1.日時:平成15年12月24日(水)10:00〜12:00
2.場所:虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座長) 能見善久(東京大学教授)
岩原紳作(東京大学教授)
金子宏 (東京大学名誉教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
中田裕康(一橋大学教授)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
検討課題(総論、社団関係)について事務局から、非営利法人WG資料2の説明があり、以下のような意見が出された。
<第1 総論>
[1 非営利法人(仮称)を創設する意義、理念について]
- 特定非営利活動促進法1条は理念的な目的規定となっているのに対し、中間法人法1条は形式的な目的規定となっている。どういうイメージの目的規定を考えるのかによるが、資料の(1)は中間法人法よりはNPO法のイメージに近い。(2)は財団までを貫くものであれば、なお検討が必要となるのではないか。(3)の@は技術的な側面から、A理念的な側面からという異なる次元のものと考えられ、二つは両立しうると考える。
[2 非営利の概念について]
- 営利とは社員が権利としての利益分配請求権を持つものだと考えると、非営利はこれとは反対に社員が権利としては利益分配請求権を持たないもの、すなわち、社員に分配しない場合と社員に権利としては認めないが分配することができる場合を含むのではないか。
- 社員に利益分配請求権を付与することを禁止できるかできないかが基準ではなく、付与することができるのであれば営利であるというのが商法の考え方。すなわち、利益分配請求権との関係では、@利益分配請求権を付与することを禁止できないもの、A利益分配請求権を付与することを禁止できるが、利益を分配することもできるもの、B利益分配ができないものを区別できるが、このうち@Aが営利であり、Bが非営利である。
新たな非営利法人はどの範囲をカバーすべきものなのか。利益分配可能な社団(上記A)については、営利法人に関する規律を課することが望ましい。今回の非営利法人法制において、利益分配可能なものまでをカバーすることを目指すのは望ましくないのではないか。- 公益法人と中間法人とをカバーするのであれば、(2)の利益配当の禁止を取り込んで立法すべき。(1)(4)についていうと、持分はないと考えるべきである。学問的に広い概念で非営利をとらえると、協同組合や相互会社も含まれ(1)(4)も入ってくるが、出資の要件は入れない方がいい。
- 新たな非営利法人制度には共益的なものも公益的なものも入れるべき。定款で公益を目指すものもできなければならない。
- 残余財産分配については、理念的に禁止すべきかという観点と技術的に禁止できるかという観点があるが、結論としては、残余財産の分配を保障しないとすることでよい。
- 非営利法人法制は、軽いものとすべきである。社員相互間の利益の取り合いの調整に関するルールや利益分配と債権者との間のルールは不要であろう。
- この点は、今回の非営利法人制度の根幹なので、何度も議論していきたい。
(4 事業について)
- 非営利法人の行う事業については、格別の制限をしないことで進めていくべき。今回創設する法人制度については、何の事業を行うかではなく、法人と構成員との関係で特徴づけるべきである。ただ、事業の制限はしないということは、公益活動も含めあらゆる活動ができることを意味するものである。
- 事業の制限をしないと、収益が上がるけれども構成員には分配しないということになる。積極的な意義が必要であるならどう位置づけるか。
- それはWG資料2の第1・1(3)Aの「民間非営利活動」にある。
- 「民間非営利活動」とは、NPOのような公益活動と受け取られているおそれはないか。
- 「非営利法人を用いた民間活動」という意味と理解すべきであり、「良いもの」という価値判断は入っていない。
- 一切事業の制限がないというのは懸念があるかもしれないが、別途業法や一般的な公序良俗に関する規律等この法律以外の規制はかかる。この法律自身で事業内容に制限を加えることは不可能だし、制度の趣旨とは相容れないと思う。
<第2 非営利社団法人(仮称)>
[1 設立手続について]
- 財産的基盤の確保は中間法人法立案時に最も議論されたが、現在、法制審で最低資本金制度の見直しを検討している。会社法で要求されないことになれば非営利法人では少なくともそれより厳しくすることはない。会社法の検討を待った方がいいのではないか。
- 会社が最低資本金制度を残しても非営利法人では設けないという選択肢もある。
- 債権者の保護が目的だとすると、財産的基盤を確保する、社員を無限責任とする、資産の状況に関する情報開示をさせる。選択肢としてはそれぐらいか。
- 会社法の見直しでは、会社の不法行為に関する会社関係者の責任の強化等の措置を講ずるかどうかについても検討されている。
[2 社員について]
- 株式会社、有限会社は1人でもあり得る。会社法の見直しでは、合名会社、合資会社も1人でもいいという案が出ている。民法では社団性を維持する必要があるのか。
- 設立の際の人数要件と解散事由となる人数要件とを分けて考える必要がある。社員が1人になったから、即解散という事態を避ければいいのではないか。
- 非営利法人の場合、団体活動の促進を目的としているのであって有限責任の享受自体を目的にしているわけではない。社員1人でよいとすると個人が有限責任を享受して、その活動を促進するということになるが、これを法律の目的との関係でどう説明すればいいのか。
- 商法改正の動向にかかわらず、社員を1人でもよいとすることもあり得ると思う。非営利活動としての事業や活動をプライベートな活動とは切り離して行う。その部分の活動を行う際には財産を分離したいという時に法人格を使う。
- 社会的ニーズが1人社団にどれくらいあるか、財団との関係がどうなるかによるので、今は2人か1人かは決められないと思う。財団法人制度と社団法人制度が大きく異なるものとなったら、1人でも社団を使える制度にする必要があるのではないか。
〔3 管理〕
((1)社員総会について)
- 社員総会の権限について、会社法の現代化の要綱試案では、有限会社と株式会社の一体化を前提に取締役会を要求せずにイのタイプを入れようとしている。社員がオールマイティで決めることができる場合は、理事会はきちっとしたものを作る必要がない。
(→ 有限責任中間法人においては、社員が多数に及ぶことを想定し、社員総会の決議事項を限定しておかなければ意思決定の機動性を欠くと考えられたようである。)- 社員数が多くて理事が重い権限を持つ必要があるということは、理事会を重くするということになるのではないか。
- 中間法人の時はあまり議論がなかったように思う。株式会社には取締役会という受け皿があるが、有限責任中間法人には理事会制度は置かれていない。
- 無限責任中間法人にあたるものが取り込まれないのであれば、社員数の小規模なものも想定されることを考えてイのような類型も置いた方が良いのではないか。
- 法人の財産的基盤として一定額を要求するという規制をなくすと、無限責任形態のものを残しておく意味はあまりない。
- 議決権に関しては、現行法では定款で決めれば一人の人にオールマイティな権利を与えることもいいことになるが、本当にいいのかという議論はあると思う。株式会社は、定款で定められる範囲の限界を設けているが、一方で、現在の見直し作業の中でそれを緩めようとしている。
(3(2)理事について)
- 任期はあった方がいいと思うが、会社法の見直しにおいては、譲渡制限会社は任期を廃止しろという議論になっている。任期の定めがなくなると休眠法人の整理ができなくなり、幽霊法人が増える。法人制度が濫用されるおそれが生じる。
- 任期は規定する方向で考えることでよい。
- 2階部分(公益性のある法人)の方の議論かと思うが、公益活動をする場合には、理事が各自で判断するのでなく、理事会で意思決定すべきではないか。そういうときに1階部分がうまく受け皿になるのか。
- 理事会の法定の意味は2階部分に上がる時のことだけを想定しているものではない。
- 第三者責任については、有限責任の場合、特に置く必要がある。現行民法にはこれがないので、理事の無責任な行為を抑止しにくい。結構重い意味を持つのではないか。
- 公益法人タイプで無報酬の理事にどういう責任を課すのか。
- 有限責任であれば理事の責任は必要である。無報酬タイプでも必要なのではないか。責任追及を恐れるなら保守的な運営をすることでバランスをとるのではないか。
- 非営利法人に様々なタイプのものが入るのなら、理事を必ず複数と義務付けることはできず、理事会を置くことを強制できまい。
- 公益法人タイプを考えたときに調整する必要があるが、それは次の段階での検討。
((3)監事及び(4)代表訴訟について)
- 理事・監事の権限の問題と責任の問題は分けて検討した方がいいのかも知れない。責任の問題は特にガバナンスにつながっていく。公益的な法人の話になっていくときに、ガバナンスはどうなっているのかと問われた場合に備える必要がある。
- 監事は、会計監査だけではなく、業務監査も期待されているということでよいか。
- 監事の必置の要否については、小さい法人にもいるかという問題はある。監事の権限が一番重要な問題。財団にも関連する問題。監事の責任は理事と同じで良いでしょう。
[4 計算等について]
- 非営利法人の中には同窓会的な法人なども入ってくるわけであり、社員名簿を誰でも見られるようにするというのはおかしい。一定の制限が必要ではないか。慎重に検討した方がよいと思う。
- 個人識別情報という観点も含め、検討した方がいいと思う。
[5 定款変更、6 解散、7 合併及び組織変更について]
- 定款変更に係る手続規定は、強行規定というべきであろう。
- 決議要件を定款で変更しようとする場合、全員一致に近づける方向で強めるというのはあると思うが、弱めるのはどうか。
- 目的の変更については、一番重要な変更であり、他の部分と比べて重みがあってよいのではないか。
- 合併は技術的な問題がいろいろあるが、中間法人にも合併の規定がある。
- 公益法人は非営利法人のカテゴリーの一部と考えると、公益法人の要件を満たしたものというだけであれば、2階と1階との間の変更は組織変更とは呼ばない。
- これについては、1階と2階の制度をどのように仕組むのかどうかといった大きな問題と関係してくるので、その大前提を詰めるということでさらに議論する。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)