1.日時:平成16年3月10日(水)10:00〜12:30
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
岩原紳作(東京大学教授)
金子宏(東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(宇賀克也東京大学教授、勝又英子(財)日本国際交流センター常務理事・事務局長、加藤秀樹構想日本代表、田中清(社)日本経済団体連合会常務理事は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 佐藤総理補佐官、堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○公益性を取扱う仕組みのあり方について(2)5.議事概要
○公益性を取扱う仕組みのあり方について(2)
[資料1−1 公益性を取扱う仕組みのあり方に係る検討の主な視点(判断要件のあり方)について]
事務局から、資料1−1について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
[資料1−2 公益性を取扱う仕組みのあり方に係る検討の主な視点(適正運営の確保のあり方)について]
- 公益性を判断する際に、事業に着目するということについて、公益法人としてどのような要件が必要かを考える中で、事業にも着目するというのはあってよいだろうが、法人に着目するか事業に着目するかという二者択一はとるべきでない。事業だけに着目するという考え方は、営利企業が行っている公益的な事業をどうするのかという議論につながっていくことにもなろう。
- 営利企業も対象に含めるとすると、資料1−1のP3にある、「営利企業として行うことが適当と認められる性格・内容の事業を主とするものでないもの」ということと矛盾するのではないか。
- 営利企業の事業にも議論が及ぶことがあり得るということであるが、本会議の論点整理の枠外ということではないか。
- なぜ事業のみに着目して公益性を判断するのはよくないかを詰めることが必要。事業のみに着目すると好ましくない効果がある。単に税との関係だけでなく、仕組みがしっかりした法人があると公益的な活動が行いやすくなる、または寄付がしやすくなるといった社会的意義があるとの理由付けができるのではないか。
- 組織や情報開示のあり方、運営の公正性について、ガイドラインを作るなどしてきちんとしたものとすることにより、公益性が保たれるということか。
- 活動実績を公益性の判断要件とすることについて、当初の判断段階で実績を見るのは反対。民間非営利活動の促進という改革の意図にも反しかねない。イギリスのチャリティ登録やアメリカの税制優遇の認定でも実績は見ていないはず。特に助成型財団は、はじめから非課税でないと財務的に成り立たない。活動実績は事後のチェックの段階で判断すべき。
- 定款や寄附行為で社会的な貢献を行うことをうたうだけでなく、予算の中で、こういうことを行うということが活動方針として打ち出されるべき。
- しっかりと定款や寄附行為で名乗りを上げたところは、最初から公益性を有する法人として認めるべき。NPO法人制度はそうした考え方に立っていると思う。また、同じ目的でもそれを達成する事業は千差万別なので、事業のみに着目するのではなく目的に着目してほしい。事業の公益性は経年的に変化するし、地域によって事業も異なるので、事業の幅を狭めて判断すべきでない。
- 課税か非課税かは別として、設立時に公益法人の名前を与えるべき。公益性を有する法人であることの認定と課税上の措置は別物と考えており、公益法人というときに、必ずしも原則非課税であるべきとは考えていない。
- 非営利法人が公益性を有すると判断されるためには、実績とは言わないまでも、計画又は予算の裏付けがあるかどうかを厳格に見るべきではないか。
- 設立後に活動実績を見ないというのでなく、設立時から実績を求められると困るということ。
- 事前・事後の判断ということの他、一次・二次の判断という考えもある。二次的な判断とは、判断主体による判断に不服があるときに、要件の客観化・透明化を求めて裁判所で争うことができるようにするということもあるのではないか。
- 設立時の判断要件は目的、事業、事業計画や予算的裏付け(実行可能性)等ということだが、誰が判断するのか。目的と事業が整合的かどうかというのを課税庁が判断するのは適当でない。課税庁ではない、広い視野を持ち得る主体とすべき。
- 裁判所による判断というのは認められるべきだが、中立・独立の政府機関を設けるとすれば、まずそこに不服審査を行う部門を設けるということもあり得るのではないか。
- 現に2万6千の公益法人があるということを前提に、実際に即した議論をすべき。
(← 現在ある公益法人をどう新しい制度に移行させるかは、今後議論していただく予定)- 今の主務官庁制による自由裁量は問題であり、客観的で明確な判断基準は確かに必要。株式会社のように営利活動中心では困るので、何らかの歯止めが必要。例えば、収益事業の利益の何割かは収益事業のために使ってもよいが、それ以外は本来的な事業に使うべきという基準も設けるべきではないか。
- 公益性を有する法人は、残余財産を分配すべきではない。また、収益事業に対する課税は、営利企業との公正な競争の確保という点で必要。
- 収益事業の利益の何割かを本来事業に使うべきというのはそのとおりであるが、収益事業と本来事業との間の線引きは困難。
- 収益事業か本来事業かは、事業報告の中身で判断できるのではないか。
- 収益事業と本来事業の境界がはっきりしないというのはもっともであるが、工夫すれば仕分けできるのではないか。
- 非営利の法人は利益を求めないという理念はよいが、事業には持続性が必要であり、収益事業を行うのは当然。但し、収益事業を行ったら税を払えばよい。
- 公益活動は収入と支出の面を分けて考えるべき。公益活動は、どうお金を使うのかということと大きく関係し、どうお金を得るのかには関係ない。どう儲けるかは別の部門に任せるのが合理的であり、公益部門と収益部門の2つに分割するということもあり得るのではないか。2つに分割するのが困難であれば、1つの団体の中で分けていかないといけないのではないか。
- 収益部門と公益部門を分け、公益部門は社会に役立つことを行おうとしているので、前者の収益を後者に寄附の形で資金移動させるよう、みなし寄附制度の考え方を適用するということが必要ではないか。
- 収益部門と公益部門を分けて考えると言っても、現実には明確に区分することは難しく、むしろ両者を上手く組み合わせることが求められるのではないか。
- 収益事業と公益事業は密接に関連しており、公益事業部門のみに公益性を認めるのは問題。株式会社でも公益事業を行えるという時代になっている。公益と収益を分けるのは実態上難しい。
- 公益法人の問題は、現在ある2万6千法人をどうするのか、どういう形がこれからの資本主義の中で必要かといった視点なども踏まえて考えるべき。また、公益信託制度との関係なども重要。
- 公益法人と公益信託は密接に関連する。信託銀行は報酬が少ないために公益信託の受託を渋っている。仮に公益法人が公益信託の受託者になり得るとすれば、公益信託がうまく発展する可能性がある。但し、信託業法上は公益法人が公益信託の受託者になれないようだ。
- みなし寄附というのは、営利法人との間の競争中立性を阻害することになるという問題があるということを押さえておくべき。
- 収益事業について、イギリスではチャリティの収入のうちほぼ3割が収益事業から生じている。チャリティ本体が行うと紛らわしく、営利企業との競争の問題もあることから、営利子会社を作っている。営利子会社がギフトエイドを活用して収益事業からの収益をすべて本体に納めている。
事務局から、資料1−2について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。[公益性を取扱う仕組みのあり方全体について]
- 公益性を認定する部門とモニタリングや事後チェックを行う部門と不服申し立てを受ける部門とに分けて考えるべきではないか。
- ガバナンスは必要だと考えるが、小規模な法人に対して、理事会、評議員会、監事等多くのことを要求すると、管理コストがかかる可能性もあるので、法人の規模の大小という問題も考慮すべきかもしれない。
- 大小をどこで分けるのかは難しい。ただ、小規模な法人にあまり細かなことを要求すると制度が機能せず、制度が利用されないということになると思う。
- 理事会と評議員会がそれぞれメンバーを選任し、ガバナンスが機能していない財団も多い。公益性を有しないものならともかく、公益性を有するものについてはおかしいと考える。
- 小規模な法人にも一律にというのは無理かもしれないが、ガバナンスは基本的に重視すべきであり、社会的に信用できる法人の仕組みを設けるべきとの観点からも、重要と考える。
- 公益性を有する場合、ガバナンスは厳格にすべきだが、規模が小さなものも多く、規模に応じた要件が必要。ディスクロージャーは効果があると思うので、できるだけ出す方向がよい。事後チェックは、大々的な組織でがんじがらめにやる必要はないが、問題となる法人をチェックするということは重要。また、設立段階のチェックより、事後チェックが大事。
- ガバナンスという言葉には、@社会的公正性という外の面とA運営が組織のミッションに照らし適当かという内部の面の両方の要素があるのではないか。
- ディスクロージャーについては、HPで公開するのか、商業登記所で公開させるのか、所轄行政機関で公衆に縦覧させるのかといった、開示の仕方が問題。HPでの公開内容の真実性をチェックできるのかといった問題もある。事後チェックについては、誰がチェックするかが問題。
- NPOにもおかしいものがあり、事後チェックと言っても、数ある法人を全てきちんとフォローすることはコスト面からも不可能。悪い法人がでてくれば、それを罰するという一罰百戒という考え方でいくしかないか。性善説に立たないと無理ではないか。
- 性善説に立つことには賛成。全ての悪を予防することは困難。また、中央集権的なチェックには行政コストがかかるので、地方レベルで判断を行い、民間の参加を求めることによりコストを下げるという視点が必要。
- 事後チェックは重要で大変な作業だが、仮に設立時の判断に実績の要素をあまりいれないとすれば、なおさら重要となる。毎年のチェックは無理でも、数年に1回チェックするとか、問題であると申し出があったところにチェックするとかの方法もある。柔軟性を阻害しないようにしなければいけないが、事後チェックは必要。
- 実際には内部告発があったところしか、問題があることはわからない。このような法人にチェックを行うということになるのではないか。
- 現行制度において、公益法人の指導監督がどれだけの人数で行われているのかといった実証面からの検討が必要。
- 法人の自律性との関係で、どの程度ディスクロージャーを求めるのか難しい。何でも情報開示させるのではなく、少しは法人の自律性に任せるべきではないか。例えば、公正性を徹底すれば、福祉関係サービスの給付対象を選定する基準まで開示するということになってしまう。
前回及び今回の議論を踏まえ、公益性を取扱う仕組みのあり方全体について、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
- 現行制度でも国所管の法人が3割で7割が地方。地方をどうするかを考えていく必要がある。
- 情報開示について、寄附するかしないかをHPを見て判断する人はいるのか。経理をきちんと見ることができるのか。
- HPへの掲載要件が必要。
- 事後チェックについては、多元的なモニタリングシステムもあるかもしれない。例えば、判断主体以外に、各種の団体にモニタリングの役割を担ってもらうという考えもある。
- 事前に公益性を有しているかを判断する部門と事後チェックを行う部門の間で、何らかのけん制が働くような仕組みが必要ではないか。
- 課税庁が公益性を判断するのは難しいという議論が出ているし、閣議決定でも主務官庁制は問題だとされている中で、国が独立的な第三者機関を設立するということを打ち出すべきではないか。現に公益法人の指導監督を行っている人を集めて、一元的な判断主体を設立することが望ましい。また、これに民間の人たちが協力する仕組みも考えられると思う。
- 米国型の行政委員会は、日本では機能しなかったとされており、その理由として憲法上の問題も指摘されているが、学説上、三権分立には反しないというのが通説。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)