1.日時:平成16年3月17日(水)15:00〜16:30
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
金子宏(東京大学名誉教授)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会総務部長)
(岩原紳作東京大学教授、宇賀克也東京大学教授、加藤秀樹構想日本代表、河野光雄内外情報研究会会長・経済評論家、関幸子(株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー、中田裕康一橋大学教授は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 議論の中間整理に向けた審議5.議事概要
○ 議論の中間整理に向けた審議
事務局から、これまでの審議を踏まえた主な論点について資料1に基づき説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。[改革の意義について]
[新たな非営利法人制度について]
- 民間公益活動の促進という項目が含まれておらず、公益活動については公益法人制度の諸問題への対処という項目しかない。民間の公益活動を促進するということは大きなテーマなので、それを含めるよう見直すべき。
- 地域コミュニティについて、コミュニティに対するニーズは高まっており、重要であるとの視点を踏まえるべき。
[新たな非営利法人制度における公益性の位置付けについて]
- 従来の公益法人の仕組みと違い、公益性のない財団があり得るかどうかという検討が、議論に含まれてくる。
- 「社団形態の非営利法人(仮称)制度の骨格」について、「事業について、格段の制限をせず」とあるが、どういう意味か。営利活動をどんどん行ってもよいのか。
(← 非営利法人が行う事業については制限せず、収益的な事業も行い得るということ。非営利とは剰余金を社員に分配することを目的としないということであり、そういう非営利法人は公益的事業や収益事業を広く行えるということ。)- 非営利法人の行い得る事業については、非営利法人WGでも議論になった点。非営利法人の行う事業を制限する理屈が難しい。非営利目的の下で収益事業を付随的に行うのは構わないのではないか。濫用は考えられるが、利益を分配しないため、営利の目的で事業を行うには不便な制度であり、非営利法人としての姿を逸脱することはないのではないか。
- 市場と公的な領域との境界にビジネスチャンスがある。民間非営利活動の促進という改革の意義に照らし合わせると、非分配の原則を守っていれば、収益事業を行ってもよいのではないか。ただし、内部留保については規制が必要。
- 公益性を有する法人について言えば、収益事業は公益目的遂行のために行うので、収益は公益事業のために使わないといけない。内部留保は問題だが、現行指導監督基準のように、一律30%を超えてはいけないというきつい規制をかけることには賛成ではない。合理的な説明ができる範囲の内部留保であれば問題ないのではないか。一方、公益性のない法人の内部留保についてははっきりしない点があるので、検討すべき。
- 例えば、10周年記念の積立金やビルの移転などに備えた、ある程度の内部留保は必要。
- 内部留保の問題を考える際は、色々なケースを想定すべき。また、現行公益法人の予算準拠主義を見直すべき。
- 内部留保については、新聞等でも誤解されて報道されている。現行の指導監督基準上の内部留保は、企業の利益準備金の累積を意味するのではなく、むしろ手元流動性の残高に近いものを内部留保とする計算式になっている。
[公益性を取扱う仕組みのあり方について]
- 公益性の考え方について、利他というより社会に貢献するという視点が必要ではないか。
- 利他と社会貢献性とは相反するものではなく、共存するものではないか。
- 利他という言い方で社会貢献性もうまく含めていく必要があるのではないか。
- 最初は利他や共益からスタートしても、結局社会のためになるものが多いのではないか。利他の定義はもっとはっきりさせた方がよく、利他と社会貢献性の両方が必要になることも考えられる。
- ここでは、利他という視点からのみ公益性を捉えるということではなく、利他という視点も加えるべきということを言っているのではないか。
- NPOでは、結果としてその活動が不特定多数の者の受益につながればよいという整理になっており、これに学ぶべきではないか。
- 現在受益者がいない研究によって、将来多数の人の問題に対応するということが公益に該当するかという議論もあったが、背後に不特定多数の受益者が想定されればよいのではないか。
- 心臓移植を海外で行う特定個人に対する募金などは、将来同じような人に対する支援にも繋がっていくであろうから公益と考えてもよいと思うが、税制上は贈与に当たるのか。
- 特定個人に対する寄付は必ずしも寄付者の税控除の対象にはならないのではないか。ただし、移植をする人を支援する組織に対する寄付であれば寄付金控除の対象になることもあるのではないか。
- オリンピックなどの指定寄付金、認定NPOやいわゆる特増に対する寄付など、特定寄付金については寄付金控除の対象となる。
- 寄付をもらった個人に対して税がかかることはないと思うが、この点はよく調べてみたい。
- 今回の見直しによって、従来よりも公益の概念が拡張することもありうるだろう。
- 公益の概念が「不特定かつ多数」の利益だけではないということだろう。
- 同じような条件の人も受益者となるような形になっていないと公益という概念に入らないのではないか。組織が寄付を受ければ受益者が広がるが、特定個人のみが寄付を受けるとなると受益者が広がらない。
- 特定個人に対する寄付と組織に対する寄付の税法上の扱いが異なる根拠がどのようなものか、調べておく必要。
- 公益の概念として、活動に参加する人が特定か不特定か(制限があるないか)、受益者が特定か不特定か(制限があるかないか)でマトリックスで整理するとよいのではないか。
- 公益の概念の捉え方として、参加者の視点を加えることは面白い。受益者の方については、従来の捉え方よりも広げて考えてもよいのではないか。難病の特定個人に対する寄付は、同じような人が出てきた場合に寄付することに繋がっていき、公益に該当すると考えてよいのではないか。
- 特定少数の難病患者に対する支援も、それによって社会全体を良くしていくものだと捉え、公益に当たると考えてよいという話が以前あったと思う。
- 同じような条件の人に対しても支援されるということが確保されていないと、公益性があると社会的に認知されにくいのではないか。
- 経済的な活動を支援することは公益に当たるかどうかは今まで議論されてきていない。これから具体例を挙げながら議論して欲しい。
- 少なくとも受益者が不特定少数でも公益性を認めてよいのではないか。
- 公益性の捉え方について、事業に着目するという考え方があることは認めるが、事業に着目して公益性を判断するということが前提になっているような書きぶりは修正すべきだろう。
- 法人の場合にはミッションが何であるかが問われるべき。
- 公益性の判断は、目的、事業、規律の順に考えるべきで、資料の書き方には違和感を覚える。
- 「事業に着目する」という点については、課税の議論との関係もあり、議論の対象としている部分を残しておきたい。
- 事業に着目しなければならない背景が、もし業績を挙げているかという話であれば、それは事後チェックの話に関わってくる。
[全体を通した議論]
- Aの「国等の機関」に第三者機関が含まれるのであれば、括弧書きでもよいのでその旨を説明すべき。また、C(民間機関が行う考え方)は、アメリカのような格付け機関が念頭に置かれているのであれば、結論においては難しいと思うが、検討をしたという意味であれば、このような記述もあってよいと思う。
- 「税」というとき、法人税、寄附税制等どのような税を念頭に置いているのか。
- ここでは、「公益法人」を作るとした場合、民法典ないし民法典附属法典で作るということなのか、「公益法人」が意味を持つのは、税金の関係だから税制上の存在として作るのか、ということを言っていると考えられる。
- 本件については、誤解に基づいた批判が多い。公益性と税の問題は本来別なのに、多くの人は公益性の判断を課税庁がすることになると思いこんでいる。「専ら税制上の効果に着目し」という表現は、このような誤解を招くので、ここでは、公益性の判断をどこでするのかを議論しているということを分かり易く説明すべきではないか。
- Bの記述については、単に課税との関係だけで非営利法人と「公益法人」とを区別するのではないという議論も出ているので、この会議の場でもう少し議論すべきではないか。
- 二階建てにすることがはっきりすれば、この記述ももっと明確になってくると思う。非営利法人の中から一定の要件を充たすものを切り出して、特別の取扱いをするとした場合に、このような二階に上がるものを税金だけで捉えるのか、それ以外の、例えば社会的効果という点でも意味を持つのかが問題となる。仮に後者なら、民法典ないし民法典附属法典で規定するということになるだろうし、二階に上がる法律的な効果として意味を持つのが税以外にほとんどないということなのであれば、税制上で規定すればよいのではないか。
- ただ、税制上で規定するといっても、民法典ないし民法典附属法典にも、一定の要件を充たすものを例えば「公益法人」とする規定を頭出しとして置いた上で、更に税の分野で細かい規定を設けるという方法もあるかもしれない。
- 準則主義で数多くの非営利法人を認めた場合、全てが公益性を持つとは考えられず、取扱いを分けなければならないことは明らかだと思うが、2階や3階といった表現は誤解を招くおそれもあるので、これまでは避けてきている。
- 公益性の判断をする主体と課税か非課税かどうかを判断する主体とは分けて考えることができる。この点が一般に誤解されている。
- 分けて考えることはできるが、実際に分けるかどうかは別問題。また、分けた際に、公益的な非営利法人として認められた場合、どのような効果があるのか、税効果が中心ということになると分けることに意味があるのかということにもなる。
- 公益性の判断と税の判断を分けた上で、公益性を有するという判断を受けて、課税する側がシンプルな方法で税の判断をするという方法もあり、2つに分けることが必ずしも行政コストの増大につながらないと思う。
- 議論に参加していない人には、この会議で公益性という問題をどのように取り扱おうとしているのかが見えてこないと思う。一般的な非営利法人制度には、公益性が含まれないが、この会議では、非営利法人の中から公益性を有するものを区別すべきだということがディスカッションされているということを示すべきではないか。
- 例えば、「新たな非営利法人制度」と「新たな非営利法人制度における公益性の位置付け」の間に、非営利法人の中から公益性を有するものを「公益法人(仮称)」として特別の取扱いをすることになるという趣旨の記述を入れると流れが良くなるのではないか。
- 「公益法人」という言い方は、今の公益法人をそのまま復活するのかという誤解を招くので、「公益的な活動を主体とする法人」といった言い方の方がよいのではないか。
- 地方における公益性の判断について、活動範囲が一つの都道府県にとどまるものは都道府県単位で判断するのか、国の判断主体が行うこととするのか、さらに、一つの市町村の中だけで活動する団体はどうなるのかといったことを考える必要がある。地方レベルで判断する仕組みがうまく行くか懸念があり、例えば、事後チェックを地方で行うことは現状では難しいのではないか。
- 判断要件に地方の状況を反映させる視点は重要としても、そのことから直ちに地方が公益性の判断主体となるべきとは言えないのではないか。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)