1.日時:平成16年3月22日(月)15:00〜17:00
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
宇賀克也(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
金子宏(東京大学名誉教授)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(岩原紳作東京大学教授、加藤秀樹構想日本代表、河野光雄内外情報研究会会長・経済評論家、田中弥生東京大学助教授は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 非営利法人ワーキング・グループ(WG)の検討状況報告(2)
○ 議論の中間整理に向けた審議5.議事概要
○ 非営利法人WGの検討状況報告(2)
[資料1 非営利法人WGにおける検討状況について(その2)について]
能見WG座長から、資料1について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。○ 議論の中間整理に向けた審議
- 非営利法人WGでは、非営利のものの中から公益的なものが括りだされるのであれば、論理的に非営利財団というものが必要ではないかという議論があった。
- 家族世襲財団の設立が可能となると、相続制度のバイパスを認めることになり望ましくないが、そうでないものとの区別が難しいといった議論があり、さらに検討することになった。家族世襲財団を認めてもよいという捉え方があるかどうか。
- 家族世襲財団には税制上の優遇措置は認められないのではないか。
- 家族世襲財団は積極的には捉えないが、あってもいいのではないかという程度のもの。
- 社員のいない財団法人は、概念的にはすべて非営利となるが、非営利法人が行う事業について何ら制限を課さないとすると、非営利財団法人が収益事業を行ってもよいこととなる。営利法人との関係をどのように整理するかは今後の検討課題。
- アメリカには家族世襲財団がたくさんあるが、多くは自然淘汰されるか、より公益性を追求するものとなるかのどちらか。設立時に公益を追求したものかの判別は困難であり、民間の非営利活動を促進するという観点からは、家族世襲財団を認めてもよいのではないか。
- 観念的には理事は財団の事務を執行し、評議員はそれを監督するという役割だが実際に監督は難しい。公益性のある財団には情報公開を徹底させ、運営の公正性を担保していくしかないのではないか。
- 評議員の監督機能には、設立者の意思を実現する、債権者との関係で適切な運営を確保する、という2つがあるが、その実効性を高めていくことが重要。
- 理事自身が設立者の意思を実現する立場にあり、評議員はそれに対してモノが言いにくいのではないか。
- 理事と評議員の2つの機関があった方が適切な運営がなされるのではないか。
- 非営利法人WGでは、家族世襲財団に存続期間を設定すべきではないかとの意見もあった。
- 積極的な意味がないと、家族世襲財団は一般に理解が得られにくいのではないか。
- 家族世襲財団を積極的に捉えるわけではないが、非営利財団法人を準則主義で設立するとなったときに、家族世襲財団を排除する制度は作りにくい。ただし、外国に家族世襲財団は結構あり、もう少し慎重に評価すべきかもしれない。
- イギリスではCIC(Community Interest Company)など出資型の新たな非営利法人制度の検討も行われていると聞くが、非営利法人WGでは出資型の非営利法人についてどのような検討がなされたか。
- 非営利法人WGでは社員は出資できるものと整理しており、利益の配当は受けないが、解散後に拠出分の返還は認めてもよいのではないかとの議論だった。社員が法人から脱退する際の扱いについては十分に検討していない。一定期間お金を公益活動に使った後、拠出者に戻すという仕組みは十分ありうると思うが、多数派になっていない。
- 現実的には、寄付ではないものの一定期間公益的な活動にお金を出してもよいという人が結構いるので、出資という概念をどこかで触れて欲しい。こうした人は剰余金の分配を求めているのではないと思う。
[改革の意義][新たな非営利法人制度]
- 民間非営利部門の「自立」ではなく「自律」ではないか。また、民間非営利部門の活力ある活動を支えるため、寄付だけでなく出資や会費、参加費など資金の多様性や税制上の優遇措置が確保されるべき。
- 現在、企業は非営利活動への寄付や人材派遣などを行っている。企業が行う民間非営利活動が重要であることにも触れるべきではないか。
- 企業においても、非営利部門での役割が大きくなってきているのではないか。
- 企業の非営利活動を促進するということも必要ではないか。
- 今回の改革の議論は、簡素な政府を実現するという視点がなくても、活発な民間活動の促進という視点さえあれば成り立つのではないか。
- 構成員の自由な活動の保護と、団体の自由な活動の保護を整理して考える必要がある。その整理次第で非営利活動における企業の位置づけも捉えられてくるのではないか。
- 個人・法人を含む民間部門の自発的な支援と協力といったことではないか。
- 社団法人と財団法人以外にも、利益を追求しない出資型の非営利法人を検討すべき。
- 出資型というのは、寄付よりももっと積極的に活動に参加したいという人のニーズを汲み取るものであり、新たな法人として位置づけられるかは別として検討したい。
- 出資組合型のNGOといった仕組みは、企業のより活発な参加を促すことになるのではないか。
- 非営利法人WGでは、出資や営利・非営利の概念を技術的に整理しているが、それだけでは捉えきれない部分があるようであり、新しい法人類型になるかは別として検討してみてはどうか。
- 株式会社で収益を分配せず、すべて公益活動に使うというタイプのものがあってもよいかと思うが、商法上は難しいという意見が強く、非営利法人のカテゴリーの中で出資型を考えてみたい。
- 商法上、利益を分配しない会社があってもよいのではないか。
- 少数株主が利益を分配せよといった場合、商法上難しい問題があるのではないか。
- 出資型としてイメージしているのは、一口いくらで多くの人が出資するワーカーズコレクティブのようなもの。
- 社団的非営利法人の一つのカテゴリーとして整理できるかもしれない。
- 一口いくらという出資型は協同組合に近く、非営利法人WGで議論はしたが難しかった。ここでは社団タイプを考えている。
[公益性を取り扱う仕組みのあり方]
- 公益性の認められない非営利法人の法的効果はガバナンス以外に何かあるか。非営利法人なのに収益活動も積極的に行うとなると、非営利法人はどのようなものと捉えるべきか。非営利法人に対する税制も考えられると思うがどうか。
- 非営利法人の効果として税優遇があるかどうかについて、この会議で踏み込むことは難しい。非営利活動を任意団体で行う場合と法人で行う場合との違いについて、現段階では必ずしも明確ではない。
- 非営利であれば税はいらないという考えもあれば、非営利財団にはある程度の税優遇がないと設立自体が難しい問題もある。いずれにせよ現段階では税以外の部分についての整理。
- 非営利法人のところでは税について触れず、公益性を取り扱う仕組みの中でのみ税について触れるのは、税の効果があるのは公益性のある場合しかないということになってしまうのではないか。非営利法人の方でも税について触れるべき。
(←公益性を取り扱う仕組みを議論する際には、公益性がある場合の効果を念頭に置く必要があり、その一例として税を掲げている。)- 非営利法人はどんな事業を行ってもよいというのではなく、非営利活動のみというのであれば、その収益に課税するのはおかしいという議論も出てくる。
(←非営利法人について税の議論が存在しないというわけではない。)- 非営利法人に対するイメージが委員によって違うのではないか。非営利法人WGにおける非営利法人の位置づけは、収益を分配しさえしなければ活動には制約がなく、それが民間非営利活動の促進、社会の活性化に繋がるというもの。非営利法人を収益活動を行わないものと捉えているように思われるが、その考え方は法人の活動に制約をかけることに繋がる。
- 第三者機関とは、行政機関というよりも政府からしかるべき権限と権威を与えられた独立した組織ではないか。何の権威も与えられていない民間機関に公益性の判断を委ねるのは適当ではないが、権威が与えられた独立した民間機関であれば判断機関として考えうる。
- 「第三者的」な行政機関とは、「第三者的・中立的」ということではないか。
- 第三者機関という表現が、政府の一部であると誤解されないようにすべき。
- 第三者的でない機関は、単一の機関であっても判断主体として適当ではないと言えるのではないか。
- 判断主体について、並列的に書いておくだけではなく、もう少し絞り込まないと税調とも話がしづらいのではないか。
- 判断主体については、秋までにもう少し明確にしていけばよいのではないか。
(←現段階では議論が抽象的。税調につなぐためにはもう少し議論を深める必要。)- 今後は、今回議論を深める・検討するとした部分を掘り下げ、次の段階の中間的な報告につなげていってはどうか。
- 公益性の判断の際に活動実績を求めるという結論にはなっていないはず。
(←設立の際でなくても、どこかの段階で活動実績は必要になるという議論ではないか。)- 時間的間隔を置くかどうかは別として、まずは非営利法人となって、その後公益性が認められるということではないか。
- 最初の公益性の判断の際に何年かの活動実績が要求されると、その間の手当てが与えられないことになるため、こうした場合には形式的な要件でみることにするのかどうか考える必要。
- 予算や計画がしっかりしていれば比較的短期間に公益性が認められるという考えもある。
- 最初の公益性の判断の際には形式要件をみることとし、事後チェックとして活動実績をみていくという形にすべき。
- 手続き上、非営利法人設立と公益性の判断とが同時に行えるようにすべき。
- 公益性がいったん認められたものが財産を蓄え、後に公益性が認められなくなって非営利法人となり、財産を分配することがあってはいけないのではないか。
- 現在の公益法人が公益性を持たない新たな非営利法人に移行する場合にも同じような問題がある。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)