1.日時:平成16年2月2日(月)17:00〜19:00
2.場所:虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座長) 能見善久(東京大学教授)
岩原紳作(東京大学教授)
金子宏 (東京大学名誉教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
中田裕康(一橋大学教授)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 検討課題(総論、社団関係)について事務局から、「非営利法人WG資料4」の前回からの変更点について説明があり、以下のような意見が出された。
- 定款に財産拠出に関する定めを置く場合、その返還請求権は他の債権者に劣後する性格を持ったものとする必要がある。その旨を示す何らかの規定が必要となるのではないか。
- 中間法人法の基金制度と同じ仕組みでよいと思われるが、最低基金総額規制を設けないとどうなるのか。
(←最低基金総額規制に代えて、法人が自主的に基金総額を定めるということは考えられるのではないか。)- 基金制度は、株式会社の最低資本金制度を前提に作った。最低資本金制度がなくなった場合に基金制度を維持するのかどうかについては、最低資本金制度の見直しの方向性が決まってから検討すればよいのではないか。
- 基金制度には、設立当初の拠出分を課税対象から外すという意味もある。
● 続いて検討課題(総論、社団関係)について事務局から、「非営利法人WG資料4」の前回の積み残し分について説明があり、以下のような意見が出された。 <第2 非営利社団法人(仮称)>
[3 管理(4)代表訴訟から4 計算等まで]
- 株式会社では貸借対照表などの決算公告が義務づけられており、債権者でない人でも公告を見ることができる。有限会社では決算公告は義務付けられていない。会社法改正では、決算公告を強制する範囲が大議論となっている。EUでは、情報の開示は有限責任の対価と考えられており、中小会社であっても登記所に決算を登記し、これから取引しようとする人でも登記を見ることができる。この考え方に従えば、新たな非営利法人制度においても、これから取引する人が決算を見られるようにすべきではないか。
- 非営利法人において、財務情報を開示しても困ることはないのではないか。非営利のことだけやっている分には、基金制度は不要と思う。その代わり、その法人のことを知らせるための何らかの情報を開示することが必要だと思う。
(←有限責任の対価又は基金制度の代替として、まず、一般的な財務情報の開示の要否について検討が必要。その次に、その手段は、決算公告によるのか、計算書類の開示(閲覧・謄写)によるのかという整理になるのではないか。)- 定款の一般的な開示も必要ではないか。例えば、理事の代表権が制限されているかは定款を見ればわかるが登記されていない。これから取引に入ろうとする人にとっては重要な情報だと思う。
- 寄付をしようとする人が社員や役員の名簿を見たいという要望は、公益性をもつ非営利法人であればわかるが、非営利法人一般については個人情報の問題もある。学校法人である大学が集会で集まったメンバーの名簿を開示した場合、そこに集まっていることを知られたくない、という点は個人識別情報というだけでなく、プライバシーの問題にもなる、という判断をした最高裁判決もあることに留意が必要ではないか。
- 経費を払っていない社員を特定するためには、改正民事執行法の財産開示制度を利用することが可能であり、社員名簿の開示によらなくてもいいのではないか。
- 公益性のある法人については、社員名簿を当然一般に開示すべきであるということになるのか。公益活動をどのように位置づけるのか引き続き検討すべき。
- 非営利法人において、社員が他の社員を知る必要性は、株式会社ほどでないにしても、少数社員権を行使しようとする場合などが考えられる。社員数の多い団体において社員が他の社員を知ることができる必要がある。
[5 定款変更について]
- 社員が極めて多数に上る法人では、定款変更の特別決議ができずに困っているという話を聞く。そのような法人については、定款による別段の定めを認めないと、定款変更が難しいかもしれない。
- 民法第38条第1項の別段の定めは決議要件を軽くすることも予定しているのか。
(←理事会の決議に委ねることはできないが、定数については別段の定めが可能と解されているのではないか。主務官庁の許可が必要であることが関係するかもしれないが。)- 再開発地域の管理を目的とする有限責任中間法人において、高層ビルの床面積の割合に応じて議決権の割合を定めるという例がある。事業への関与度合いで議決権の割合を定めるという方法もある。
- 合理的な理由があれば議決権の要件を定款で別に定めてもいいのかもしれない。定款変更の特別決議の要件については、議決権一般をどうするかという問題と関連させる必要がある。
[6 解散について]
- 民法に解散命令はないのか。
(←解散命令はないが、主務官庁による許可取消がある。)- 準則になった以上は解散命令が必要ということになるか。
[7 合併及び組織変更について]
- 合併に関する規定は是非設けるべき。
- 資料に記載された組織変更はどんなものを想定しているのか。
(←WGで検討中の非営利社団法人(仮称)に複数の類型を設けた場合及び財団形態の法人と社団形態の法人との間の組織変更の場合。)- 現行の公益法人からの組織変更については「10 その他」における検討課題。
[9 外部者による監査等について]
- 総代会を置くことができる法人は具体的には何か。
(←例えば、消費生活協同組合法に定款の定めによって総代会を設けることができる旨の規定がある。)- 法律に規定がなくても定款で総代会を置くことはできるのか。
(←できないと思われる。)- 非営利法人に総代会を積極的に採用しようとする意見はないと認識しているが、社員の議決権をどうするかという話との関連でなお検討する。
- 外部者による監査については、強制するのではなく、信用力を増すために必要であれば個々の法人が任意に外部監査を受ければよいのではないか。
- 商法では、資本や負債が多額に上り、多数の者に利害を及ぼすような幅広い活動をしている法人に外部監査を強制している。非営利法人でも同様の幅広い活動をしていれば、その点で営利法人と変わらない。外部監査の強制は必要ではないか。
- 外部監査の基準としては、株式会社と同じ規模の負債とすることが考えられる。
● 続いて検討課題(社団関係その4)について事務局から、「非営利法人WG資料5」について説明があり、以下のような意見が出された。
- I案のときに定款で社員総会の権限を縛ることは可能か。
(←民法上可能なのではないか。また、有限会社法上も可能なのではないか。)- I案の場合に、意思決定機関(総会)が自らの権限を縛った場合、減った分の意思決定は誰が担うのか。
- I案の場合は、オーダーメイドで、一定の事項は代表理事、理事会等が行うこととするなど定款自治の範囲内で権限を委ねることが可能ではないか。
- I案で代表理事の登記はできないのか。
(←理事が複数いる場合に、法律に代表すべき者を定める旨の規定を置けば、登記は可能。)- I案において、社員総会の権限を定款で縛ることが可能だとしても、白紙委任はできないのではないか。一定の要件を付した上で業務執行に関する権限を放棄することもできるのか。
(←法律で社員総会の権限と明示されている事項は、定款により社員総会の権限でなくすることはできない。明示されていない事項についてはどう考えるかという問題。)- これまで社員総会の権限を縛るなら必ずその分の権限の受け皿として理事会という形を設けなければならず、単なる理事ではよくないという考え方で議論を進めてきたと思う。I案の場合、社員総会の権限を定款でどこまで縛れるのかというのは、根本的な問題だが、具体的に考えると業務執行一般は全部任せられるのではないか。
- I案で小規模な法人の場合、理事一人に大部分の権限を委ねることはできないのか。
- I案は、理事を縛る方向での定款変更もできるということではないか。全ての社員総会の権限を縛れるわけではないのではないか。
- 非営利法人の対象となるあらゆる団体について、一律にII案の規律を強制することは困難ではないか。
(←次回以降、I案の在り方とIII案について御議論いただきたい。)
注:括弧内は事務局からの説明である。
● 次回は2月19日(木)18時から開催し、社団及び財団関係について討議を行う予定。 (文責 内閣官房公益法人制度改革推進担当)