1.日時:平成16年2月19日(木)19:30〜21:35
2.場所:虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座 長) 能見善久(東京大学教授) (座長代理) 中田裕康(一橋大学教授)
岩原紳作(東京大学教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
金子宏 (東京大学名誉教授)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 検討課題(総論、社団関係)について事務局から、「非営利法人WG資料7」について説明があり、以下のような意見が出された。 [4(2)計算書類等の開示について]
- ※1について、会社法改正の議論では、有限会社のような閉鎖的なタイプの法人について社員に会計帳簿の閲覧請求権を認める場合には、附属明細書の作成義務を免除する方向で検討されているが、会計的には附属明細書は作ったほうがいいと思う。
- ※2について、債権譲渡を受けようとする者が法人(債務者)の計算書類の閲覧等ができないと、債権譲渡の自由に支障が生じることになるのではないか。
- 債権譲渡を受けようとする者のニーズに対しては、現債権者が計算書類を閲覧し、その情報を譲受予定者に渡せばいいのではないか。銀行の守秘義務の問題は、むしろ業法の世界での話ではないか。
- 現行の考え方で行くと、※2については消極的になる。会社法でも債権者となろうとする者を含め、一般的な閲覧を認めていないのに、非営利法人だけ特出しする必要はない。
- ※3について、会社法改正の議論における基本的な考え方は、資産等が大きいものは会社形態を問わず決算公告をするべきだという動きになっているが、具体的な範囲の基準が議論となっている。
- 非営利法人には小規模な団体もあるので、一律に決算公告を義務付けるのは難しいのではないか。
- 会社法改正の動きを踏まえてということになろうが、営利法人も非営利法人も行っている活動はあまり変わらないので、営利法人並みに決算公告を義務付けてよいのではないか。
- 公益性のある法人における開示の在り方については、ここでの検討とは別の話。
[(3)定款の開示について]
- 社員が社員総会の議事録を閲覧できるのは当然であるが、債権者も閲覧できるとするのは問題。非営利法人の社員総会の議事内容には債権者に関係ないものもたくさんある。中間法人法の開示に関する規定は少々いきすぎではないか。
- 中間法人法は、社員についても正当な理由があれば開示を拒めるとされているが、社員と債権者は分けて考えた方がいい。
- 共同代表の定めの登記ですら廃止の方向で議論が行われており、代表権の制限を登記によって開示することは相当でない。
- 社員及び法人の債権者以外の者について、定款等の閲覧等は認めない。定款に定めた事項のうち、登記すべき事項があるかどうかについては、コンストラクティブノーティスの観点等、他に生じる効果も考慮して考える必要がある。
- 社員は、原則として見ることができるが、債権者については、何らかの制約を設けるという方向で整理したい。
● 「非営利法人WG資料8」について説明があり、以下のような意見が出された。
- 「基本タイプ」という名称について、もう少し中立的な言い方はないか。
- ※3について、小規模な非営利法人で一人の理事に委ねたいという団体があったら、それもいいのかも知れない。
- 基本タイプの法人が定款により理事会設置タイプと同じ機関構成を作ることができるとすると、理事会設置タイプを設ける意味はどこにあるのか。
(←法律上、社員総会の権限、理事会及び監事の在り方に関する規律をパッケージで示すことにより、取引相手にも分かりやすいというメリットがあるのではないか。)- 会社法改正では、株式の譲渡制限を設けているか否かにより、機関設計上の区別を検討している。非営利法人で同じような区別を考える場合には、理事会以外にも少数社員権やいろいろなガバナンスに関する効果を強行法的に決めていくという方法があるのではないか。
- 理事会設置タイプかどうかを登記上判別可能とするのか。それを見れば取引相手もそのことが分かるようなものとして。
(←登記上判別可能とすることが望ましいが、その可否は別途検討が必要。)- 非営利法人の一般法の中で、理事会設置タイプのようなカチッとした組織を設ければ、一般の信頼は得られると思うが、非営利法人の制度の中でそのような組織を作るのかどうか。
- 規模の大きな法人に外部監査を強制するのなら、ガバナンスがしっかりとした規律を強制するという要請もある。
- どちらかというと非営利法人の世界は自律を基調とする考え方で行った方がいいのではないか。外からしっかりした組織と見られたいのであれば当該法人が自発的にそうしたらよい。
- I案の※3について、理事が1人でもよい場合もあると考えられるが、社員総会の権限をいったん一人の理事に渡したときに、社員総会はいつでもその委ねた権限を取り戻すことができるとしておいた方がいいのではないか。
- 理事会設置タイプを設けるのではなく、基本タイプで自由度を認めながら定款で社員総会の権限を縛ることとした場合は、少なくとも社員の権利保護に関する規定だけをセットするということがあるということでないか。
- 内部的にはそれで十分であるが、対外的な取引相手の立場から考えた時はどうなるかという問題がある。基本タイプを採る場合でもセットになる条項を設けるべきか。
- 2階部分(公益性のある非営利法人)を作ることになった場合の準備として、理事会設置タイプのようなカチッとしたものをモデルとして用意しておくのも悪くないのではないか。
- 理事会の設置が可能だとされていればよく、理事会設置タイプのようなカチッとしたタイプであることは必ずしも必要ではない。
- 作業の手順として、理事会設置タイプのようなかっちりしたタイプもとりあえず検討することとし、最後にどの考え方を採用するのかということになるのではないか。
- II案の※1について、株式会社における取締役会は、代表取締役の業務執行の適法性だけでなく、妥当性も監督する。監査役は、戦前の株式会社では会計監査に限られていた。現在の監査役は、業務監査も行うが、違法性の監査にとどまる。
- 2階部分とどうつながるかは少しずつ意識せざるを得ない。残余財産の分配や理事会の設置など様々な問題がある。
- 基本タイプでも2階に上がる可能性はありうるのか。
- 基本タイプであっても、理事会設置タイプであっても、2階に上がるべき要件を満たしていれば上がることができると考えるべきではないか。
● 検討課題(財団関係)について事務局から、「非営利法人WG資料6」(「1 公益性を要件としない財団法人制度について」部分)の説明があり、以下のような意見が出された。
- 美術館で絵を展示することは公益に含まれるのか。そういうタイプは作らせないことにするのか。それとも、そのようなタイプが作れる制度を仕組む必要があるのか。
- 公益の概念を絞ることによってはみ出すことになる法人の受け皿を設けるというのは消極的な根拠。積極的な根拠としては、設立者意思を尊重するタイプの法人を設けること、また、財産の集まりに法人格を与えることという意義が考えられるのではないか。
- 学校法人に至らないが、財産を拠出して教育的な活動をしたいという場合に財団とする意味があるのではないか。
- 社団のように他人と組んで何かをするというのではなく、自分の財産を一定の目的に使ってほしいということを認めていくということもあろう。
- 拠出者は複数でもよい。財産を出した人自体が運営するわけではない。
- 自分の生命体としての時間を超えて存在する財産を財団としてどこまで認めるべきかという見方や社員の数がすごく多いときに社員の出入りの煩雑を免れるため同窓会を財団とするという見方がありうる。財団制度に積極的意義があるかどうかを検討し、意義があるとなれば、公益性と法人格を分離した財団を認めるかどうかを考えていくのではないか。
- 財団については特有の懸念がある。信託宣言にならないかという点のほか、マイナス点がないかを検討する必要もある。
- 弊害があると考えるのであれば、主務官庁による許可はないものの、準則の内容(規律)を重くするという考え方もある。
- 設立者意思による目的の拘束とガバナンスの在り方が社団と違うという2点が財団の意義。社団とは異なる形態のものとして実際にニーズがあれば、創設を考えてもいいのではないか。ただし、財団の意義の裏には財団の問題点もある。
- 公益性を要件としない財団制度について、基本的意義の部分で議論はあるが、今の段階でその創設を否定するというのではなく、活かせるなら活かしたらどうかと思っている。財団を作ることは、個人の財産の処分の自由の一環という面からも位置付けられよう。
- 設けるか否かを検討するためには、信託との関係を検討する必要がある。
- 次回のWGまでの間に各委員からご意見をいただき、次回はその意見を踏まえて議論することとしてはどうか。
- 財団法人制度の論点として、計算書類のディスクロージャーの在り方を付け加えてはどうか。
● 次回は3月2日(火)10時から開催し、財団関係について討議を行う予定。 (文責 内閣官房公益法人制度改革推進担当)