1.日時:平成16年1月23日(金)13:30〜15:30
2.場所:虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座長) 能見善久(東京大学教授)
岩原紳作(東京大学教授)
金子宏 (東京大学名誉教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
中田裕康(一橋大学教授)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 検討課題(総論、社団関係)について前回に引き続いて、非営利法人WG資料2に沿って検討を行った。事務局から、「8清算」以下について説明があり、以下のような意見が出された。
<第2 非営利社団法人(仮称)>
[8 「清算」について]
- 解散時の残余財産の分配に関する規律の在り方については、WG資料3「2非営利の概念」と合わせて議論しないと結論がでない。
[9 「外部者による監査等」について]
- 会社法の改正要綱試案では、有限会社も含めた一定規模以上の物的会社については、類型を問わず、外部監査の適用を受けることとすることが検討されている。
- 現行法上、会社の規模は資本又は負債を基準として考えているが、非営利法人の規模は何を基準に決めるべきかという問題がある。
[10 「その他」について]
- 法人制度は、社会の基本的な組織規範なので、法人一般に共通の考え方をくくり出せれば、それを民法に残すべきであろう。
- 商法上の会社でも、法人の目的や不法行為能力、理事の代表権に関し、民法に規定する法人の一般法理が適用されている。
● 検討課題(総論、社団関係)について事務局から、非営利法人WG資料3の説明があり、以下のような意見が出された。
<第1 総論>
[1 「非営利法人(仮称)制度を創設する意義、理念」について]
- 午前中の有識者会議で「非営利性と公益性は連続的なもので、区別は難しいのではないか」「従来の意味で公益法人とは認められない非営利法人もいろんな意味で社会にとって意義あるのではないか」という意見があった。
- 非営利法人はいろいろな形のものがあり、統一的な固い理念で説明するのは難しいが、漠然とした理念とすると、将来、税の問題を議論するときに議論しにくいのではないか。
- 税の優遇を気にしないのであれば、最低限、営利法人との区別をはっきりさせておけばいいということになると思う。
[2 非営利の概念について]
(利益の分配について)
- 資料2(2)の※ではAの利益分配をしてもいいものを認めない方向でよいかとあるが、非営利法人の意義、理念を「人の集団の活性化」とするのなら、なぜ利益分配禁止なのか。分配禁止とする積極的な理由は何か。
- 定款で定めることにより利益分配が可能となる制度にすると、実質的に営利法人と同じになってしまう。営利法人制度は、営利の原則に基づき法人の関係者の利害調整のルールとしてよりふさわしいものを用意しており、それが関係者によりよいルールであると考える。もし利益分配をしたいならそのルールを使うべき。営利法人制度の規律を受けないのであれば、非営利法人はBにすべきである。
- 「利益を分配しない」と定款で定めた株式会社についての記事があった。そういうことも株式会社の中でできるのか。
- 営利法人も剰余金が出た時点で配当するかどうかを決める。利益が出たら必ず分配するわけではない。最初から分配しないことをルールとして定款に決めることができないだけ。総会で分配することを決めなければ、社員(株主)に具体的な利益分配請求権はない。そういう意味なら営利法人はまさにAである。
- 非営利法人の規律が営利法人の規律とあまり違わないことになるのには反対。
- Aについて「第三の類型である」と考えると、二つの問題がある。まず(営利法人・非営利法人の)どちらの規律もかぶらないのではなくどちらの規制もかぶる。また組織形態の流動化ということになり、メリットよりも課題が大きいのではないか。
- Aの法人類型を非営利法人に取り込むことには賛成しがたい。Aを非営利法人に取り込んだ場合、例えば甲という団体が「分配できる」と決めたら、利益を分配できることになる。そのときに営利法人と違うルールでやって有効だと考えているのか。それとも、非営利法人に営利法人なみの規律がどっと準用され、その規律に従うべきということになるのか。しかし、後者は効率の面からいってどうか。前者は効率的ではあるが、現行の私法に対するチャレンジ。それに値する理屈が必要である。
- 営利・非営利の境目がなくなってきている。法人の目的・事業の制限をなくせば、営利・非営利の違いは分配するか否かだけになる。非営利法人制度にAのような穴が開くことが気になっている。
- Aは、本来営利法人であるが、現行会社法でカバーしていないと考えれば、非営利法人法制としての穴はないのではないか。
- @、Aとも営利法人に入る、ということならば構わない。
(出資について)
- (1)※は、出資をやや漠然ととらえている。中間法人法の基金と同じように額面のあるデットとしてのものなら成り立ち得る。額面のない純資産の部分についての出資−エクイティ的なもの−とすると、純資産の部分が変動することによって出資分の経済的な価値が変わり、利益を分配することと同視し得る感じになる。持分を設けないという視点から、エクイティではなく、デットという性格の出資にするべき。
(→資料3の(1)※の「返還に関する規律」は、「拠出額のみの返還」を念頭に置くものであるが、その趣旨が明確でない。(1)※の表現を改めたい。)- 破産法改正案における劣後ローンと任意の出資との関係はどうなるのか。それとも、非営利法人ではこの問題は考えなくてよいのか。
- 劣後ローンであることが合意されていなければ、一般債権者と同順位となろう。基金返還請求権と劣後ローンとの優劣関係は、中間法人、相互会社のときも問題になった。
(持分について)
- 持分については、一部の協同組合タイプには持分がある。この新しい法人法制ではそこまで考えなくていいのではないか。
- 持分を認めた方がいいもの(協同組合等)は、今ある規律でかなりカバーされている。
- 持分の話は理念的に「いけない」という話ではないが、法制的に複雑な考え方になるので(持分のあるタイプは)止めた方がいい。
- 持分を認めないという趣旨の何らかの規定は置いてはどうか。エクイティ的なものは許さないという解釈を前提に、出した分だけ返ってくるということを書けば十分か。
<第2 非営利社団法人(仮称)>
[1 設立]
- NPO法より規律が重いということに問題がないか。例えば、財産的基盤については、B案を原則とする方がいいのではないか。
- 改正後の会社法と同じ規制とするべきと考える。
- 理念的には、非営利法人が一番緩いはずだが、NPO法人の方が緩くなってしまう。
- 資料3頁の※(注)の趣旨は、最低資本金規制を外すと、不法行為債権者には自衛の手段がないので、社員の有限責任を一定限度で否定するなどして、その保護の措置を検討しようというもの。
- 会社法でそれを実現しても、非営利法人にスライドするのは難しいのではないか。
[2 社員]
(社員の最低人数について)
- B案とC案に絞ってよい。非営利法人制度創設の意義、理念との関係で、社員が一人でいいかどうかを今後つめることにしよう。
[3 管理]
(社員総会の権限、理事の権限、理事会について)
- 株式会社における取締役会制度は、管理経営の専門家に委ねた方がいいことは専門家に任せ、そのことに株主総会は口を出さないという考え方。
- 理事会に権限を与えるということをどう考えるか。A案、A案とB案を選べる柔軟なもの、B案から出発するもの、3つの選択肢があるが、3月までにどこまで決めるのか。どの程度のイメージができていればいいのか。
(→ 親会議の進捗状況との関係もあり、ある程度幅を持ったものでも結構。)- 会社制度には、所有と経営が分離しているか否かで2タイプがある。分離型には、法定の「取締役会」があり、取締役の合議体が業務執行について意思決定する。監査役も必置であり、株主総会の権限はある程度制限される。非分離型は、取締役が一人でもいい、監査役もなしでいい。その代わり、株主がすべてを決める。 理事会を設けなくて理事が一人でもいいということにしながら、A案を採るという考え方は矛盾する。
- 資料6頁の最初の※を強調してC案としてはどうか。会社と同じ状況にはないが、非営利社団法人の中でも、社員の中で順繰りに理事を回すものや、専門家に任せるものが考えられる。非営利の世界も、今後、活発になってきて、その結果、非営利法人専門の経営者に運営を委ねることが望ましいということもあり得るのではないか。非営利法人について広く活用されるようにという立場で法案を作るのならば、両者選べるようにすればいいのではないか。
(法人との取引等について)
- 現行の公益法人の理事や監事は、他の公益法人の理事や監事を兼職している者が多いため、競業避止義務を設けるとこれらの者が困るのではないか。他方、非営利法人は行う事業の範囲が広くなるので、競業避止義務を設ける必要があるのではないかと思う。公益性があると認められた非営利法人に関しては、その規定を外すのか。
- 公益法人には競業避止義務の規定はいらないだろうという気がする。
(監事について)
- 小規模な団体であっても、社員が監事を兼ねることもできるので、監事を必置にしても困ることはないのではないか。
- 監事になると責任がついてくるので嫌がる人がいる。中間法人でも監事のなり手がいないという話を聞く。
- 社員総会、理事、理事会、監事については、連続した話になっているので関連付けた資料を作ってほしい。
(2)次回は2月2日(月)17時から開催し、社団関係等について討議を行う予定。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)