1.平成16年10月1日(金)10:00〜12:00
2.虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座 長) 能見善久(東京大学教授) (座長代理) 中田裕康(一橋大学教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
*坂田大吾(法務省民事局付検事)が代理出席
金子宏(東京大学名誉教授)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 西室長、横田参事官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 事務局から、「非営利法人WG資料22」「非営利法人WG資料23」に基づき説明があり、以下のような意見が出された。 (第四、一、2、※1 目的及び事業に関する制限の要否)
- 公益性を要件としない財団形態の法人について、@実益がはっきりせず、また、濫用のおそれもあるので認めるべきではない、A財団には段階的に(財産を取り崩して)解散するものがあってもよく、最低保有財産規制はないほうがよいという意見があった。ただし、Aについて、最低保有財産額を下回っても直ちに解散するわけではないので、取り崩し型の財団の設立が妨げられるわけではない。
(←@に関し、財団における公益性の認定機関は、親会議で検討中の判断主体を念頭においているとのことであった。)
- WGでは、準則主義を前提とした上、目的及び事業に関する規律として、A案、B案の両論を併記することとしたい。
- 念のため、A案の論拠を補足したい。準則主義を前提とすると、設立後には一切監督が及ばず、目的事業を限定しても実効性に問題がある。また、法令上は広い意味での公益に限るとすると、法人の建前と実態にギャップが生じ、かえって問題である。
- 非営利性についても同じようなギャップが生じると思う。財団で分配するということは論理的にはあり得ないが、実際には類することが行われ得る。
- 家族財団が相続税逃れに使われ得るという指摘もあった。
- 相続税法66条に相続税回避の否認の規定があり、(財団を)適用範囲に含めれば問題に対応できよう。ただし、意見はそれでは対応できないような実例を踏まえてのことかもしれないが。
(←A案、B案の論拠を資料に加えることとしたい。)(第四、一、1、※3 「寄附行為」の名称)
- 「寄附行為」という言葉が二つの意味(設立行為・根本規則)を持つのは分かりづらいので、後者の意味における「寄附行為」という名称を「定款」や「根本規則」等に改めることはあってもよい。ただ、現在の「寄附行為」(根本規則)を「定款」とすると、社団と財団で同じ名称になることになる。わかりやすいというメリットがあるが、他方、変更の厳格さが異なり、また、現行民法にも寄附行為に特有の規定があることもあり、「定款」とは区別したほうがよい。
(第四、二、1 評議員会)
- 理事・評議員の権限分配について、親会議で懸念が表明されている。現在は諮問機関である評議員会に、強い監督権限を付与することへの懸念だと思う。
(←特に、評議員会が人事権を通じて、オールマイティな権限を持つことは不適当であるとのことであった。)- 理事の後任は理事会が定め、解任権は評議員会が持つ、ということもあり得るかもしれない。ただ、選任権と解任権が分かれることを理論的にうまく説明することができるかという問題がある。
- (理事会に)理事の候補者の提案を認めることを考えるべきではないか。評議員会は、限定された事項についてのみ、しかも、受動的にのみ権限を発動できるということを説明すべき。「受動的」というのは、理事が評議員会を招集し、人事の原案は理事が提出するということ。拒否権的な権限を評議員会が持つことになる。
- @評議員会に権限を分配するか、諮問機関にとどめるのか、という問題があり、次に、Aマイナス点をどう考えるか(例えば、実際には評議員会が理事会と同じような構成となれば、単に手間が増えるだけということや、評議員会に設立者の相続人がなって、理事はそれらの者に使用されるだけとなってしまうなど)という問題があり、更に、B具体的にどの権限を分配するかという問題の3段階がある。
- 現行の財団法人は主務官庁の監督があり、非営利法人には監督がなくなるという違いを前提とすると、評議員会の存在の意味を大きくするべきである。
- 移行の問題を併せて考えるべき。移行後の最初の評議員、理事について、現在の財団における理事会、評議員会のメンバーをそのまま横滑りさせなければならないというわけではない。移行を現在の財団が新たな財団を設立すると構成すれば、理事が現在の財団を代表して新しい財団の評議員を選任すると考えることができ、理論的にも成り立ち得るだろう。
(第四、三、4 寄附行為等の開示)
- 債権者による議事録の閲覧は、社団と別異に解する必要はないだろう。
- 親会議では、公益性のある財団について、評議員名簿を開示する必要はないという議論だった。社員名簿と評議員名簿は並列に議論するべきものではないと思う。
(第四、四、2 寄附行為の変更の要件に関する規律)
- B案(変更に関する規定を寄附行為の必要的記載事項とする案)については、寄附行為の変更を不可とする、あるいは、実質的に困難とする寄附行為の規定が認められるのかという問題があり、これらを詰めないと、B案は採りづらい。B案を採るとしても、寄附行為の変更要件を全く自由にするのは問題。
- A案(変更に関する規律を法定する案)は、規律を強行法規とすると固すぎるような気がするが、任意規定とすると、B案に近づき、A案のメリットが失われてしまう。そうすると、強行法規とすることになろうが、全体的に法人の自治が強調されているのに、寄附行為の変更についてだけ厳格なものに思える。
(第四、七、1 残余財産の帰属)
- A案(設立者には、残余財産を出えん額の限度で帰属させることは妨げないが、出えん額を超えて帰属させてはならないものとする)が適当と考える。「公益」ではない「非営利」の財団を確保するのにB案(設立者には、出えん額を含め、残余財産を帰属させることはできないものとする)は過剰である。出えんした分以上は戻らないということにすれば、最低限の非営利は確保できる。
- 中間法人法では残余財産の帰属の制限について規定しなかったが、これは規定したところで容易に潜脱できるからである。財団で非営利性を貫くにしても担保できるかという問題がある。
- 中間法人でも予め定款で設立者に残余財産を帰属させると定めることは非営利に反するものと理解しているが、実際に清算する段階で設立者に帰属させることは許される。これは財団でも同じであろう。
- それは営利性の判断基準を設立者におくことを前提とした考え方である。設立者について残余財産の帰属を制限すると、相続人まで何らかの制限がなされることになりチェックできるかという問題がある。
- 公益性のある法人ではないので、一度出えんしたら戻ってこないとまで強く言う必要はないのではないか。
- A案にするとしても財団に土地を出えんし、寄附行為に「土地は出えん者に戻す」と定めた場合、土地評価額が値上がりした時にどうするかという問題はあり得る。
- 建物を修繕して、評価額が増加した場合にはもっと複雑な問題になる。
- 寄附行為の定めにつき、「残余財産は理事会が帰属先を定める」とすることはできるのか。
(←本文の案は、できることを前提としている。)- 理事会が定めると寄附行為に定めていた場合、理事会が関係者に配分するということはあり得る。予め設立者に帰属させると定めていた場合は、出えん額を超える限りで無効ということになろう。
(←ところで、寄附行為に何も定めがなかったときに、理事会が帰属先を決めることとしてよいか。むしろ、評議員会とすることも考えられるのではないか。)- A案とするのは、非営利性に反するからなのか、事業につきもっぱら私益をはかることを認めないからなのか。前者によると財団における「非営利」は設立者を基準にするということになるが、そう決めるには、全体との関わりを検討する必要があるのではないか。
(第四、五 解散)
- 純資産の額が最低保有財産額を下回った際の解散について、一定の期間を次年度までとした場合、財産取り崩し型の法人は途中で解散せざるを得ないという問題が生じる。
(←清算手続の中で、残余財産を法人の目的のために使うことができるのではないか。)- 財産取り崩し型の法人について、解散しても、任意の団体に信託する等の方法によって、目的を達成できるが、その後に寄附を受け入れる可能性を考え、法人の継続の可能性を認めてはどうか。いったん清算手続に入っても、要件は厳しいだろうが、復活する可能性を認めれば、取り崩し型にも対応できよう。
- 例えば、新規に奨学生を募集することも、従前と同じ基準でするならば認められるのではないか。また、信託等を使えば、取り崩し型の法人についても十分に対応できる旨を説明すればいい。
- 新たに奨学生を募集することは、他の債権者の利益を害するのではないか。
- いずれにせよ継続については検討するほうがいいのではないか。
(第六、一 移行に関する経過措置)
(← 民法上の公益法人が移行する場合の経過措置については、親会議で検討されている旨説明。)
- 改革の理念に基づけば、今ある中間法人より立派な制度をつくることを前提とするべきであり、有限責任中間法人の移行に関するB案※2の乙案(組織変更の登記をしない有限責任中間法人に関する事項については、中間法人法の規定は、なお効力を有するものとする)のように法人が移行しないで残り続けることは避けるべき。
- 債権者保護手続の要否がA案とするかB案(新法施行の際現に存する有限責任中間法人は、所定の期間内に、その組織を変更して非営利法人となることができるものとする)とするかの選択につながると考えてよいのではないか。
- B案だと、一定期間内に組織変更の登記が必要。その負担を法人に課すほどの規律の違いが、中間法人と非営利法人の間にあるのかどうか検討すべきであるが、そこまでの断絶はないと思っている。
- 無限責任中間法人について無限責任法人として残りたいというニーズがあるのではあれば、むしろ非営利法人法に無限責任タイプを設けることも検討してみるべき。
- 有限責任中間法人に最低財産規制(300万円)があるから無限責任中間法人になったのか、それ以外に大きな理由があったのかどうかもふまえるべき。
(第一、二 民法第1編第2章の改正)
- 民法典に残す規定としては、あらゆる法人に関する一般的な規定である必要がある。民法典に残すならば、非営利法人・会社に共通するものとなろう。法人の能力、法人と代表者の関係が委任であることのほかに何かあるか。
- 現行民法典から公益法人の規定を削除する観点、残った規定と非営利法人法の関係がどうなるのかという観点の二つの観点がある。様々な法律が民法を準用しているが、そのような規定は民法に残したほうがいいと思う。また、法人という概念を共有できる源を残しておきたいとも思う。法人と代表者の関係、組織一般の規定、設立・解散の規定あたりは民法典に規定していいのではないか。
- 非営利法人法を新たな単行法とした場合、民法33条の上に非営利法人法、商法、保険業法(相互会社)等が並ぶことになる。33条以外に民法典に一般的な規定を残すと、法人のイメージ的なものになるが、その法的な意味は何か。
- デフォルト・ルールになる。
- 準用規定というのは、具体的な意味を持つ条文を準用するものである。民法典には抽象的な規定だけ残るとしたら、抽象的な規定を準用するのか。
- それは法典をどのように考えるかという問題である。所有権や債権といったくらいの抽象的な規定があってもいいと思う。
- 民法43条は残すとして、44条はどうなるのか。
(←43条と44条の取扱いを分けたのは、商法は民法43条を準用せず、44条は準用しているため。)- 民法44条は直接適用されなくても、民法典に残すべきと思う。
- 民法典は様々な法律で準用される。法人のもとになる規定として民法典に残していいと思う。
(第二、七 名称)
- 「社団法人」「財団法人」とする方向でよいと思うが、経過期間中において、現行の公益社団と中間法人が、同じ「社団法人」となることが問題である。
(第三、三、2、(8)、※2 理事の責任制限(非営利法人WG資料23参照))
- 業務執行権を有していないというのは概念がわかりづらい。商法であればわかるが。A案のほうがわかりやすい。
- A案だと、現在非常勤という要件はわかりやすいが、報酬を受けたことがないというのはハードルが高すぎるような気がする。
- 財団の理事の責任制限について、寄附行為に規定がないといけないというのは重過ぎるような気がする。
- 評議員会で特別多数による決議を要するとするのであれば、寄附行為に特に規定がない場合は寄附行為を変更することになり、重い要件を2回強いることになる。特別多数決の要件が同じであれば、寄附行為変更と併せて1回の特別決議でよいと思う。
- 2回とする意味は、寄附行為の変更に制約がかかる場合に考えられる。特に、2階の法人について判断主体が寄附行為の変更に関与する場合など。
以上