○:委員
●:事務局

第4回 非営利法人ワーキング・グループ

−議事録−


平成16年2月2日(月)17:00〜19:00
場所:虎ノ門第10森ビル4階

○ それでは、第4回の非営利法人のワーキング・グループを開催したいと思います。
 今日は、前回の議論を踏まえて手直しした資料がございますので、これは前回の続きということで、最初にこれについて簡単に事務局の方から御説明をお願いします。

● 承知しました。
 それでは、本日御用意いたしましたワーキング資料の4を御用意願えればと思います。右肩に「WG資料4」とございます。主に本日の議論は9ページの「代表訴訟」からが残っておるわけですが、この部分に先立ち、前の議論を踏まえた資料の修正をいたしておりますので、その部分の説明を先にさせていただきたいと思います。
 まず、1ページ目の下から2つ目の「※」、「(1)出資することを構成員となるための要件としない」という部分に付している「※」について、修正をいたしました。1つ目の「※」につきましては、社員が任意に法人に財産を拠出すること自体は妨げないが、拠出した社員には、その法人の財産について持分を認めない。これは、次のページの(4)と同趣旨の記述でございますが、まず、この点の確認があったと理解しておるところでございます。
 2つ目の「※」ですが、では、社員が法人に財産を任意で拠出した場合の法律関係については、次の2点に留意して引き続き検討といたしております。1つ目は、拠出額の限度でその返還を受けることは妨げないのではないか。2つ目は、その返還請求権は他の債権者に劣後するものとすべきではないかという点でございます。
 おめくりいただきまして、2ページの上から4行目、利益分配禁止の部分の「※」について@ABのタイプのどれを立法の対象とするかという部分について「Bのタイプと位置づけることとする」と修正をいたしました。「方向としてよいか」というのを「こととする」と修正いたしました。
 それから、おめくりいただきまして、3ページの「※」の1つ目でございます。「次のような規定を置く方向でよいか」としていたところを、特に御異論なかったと理解しておりますので「置く方向で検討する」と修正いたしました。
 おくめくりいただきまして、4ページ目「2社員」「(1)社員の最低人数」の部分でございます。前回はA案、B案、C案という3案を用意してございましたが、ワーキング資料3のA案を削りまして、B案、C案をA案、B案に置き換えました。以前の削ったA案といいますのは、設立の要件、存続の要件として、いずれも社員2人以上であることを要するという考え方でございます。
 今の部分の「※」ですが、4つございます。WG資料3では5つ目の「※」があったんですが、それは前回のA案を前提とするものでございましたので、削除をいたしました。
 続きまして、同じページの(2)の一番下の「※」でございます。「次のような規定を置く方向でよいか」を「検討する」といたしました。
 おめくりいただきまして、7ページ目でございます。一番上の「※」、ここも規定案のたたき台についての部分ですが、「置く方向で検討する」という修正でございます。
 同じページのBの「※」、競業避止義務に相当する部分ですが、この要否については御議論がございまして、一定の結論というところまでは至らなかったと思いますので「引き続き検討する」としてございます。
 同じページのCの「※」は「置く方向で検討する」という語尾を修正いたしております。
 おくめくりいただきまして8ページ目、一番下の「※」でございます。ここも今までと同じであります。規定案のたたき台について「置く方向で検討する」という修正をしてございます。
 おくめくりいただきまして、9ページ、10ページは本日御議論いただく部分でございますので修正はございません、前回の資料のままでございます。11ページも、本日御議論いただくところでございます。
 12ページの8「清算」からが、ワーキング資料3になかった部分をつけ加えたものでございます。前回ワーキング資料2に基づいて議論いただいたものを、その議論を踏まえワーキング資料4を作りました。「(1)残余財産の帰属」につきましては、2ページ目と同じ書きぶりにしてございます。重複する部分ですので同じ書きぶりにいたしました。
 「(3)その他」のところの表現が若干変わっているのですが、これはほかの部分と平仄を合わせた形式的な修正でございます。
 12ページの一番下の「※」も本日御議論いただくところですが、前回御指摘のあった会社法現代化に関する改正要綱試案についてコメントを付してあります。
 最後の13ページの一番上の「※」につきましても、前回の御議論を踏まえて盛り込んだものでございます。
 資料4の修正点については、以上でございます。

○ それでは、前回の議論を踏まえて若干修正した点がございますけれども、それについて何か御議論があればこれを先に伺って、それから本日の主たる議題に入りたいと思います。いかがでしょうか。

○ 確認だけですけれども、第1の2(1)、1ページでございますが、ここに2つの「※」がありますけれども、社員が任意に財産を拠出した場合どうなるかということですが、これは定款によって定めることができるという趣旨と理解してよろしいんでしょうか。契約で劣後債を設定するということは当然可能でしょうから、ここで書く以上は定款の規定だという趣旨と理解していいですか。

○ はい。単なる契約でするのとは別の話ですね。

○ わかりました。

○ 定款でもって社員が財産を拠出するということにした場合に、具体的にどういう形の法制度ができるのかという点は、もう少し詰めなくてはいけないところがあるのではないかと思いますけれども、前回も議論になりましたが、拠出者に返還請求権があるという内容になるのだと思いますね。ただそれは単なる債権ではなくて劣後的な内容を持たせる必要がある。当該拠出は、その法人の財政的基盤を確立し、債権者保護のために使われるということですから、拠出金の返還請求権が債権者に劣後しないと意味がない。そして、劣後させるということになると、それについては何かの規定が恐らく必要だろうと考えられます。中間法人と同じような規定ですね。こうした全体の組立てについては、私も前回の議論を基にして考えてみようと思ったんですが、今日までに十分論点を詰めておくことができませんでしたけれども、大体中間法人と同じような中身になるのではないかと思っています。ただ、中間法人の場合には基金という制度があって、かつ、一定額を積まなくてはいけないということになっている。そして、解散する前であっても剰余金の中から基金拠出者に返還ができて、返還すると、その分を代替基金を積み、結局は最初に出した基金の額だけは必ずその法人の中に残るようにするという制度になっていますね。

● 最低基金総額の規制があることを前提に、そういう形になっておると思います。

○ ここら辺の作りは、中間法人の場合のような最低基金というのを設けないとどうなるのかがよくわかりませんけれども。

● 設けないとしても、定款なりで、この法人はこのぐらい積みますという自主ルールみたいなものをつくって、そして、戻すときはやはり代替的なものを積むという規律も可能だと思います。

○ こうした仕組みは、会計や何かの考え方もあるのかもしれませんけれども、代替基金みたいなものは法律で定めないとできないのでしょうか。

● しっかりとした担保という意味では、やはり法律で規定しておく方が明確ではないかと思います。ただ、定款で決めたとしても、それをきちんと守っておれば同じだろうと思いますが。

○ 初歩的な会計の問題に関係するのかもしれないので、ちょっと分からないので伺うのですけれども、定款でもってこの法人は基金を設けていることを示し、十分財産がありますよということをアピールするわけですね。それで、その基金に拠出された拠出金を一定の方法で出資者に返すということができるが、中間法人の場合と同様に代替基金に相当するものを積み立てさせるときに、この代替基金を基金と同様の扱いをするか否かというのは、法的にはどういうところに意味があるのでしょうか。余りに初歩的な質問ですが。基金として積まれたものは代替基金も含めて、それは・・・。

○ 取り崩せないと。

○ 取り崩せないというところに意味がある。それから、清算のときに、債務の弁済にまず充てなくてはいけないというルールがかぶってくるということですね。

● はい。その次が基金で、基金を払った後が、恐らく残余財産という順序になろうかと思います。

○ これらの点は、大体中間法人と同じだと考えていいのでしょうか。

● 順序は恐らく同じで、どの部分までを制度として取り込むのかでしょうか。

○ ちょっと細かい話だけれども。

○ 基金の制度は実際には、言わば最低資本金類似の制度があることを前提につくった制度なので、仮に最低資本金類似の制度を採用しないということになった場合に、なお、基金のような制度を設けるかというのは1つの課題だと思いますね。そこまでは新しい非営利法人法では、もう規定しなくていいというのも1つの考えですし、たとえ最低資本金類似の制度を基金で代替させなくても、言わば一種の会社の資本金類似の債権者に対する担保としての基金の制度は採用するんだということですと、従来の中間法人に類似した基金の制度をなお採用するということはあり得ると思います。それは、その点が決まってから政策論として考えればいいのではないかと思います。最低資本金類似の制度を採るのだったら、やはりこういうものはつくっておかないと困ると思います。

○ 今の御議論は、法律で制度をつくるという御議論ですよね。ここでは、ですから法律でつくるというものと、それから、法律をオープンにしておいて定款で定めるというのと2種類あると思うんですが。

○ ただ、劣後性ですね、特に倒産手続の中などで他の一般の法人の債権者に比べて劣後するということを担保するためには、やはり法律で定めておかないと、単に定款で決めただけでは倒産手続の中での劣後性を認めることはかなり苦しいところがありますので、それは法律で定めておいた方がいいだろうとは思います。

○ 私が伺いたかったことを他の委員が今端的に説明してくださいましたが、私の質問の中心は、定款で定めるだけ十分なのか、やはり何か規定が必要なのかということなのです。

○ それはやはり債権者平等の原則との関係で、倒産手続でそういう劣後的な取扱いをしたり、しようとすれば、やはり何らかの規定を設けておく必要があるだろうと思います。

○ 今の御議論で十分かもしれませんけれども、いずれもうちょっと具体的なイメージを詰めて皆さんの御議論頂ければと思います。

● この点については、事務局の方でもたたき台といいますか、考え方をもう少し、この「※」のようなざくっとしたことではなく整理をさせていただいて、また御検討いただければと考えております。

○ 基金制度の趣旨は、基本的には債権者保護とか有限責任制度の濫用防止と言われていますが、もう一点、法人をつくった段階で資金を法人に拠出いたしましたときに、基金というものがなかった場合には、初年度の段階で期首と期末の間の差額が全部課税対象になってしまいますが、基金制度があれば課税対象から外れるという大きな意味がございますね。

○ 拠出した額について、法人の収益にならないで課税対象から外れるということですね。

○ その点を念頭に置いて検討する必要があるかもしれませんね。

○ そうですね。法人にとって必ず活動は必要だし、そのための資金がなくてはいけないわけですけれども、基金制度がないと最初に拠出したものが全部課税の網に掛かってしまうのですね。この点も重要だと思いますので、具体的なルールをつくる際に、それを念頭に置いてつくってもらいたいと思います。
 ほかに前回の議論に関連してなお議論しておくべき点はないでしょうか。よろしいですか。
 それでは、前回残した論点の議論ということで、代表訴訟からお願いいたします。

● それでは、ワーキング資料4の9ページ、(4)「代表訴訟」から次の4「計算等」までを御説明させていただければと思います。
 (4)「代表訴訟」につきましては、前々回(第2回)の議論では、これに相当する制度を置くとしてよいかという点に特段の御異論はございませんでした。ということで、今回資料では「代表訴訟に相当する制度を置くこととする」という形にしてございます。
 おめくりいただきまして、4「計算等」の(1)「会計帳簿並びに計算書類等の作成及び承認」と(2)「計算書類等の開示」についてでございますが、ここについても「所要の規定を置くこととしてよいか」とする部分について、特段の御意見あるいは修正はございませんでしたので「所要の規定を置くこととする」としてございます。
 (1)の「※」でございますが、前々回にも触れましたとおり、企業会計原則そのものがすべての新しい非営利法人に当てはまるというわけではございませんので、「原則として」としているところであります。また、念のためでありますが、新しい法制で会計原則それ自体を定めるということでもございませんので、この程度の表現ということになっております。
 次、(3)「定款等の開示」につきましてですが、本文から「社員名簿」を除き、語尾を「所要の規定を置く」といたしました。社員名簿につきましては「※」で問題点、御議論を反映させたつもりでございますが、社員名簿の開示の在り方については、個人識別情報の取扱いという観点も含めて、慎重に検討すべきであるという御意見を記載したものでございます。社員名簿の開示につきましては、中間法人法立案時もかなり議論されたようでございます。この間も、議事録等を確認しましたが、中間法人法としての結論は、前々回に委員から御紹介いただきましたとおり、次のような2つの理由から関係者開示とされておるようです。御紹介いたしますと、1つ目は、剰余金分配禁止に違反して剰余金が社員に分配された場合に、その社員を特定する必要があること。2つ目として、経費の負担義務の遅滞があるという場合に、債権者が法人に対してその経費の徴収を行う必要があることなどでございます。ただ、新しい非営利法人でなおこの理由が妥当するのかどうか、やはり配慮した方がよいのか御議論をいただければと思っております。
 なお、(3)の部分では、(2)に付した「※」関係者開示という部分は特に記載しておりませんが、念頭に置いておりますのは、一般公開ではなくて関係者開示ということを念頭に置いております。
 (4)は特に変更ございません。
 以上でございます。

○ それでは、代表訴訟、計算等についていかがでしょうか。
 私はよく分からないのですけれども、開示のときに、関係者、社員及び既存の債権者に対してのみ開示するということですが、これから取引をしようという人というのは一般にどう考えられているのですか。

● それは当たらないと思います。

○ それは、商法の中で株式会社だけは貸借対照表又はその要旨を決算公告することになっているんですね。別に既に債権者になっていない人でも見ることができるわけでして、法人形態の中では、有限会社、その他は決算公告しないんですけれども、株式会社だけがすることになっていまして、それと同様に考えるべきかどうかと。これから取引をしようという人についても開示をするかどうかというのが、現在では法人形態の間で分かれています。今、会社法改正作業の中では、決算公告を強制する範囲が大議論になっていまして、どうするかはまだこれからです。

○ 最低基金というものを設けないなど、ある意味で緩いルールにしたときにどう考えるかという問題ですね。

○ そうなんです。それが大問題でして、EU諸国では言わば有限責任の対価であると考えられていまして、原則としては中小会社でも商業登記所に決算を登記するというのがEUの原則的な考え方ですので、そうしますと、別に債権者でない人、これから取引しようという人でも登記所に行って見ることができるということになりますので、有限責任のそれが言わば対価、先生がおっしゃったように有限責任である以上は、一般的にそういうものを開示して、これから取引しようとする人に対しても財務の状況を明らかにすることが有限責任を主張できる前提条件になるという考えを採るとすると、こういう非営利法人であっても有限責任である以上は公示すべきだという考えも出てくると思います。

○ 多分に常識論ですけれども、非営利法人というのはある意味では社会的な存在で、そこに寄附をしようと思う場合に、どういう人が役員になっているんだろうとか、メンバーになっているんだろうということに関心を持つと思うんです。変な人がいるんだったら寄附したくないと思うでしょうし、というわけで、なるべく開示を認めることにした方がいいのではないかと思いますが、これは多分に常識論です。

○ 社員の名簿などにも関係する問題ですね。

○ 質問させてもらっていいでしょうか。今の理由のところなんですけれども、虚偽の内容を登記所に備えつけた場合の罰則とかペナルティというのは、ありますか。

○ 商法498条第1項第2号により過料が課されます。ただ、ペナルティがどれだけ実効性のあるものかという問題があります。決算公告に関する違反は、過料のペナルティにすぎないものですから、実は中小会社はほとんど守っていないという実態があるので、仮に公示させるとしても、どれだけ実効性のあるものとしてやらせるかというのは非常に大きな問題だと思いますね。
 商法改正においては、従来昭和30年代からずっと登記所による開示をすべきだということを法制審は言い続けていながら、実務界の反対で実現してこなかったという経緯があります。それはまさに登記所に登記させられるということになると、実効的にエンフォースされてしまう、それはたまらないという中小会社からの抵抗で実現してこなかったということなんです。まさに委員御指摘の問題があるかと思います。

○ 今の話は、開示に関しては営利法人についても大議論があるということですけれども、非営利法人の場合には、十分な資産をもって活動しているというだけでなく、利益を分配していない、営利活動をしていないことを担保する手段があるといいわけですが、開示することで利益分配に対する抑止機能が働くかどうかが問題ですね。営利活動をしていない、要するに分配をしていないということは、これは財務諸表や計算書類を見ても分からない場合もあるかもしれないけれども、それが開示されることによって多少は抑止機能が働きますか。

○ それは、真実を公開をしているのであれば、まさにそれを開示することによって実際に分配されているかというチェックの1つの手掛かりにはなります。

○ 私はこれらの書類を開示することにしても、別に非営利法人としては、普通に非営利活動をしているのであれば、そんなに困ることがあるわけではないと思います。それから、かつて中間法人を議論したときに、私自身は最低基金という制度を設けない方がいいという意見だったのですけれども、そのとき問題となる債権者の保護について言えば、これから法人と取引しようとする者にとっては、法人と交渉する中で法人についてのいろいろな情報が得られれば十分なのではないかと思いました。ただ、その交渉ができるためにはいろいろな前提条件があって、たとえば情報が開示されているといったことが必要なので、そういう意味で、今回の非営利法人制度においては最低基金制度を設けないのであれば、それに代えて法人の情報にアクセスできるようにすべきだろうという感じが個人的にはするのですけれども。

● それは計算書類の開示という方法で。

○ まずは、計算書類がそうです。それから、先ほど委員が言われた社員名簿をどうするかというのも、大きな問題だと思います。

● すみません、申し上げたかったのは、商法の方では計算書類はここに書いたような開示の規律でありまして、決算公告を年に1度するというやり方が株式会社でございます。また更に、決算公告自体が費用的な負担が大きいというようなこともございまして、平成13年の商法改正で電磁的方法による決算公告代替の公示という方法なども考えられて、つまりインターネット上のホームページで公表するというものでも、日刊紙に公告を載せなくてもよいというようなこともございます。まず、方向性として有限責任の享受の担保といいますか代替として、財務状況の開示という大きな方向性と。その大きな方向性の中で、では、どの手段をとっていくのかというような形で御議論いただくというような理解でよろしいでしょうか。

○ 開示とか公告をするには、相当コストが掛かるものなのですか。

○ 今おっしゃったように、日刊新聞紙による公告ということですと、これはかなりのコストが掛かるんですけれども、ホームページの公告でもいいということになりますと、それほどの大きい費用ではないと思います。

● すみません、私の言葉が足りませんでしたが、公告の方法に従ってというのは、日刊紙に載せなくてはいけないという公告の方法を定めている場合には日刊紙ということになりますが、例えば中間法人の公告の方法は、それこそ法人が定める方法で構わないということになっております。それと同じ方法で財務状況開示ということであれば、事務所のしかるべき掲示板に公告しておくということでも公告になるという整理もあり得ると思います。そうなれば、コストはほとんど掛からない。ただ、誰でも見られるというところがまたちょっと違ってくるのではないか。もちろん、事務所行けば見られるということでも十分かとも思いますが。ただ、そうなってきますと、計算書類の開示と公告による開示というのが実質においては余り差がないのかなと。ただし、書類の範囲と公告すべき書類というところの範囲でも勿論違いは出てくると思います。つまり、貸借対照表の公告というものと計算書類の一般開示、誰でも見られるということになりますと、また見られるものの範囲はおのずと違ってくるところもあるかと思います。ちょっと細かな話になるかと思いますが。

○ もう一つ、前から民法の問題で気になっているのは、よく民法では理事の代表権が定款で制限されたりしていて、平理事には取引行為をする権限がなかったりします。あるいは代表権を持っている理事であっても、重要な財産の処分などについては、理事会の決議がなければいけないというように、いろいろな形で代表権を制限している法人があります。こうした場合には、たとえば後者のような制限がある場合には、取引の相手方としては理事会の決議があるかどうかを調べなくてはいけない。理事会決議の有無は、単に定款だけ見ても分からないけれども、理事の代表権が一般的に制限されているかどうかは、少なくとも定款を見れば分かりますから、相手方としてはそれを手がかりに、さらに理事会の決議があるか否かを法人側に問い合わせるということになるのでしょう。いずれにせよ、まずば定款で理事の代表権に制限が加えられている否かを調べる必要がありますが、現在の民法では定款の開示は要求されていない、登記事項にはされていないでしょう。これも、さきほど述べた、これから取引しようとする者にとっての重要な情報の1つなので、定款もきちんと開示された方がいいと考えています。商法ではこの点は余り問題にならないのでしょうか。

○ 商法の場合は。

○ そういう事件余りないんですか。

○ いや、あります。むしろ民法の第54条が準用されておりまして、そちらによることになっています。

○ なるほど。これは公益法人についてですけれども、昔から定款を見せるのを嫌がる法人が結構多い。本来は公益法人の定款は公にされておかしくない。今後、非営利法人制度をつくるときに、一方でいろいろと非営利法人の自由な活動を支援する制度を作る必要がありますが、他方で開示の方も徹底した方がいいのではないかというのが一般的な感想です。

○ ただ、一方では、定款に権限の制限を決めたとして、逆に、それが登記されたりして開示されたら、取引する相手は一々それを見てから取引しないといけないのか、効力を否定されるのかという、そっちの問題が出てきまして、日本では取引の際に登記を見なければならないということを非常に嫌がるんですね。

○ たしかドイツの非営利法人制度を前に調べたときに、ドイツ民法では代表権の制限というのは日本の第54条と違って、登記をすると対抗できる制度になっていたような気がします。ドイツでも定款そのものは登記事項にはなっていませんが、理事の代表権など重要な部分については登記で確認することができることになっていたのではないかと思うのですが。

○ 日本は、登記してそれによって登記事項を対抗されることを非常に嫌がりまして、共同代表制度をとっているということは登記が可能なんですけれども、それが登記されているにもかかわらず、表見代表取締役の理論とか、それを使って相手が見ずに単一の共同代表とだけ取引したものを有効と認めてきたのが日本の判断で、非常に嫌がるんですね。

○ なかなかそういう風土の中で、定款の登記をさせて、相手方にはそれを見ないとだめだとすることが現実的かどうかということですね。

○ 会社法現代化要綱試案は、共同代表制度そのものを廃止するということを提案していまして。

○ 社員名簿の開示のことなんですけれども、先ほど委員から御指摘があったように、とりわけ公益性が要求されるような非営利法人の場合ですと、おっしゃるとおり寄附をしようとする者への配慮等から開示されるということがあってよいというふうに思いますと同時に、さまざまな形態の非営利法人に対する一般的な規律として、ここに「※」でお書きになっている個人識別情報の取扱いの観点というものも一定の理由があるものであろうと思います。
 2点申し上げたいと思うんですけれども、最近の最高裁判所の判例で、そちらは集会の方を扱った判例で、こちらは結社ですから必ずしも同じではありませんけれども、学校法人である大学が、ある集会に集まった者の名簿の取扱いに関して最高裁判所の判示したところで、そこに集まっているということを知られたくないというのは、単なる個人識別情報を超えて、場合によってはプライバシーとしての保護を要求するというふうな、3対2の僅差の意見ではありますけれども、そういうような取扱いをしているということを参考にしなければならない部分もあろうかと思いますし、また、中間法人についての規律を議論したときに、考えてみますと民事執行法が定めている財産開示の制度がございませんでしたわけで、今回は必ずしも要件は同じではありませんけれども、債権者がおたくの法人には経費を払っていない社員はいませんかと、その社員に対する債権を財産として開示せよというふうに、一定の要件を満たせば、民事執行法の枠内で申し立てるということも手続としては開かれるわけでありますので、中間法人法制定時の議論が必ずしも乗り越えられないわけではないということにも御留意をいただきながら、引き続きこの「※」の問題を御議論いただくとよいのではないかと思います。

○ 今の御意見に基本的に賛成なんですが、そうすると、公益性のある類型については、当然に社員名簿は開示すべしということを今ここで決めるのはまだ早いのではないかという気がします。公益性のある活動をどういう形でするかということは更に検討する必要があると思いますので、非営利法人一般については先ほどの御意見に賛成ですが、その後については、まだ引き続き検討課題としていただければと思います。

○ 開示というのは、すべての人に対する開示を考えているんですか、それとも例えば、他の社員とかあるいは債権者が見るという。

● 資料の方は、今おっしゃった後者の方を念頭に、(2)の「※」には社員及び債権者に対する開示のみの方向と書いてございまして、今、口頭で(3)も同じでございますと、ちょっと資料は両方掲げるべきところ(3)の方は書いていないんですが。

○ では、あくまでこれは社員及び債権者に対する開示ですか。

● はい。資料に書いてあるのはそうでございます。ただ、御意見は今いろいろいただいたと思いますが。主に中間法人法の規律でよいかという資料の書きぶりでございます。

○ 商法で他の社員に対する開示が必要なのは、少数社員権がかなりありまして、言わば社員を集めて少数社員権の権利行使をするためには、他の社員が誰かということを知らないと困るものですから当然必要なんですけれども。この非営利法人の場合、その少数社員権みたいなものが出てくるのかどうかですね。

● 一応、資料では一部、中間法人法に書いてある少数社員権並びのものは置く方向でとしてございますが、勿論、商法ほどはございません。

○ ただ、それでも出てくるとすれば、やはり必要性は、少なくとも社員に対す考え方。

○ 要するに、仲間を集めたいときに知りたいと。

○ ええ、そういうことですね。更に言えば、それこそ多数決で理事を選ぶときに、仲間を糾合したいと。会社で言えば、株主総会で多数派を形成するために委任状勧誘をしたいというとき。

○ 小さい社団で社員の数が少なければ、おのずと分かるかもしれないけれども、社員がたくさんいるような場合には、社員にとっても一体、誰がほかに社員としているのか全然分からない。他の社員がわからないということ自体、社団の性質に何となく反するような気がしますね。
 それから、今の議論の中で委員が言われた、誰に開示するかという問題は、社員名簿であるか、定款であるかによって違うかもしれない。定款などはさっき言ったように、本来もっと広く開示していいものだと思いますが、社員名簿ということになると、非営利法人の場合には、そこまで広くやる必要はないだろうという気もします。この辺の問題は、まだ基本的な考え方をどうするかというレベルの問題と、具体的にそれを更にブレークダウンしたレベルの問題といろいろあると思いますけれども、現在の段階では今のような議論でよろしいでしょうか。

○ 細かいことですが、4の(1)の関連規定としては、むしろ商法第32条2項を入れるべきではないかと思います。前に細かいことを言いましたように、NPO法が独自の計算に関する規定を置いておりますが、あれは余り妥当な規定ではないと思うので、むしろ商法第32条2項のような規定の仕方の方がいいのではないかと思います。

● わかりました。

○ よろしいですか。
 それでは、先にいきましょうか。お願いします。

● それでは、5「定款の変更」から7「合併及び組織変更」までを御説明いたします。11ページでございます。
 5「定款の変更」については、社員総会の特別決議によるべきであるという点は、御意見が一致したところでございます。「※」は、第2回の議論の中で問題提起された事項を取り上げました。
 まず、第1文でございますが、特別決議の要件についてどう考えるか。詳細を詰める際には、別途資料化して御議論いただくべきかと思いますが、口頭で申し上げますと、民法では「総社員の4分の3以上の同意」という特別決議の要件でございます。NPO法は、「定足数が社員総数の2分の1の出席、出席者の4分の3以上の賛成」でございます。有限責任中間法人の場合には、「定足数が総社員の議決権の過半数を有する社員の出席。決議の方は総社員の半数以上であって、総社員の議決権の4分の3以上の賛成」。有限会社法は、「総社員の半数以上にして総社員の議決権の4分の3以上の同意」。株式会社は、「総社員の議決権の過半数又は定款で定める議決権を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の多数」とされております。
 第2文、第3文についてですが、定款による別段の定めを許容しておるのは、民法と商法でございます。民法は第38条1項但書ですが「定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス」としており、その別段の定めの限界についての規定はございません。これに対して商法第343条第1項では、定足数につき、先ほど御紹介した「定款ニ定ムル議決権ノ数ヲ有スル株主」というふうに定めた上で、その限界を2項に設けてございます。「前項ノ決議ニ付テハ出席ヲ要スル株主ノ有スベキ議決権ノ数ハ定款ノ定ニ依ルモ之ヲ総株主ノ議決権ノ三分ノ一未満ニ下スコトヲ得ズ」という限界でございます。株式会社の規定は、いずれも平成14年改正で設けられた定足数を緩和するとともに、その限界を定めたという部分でございます。
 6「解散」についてでございますが、(1)「解散事由」について前回と同じ書きぶりになってございますが、一部修正がございます。本文のCに「社員が1人となったこと」を解散事由に掲げてございますが、社員の最低人数のところで、WG資料3のA案がなくなったということから、この社員が1人となったことは解散事由とは考えないということになろうかと思います。むしろ「社員の欠亡」が解散事由になると修正すべきかと考えているところです。
 同様に、1つ目の「※」については、最低人数の方の検討で、この部分についての意見の一致がありましたので、「※」の1つ目は削るということになろうかと思います。
 「※」の2つ目でございますが、Eの解散を命ずる裁判には、後に述べます解散命令と解散を求める訴えに基づく解散判決の両方が含まれるということを注意的に記載してございます。
 (2)「休眠法人の整理」については、前回の議論で所要の規定を置く方向で検討することに特に御異論はなかったと理解しておるところでございます。
 (3)「解散命令」は、ワーキング資料2では、当時(3)「その他」の中に入っており外出ししていなかったのですが、準則主義に伴う弊害としての制度の濫用に対処するため、同じく準則主義を採用する中間法人及び会社制度における解散命令と同様の制度を設けようとするものでございます。
 おめくりいただきまして、7「合併及び組織変更」のうち(1)「非営利社団法人(仮称)の合併」については、所要の規定を置くこととした上、技術的な部分については、更にもう少し先の課題ということにしてはどうかという御議論があったところでございます。
 (2)の「組織変更手続の要否」につきましても、前提を詰めるということで、この資料の段階ではなお検討としてございます。
 以上でございます。

○ それでは、御議論いただければと思います。
 社員の一般の議決権はどうしたんでしたか。

● 社員の議決権の方は、資料の6ページの社員総会のAでございます。社員には持分がございませんので、各自1個の議決権と。ただ、定款で別段の定めが可と。ただ、これにも「※」をつけまして、その別段の定めについて限界が必要かどうかという点、問題提起がございました。まだ、未確定でございます。

○ 公益法人の定款変更については、実際大きい社団で非常に困っていらっしゃるようですね。私の聞いた某社団法人は1万6,000人社員がいるそうで、どうにも定款変更ができないと言っておられまして、実際上のニーズとして何とかしなくてはいかんと。

● 既に別段の定めのない公益法人であるとすると、確かに今となってはという。

○ 設立のときに入れておけばよかったんでしょうけれども。そんなに大きくなるとは思っていなかった。

● むしろ民法の規定ぶりを見る限りでは、一般的に別段の定めが許容されているようです。民法上の社団法人及び株式会社以外の法人では、定款変更の定足数あるいは決議要件については、定款による別段の定めは許容していないようでございますし。

○ 民法の別段の定めというのは前にも議論になったかもしれませんが、そういうふうに軽くすることも予定していたのかどうか。公益法人ですから、そんなにやたらと社員がいるということは恐らくないので。

○ 普通はそうなんでしょうね。

● まず、定款変更にも主務官庁の許可が必要ということになりますので、定款変更の別段の定めそのものについても、恐らく主務官庁の許可が必要ということもあるいは関係するのではないかと思いますが。注釈民法などを読みますと、委員御指摘のとおり軽くするというようなことが書いてあるのではなくて、別段の定めを許容しておるけれども、理事会とかそういうところに委ねることはできないはずだという当然の説明が記載してありました。

○ さきほど委員からご指摘があった非常に社員数の多い社団については、いろいろな対応の仕方があるかもしれませんが、別段の定めを許容すれば勿論対応できるわけですね。そのときに何について定款で別段の定めを設けることになるのでしょうか。定足数ですか。

○ というか、既存の社団については。

○ 勿論、既存の社団については問題だけれども、将来の制度の問題としてはどうするかということですが。

○ 将来もそうですね、定足数を入れるか、現行ではとにかく4分の3絶対的にいなければいけないわけですから。

○ 要するに、さきほど出席者の4分の3という話がありましたけれども、これは商法ですか。

○ 商法は出席者の3分の2です。3分の1が最低の定足数。

● NPOは小さい団体を念頭に置いているのか、定足数が総数の2分の1で出席者の4分の3以上です。

○ これだとなかなか難しいですね。非常に人数が多い社団では、定足数などについて別段の定めで何らかの対応ができるようにすべきだという議論や総代会のような制度を許容するとかいう議論は、それなりに合理性はあると思います。これに対して、社員数が多いわけではないが、もっと簡単に定款の変更を必要に応じてやりたいということから定款変更を簡単にできるようにするということがどの程度合理性があるのかは、もう少し慎重に検討する必要があります。もちろん、そんなに制約しなくてもいいという基本的な考えもありえますが。

● 技術的には別段の定めを置きますと、その限界もセットで書いておかなければならないのかなと思います。商法が現に、株式会社法がそのような手当をされておりますので。準則主義でもありますし。他方は、合理的な特別決議の要件を定めておいて、それは合理的なルールですと言ってしまうのかどうか。

○ 非営利法人で公益的な事業を行うわけではないような団体については、できるだけ広く自由を認めていいという気がしますが、自由度を認めるにしても、どういう形で認めるかですね。

○ さっきおっしゃった議決権の定めを定款で完全に自由に別段の定めができるのだったら、そっちの方で無意味化してまいりますよね。

○ 話はこっちとセットになっているんですね。議決権に関して別段の定めとして考えられるのは、どんなものでしたか。社員が出資をするものとしたときに、その出資の割合に応じて議決権を与えるというものも考えられますか。

● 特に具体例というわけではなく、団体の性質に応じて別段の定めができる方がよろしいでしょうという、法務省の解説を読むと、その程度にしか触れていないのですが。

○ 有限責任中間法人で聞いた例なんですけれども、今、先生がおっしゃった出資に比例するというのが1つあり得ると思うんですが、ある一帯の再開発地区の建物とか土地の環境を管理するために設立された有限責任中間法人なんですが、そこに幾つか高層のビルが建っているときの床面積の割合に応じて議決権を行使できるようにしているところがございまして、それをもう少し一般化しますと、その法人の事業への関与の度合いとか、あるいはそこから受ける利便の度合いなどに比例させて議決権の割合を定めるというのが、勿論限界があるとは思いますが、1つの形態としては想像できるのであろうと思います。

○ なるほどね。それ自体が合理的な内容であれば許容されてしかるべきですね。今の段階ではそんなにいい案がないかもしれませんけれども、この問題をさっき委員が言われた、議決権一般について、どういう形の特別な定めを認めるかということと関連させながら考えた方がいいと思います。非営利法人については少し緩やかでいいのではないかという感じがしますけれどもね。
 ほかの点についてはいかがでしょうか。

○ 民法は解散命令の制度はないんですか。

● ございません。設立の許可の取消しの方で対処しておると理解しています。

○ そうすると、やはり準則主義になった以上は要るということですよね。

● そうではないかと考えております。

○ 宗教法人などは商法第58条の方を準用していたんですか。解散命令はかつて宗教法人に関して大問題になりましたでしょう。やはりこういうものは必要だと思いますね。

○ ここに書いてあること自体はごく一般的な、すべての法人に本来当てはまることです。公益法人については主務官庁の監督があるので、そちらで対応するということなんでしょうけれども。ただ、解散命令は余り使われないという話も聞きますが、どうですか。

○ 余り出ていませんね。先ほどの委員がおっしゃったオウムの事件を除けば。

○ 最後の伝家の宝刀でやっぱり要ると思うんですよね。

● 宗教法人法でございますが、宗教法人法の第81条に裁判所の解散命令の規定がございます。ただ、商法第58条を準用するのではなく、書き下ろしてあります。読み上げます。「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる」。1号「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」、これは商法第58条と似ておるのではないかと思います。ただ、2号以下「第2条に規定する宗教法人の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は1年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと」ですとか、あと3号、4号、5号とあるんですが、これらはむしろ宗教法人たるゆえんに基づくもののようにも、ちょっと精査してございませんが。

○ 仮に、非営利法人で解散命令の制度を設けると、解散命令を出すことができる事由というのはどうなるでしょうか。

● 商法第58条を参考にするのだと思います。

○ ここに書いてあることは、これでいいと思いますけれども。「会社の設立が不法の目的である」とか。

● あと「正当の事由なくして1年以内に開業をなさず、又は営業を休止したるとき」。

○ これはどうなんでしょう。法人を設立した以上、活動をしなくてはいけないという考え方なんですか。そこまで言わなくてもいいじゃないかという感じもしないではないけれども。
 あと、もう一つ。非営利法人なのに利益を実際上分配しているというのはどうなるんですか。利益を実際に分配してしまったというときには、その非営利法人についてどういう処置が考えられるんですか。中間法人では規定がありましたか。

● いえ、規定はございません。まず、私法上は無効だろうということと、あと、法務省の方の解説では、解散命令の対象となり得るという記述は解説本の中ではございますけれども。

○ 最初から利益分配を目的にしているようなときには、不法な目的だと考えるのでしょうね。

● 恐らく。

○ あと、解散を命ずる裁判という中に、商法で言えば解散判決に当たるものを予定するんですか。商法第406条ノ2が引かれていないので、そういった制度を。

● おっしゃるとおりです。「※」の2つ目の方で注意的に書いたつもりではあるんですが、確かに関連規定の方では落ちています。失礼いたしました。

○ 今、委員がおっしゃった例は、例えば第406条ノ2の1項の2号「会社財産ノ管理又ハ処分ガ著シク失当ニシテ」、多分そちらの方の類型に入ってくると思います。ですから、社員の方から行っていてということは。解散命令はあくまで公権的にやるという。

○ 利益を分配しているときに、社員がそれをしますでしょうか。

○ だから、社員の中に異論のある人がいればという。

○ なるほど。

○ 分配といっても、実際には理事者とかそういう人たちばかりでしょうから。

○ 社員が実際上利益を享受することを妨げるような制度があってもいいと思うけれども、余り公権的に介入するのはどうかとも思います。バランスとしてどこら辺が制度としての落ち着きがいいのか。そんなところを注意しながら検討すべきだと思います。前から委員が心配されている非営利法人を営利として使ってしまうのは困るというのも、こういうところで押さえておけば大丈夫なのではないかと思いますが。

○ ただ、解散命令などというのは、よほどのことがないと使えないですからね、オウムみたいなことでも起きない限りは。

○ そのほかの点も含めて7まででいかがですか。

○ 合併と組織変更の規定は是非入れていただきたいと思います。これがないと多分、公益法人が今回のこういう立法等によって、自らを整理したりとかする必要がかなり出てきますので、この規定がないと、それこそ課税されてしまいますので、一旦解散して他の公益法人に引き取ってもらおうなどと思うと、そこで利益が実現したことによって課税されてしまいますから。

○ ここの組織変更というのは、そういう意味の組織変更ですか。移行というものとはちょっと違うように思っていたんですけれども、今、委員がおっしゃったのは移行ですよね。現在存在する。

○ 存在するものが、例えば中間法人とか他の法人形態へ。

○ そういう意味ですね。ここに書いてあるペーパーもそういう趣旨ですか。これからできる1種類だけではなくて2種類ぐらいの組織、その2種類の組織間の変更と読んでいたつもりだったんですが。

○ 私もそういうふうに読んでいたんです。つまり、2階ができた場合に、1階から2階に組織変更とかそういうことを予定して、このペーパーができているのかなと思っていたんですね。

● いえ、1階から2階ではありません。

○ 1階同士の。

○ 1階同士ですか。

● はい。ただ、委員の御指摘も1階建て、2階建てという議論を仮に前提にいたしますと、法人格部分はいずれにしても1階建てでございますので、その合併ですとか組織変更ということは、法人格のレベルではやはり規定が要るという御指摘だったのかなと思っております。

○ 例えば、NPOが非営利法人になるなどというのも含まれていますか。

● それはNPOがどう整理されるか、全く切り離されれば、その組織変更ということは余り念頭には置いておりません。

○ 非営利法人が中間法人に変わるとか。

● それは、非営利法人と中間法人という制度がある場合に問題になるのだと思いますが。

○ ある場合を前提として。

● ある場合とすれば、ただ、それを組織変更で書くかどうかまでは全然考えておりません。

○ では、合併と区別される組織変更として、端的に念頭に置かれているのは何かありますか。

● 端的に念頭に置いておりますのは、1階建ての中に法人類型が複数になった場合と、あともう一つ念頭に置いておりますのは、社団と財団の間の組織変更でございます。ただ、これはいずれもまだまだ。

○ そうすると、非営利法人法制内部の複数の法人類型間での組織変更ということですね。わかりました。

○ 例えば、有限責任と無限責任との間での組織変更。

● 中間法人の例で言えば、御指摘のとおりであります。

○ 7の(2)の組織変更手続がどんな具体的局面で問題になるかは、恐らくここでやっている作業の全体像が見えてきてからでないと具体例が挙がらないという部分があると思うのですが、差し当たり今日出ているほかのペーパーとの関連で言えば、おっしゃったように理事会等設置非営利法人とそうでない非営利法人との間を組織変更手続で行き来することにするのか、定款変更で行き来することにするのかというところで登場するのだろうと思います。
 それとは別の問題として、委員がおっしゃった問題も重要で、7の(2)でしっかりした手続をつくっておくと、10の(3)でしょうか、今ある公益法人が今回つくる一般的非営利法人に移行していくところで、そのまま100%使えるかどうか分からないけれども、うまくかみ合ってくるのではないかという論点とつながっていくのだろうというふうにお話を伺っておりました。

○ 組織変更の方は、そういう意味で全体像といいますか、どういう法人類型間の組織変更があり得るのかというのを前提にしないと議論ができません。ただ、合併については現在の中間法人法にもあるし、ほかにもありますように、これは設けることに恐らく問題ないでしょうね。
 では、これは後回しにすることにいたしましょう。
 それでは、7まではよろしいでしょうか。では、8以下をお願いします。

● それでは、8「清算」、9「外部者による監査等」、10「その他」をまとめて御説明いたします。
 8「清算」の(1)「残余財産の帰属」につきましては、本資料の2ページ(3)と同じ表現にしてございます。
 (2)「設立の無効及び取消しの訴え」につきましては、前回資料に盛り込みましたところ、特段のコメントはございませんでしたので「所要の規定を置く」という資料の表現にしてございます。
 (3)は「その他」でございます。
 9「外部者による監査等」でございますが、前回の御議論で、まず「※」の1つ目ですが、会社法現代化要綱試案にある株式会社だけでなく有限会社のうち大規模なものについても会計監査による監査を強制するという考え方を掲げました。
 次の「※」でございますが、非営利法人についても外部者による監査を導入することとした場合には、その規模基準についてどう考えるかという難しい問題があるのではないかというふうに何点かの議論を反映させました。そもそも会社においても規模要件については、これから議論をするという御紹介がありました。公益性の有無にかかわらない非営利法人法制において、規模に応じた外部監査を強制すべきか否か、規模として適切な基準を見出し得るかが、こちらでは論点になろうかと思われます。
 ところで、資料には記載しておりませんが、前回この部分でいわゆる総代会の要否について御指摘がございました。総代会の要否につきましては、社員総会の権限にかかわる問題と理解いたしますと、社員総会の部分で議論すべきこととなりますが、総代会については、「一定数以上の社員がいる場合に特例として総代会制度を導入することも可能」というタイプの法制がございます。このタイプを念頭に置きますと、あるいはこの部分で議論いただくことも可能かと思われるところでございます。総代会の要否を論点として取り上げるか、取り上げるとした場合には、どの部分で議論するか等について御議論、御確認いただければと思っております。
 10「その他」のうち、(1)「立法の形式」につきましては、特に資料は盛り込んでございませんが、前回は法人一般に共通する点をくくり出して、民法典に規定を置いてはどうかという御意見がございました。ただ、若干法制マターという面もございますので、引き続き御意見をいただきながら検討してまいりたいと思ってございます。
 (2)「中間法人制度との法制上の関係等」、(3)「経過措置等」については、特に変更はございません。(2)については、かなりの方向性について御議論いただいているところではありますが、資料としては3月の議論の整理の際にまとめさせていただきたいと考えております。
 以上でございます。

○ それでは、ここまで御議論いかがでしょうか。
 さきほど説明された参考にあるような法律では総代会についてどのような規定があるのでしょうか。総代会が置かれる、あるいは置くことができるというような規定になっているのでしょうか。

● はい、定款の定めで。

○ 具体的にはどんな法律ですか。

● 例えば、消費生活協同組合法では「1,000人以上の組合員を有する組合は、定款の定めるところにより総会に代わるべき総代会を設けることができる」という規定が、消費生活協同組合法の第47条でございます。

○ 総代会制度というのはよく知りませんが、例えば、生協だったら組合員が多数いるときに、その中から総代を選ぶんですか。

● はい。総代は定款の定めるところにより組合員のうちからこれを選挙すると。総代の定数は少なくとも100人以上でなければならない。

○ なるほどね。

○ 選挙の手続はどうなっているんですか。保険業法は総代制度をとっているんですけれども、実際上は経営側が候補を決めて、それに対する信任投票だけで最高裁判事と同じやり方ですので、実際には全く機能しない。

○ これは、どこまで社員総会を定款でもって自由に定められるかという問題が一方にあると思いますが、今の生協法の例では、法律では総代会を設けることができるとなっていて、その上での総代ですね。

● まず、定款にできる旨を置き、その上で。

○ 現在、我々が議論している非営利法人法の案だと、そこまでは自由に定款でできないということなんでしょうね。

● できないと思います。

○ それは、なぜできないかというと。

○ 総会の必置機関性。必置と書いていないかもしれませんが、そういうふうに考えるのではないでしょうか。

○ そういう理解ですね。

○ 定款自治がそこまで及んでいないと。

○ そうですね。ただ、議決権の在り方を自由に定めることができるというときに、それを使ってどこまでできるのか。

● 選挙の方法については、特に落ちているのではないと思いますので、後ほど。

○ 総代会については、積極的に推す意見ではなかったと思いますけれども、そういう制度も一応議論しておく必要があるという御意見があったと思いますが。

○ 中間法人法のときにたしか議論になったと思いますので、一応、検討した方がよかろうということだけのことです。

○ 検討したけれども、余り積極的な意見はなかったということですか。

● 中間法人法のときの議論を御参考までに御紹介いたしますと、総代会制度導入消極論の方は、人数が多いだけであれば総代会制度のない株式会社でも同じわけで、別に総代会というのは必然的に出てくるものではないのではないかという御意見ですとか、基本的には各構成員の意見が反映されるという構造を採るべきであろうという御意見ですとか、法制度として整備されている保険相互会社の総代会というものも極めて名目化している、委員から今、御紹介いただいた点ですとかが多数を占めて、中間試案の段階で落ちております。
 他方、導入積極論の方もございまして、議事録を拝見いたしますと、法人の適正な運営をさせるためには総代をまず選ばせて、その総代が総代会としてきちんと機能させる、それがあるべき姿ではないか。恐らく総会が形骸化していることを念頭に置いた御発言ではないかと思います。人数が多いから総代会をというなら、株式会社ならどうなのかという批判に対しては、総代会を設ける要件としての人数が少な目の制度もある。実際に、都市再開発法というのは50人を超えれば総代会を置けるという例もあるようでございますので、そうすればいいのではないかというような御意見。公益法人制度には代議員制度がないが、大変たくさんの会員を持っているところは総会を開かずに、代議員会を設けてそれで運営ができないかという要望が強い。又は、そのような形で運用しているところもあるという実態もあるなどが積極論でございました。私どもの見る限りで、網羅できているかどうかわかりませんけれども。

○ 営利法人、株式会社だと幾ら人数が多くても、やはり各株主というのは法人に対して経済的な利害を持っているので、株主の権利は普段は形骸化していても、何かのときにはちゃんと1票投じるだろうと考えられます。これに対して、非営利法人では社員の人数が多いと特に、各人にとっては余りインセンティブがないんですね。そうすると、総代会みたいなものを設けてもっと実質的に議論すべきだという考えにも、それなりに理由があるけれども、逆に、非営利法人で各人の積極的参加が弱いと、総代会制度は一層形骸化を助長することになってしまう。相互保険会社における総代会などはそういう感じがしますね。

○ 株式会社の場合は、1人1議決権ではなくて、1株1議決権が原則ですから、大株主を集めれば株主総会が一応成立するんですけれども、さっきの1万6,000人ですと4分の3というと1万2,000人集めないといけないわけで、ですから、話が大分違ってくることは確かです。
 あと、株式会社についても、実は総代会制度を導入しろという意見はあることはあります。ただ、支配的ではないです。

○ いずれにしろ、この問題はここで一応議論しましたけれども、積極的にこれを採用しようという意見は今のところないと思います。ただ、先ほどの社員の議決権をどこまで自由に定款で定めることができるかという問題との関係で、なお、この問題が再び議論になる余地があるかもしれない。ですから、社員総会のところでもう一度、最終的にはこういう制度はだめと言うのか、こういうものもあってよいとするのか、それを最後に決めておかなければいけないのではないかと思います。

● 1点疑問に思った点なんですが、社員の資格をそもそも定款で定めるということになっているため、会員だけれども民法上の社員ではないというものがございます。そうしてしまえば、議決権のある社員と、法人に関係するものではあるけれども社員ではないということで、実際に乗り切っていらっしゃるところもあるのではないか思われます。

○ それは許容されるでしょうね。これは法人の組織とは別に、これに会員組織をくっつけているだけの話で、財団法人などもそういうところはたくさんありますね。もっとも、財団法人の場合には、もともと社員はいないけれども、会員組織をつくってその意見を反映させるということはよくあります。社団法人では、社員が制度上あるわけですが、そうであってもそういう会員組織をつけて、社団たるそれの社員と単なる会員とを区別するわけですね。何となく脱法的な感じがしないでもないけれども、しかし、それは構わないんでしょうね。

○ 今の1万6,000人のところも会員にしておけばよかったと。

○ 今更という問題があるけれども。

● 今のまとめに従って、また資料をつくりたいと思います。

○ ほかの点はいかがでしょうか。

● 外部者による監査の方向性はいかがでしょうか。大体の感じでよろしいのでございますが。勿論、まだ決めではないと思うんですが。

○ 外部者による監査のそもそもの趣旨、これは基本的にはきっちりとしたシステムが信用の基盤となるということにある。それによって収益活動が活発にされ、収益が上がってくる、そういうシステムとして位置付けられるものという理解をしていたんですが、もしそうだといたしますと、対外的な活動をして信用力が必要な法人でしたら、そういうシステムを設けることは意味があるのだと思いますが、非営利法人一般についてそう言えるのかどうか。場合によったら、内輪だけで集まって楽しく活動しているだけでも満足する非営利法人もありましょうし、そうすると、強制することは必要ないのではないか。設けたければ設けて、対外的な信用力のある法人ですよとアピールすることもよろしいのだと思いますが、そこが違うかなという気がしておるんですが。

○ 私もそんな感じがしますね。ですから、これは非営利法人の中で言えば、2階建ての2階部分という公益性のある団体になりますと、これは規模に関係なく外部監査を要求するということも考えられますが、非営利法人一般ということになりますと、やはり非営利法人のイメージとしては各人が自由な活動をするというのが中心ですから、委員が言われたように、信用力を高めて、活動をよりしやすくしたいと考えるのだあれば、外部監査を求めることはできるけれども、それを強要するほどのことはないと思います。皆さんが余り積極的に御発言されないのは、恐らく今のような方向性に賛同されているのだと理解しますが。

○ 商法の場合で、こういう外部監査を強制している要件は、資本額が5億円以上であるということと、負債の額が200億円以上ということで、要するに、大きい額の資本や大きい額の負債を抱えている以上は、必ずしも当該会社と交渉力のない社員や債権者が多数いて、そういう人たちは直接会社に対して財務内容をチェックしたりすることができない。だから、そういう多数の債権者、社員にそういう利害の及ぶような活動をしている会社については、言わば一々取引相手が交渉によって財務内容の確かさを確かめたりできないものですから、公認会計士等に外部監査をしてもらって財務内容が安心できるかどうかをチェックできるようにするという、取引相手、第三者保護のための趣旨で設けられているんですね。仮に非営利法人であっても、かなり対外的な活動をして、特に債権者、非常にたくさんの人に対して債務を負うような活動をしていて、有限責任だとすれば、趣旨からすれば変わらないのではないかという気がちょっとしていまして、200億円みたいに債務額が非常に大きいような、非常に大規模に株式会社と変らないような活動をしている非営利法人であれば、同じように外部監査は要求してもいいのかなという気はするんですけれども。

○ さっきのもう一つは何でしたか、5億円というのは。

○ それは資本金です。

○ ちょっとよろしいでしょうか。今おっしゃったことは基本的にそうだと思うんですが、非営利法人でもいろいろ収益事業をするということはあり得ますね。そうすると、その点である程度、何かきちんとした手当をしておかないと困ることが起こらないだろうかということで、これは非営利法人にどこまで収益事業を認めるのかという問題、将来の問題、今後検討すべき問題でしょうけれども、例えば、非営利法人があるいは2階部分をつくった場合、2階の法人でもいいんですが、株式会社を設立してじゃんじゃん収益を上げて、それを活動の資金に充てるなどということがもしあった場合には、かなり手当をきちんとしておかなければいけないのではないかという感じがします。

○ 非営利法人というのは、あくまで収益を権利として社員に分配しないというだけのことで、収益事業をすることは自由なんですね。何をやってもいいことになっているので、そういう部分においては当然、言わば取引的な関係が入って、第三者と債務関係に入るわけですから、その部分については、やはり管理者と同じような債権者に対して財務内容をちゃんとしておくということをしないと、有限責任を認める前提にならないのではないかという気がするんですけれども。

○ 収益事業をどこまで認めるかということは、別途あるいは検討した方がいいのかもしれない。無制限に認めるのか、何か限定をつけるのか。限定をつけて、それがうまくちゃんと守られるかどうかというのは別問題ですけれども、つけるべきかどうかというようなことですね。

○ 私も最初そう思って、非営利法人の事業というところで若干制限を加えることが考えられるのかと思ったんですが、ここでの御意見は、事業のレベルでは制限はつけにくいだろうということでした。収益事業をしても利益の分配さえしなければ、この非営利法人のカテゴリーに入るという御意見が強かったんですね。委員のおっしゃるように、収益活動をどんどんするのであれば、少なくとも債権者との関係という問題は一般的に生じますので、収益事業のレベルで制限を加えるという方法では、うまく法制度がつくれないかもしれないけれども、監査のところでは債権者保護を考えてきちんとしたものを要求するという考え方はありうるのだと思います。それはそうとして、非営利法人のイメージですが、大規模な非営利法人としてはどういうものが出てくるか可能性があるのでしょうか。現在存在する非営利法人について、仮に資本金5億円、負債200億円という基準で切ると、そこに入ってくるようなものは現実にあるんですか。2つの基準のうち、非営利法人が活発な取引をしているというときは、負債の額に現れてくるでしょうが、資本金の方は非営利法人の場合には現実には基準としてあまり機能しないのではないかという気がします。

○ 資本は問題にならないでしょうね。ですから、問題にすべきは負債の額だけですよね。

○ 最低基金制度を設けなければ、基金の持つ意味が弱くなってきますので、導入するとすれば負債基準で、恐らく株式会社よりも高くする理由もないし、低くする理由もないので、現在の株式会社について要求されている負債基準と同じものが、導入するとしたら考えられるのではないかと思います。

○ 資本金についての基準は非営利法人では採用しないというのはあり得るかなと思っています。もっとも、業界団体も非営利法人として入ってくると、業界によっては、業界内部の活動するために大規模な設備を必要とするところもあり、そういうところでは最初に相当な資産が必要な場合もありえます。そして、その資産に税が掛かっては困るので基金という形で拠出すると、それが5億円を超える場合ということはあり得るかもしれないですね。ただ、このように当初の拠出金が多額だといっても、非営利法人の場合は、営利法人と違って、そのことが必ずしも活発な取引活動を意味するわけではなくて、内部的な設備の必要のために多額の資産を有するだけであるとすると、やはり資本金の方で押さえるのではなくて負債の方だけでいくというのは、1つの考え方としてはありえます。

○ そして、付随的な小さな理由だと思いますが、利益分配を社員にしないということの実効性をどう確保するか、なかなか難しいわけですけれども、外部監査を入れて外部監査人が適正に処理されていると言うことはプラスアルファになるのではないかと。しかし、そこを余り強調すると規模基準で切れませんので、余り強調することはできませんが、やはり大きな存在になって、大きなお金を動かしているところについては、とりわけ利益分配に関して第三者の目もあるということは言っていいのではないかと思います。

○ 方向性としては、それでいいですね。それだけではまだはっきりしないかもしれないけれども。

● 先生、会社の方では恐らく負債以外の基準も議論されていたと思います。例えば従業員とか何かというのはその後はいかがでしょうか。

○ 余り議論が進んでいないんですが、ただ、結局は現行法と余り変わらないことになるのではないかと思っています。

● ありがとうございます。

○ 手元の年次報告の63ページに負債額の規模が出ていまして、最も負債の多いのは66兆円というのがあります。これは特殊だと思いますけれども。

○ 確かに、公的な性格を帯びているものの中に相当巨大な負債額がどうもあり得る。ですから、これはやはり要るのではないかなという気はするんですよね。

○ そうすると、委員がおっしゃったこともそうかなという感じがします。

● ちなみに公益法人の方は、今の白書の147ページでございますが、外部監査の要請が主務官庁からされております。資産額が100億円以上もしくは負債額が50億円以上、又は収支決算額が10億円以上の所管公益法人に対しては、公認会計士等による監査を受けるよう要請するということです。

○ ですから、そちらの方が準則主義になって外れるとしたら、代わってこちらの方でも何か要るということになるのではないですかね。

○ よろしいですか。負債を基準とするというのは1つのあり得る考え方だと思いますので、なおその点について検討することとし、資本金による基準については要求しないということでいかがでしょうか。
 ほかによろしいですか。10のところは何度も今まで議論してまいりましたし、大体議論は尽きていると思いますけれども。
 それでは、この資料は以上で終えまして、資料5についてお願いします。

● それでは、引き続きまして、ワーキング資料5について御説明させていただきます。本資料は、前回の御議論の中で社員総会、理事、理事会及び監事制度の在り方について、資料で制度ごとに分散していた記述を1つにまとめ、更に第3の案というものも考えてはどうかという御指摘に基づいて作成いたしました。
 タイトルの下にある「○」でございますが、非営利社団法人(仮称)における社員総会、理事(理事会)及び監事制度の在り方、これを以下、「機関設計の在り方」というふうに略称いたしますが、については次の3案が考えられるのではないかということで資料を3案つくりました。
 注の部分でございますが、機関設計の在り方に関するこれから述べますI案、II案、III案は、ワーキング・グループということですので、とりあえず公益性の有無とは切り離した形で御検討いただけないかと考えておるところの注記でございます。
 それでは、I案から御説明します。本文は「最高(万能)意思決定機関として社員総会を、執行機関として理事をそれぞれ置き、理事の監督機関として監事を置くことができることとする」案でございます。「※1」で、その案の骨子を詳細に書きました。若干くどくなりますが、御説明を申し上げます。
 社員総会の権限につきましては、社員総会は強行規定に反しない限り、いかなる事項についても決議することができる。この機関は必置にするということでございます。
 理事については、@権限、各理事が業務執行権、代表権を有することになります。括弧内は、定款又は社員総会の決議等によって代表理事を定めることも許容されるということでございます。A員数は1人又は数人おればよい。B選解任は社員総会の決議による。
 理事会ですが、法定の機関たる理事会の設置は不要。括弧内、定款又は社員総会の決議で理事会を置くことは許容される。
 監事ですが、@設置は、監事については任意ということになります。A主な権限は理事の業務執行を監督する。B員数は1人又は数人、C選解任は社員総会の決議による、こういう骨子でございます。
 「※2」は、今述べましたI案といいますのは、民法上の社団法人に関する規律に倣うものでございます。
 「※3」については、社員総会の権限がいかなる事項についても決定できるという部分について、梅先生の『民法原理』という教科書に参考となる記載がございましたので、引用させていただきました。なお、ここで資料では出版社と発行年が漏れております。公表資料には、そこを補充した上で公表いたしたいと思っております。失礼申し上げました。
 「※4」は、骨子の括弧の部分と重複するんですが、定款等の定めにより、@会議体としての理事会を設け、A各理事は単に理事会の構成員として、理事会の権限に属する事項の決定に参画するにすぎないものと位置付ける、B理事のうち、特定の者に業務執行権及び対外的代表権を付与することも可能である。I案については、こういうオプションも可能であるという趣旨でございます。
 続きましてII案ですが、前回の資料でいうとこれがA案だったわけでございますが、基本的意思決定機関として社員総会を、業務執行に関する意思決定及び執行機関の業務執行を監督する機関として理事会を、執行機関として代表理事を、代表理事の監督機関として監事をそれぞれ必須のものとして置くという考え方の案でございます。
 「※1」は、その骨子です。社員総会の権限は、法令又は定款に定めた事項に限り、決議することができる。
 理事、@主な権限は理事会の構成員として、理事会の意思決定に参画する。A員数は、理事会を構成する必要がございますので3人以上が最低限となります。B選解任は、同様で社員総会の決議によります。
 代表理事は、@主な権限、法人の業務執行権及び代表権を有する。A員数、こちらは1人又は数人おればよい。B選解任、理事会の決議による。この点、御議論あり得るかと思いますが、とりあえずII案では株式会社に倣って理事会の決議によると記載してございます。
 理事会ですが、@法定の機関たる理事会の設置が必須となります。A権限は本文と重複しますが、業務執行に関する意思決定及び執行機関の業務執行を監督するという位置付けになります。
 監事ですが、@設置は必置。A主な権限は代表理事の業務執行監査。B員数は1人又は数人。C選解任は社員総会の決議という骨子になります。
 「※2」でございますが、II案は原則として商法上の株式会社に関する記述に倣うものでございます。
 その次の文章は、事務局なりに趣旨をまとめたものでございますが、株式会社において取締役全員で構成される取締役会を法定の機関として設置する趣旨は、株主総会の権限縮小に伴い、著しく拡大された取締役の権限行使を適正・慎重になさしめる点にあるということかと思います。
 「※3」ですが、これはII案に対する前回、前々回の御指摘でございます。非営利社団法人(仮称)には、社員数が極めて少ない小規模な団体も含まれることを念頭に置くと、そのような団体も含めて一律にII案の規律を強制することは相当ではないのではないかという御意見です。
 「※4」、なお、有限責任中間法人については、社員総会を基本的意思決定機関と位置付けつつ、理事会を法定の必置機関としてはおらないということを御紹介しております。
 おめくりいただきまして次のIII案でございます。III案は、機関設計の在り方として上記のI案、II案に相当する規律をそれぞれ設け、その選択は個々の団体の自律的な選択に委ねることとしてはどうかとする案でございます。
 「※1」、それぞれの骨子は、I案とII案と全く同じものを念頭に置いております。
 「※2」が、III案を置く理由のたたき台というものでございますが、非営利法人(仮称)の対象となる団体としては、社員相互の関係が希薄な大規模な団体から、相互の関係が密接な小規模な団体まで多種多様なものが考えられます。そうしますと、その中においては社員自らが法人の活動全般について意思決定をすることを望む団体と、社員は法人の活動に関する基本的な事柄を決定し、それ以外の法人の業務に関する意思決定については、社員が当該業務の専門家として選んだ理事の判断に委ねることを望む団体が考えられるのではないか。このようなことを踏まえますと、III案において団体の規模や性格に応じた機関設計を法制度として用意してはどうかという考え方でございます。
 「※3」は、前回からも御指摘いただいていますとおり、会社法現代化に関する改正要綱試案において株式会社というタイプの中においても機関設計の在り方について2タイプを設けるという案が紹介されているということでございます。中身は本文に書いてあるとおりでございます。
 次の「※4」でありますが、これはもしIII案を採用する場合においては、I案の規律の適用を受ける法人とII案の規律の適用を受ける法人の相互関係が問題になるのではないかということで、事務局の方で考え方のたたき台を整理したものでございます。2つございます。
 @I案の規律を原則、II案の規律をその特例と位置付け、I案の規律の適用を受ける法人がII案の規律の適用を受けようとする場合には、定款変更の手続を要するとしてはどうかというものでございます。括弧内は、このたたき台の参考といたしましたのが、商法の通常の株式会社が委員会等設置会社になる場合の手続を参考にしたという趣旨でございます。
 Aは、III案におけるI案とII案の記述を並立するものと位置付けて、一方の規律の適用を受ける法人が他方の規律の適用を受けようとする場合には、いわゆる組織変更の手続を要するということとしてはどうかという考え方でございます。括弧内は、参考にした法制として、営利法人における有限会社が株式会社に組織変更する場合の手続に倣ったものでございます。
 ただ、このうちA案については、現在のI案とII案の規律の違いを前提とすると理論上は考え得るという程度にとどまるかもしれません。ただ、一点つけ加えますと、もし通常の株式会社と委員会等設置会社、@の方ですが、この場合、会社の商号については、いずれも「株式会社」という文字を使うということになります。どちらの会社であっても「何々株式会社」となります。これに対して、もしAのような相互関係と理解いたしますと、株式会社は「株式会社」、有限会社は「有限会社」という文字を使わなければならないという規律に服する可能性が高くなると思いますので、一目瞭然で分かるということになろうかと思います。ただ、これもI案とII案が名称を変えるほどの違いがあるのかどうかということに勿論つながってまいります。御参考までにということでございます。
 長くなりましたが、資料5の説明は以上であります。よろしくお願いいたします。

○ これは前回の御議論をまとめたものですけれども、これを見て更にいろいろな問題があるとか、あるいはこの間の議論が必ずしも正確に反映されていないとか、いろいろな御意見があるかと思いますが、いかがでしょうか。
 I案の「※4」のところで説明してあることなんですが、定款等の定めによって@AB、幾つかの可能性があるということですね。このうちの@とAの違いというのは、今聞いていてよく分からなくなってきたんですけれども、Aが一番はっきりしていると思いますので、Aを手がかりにして見ますと、Aは、各理事は理事会の構成員としての権限しかなくて、要するに理事としての業務行権がない、ということですね。これに対して、@の方は、理事会という会議体は設けるけれども、各理事に業務執行権が残っているということですか。

● 失礼しました。ここの@ABというのは、これをすべてセットでやるということを念頭に置いて書きました。ただ、御指摘のとおり、@をしたりAをしたりBをしたりというふうにも読めると思います。失礼いたしました。ここで言いたいのは、これをセットにするとII案と同じような規律を定款によってI案でもできるのではないでしょうかという趣旨の記載でございます。

○ そうですか。

○ 今のところなんですが「※4」の最初のところに「定款等の定めにより」の「等」は、社員総会の決議でも可能だという御趣旨でおつくりになったと思うんですけれども、この社員総会の決議は普通の決議であるという前提でしょうか。

● はい。それで正しいかどうか、ちょっと自信がないのですが。

○ いや、中身はこれから議論することだと思うんですが、お書きになった趣旨はそういうことですか。

● はい。そういうことを念頭に置いております。

○ そうすると、II案の仮に理事会等設置法人に移行するか、移行しないで任意のものとして「※4」のものを定めることができるかの違いは、定款変更の仮に4分の3なら4分の3の重いハードルを越えなくてもできるのが、この「※4」のところであって、反面、ハードルを要求されるのが、II案への移行に関する末尾の方にお示しになっている考え方の@であるという整理で理解することができるわけですね。

● 理解することができると思います。

○ 中身についてはどうですか。それでいいかどうかという議論ですが。

○ 「※4」ルートを採る法人というのは多いのではないかなという気はするんですよね。そうすると、勿論お示しいただいたのはあり得る整理だと思うんですが、「理事会等設置法人」という名前を使うかどうかもまだ決まっていませんけれども、使ったときに「※4」で行ったものとII案で行ったものとが、どこが違うのというのが分かりにくいかもしれないという部分はあるかもしれません。

● 例えばでございますが、「※4」にもし社員総会の通常決議が入るといたしますと、III案の方で言うII案をとった場合には、戻る場合にも定款変更の決議がなければ戻れませんと。ただ、I案しかない場合には融通無碍に戻れますということになろうかと思います。ですから、I案で「※4」のような制度を法人が持っていますということを宣言したとしましても、法制度として担保されているわけではないので、また元に戻ってしまいますよという、すみません、繰り返しですね。

○ 確かにそうではないでしょうか。

○ 私もI案で団体自治に後は全部委ねるか、III案のように2つのタイプのどこが違うかというところが気になるんですが、今、委員がおっしゃったように、変更のときにどういう手続を要するかという整理はあろうかと思います。ただ、実態として社員総会がI案では定款によって、法令又は定款に定める事項に限り決議することができるというふうに手を縛ることはできますか。もし、それができると、III案の意義は本当に移行の手続だけかなと考えるんですが、いかがでしょうか。

● 少なくとも現行民法の規定ぶりですと、社員総会の権限について定款で限定できるという第63条の規定になってございます。万能の権限を有する有限会社法の規定ぶりには、民法のようなはっきりとした規定はないようなのでございますが、委員にまた教えていただきたいと思うんですけれども、解釈としては社員総会が自分の権限を縛るということが有限会社法上違法ではないのではないかと思います。

○ そうすると、できた後の解釈論になるのかもしれませんが、今の事務局の御説明を承ると、本当に手続だけになるんでしょうかね。

○ ただ、定款変更すればまた広げることもできる。

○ そうですね。

○ あとは、こういう理事会をつくって定款で限定したとしても、対外的にはさっきの民法第54条の問題になってしまって、他の理事が実際に外で何かやってしまったら、悪意でない限りはその効力を否定できないという違いは出てくると思います。

○ I案の「※4」をとったときに、代表理事を登記するということはあり得ないんですか。

○ それは、登記は予定していないですよね。ですから、登記法の方を変えるということはありませんからね。

● 理事会は登記できないと思いますが、代表理事は実は中間法人でも代表理事の登記ができますので、代表権の制限という民法タイプではなくて、理事が複数いるときには代表者を定めることができるという規定を実体法の方に置けば、代表理事の登記はできると思います。つまり、中間法人ではできますが、民法では代表理事の登記はできないという形になってございます。

○ 中間法人法はI案とII案の中間みたいですが、いろいろな意味で中間になってしまうんですね。

○ 意思決定機関としての権限を自ら縛ったとしまして、そうすると、縛ると減った分の意思決定の分野、これは誰かが意思決定権を持たなくてはいけないんですけれども、I案の場合は誰が持つということになるんですか。

○ 私のイメージとしては、理事会に委ねるのを団体自治の1つの具体例として決定するということになります。

○ そうしますと、「※4」で定款等を定めた場合執行機関について整理されておりますけれども、2ページのB、ここには「業務執行権及び対外的代表権」としか書いていませんが、理事のうち特定の者にそこの部分の意思決定権限も与えると読むのでしょうか。意思決定権限を誰に与えるのかというのは。

○ 私は理事会と申し上げたかもしれませんが、どちらもあり得るのだろうと思いますが、まさにオーダーメイドで、このような問題は代表理事が専行できる、このようなことは理事会の決定をもって行うというようなことを定款で決めていくということになるのだろうと思います。

● 恐らく社員総会に留保されておる、あるいはされるべきである定款変更ですとか、そういうものを除けば、理事者1人に委ねるということが、恐らくI案は定款自治の範囲内で許容がされておるのだろうと思います。制度的に制限していこうとなりますとII案でありますし、また、制度的に制限するタイプを制度として置こうというのがIII案でございます。ただ、III案をとったとしても、I案を採る法人がII案もどきのものをつくったり、あるいはII案より著しく後退したといいますか、社員総会の権限だけ縛って理事に全部任せるというようなことをIII案におけるI案でも多分可能だろうと思って、それは社員がそう望めば、いけなくもないのではないかと思います。そういたしますと、III案とI案の違いは、II案のようなものが法制度としてあるだけですね。

○ ちょっとよろしいですか。I案は、社員総会がオールマイティだということは基本にあって動かないんですよね。

● そこが動くのではないかという。

○ 自己抑制できるんですか。

● そこを先ほど委員から御質問をいただきまして。

○ そこをもう一度はっきり伺いたいと思いまして。「※4」も社員総会の権限がこれで制限されるということを意味しているようにも思えないものですから。つまり「※4」というのは、I案の説明ですよね。

● はい、「※4」はI案の説明でございます。

○ そうすると、I案の本文に最高、万能の意思決定機関として社員総会というものが予定されている場合に、「※4」でそういうふうな制約ができるということになるのかどうか分からないものですから。

● 「※1」の「・」の部分でも理事と理事会のところには括弧をつけてございますが、今の並びで行きますと、本当は社員総会のところにも括弧をつけて制限できるとか。でも、そう書いていないものですから、確かに今の点が資料上ははっきりしておらず、委員の御質問には、私は民法第63条の規定で「社団法人ノ事務ハ定款ヲ以テ理事其他ノ役員ニ委任シタルモノヲ除ク外総テ総会ノ決議ニ依リテ之ヲ行フ」という文言の解釈から、定款で理事、その他の役員か何かに委任できるという部分から考えると、権限縮小を定款で定めることも可能なのではないかと。繰り返しになりますが、有限会社法にはこの第63条のような規定は今のところ見当たらないのでございます。ただ、解釈として、何でも決められる社員総会が自分の権限を縛るということが決められないかということを考えていった場合に、どちらかといえば許容になってしまうのではないかと現時点では考えております。

○ でも、白紙委任はできませんよね。

● 白紙委任といいますのは。

○ 特定の事項について、この事項については理事会に任せますとかそういうことはできないでしょう。やはり、一定の条件を付した上で、執行的なというか細目を理事会の判断に委ねるとか、そういうことはできるのでしょうけれども。

● そこは、事項についての程度問題かとも。社員総会はとにかく何でも決められるとしますと、それこそ細目も全部決められると。

○ そうする、権限放棄することだってできるということになると大変ですね。

● そうですね。有名無実になってしまいます。ただ、まず明らかな限界は、実体法上、総会の権限と明示されているもの、例えば定款変更があります。抽象的に言えば、法律に社員総会で決めなければならないと書いてあるものは定款ではだめだと。それ以外のところについてどうかということになろうかと思います。

○ 今までの大きな議論の流れは、社員総会の権限を縛るのであれば、必ず理事会という形で受け皿をつくらなければいけないということでした。単なる理事の個別執行の方に全部行ってしまうのはまずいという考え方だったわけですよね。それで、この2つの組み合わせができたわけですけれども、委員の問題は、もう一つ根本的な問題ではありますが、社員総会の権限を縛るときに、I案から出発しておいてどこまで縛れるのかという問題で、これは抽象的な答えとしては、今、事務局が御説明されたことなんだと思いますけれども、具体的にいろいろ考えていくと、どういうものが縛れて、どういうものが縛れないのかというのがよく分からない。業務執行一般については、全部任せることができるということなんでしょうか。

● できるのではないかと思いますが。

○ そうすると、最後に残るのは、法定の社員総会の決議事項であるということですか。
 やはりこうやって前回の議論を整理して出されてみると、さっき委員が言われたように、I案で団体自治でいろいろ変えていくタイプと、III案との違いが最後的にどこに出てくるのが分かりにくいので、これをはっきりさせなくてはいけないのかもしれませんね。

○ I案を基本にして、いろいろなバリエーションというのはできそうですよね。今、理事会に委ねるということが議論されていましたけれども、事務局がおっしゃったように、ひょっとしたら理事に委ねるということも一応前提にすることあり得るかもしれない。

○ しかし、それは適当ではないということではなかったでしたか、今までの議論は。I案を前提にして社員総会の権限を縛って行き、その分が全部理事の権限が行くというのはまずいのではないかということです。そこで、社員総会から移る権限の行使は、やはり理事会という会議体で判断すべきであるということですね。

○ そして、監事も置くべきだろうと。パッケージで。

○ そうそう、そこはパッケージなんです。

○ 私はそういうイメージを持っていたんですが、I案というのがIII案の中のI案であっても、やはりこれは自由なものなんだと考えると、どうもそこはうまく縛れない。

○ 確かに、この資料にあるこの書き方では縛れないのかもしれないけれども、それは縛るというのが今までの議論の流れだったのではなかったですか。

○ 割と小規模の場合に1人だけ理事を置いて、その人に委ねるというのはできないということですか。どちらでもよろしいんですが、I案を基本にしていろいろな形の、さっきの3つセットになっているというわけですが、そのうちの一部だけというのもあり得るかもしれない。そうすると、モデルとしてのIIというものを置いておくことが、メニューを提示するという意味で親切だと評価するのか、それとも余計なことか、どっちかの判断だと思うんですね。

○ そうですね。

● IIの規律をとっておるということが取引の相手方等々から分かれば、最低限違法なことをしなければIIの規律どおりだろうということが分かるという点に、最低限の意義はあるのではないかとも感じるところです。III案におけるI案というのは、それこそ自由ですから、そもそもこの自由がよいのかどうかという点から議論しなければいけないというのが今日の御指摘だったとは思いますけれども、ただ、委員が今御指摘のとおり、パッケージでなければならないということを強制するのも、団体自治の観点からするといかがかという気もいたします。ただ、I案だけとしておきますと、II案のようなタイプは制度としてはなくても、定款自治のバラエティの中の1つということになってしまいますので、やはり傍から見て分かるというIII案もあったほうが良いと言えないでしょうか。

○ まだ私の理解も正確ではないかもしれませんが、さっきのI案から出発して社員総会の権限だけを縛るというのはだめだというか、理事会をつくらないで社員総会の権限を縛るだけというのはだめだということになると、社員総会の権限を制約する場合には理事会でその権限を受けることになる。しかし、「※4」のような理事会を設けて社員総会の権限をそこで受けるというタイプは、結局はIIと同じになるわけです。そこで、IからIIへの移行が認められることになり、後は移行するときの手続が問題となるのではないでしょうか。

○ このI案の「※4」に書いてあるのは、むしろ理事を縛る方向での定款変更はできるということを言っているわけで。

○ そうそう、最初はそういうつもりだったんです。

○ ですから、I案をとった場合に、すべて定款自治で何でも社員総会の権限から何から限定できるというわけではないわけでしょうから。

● そういうと、割と成り立ってくる。

○ ですから、I案、II案を並存させて例えばIII案を採るということは、それが一定の範囲でできないということを前提にして。

● III案におけるII案の規律があることの解釈として、I案で社員総会の権限だけを縛るということはできないという解釈あるいは規定まで置けばはっきりするわけですが、そこは担保できると。

○ それは、内容的にはそう考えていたんだけれども。ただ、そのような限界が明確にされていないと、Iから出発して社員総会の制限と理事会の方を設けてそっちに委ねるというオプションが可能で、それは定款に定めることで可能だ、さらには事後的な定款変更でも可能だということになりそうです。
 そこで、Iの基本的な考えと「※4」との関係がもう1度問題となりますが、仮にIにおいては社員総会の万能性という基本的性格を維持しつつ、「※4」のオプションを行使するのだとすると、「定款等」は理事会を設けて各理事の権限は制限するが、社員総会の権限を縛らないとすることで、I案の基本的な精神を維持することも考えられます。また社員総会が万能最高の意思決定機関であることを尊重すると、自分の権限を縛り、理事会にその権限を委ねるということを、単なる社員総会の決議ですることはできず、定款変更という特別の方法で初めてそれができるというような考え方もできるかもしれません。
しかし、定款自治を尊重すると、そんなに制約を掛けなくてもいいではないかという議論も出てきたように思います。
 会議の時間も過ぎてしまいましたのでこのくらいにしたいと思います。

● II案を一律にというのは、この場ではむしろ否定ということで、I案あるいはI案の在り方がどうなのかという点とIII案をどうしましょうかと。

○ そうですね。大体そこが議論の焦点だと思いますね。

● ありがとうございます。

○ 本来、今日で社団法人の議論は終わりなんですけれども、最後に御議論いただいた論点だけ残して、次回これをもう少し議論しましょうか。そして、次回は、主として財団法人について議論することにさせていただければと思います。
 時間をオーバーしまして大変申し訳ございません。では、本日のワーキング・グループはこれで終わりたいと思います。
 日程等について確認をお願いします。

● 次回の日程は2月19日の木曜日でございますが、この場所でやりたいと思います。6時から8時でございます。

● 事務的な御連絡でございますが、机の上に第3回の議事録ができ上がりましたので、誤字・脱字を直したもの、あと見え消しの部分は御発言を御確認いただきたいという趣旨でございます。あと、別途メールでお送りするとお約束している先生には、紙は置きましたが、メールでも併せてお送りさせていただきたいと思います。できますれば、第1回の議事録辺りをそろそろいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 今日はありがとうございました。


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