公益財団法人になれるならよいが、実績が必要なら最初の段階で税がかかることとなってしまいかねず、この制度は使えなくなってしまう。
〔「3 寄附行為の変更」,「4 計算等に関する論点」〕
- 「存続期間」の問題をここに位置づけてはどうか。
- 財団では、設立者の意思の最大限の尊重という原則があり、簡単に寄附行為の変更を認めることができない。ただ、事情変更の原則のようなルールの適用として、寄附行為に変更手続がなくてもその変更ができるという余地を認めてもよいのではないかと思う。
- 寄附行為の中に寄附行為の変更の条項が入っていれば問題ない。それが仮に緩い要件であったとしても、寄附行為は設立者の意思であるから、設立者の意思がそうなのだということでよい。寄附行為の変更手続が書かれてない場合やその手続が非常に厳格な場合、例外的に変更できるかが問題になる。
- 設立者の意思と明らかに違う方向での変更には裁判所の関与が考えられる。設立者の意思に沿う形での変更なら裁判所の関与までは不要であり、理事や評議員の全員の一致等でよいのではないか。
- 社団では目的を変更することによって生き延びることができるが、財団では目的の成功不能だと解散が適切。財団の場合、寄附行為の変更はできないか、手続を非常に重くするか。
- アメリカの「シプレ原則」は、目的自体を全く変えていいというものではない。本来の目的に類似するものには変更できる。但し、これは公益目的の活動のルール。中間的な非営利財団にそこまで縛りはないのか。完全に変更してもよいのか。設立者の意思が、あらゆる変更を可能という意思を明らかにしていれば、変えてよいのだと思う。
- その場合、理事と帰属権利者の間の問題が起きるのではないか。
- 計算書類の作成者である理事が自分で計算書類を承認するのはおかしい。評議員会があるタイプなら問題ないが、ない場合にどうするのか。また、計算書類の開示は債権者だけなのか。主務官庁による監督がなくなるのであれば、債権者だけでなく、誰でも見られるようにするべきではないか。1階部分は、法人のところへ見に来た者に開示することとし、2階部分では、登記所に備え置いて誰にでも開示することなどが考えられる。
- 事業報告書を誰でも見られるようにすれば、社会一般の人々から見て、「この法人の活動はおかしい」とチェックできるのではないか。
- 公益を目的としない場合であっても、一般の人々にまで開示する必要があるのか。
- どういう財産を切り離して財団にしたのかを開示させる意味はあると思う。開示すれば他の人に財産が知れる。濫用に対して抑止力が働く。
- 財団から利益を受ける人たちのプライバシーはあるのではないか。財団は有限責任であり、その対価としてどこまでオープンにするかが問題。
- 何が財産かは見せてもよい。財団の資産については、一般の人に見られてもおかしくないかも知れないが、実際上やりすぎかも知れない。
● 次回は3月16日(火)10時から開催し、財団関係について討議、今までの議論の整理を行う予定。 (文責 内閣官房公益法人制度改革推進担当)