○:委員
●:事務局

第5回 公益法人制度改革に関する有識者会議

−議事録−


平成16年2月23日(月)9:30〜12:30
場所:虎ノ門第10森ビル3階 会議室

○ おはようございます。これから第5回公益法人制度改革に関する有識者会議を開会したいと存じます。
 お忙しいところ、いつも朝早くから御熱心にお集まりいただきまして、誠にありがたいと存じております。
 今日は、田中清委員が少し遅れるということでございます。それから、岩原委員も遅れる可能性がございまして、宇賀委員は御都合により途中で退席されます。
 本日の議事、配付資料について、事務局からの説明を先にいたします。

● 本日の議事次第について、まず御紹介申し上げます。
 最初に、非営利法人ワーキング・グループの検討状況報告について、ワーキング・グループの能見座長から御説明いただきまして、質疑応答、意見交換を予定してございます。
 その次に、前回十分できなかった残りの部分について御議論いただきたいと思っております。新たな非営利法人制度における公益性の位置付けについての御議論でございます。
 それから、公益性を取扱う仕組みのあり方について、初回の御議論でございますが、本日は基本的考え方、判断主体のあり方につきまして御議論いただければと思っております。
 本日は、3時間を予定してございまして、12時半までを考えてございます。
 それから、配付資料でございますが、資料1と資料2は、それぞれワーキング・グループの検討状況、それから、公益性の位置付けに係る主な視点ということで、これに対応してございます。
 資料3につきましては、3−1から3−4までございますが、本日は資料3−1と資料3−2、基本的考え方と判断主体のあり方の部分まで御議論いただきたいと思っております。資料3−3と資料3−4につきましては、次回の御議論ということで、本日はあらかじめお配りさせていただいております。
 それから、参考資料でございます。3つ挙げてございますが、1つは、主務官庁制の概要ということで仕組みを1枚にまとめてございます。
 参考資料2としまして、各法人制度の比較表ということで、現行法人制度、公益法人、NPOあるいは学校法人などの特別法に基づく法人、中間法人、それぞれにつきまして、比較表をつくってございます。若干、内容を紹介させていただきますが、1ページ目の表1とあるものが、いわゆる公益性の有無の判断要件として参考となると考えられる規定を挙げてございます。
 表2、4ページ目からでございますが、これは公益性が維持・確保されているかという観点からの判断要件として考えられるもの。
 7ページ目から表3というのは、法人の適正運営の確保を図るための規律について参考となると考えられる規定ということで、それぞれ挙げてございます。御参考にしていただければと思います。
 参考資料3につきましては「公益性の要件に関する参考データ」ということで、本年度の公益法人白書から抜粋してございます。
 一番最後の資料でございますが、資料番号を特に振ってございませんが「公益法人の設立・運営・監督の手引」というところから抜粋いたしました。現在、法人の設立許可の申請を行うときに、主務官庁によってどのような資料が求められるかということを手引から抜粋したものでございます。主務官庁制の弊害を避ける観点からの御議論をいただく際の御参考になればと思っております。

○ それでは、今日は非営利法人ワーキング・グループをずっと開いていただいていて、もう既に5回になるわけですね。これまでの検討状況について、能見先生から御報告をいただくということを最初に予定しているわけですが、その前に、事務局から改めて、この有識者会議を設置するに至る基本となる閣議決定というものはいかなるものであるかということについて、もうちょっと御理解をいただくべく御説明をしたいという申出がございました。したがいまして、まず、事務局からその説明を聞いた上で、能見先生のワーキング・グループの中間報告をいただきたいと思っております。
 それでは、事務局、どうぞ。

● どうも恐縮でございます。前回会合でも、星野先生からのお話を伺った後、当会議の議論の前提条件とか基本的なスタンスについて御議論があったわけでございます。本日この後、ワーキング・グループの検討状況を初めて報告していただくということで、この際、再確認の意味でもう一度、閣議決定についての事務局としての考え方を説明させていただきたいということで、お願いした次第でございます。
 お手元に、閣議決定の本文2枚刷りと1枚紙のイメージ図を本日の資料とは別途配付してあると思いますので、それに基づきまして御説明申し上げます。
 閣議決定でございますけれども、昨年6月に決定されました。これが我々の有識者会議の議論の出発点ということでございます。そこに書いてございます1番目につきましては、背景とか問題意識といったものをまとめたものでございまして、御説明は省略させていただきます。
 ポイントは2番目、1ページ目の下の方でございますけれども、新たな非営利法人、これが基本的な枠組みを規定しているものでございます。
 (1)でございますが、一般的な非営利法人制度の創設について、現行の公益法人制度が法人格の取得と公益性の判断、税制上の優遇措置が一体となっているということで、さまざまな問題が生じている。このため、2ページ目に移りますけれども、法人格を一定の優遇措置と分離し、公益性の有無に関わらず新たに非営利法人制度を創設するという、これが閣議決定の唯一の決定事項でございます。この非営利法人制度というのは準則主義、登記によって簡便に設立できるものとする。そのガバナンスについては、その他の中間法人、非営利法人等を参考にするということでございまして、また、その下でございますけれども、現行の公益法人制度の問題点を踏まえた検討を行い、中間法人制度あるいはNPO法人制度との関係を整理するということでございます。
 もう一つ、(2)でございますけれども、非営利法人における公益性については、そこにいろいろな留意事項を書いてございますけれども、基本的には引き続き検討するという事項になっておりまして、新たな非営利法人制度の創設については決まっているのですが、実はそれをベースにした、公益性の判断のあり方あるいは新たないわゆる公益法人制度といったものについては、引き続き検討すると。
 そして、3のところにございますけれども、更に、それにかかわる税制上の優遇措置についても引き続き検討するということになっているわけでございます。
 こうした閣議決定を簡略に説明したのが1枚紙でお配りしておりますイメージ図でございます。左側が現行の体制、それから、右側が新たな制度の考え方になっておりますけれども、基本的に公益性の判断を切り離した準則主義で簡便に設立できる非営利法人を創設するという、これが閣議決定での決定事項でございまして、現在、一番上の新たな非営利法人制度についてワーキング・グループに依頼をして、能見先生を始めとした法学者の先生を中心に、法制度の専門的観点から具体的な内容をお詰めいただいているという状況でございます。
 それから、2番目の公益性の判断、要するに、新たなそういう非営利法人制度をベースにして、そこでどのような新たな公益法人制度をつくったらいいか、これについて、いろいろな基準の問題でありますとか、あるいは判断の主体の問題といったものを大きな枠組みとともに内容を詰めていただこうということで、これが主としてこの親会議での検討事項にさせていただいているということでございます。
 そして、一番下の税との関係でございますが、これはまさにこれから中間的な議論の整理をこの会議でしていただいた後、4月以降に政府税調と連携をとりながら議論を進めていこうとしておる課題でございまして、この前も御議論がございました原則課税なのか非課税なのかといった問題を含めて、4月以降に税調との間で議論を進めていくことになるということでございます。
 一応、簡単でございますけれども、私どもの基本的な閣議決定の考え方について御説明申し上げました。

○ それでは、会議に戻りたいと思います。
 今、御説明のように、準則主義によって非営利法人という新しいカテゴリーのものを法的に認めるということについては、ほぼ各界の合意というのはあるのではないかと思いますが、1つそこで問題になってくるのは、それでは、同じレベルにあります中間法人、NPO法人等とのすり合わせはどうなのかということについては、まだ皆様との深く突っ込んだ意見の交換はないわけですが、とりあえずここの場では、新しく創設される非営利法人制度についてお話をいただいて、その以後に、その問題のすり合わせというようなことについては処理をされるべきではないかと私は考えております。もし、御賛同いただければ、大体そのような議論のやり方をしていただければと思っております。
 本日の議事でございますが、最初に御案内いたしましたとおり、新たな非営利法人制度のあり方について、本会議と並行しまして、非営利法人ワーキング・グループで熱心に検討していただいております。公益性を取扱う仕組みのあり方ということを今日から論議するわけですが、その前に、能見先生から皆様に、この非営利法人ワーキング・グループは今までいかなる検討を進めてきたか、大体どんなところまで到達しているかということについて、レクチャーをしていただきたいと存じております。よろしくお願いいたします。

◎能見委員 それでは、皆様のお手元にある「非営利法人ワーキング・グループにおける検討状況について」という紙に基づいて御説明したいと思います。
 この紙は、ある意味で我々が議論した内容を淡々と書いてあるものでございまして、この背後には、実は基本的なスタンスとして非営利法人制度というのをどういうふうにつくったらいいかということについてのかなり激しい議論がありました。そういう背景の議論も御説明しながら、大体このペーパーに沿って説明していきたいと思います。
 先ほど、閣議決定でどういう前提に基づいてこの非営利法人制度を考えるかということについての説明が事務局からございましたが、ちょっと確認させていただきますと、先ほどの閣議決定の2枚目のところによく表れていることでございます。法人格取得と税の優遇という問題を分離するという点はともかくとして、その後の2ページ目の一番上の行ですが、公益性の有無に関わらず新たに非営利法人制度をつくる、とあります。要するに、公益的な活動をする団体、それから、必ずしも公益的な活動をするわけではないけれども、非営利を目的とする団体の両方を含めるという制度。それから、次の3行目辺りに書いてありますが、民間の非営利活動を促進するために準則主義をとるという点、この2つがある意味で非常に大きな柱でございます。ただ、この柱のもとでも、かなりいろいろなニュアンスの違う考え方がありえますので、これを先ほどのレジュメに沿って御説明したいと思います。
 第1の総論でございます。これがある意味で議論の出発点であったわけですが、この非営利法人制度というものをつくる意義は一体どこにあるのか、あるいはどういう基本的な考え方、すなわち理念に基づいてこれを考えるべきか、という点が議論になりました。この問題が非常に難しいと我々が考えましたのは、一方で、公益的な活動をする団体を含む、これが法人格を取得する場合のことを念頭に置きつつ、他方で、公益とまでは言えない、非営利の目的の団体も含むのだというように非常に広い範囲の団体を含めますので、その全体を統一する基本的な理念というものがあり得るのか。あり得るとして、どういうところにそれを求めることができるのかというのが、ここで議論された内容でございます。
 この書き方は「理念的なアプローチ」というところに3つほど書いてございますが、このレジュメだけを御覧になってもなかなか分かりにくいかもしれません。これは説明を要する点ですけれども、ここで主として議論されたのは、今言いましたように、公益ではない非営利の団体と、他方で、公益の活動をする団体を両方含めて1つの法人制度にまとめるときに共通の理念があり得るのか、それに積極的な意義を与えることができるのかというところが議論になりました。@の考え方は「非営利の法人の自由な設立を認めることにより、社会を活性化し、文化と科学の発展を図り、併せて福祉の増進を図る」。いろいろなことを羅列しておりますが、狙いはどういう活動をするのかという言わば活動の内容について、1つの基準ができないかを書こうとしたものでございます。社会を活性化するというのは、ある意味で非営利法人一般について言えることですし、文化・科学の発展とか福祉の増進というのは、公益的な活動をする団体について当てはまることでございます。これを積極的な活動の内容の観点から、何とかまとめることができないかというのが@でございます。
 Aは、言わばその反対の極にある考え方でして、その活動の内容という観点から、統一的な基準というものを作ること、つまり非営利法人と公益的な団体等をまとめて積極的な内容を与えるのは難しいのではないかと、という考えに基づくものです。それよりも、もう少し抽象的なレベルというのでしょうか、あるいは形式的なレベルで公益および非営利の統一的な考え方をすることができないだろうかというのがAでございます。ここに書いてございますように「営利を目的としない民間団体に一般的に法人格取得の機会を与えることを通じ、人の結合体の自由活発な活動を促進する」、この一番最後の部分がある意味で重要なわけですが、要するに、どういう内容の活動をするかというのではなくて、もうちょっと抽象度を一段高めて、非営利法人の意義を自由活発な活動を促進する人の結合体というレベルで捉え、そういう活動をする際の便宜のために法人制度をつくるというのがAでございます。
 Bは、@とある意味で似たところがございまして、非営利法人制度でつくられる法人が行う活動に着目して、私人の公益的活動の支援とか生活世界の充実、民間非営利活動の促進、@よりはちょっと抽象度が高いと思いますけれども、非営利法人が行う内容のレベルで何とかまとめようとしたものでございます。しかし、少し分かりにくいのは「非営利法人制度を創設する主たる目的は」と書いてあります。要するに、従たる使い方があるのだということが示唆されているわけですが、これは我々の議論の中では、非営利法人制度はいろいろな使われ方をするであろうが、それはそれで構わないのではないか、という議論がありました。例えば、資産流動化の器として使われたり、要するに、単に財産管理をするための法技術として使われる場面がある。非営利法人の活動は、多くの場合にはここに掲げたような主たる目的のどれかに当たるかもしれないけれども、それ以外の使い方もあるので、主たる目的はここにある、しかし、それ以外の使い方を排除する趣旨ではなく、従たる使い方というものも許すのだというのがBの考え方でございます。
 こういうふうに、@からBの中にも、実はその背後に隠れているいろいろな考え方の対立がございました。このうちのどれがよいのか、まだ議論の統一はできておりません。A辺りが適当なのかもしれないと思っておりますが、そういうふうに議論が収束するかどうかは分かりません。
 さて、今の問題がある意味で非営利法人と公益法人というものをまとめて1つの制度にしたときに、どういうふうに考えたらいいかということに関連する議論だったわけですが、次の「非営利の概念」というところは、今度は営利法人と非営利法人との区別をどこに設けるかという問題でございます。
 非営利法人というのは御承知のように、構成員には利益を分配しないということを基本的な中身とする制度でございます。営利法人の方は利益を分配することをまさに目的とする。現在要求されているのは、その利益を分配しない非営利法人ですので、その基本的な考え方に基づいてこの法人制度を考えるとすれば、更にどんなことが具体的に出てくるかということで、@にありますように、社員は出資の義務を負わない。これは出資の義務を負いますと、そこに持分のようなものが発生いたします。持分があるということは、またそれを譲渡したり、換金したり、要するに営利につながりますので出資義務は認めない。A法人が対外的な活動によって得た利益の分配を受けない、これは先ほど言いました利益の分配をしないという一番中心的な部分です。それから、残余財産分配の請求権はない、権利としてそういうものはない。ただ、後で述べますように、定款ですとか社員総会の決議によって財産を最後に分配するということは構わないとされております。これは現在の中間法人でも同じでございます。そして、Cはある意味で全体のまとめということになるでしょうか。法人の財産に対する持分は有しないこととする。こういう内容で非営利法人の基本的な性格、具体的な中身を考えていこうというものでございます。これも細かいところは異論があるかもしれませんが、この点についてはそれほど異論はございませんでした。
 事業のところは後で御質問があれば御説明いたしますが、今の説明では省略いたします。こういうふうに非営利法人制度というものを基本的に構築していきますと、まず最初にぶつかる問題は、現在の中間法人制度との関係がどうなるかということでございます。これは、我々のワーキング・グループの中では基本的に勿論両者はぶつかるといいますか、両方の法律が存在するということは恐らくあり得ない、両方を調整して非営利法人制度というものをつくるということになるだろうと考えております。現在の中間法人では足りない点が何かあるかどうか、あるいは現在の中間法人では使いにくい部分があるのではないか、それを削って今度の新しい非営利法人制度としてまとめるのがいいのではないかと考えております。
 具体的には、例えば、最低基金制度などは要らないのではないかというのが多数意見でございますが、これはまだなお検討する予定でございます。
 基本的な考え方は、繰り返しになりますけれども、非営利法人制度というのは非営利の活動を自由に、柔軟に行うことができるようにするということが狙いでございます。したがって、制約が多過ぎては意味がない。株式会社などの営利法人との比較においても、この辺は私の個人的な意見も入りますが、それよりも一層自由で柔軟な団体である必要があるだろうと。ただ、利益を分配しないということが基本的な柱ですから、それから来る制約は勿論ございます。しかし、それ以外の点では、商法の改正と比べても柔軟な制度になる必要があるのではないかと考えております。
 次の第2、そこで具体的に非営利社団法人について申し上げます。財団法人というのは別途考えられるわけですが、これは後で申し上げます。社団法人につきまして、具体的にその中身、設立から社員、管理、計算と幾つかの項目について一応議論いたしました。
 ここでも細かいレベルではいろいろな規制、法律のつくり方が考えられるわけですが、やはり基本的な理念は、先ほど申し上げましたようにできるだけ自由度を大きく、言ってみれば、自分たちの自治でもっていろいろなことが決められるようにしようということで、非営利法人制度をつくるのがいいのではないかと考えております。これは閣議決定の中でも民間の非営利活動を促進するためということが出ておるわけですから、その理念に従っていくということでございます。
 ただ、難しい点は、これから作られる法人制度では、公益的な活動をする団体についても、この非営利法人制度というものが一応は適用されます。これは、いわゆる第1段階でだけで法人制度ができる場合は勿論のこと、2段階ということで上に公益法人の制度ができるにしても、まずは非営利の法人制度が適用されて、公益的な活動を目的とする団体も、この非営利法人制度の下で法人格を取得することになります。したがって、公益的な活動をする団体のことを考えますと、うまくそこでも使えるように、そういうことも考えておかなくてはいけないというのが一方にあります。しかし、この点については、まずは非営利法人制度をつくった後でもう一度検討しようと考えています。すなわち、公益法人制度というものをつくるということがこの親会議で決まった場合には、もう一度非営利法人制度検討のワーキング・グループで見直しをしようと考えております。まずは自由度、自治というものを重視して非営利法人制度を考えていこうというものでございます。
 先ほども言いましたように、そういう観点からしますと、設立の段階の1つの障害になっております最低資本金といいますか、中間法人などで要求している最低基金といったものは無い方がいいのではないかという議論が有力ですが、そして、会社法でも現在、最低資本金制度を見直す、こういうものは無くてもいいという考え方が有力に主張されていますので、その議論もにらみながら考えていこうと考えております。ただ、我々の多数意見は、こういう最低基金というものは無くてもいいのではないかという方向にあります。
 それから、社員につきましては、重要な点は社員の責任は有限責任とするという点であります。現在の中間法人法の下では、無限責任の中間法人というのが設けられておりますけれども、これは要らないのではないかというのが大勢でございます。なぜならば、この無限責任中間法人というのは、中間法人制度において300万円の最低基金を要求して、そういう最低基金を設けた中間法人だけが社員の有限責任が認められるということから来るものであります。そして、300万円の基金を積まなかった法人には有限責任が認められない、無限責任中間法人という形でしか法人格が取得できないということになっていたわけですが、先ほど申し上げたように、最低基金制度というのは無くてもいいのではないかということになりますと、この無限責任タイプというのは自ずと不要になるということでございます。
 それから、細かいところは省略いたしまして、次の管理でございます。これもかなり技術的な問題ではあるのですが、法人の仕組みとしては重要な問題だと考えております。ここで考えておりますのは、社員総会あるいは理事、理事会といったものにどういう権限を与えるかという問題でございます。
 ここでも2つの考え方がありまして、@の考え方は社員総会、この言葉に相当ニュアンスが入っているんですが、社員総会というのは「最高(万能)の意思決定機関」であると。要するに、社員総会がすべての権限を一応持っている。理事は執行機関として存在するけれども、社員総会が何についてであれ最終的な決定ができるのだという考え方でございます。現在の民法の公益法人が、そういう考え方に基づいております。
 ただ、これは社員の数が非常に多いということになりますと、なかなか社員総会で最高の意思決定をするというのは難しい場合もございますし、こういうタイプしか認められないというのは、かえって先ほど申し上げた非営利活動の柔軟な展開というものには向かないのではないかと思います。そこで、Aという考え方がでてきます。すなわち、社員総会にすべての最終的な権限があるという考え方のほかに、基本的な事項については社員総会で決定するけれども、それ以外の事項については理事会の方にむしろ意思の決定権限があるとするものです。そして、理事会は同時に、執行機関としての代表理事を言わば監督する機関であるというものです。どちらの考え方がよいのか、これは、まだいろいろ議論している最中でございますが、いずれにせよ基本的な考え方は、こういった問題は基本的に団体の構成員、その団体が自分たちとしてはどういう制度にしたいとかということを自由に決めればいいではないかという方向で議論しています。ただ、自由に決める際に、こういうモデルがありますということを示す上で、こういうタイプを幾つか法制度として設けておくことには意味があるのではないか、そんな考え方で現在議論が進んでおります。
 それから、管理の(3)でございますが、さらっと書いてございますけれども、当然のことながら非営利法人制度というのは準則主義で設立されますので、ガバナンスはしっかりしていなくてはいけないだろうということで、法人に対する理事あるいは監事の責任ですとか、第三者に対する責任については、商法などの規定と同じように、かなり重い規定を置くことがいいのではないかと考えております。重いといいましても、大体中間法人と同じ規定になるのではないかと思われます。
 計算については省略させていただきます。あるいは計算と少し関係いたしますが、定款の問題とも関係しますけれども、情報開示というものをどの程度するかという問題も1つの大きな問題でございます。計算書類ですとか、定款ですとか、あるいは社員名簿といったものを開示するのかどうか。非営利法人制度というのは、先ほど言いましたように、基本的に社員の有限責任の下で設立される法人であります。そうなりますと、非営利法人と取引をする相手方からすれば、どういう財務状況にあるのかというようなことについては、やはり知り得た方がいいだろうということで、計算書類などについては当然、一定の開示をするということになります。商法の規定で大体開示についての考え方が明確に出ておりますので、それと大体並ぶような開示制度にするということになるのではないかと思います。
 定款についても同じことであります。
 社員の名簿につきましては、プライバシーの問題ですとかいろいろ微妙な問題がありますので、非営利法人におきましては、そこまで開示しなくてもいいのではないか。ただ将来、公益的な活動をする法人というものを考えるのであれば、そういう法人については別途要求することがあり得る。公益法人については積極的に開示しなくてはいけないという考え方になるだろうと思われます。しかし、ここで言う非営利法人では、そこまでは要求しないということです。
 それから、6の残余財産の分配でございますが、これは先ほど説明いたしましたように、権利としては各構成員は残余財産の分配請求権を持っておりません。これが権利として存在するということは持分があるということになりますので、そういうものは認めない。しかしながら、社員総会の決議ですとか、定款でもいいというところがちょっと微妙なところですが、これによって残余財産を社員に分配するということも可能だと考えられております。これも先ほど言いました中間法人とその点は大体同じ並びにいたしました。
 さて、大体大雑把な点は以上のとおりでございますが、なお、ここに書いていない幾つかの問題について御説明したいと思います。
 1つは、非営利法人制度の問題として、もう一つ財団法人という制度をどうするかということがございます。これは現在、ちょうど議論を始めたところでして、まだ御紹介する内容は無いのですが、議論の1つの焦点は、非営利の財団というものを認めるかどうか、それを準則主義で認めるということにするかどうかという点でございます。これはニーズが無いわけではございません。例えば、ある企業グループの社員のための厚生福利施設、これはその企業だけに限定されていると、公益財団法人というわけには恐らくいかないであろうと。しかし、一種の非営利の財団というものを認めれば、これによって今のような社員のための施設あるいは財産というものを確保するということは考えられるだろう。あるいは県人会とか、県人会ぐらいですと私は公益法人でもいいのかと思いますけれども、特定のグループのための財団法人というものがあってもいいのかもしれないと考えております。
 ただ、他方で、財団法人が公益であれば問題はありませんが、非営利の財団法人ということになりますと、例えば、家族世襲財産みたいなものをつくろうと思えばつくれないわけでない。そうすると、財産がそこで固定化されたり、いろいろ問題点が無いわけではありません。そこで、この非営利の財団法人をどうするかについては、なお、検討する予定でございます。ただ、今の家族世襲財産のようなものに対する懸念は、税金が掛けられれば恐らく解決できると思いますので、そんなに心配しなくてもいいのかもしれません。
 以上が財団法人の議論ですが、2番目に、これは十分にまだ我々も議論しておりませんけれども、この親会議との関係で言いますと、非営利法人制度をつくった後で公益的な活動をする団体についての制度を設けるときに、どういうふうに非営利法人制度とつながっていくのかという問題でございます。これは公益法人制度というものを2階建てでつくるかつくらないかにかかわらず検討しなくてはいけない問題で、先ほど述べた非営利法人制度というのは、かなり自由な活動、私的な利益であっても非営利の利益であれば自由に活動できる、そのための団体でございます。そうすると、その非営利法人制度の要件を満たしているだけでは、公益的な団体としての資格がまだ十分ではないのではないか。例えば、税の優遇措置を受けたいというときに、ここの非営利法人だけではまだ難しいかもしれない。例えば、残余財産の分配などというのは一切認めないというふうにしたり、あるいは開示をもっと徹底して要求したり、いろいろな点が考えられます。そのいろいろな点というのを法律の中に書くのか、あるいは課税庁などが税の優遇措置をする際の条件としてそれを列挙し、それを満たしたものが非営利法人制度の中で税の優遇措置を受けるという形になるのか、こういう問題があります。これは、またここで御議論いただける問題だと思います。
 それから、まだ全く議論しておりませんけれども重要な問題として意識しておりますものは、現在の公益法人からどうやって移行するかという問題でございまして、これは恐らく別途に検討しなくてはいけない重要な問題です。
 以上、ちょっと時間をオーバーしましたが、要点のみの御説明ですので、御質問があればお答えしたいと思います。

○ いえ、中身が濃いですから当然のことでございます。
 ただいま能見先生からワーキング・グループのこれまでの成果について御紹介いただいたわけですが、御質問があればどうぞ。

○ 資料1の1ページ目の非営利の概念のところなのですが、ここに社員は出資義務を負わないということを1つ定義として述べられているのですけれども、最近のNPOの活動、○○委員のところも関係があると思うのですが、出資型のNPOの活動というのが増えていまして、これはワーカーズ・コレクティブとか、それから、市民出資による銀行のようなものがそれに該当します。この定義に基づきますとこれらの活動に従事する組織は非営利ではないとなってしまうのですが、出資型のNPOについてはどのように捉えたらいいのでしょうか。

◎能見委員 これは、法律の制度としては出資義務を負う制度にはしないということでありまして、その団体が社員に出資してほしいということで出資を義務付けること自体は構わないと考えています。ただ、出資をしてもそれは持分にはなりません、そういう考え方でございます。法人として、その活動のために一定額が必要だと言うことで出資を求める際には、社員から求めるのが実際的だと思いますし、そういうものを否定するわけではありません。しかし、すべての非営利法人に社員の出資義務を負わせるのではありませんので、法律制度としてつくるときに、法律の条文を念頭に置いたときに「この法人の社員は出資をするものとする」というような条文は作らない。でも、定款で出資を要求することは構わない。

○ 余計な話ですけれども、今、中間法人で300万円の基金の拠出義務がありますね。どうして500万円ではないのか、どうして200万円ではないのかという議論もあるわけですから、それで究極のところ、基金拠出義務は無くてもいいのではないかという議論も成り立つという御紹介だと思います。

○ この新しい制度をつくる目的の一番基本に、より自由に、今よりも柔軟にこういう活動ができるようなシステムをつくろうということですよね。そうすると、特別法は別にして、NPO法も同じような考えですよね。NPOは、世の中の注目を浴び、数が増え、今の我が国では2万に達するのでしょうか、膨大な数になっていますよね。しかし、新しい考え方は、既存の2万7,000ぐらいある公益法人をカバーし、移行させるということだと思うのですけれども、そうすると、どっちがより自由で、より柔軟な制度になるのでしょうか。これができれば、今のままだったらNPOでやろうと思った人も、いや、こちらの方が面白いかもしれないということかもしれないし、今NPOになっている諸君も、場合によってはこっちに移行することがあるかもしれないし、無いかもしれない。分からないけれども。この競合関係があってもいいと思いますけれども、将来、5年か10年先にNPOも吸収するというならまた別ですけれども、一応別にスタートするとするならば、先生はどういうふうにNPOよりも魅力的な存在にしようと考えていらっしゃるのか、そこは余り考えていないということなのか。

◎能見委員 これは人によって違うかもしれません、私はNPOはむしろ公益的な活動をする団体の性格を持っているのだろうと思うのです。したがって、例えば開示とかそういうものはある意味で徹底的にしなくてはいけない。それから、事業の報告だとかそういうものも必要かもしれない。だけれども、非営利法人制度というのは、私的な利益、自分たちの利益を追求する団体でありまして、開示というのもそんなに徹底すべきものではないのではないかと考えております。そういう意味で、勿論NPOの活動をしている団体がこの新しい非営利法人でやりたいというのは自由ですし、場合によっては株式会社でやりたいという法人だってあるでしょうし、そこの移行は自由だと思いますけれども、理念的には少し違うのではないかと思います。

○ ○○委員の御質問は、新しい非営利法人で法人格を取得して、公益性を有して何らかの優遇措置が与えられたものとNPOとはどうかという御質問だと思いますが。

◎能見委員 それは、むしろこの親会議で議論すべき問題だと思いますけれども、ただ、私の個人的な意見かもしれませんが、願わくは、できるだけNPO法人に近いような公益法人制度ができると本当はいいのではないかと思います。

○ それでは、とりあえずここまでいろいろ議論していただいたと。しかし、今お話しのように、一定の結論が出たという状況ではございません、という理解の上に、親会議の方も進めさせていただきたいと存じます。ワーキング・グループは当然、財団でありますとか、そのほか残ったテーマについていろいろ意見を交換して、また、それを検討していただくことになるわけですが、ここでは新たな非営利法人制度における公益性の位置付けという問題について、今ちょうどたまたま○○委員の御質問の部分でございますが、前回少し時間切れの点もございましたので、引き続いて御議論いただきたいと存じます。公益性を有する非営利法人の捉え方の部分については前回議論したわけですが、特に星野先生は、公益性を有する非営利法人については、社員及び役員以外の不特定多数人の利益を図ることを目的とし、かつ、営利を目的としないものと定義した上で、公益活動を推進するために必要な限りにおいて、社員、役員、そのほか当該公益活動に参加する者の能力の向上、社員の懇親、同種の法人との連絡、そのほかの事業を行うことができることとするという旨の試案を述べられたわけであります。このような考え方も踏まえて、現行の公益法人の指導監督基準というのがありますが、その指導監督基準の規定も念頭に置きながら、公益性を有する非営利法人の捉え方、その部分について今から御議論をいただきたいと存じます。どうぞ御意見がございましたら、お願いいたします。
 それでは、今たちどころには無いようですので、時間がもったいないので、戻っても結構でございますから、引き続きまして、公益性を判断する意義、つまり非営利法人として準則主義で認められたものについて、公益性のありやなしやということを判断する意義について御議論をいただきたいと存じます。この問題は、公益性を取扱う仕組みの、つまり誰が公益性を判断するかとか、それから、その公益性とはどのように処遇されていくかとか、そういう仕組みのあり方につながっていく部分でありますけれども、極めて基本的な部分になりますので、十分に御議論をいただきたいと思っております。いかがでしょうか。

○ 先ほど○○委員の御説明にございましたように、非営利法人制度を準則主義でつくるということによって、民間非営利法人活動が活性化するという中で、その民間非営利法人の中でも特に公益性のある非営利法人の活動を推進するあるいは奨励するということが、日本の社会あるいは国民生活にとっていいことであるという基本的な認識をまず持った上で、その活動を活発化するあるいは奨励する対象として、公益性のある民間非営利法人を抽出するということになろうかと思います。その公益性のある民間非営利法人の公益活動を促進・奨励する政策を法律的な制度としてつくる上で、そのために公益性のある公益法人をどうくくり出していくか、定義するかということになろうかと思います。従来、判断者の裁量といった問題があったわけでございますけれども、くくり出す上でどう定義するかということになると、まず、判断者の裁量を極力避けて、できるだけ客観的で、国民にとって分かりやすい規定をつくってくくり出す必要があるのではないかということになろうかと思います。そのためには、公益活動を行う公益非営利法人についての団体としての目的と、その事業内容と、それから、組織要件と申しますか、規律と申しますか、その3つについてできるだけ具体的に、誰が見ても分かるような形で規定していくということが望ましいのではないかと考えております。これから議論されます判断主体がどうなるかということにもよりましょうけれども、どういう判断主体になるにせよ、できるだけ判断者の裁量という部分は少なくして、できるだけ規則で明文化してはっきりしておくということが必要ではないかと考えております。

○ ありがとうございました。
 今の○○委員の御発言は、先ほど○○委員の方のワーキング・グループで最後の方に出てきました組織の統治の在り方、簡単に言うとガバナンスのようなものも全部含んでのことでございますね。

○ そうですね。

○ ○○委員から御報告がありましたとおり、ワーキング・グループの方では非営利法人のことを検討しておりまして、キーワードが「非営利」なんですけれども、こちらの有識者会議の方はキーワードが「公益」ということで、いつも頭を切り替えなければならないと思っているのですが、そのうちだんだん両方の議論が一緒になってくるのではないかと思っておりますが、先ほど、○○委員が最後に言ったことは、私の誤解かもしれませんが、公益法人を切り分ける場合には、NPO法人が模範になるのではないか、個人的な意見としてそうではないかとおっしゃったように思ったのですが、そうではないですか。

○ もし仮に、公益活動をするタイプの法人というものを考えるということになれば、それにふさわしいいろいろな組織のあり方というものがだんだん決まってくるのだと思いますけれども、そのときにNPO法人というのが1つのモデルにはなるであろうと。それと大きく違った公益法人をつくったときに、なぜそこは両者違ってくるのかとか、いろいろ難しい問題が出てきますので、できるだけそれに近づける方がいいのではないかという趣旨でありました。

○ その点は、まだワーキング・グループでは議論をしておりませんね。私は税制の専門家ですので、ついそちらに頭が行ってしまうのですが、非課税にするとなると、よほど内容のしっかりした法人でないと、なかなか非課税扱いにはしがたいのではないかというのは普通の考え方だと思いますので、その辺を公益法人を切り分ける場合に、公益法人にもそれでは2段階あるのかどうかとか、いろいろな考え方が出てき得るのではないかと思いまして、難しい問題だと思います。前から2階という比喩が出ておりますが、2階に上がるための要件をどう定めるかということが、この有識者会議で今後大きな問題になっていくと思うのですが、その要件の定め方が余り緩やかだと、すぐそれによって非課税というわけにもいかないということになるのではないかと思います。そうなると、2階に更に奥の部屋をもう一つつくるかどうかという問題も出てきたりしますので、そこは本当に難しい問題で、よく議論していただきたいと思っております。
 それから、もう一つ、最初に事務局からお話があった点で、非常に重要だと思ったのですが、イメージ図でございます。非営利法人の設立に当たっては、各省庁ではなくて準則主義であると。ですから、各省庁の判断は働かないということになりますが、公益性の判断に当たっては、特定の主体が判断するということですが、これは特定の委員会とか単一のと私は考えたのですけれども、各省庁ではないという意味合いがここに含まれていると考えてよろしいでしょうか。そして、それが閣議決定になっていると、希望的観測ですけれども、そう読んでよろしいのでしょうか。

○ これは私がお答えすべきことではないのですが、今、各省庁別に判断がなされているところに問題があるわけでございまして、単一の委員会になるかどうか、それはまた別のこととしまして、できるだけ単一的な組織でもって、しかも、その判断が不透明な判断ではなくて、国民の誰からも、これだったらなるほどと納得ができるような基準がなければいけないというふうに考えております。それでよろしいですか。

● はい。少し付け加えますけれども、基本的には、今、○○委員がお話しになったとおりなのですが、今の公益法人は基本的に主務官庁制でやっておるのですが、それを改善しようというのが基本的な発想でございます。しかしながら、この主体も単一のと今おっしゃいましたけれども、例えば今はNPOですと所轄庁が認証しています。これは国ベースですと内閣府が認証しておりますが、地方ベースになりますと各都道府県がやっておりまして、それぞれ認証しておるのです。ですから、基本的に単一の主体ということと、それから、国が今、各省庁別に許可をやっておるのを、例えば第三者機関などの認証にするとか、そこら辺はいろいろなバリエーションが考えられるのかなと。基本的に、ここでは統一的な主体が判断をすることを前提としておりますけれども、それが単なる単一主体だけに限るということで限定しているわけではございません。そこら辺はまだ議論の余地があると考えております。

○ ですから、先ほど○○委員が議論をしてくださいとおっしゃいましたけれども、議論をするのは我々でございまして、それをできるだけ議論を深めていきたいということでございます。
 それから、もう一つ、2階の奥の部屋というお話がありましたが、今現在もう2階奥の部屋が特定公益増進法人というシステムがございますので、これとの関係、つまり2階に上がってしまったら、もうそれは自ずと税制上もあるいは寄附の免税措置等も確保できるのかどうかということも含めて、この会議は税金に関する会議ではございません。○○委員は勿論、税法の権威でいらっしゃるわけですが、ある程度税法的に考えるとどうなるかということを予測して、ここで議論しておかなければいけないのではないかと考えております。

○ どうもありがとうございました。

○ 先ほどの○○委員の御質問にやや関連することなのですけれども、営利法人に対して非営利法人というものをつくろうというときに、では、非営利法人になるメリットは一体何なのかというと、今までのお話の中であれば、一番分かりやすいのは準則主義になって、登記で簡単に法人をつくるということができることだと思いますけれども、メリットは果たしてそれだけなのだろうかと。もっと他のメリットが与えられなければ、非営利法人になろうという、いわゆる刺激剤にはならないのではないかという気がいたします。
 その前提に、閣議決定の中でも、個人の価値観の多様化とか社会のニーズが多岐にわたってきているので、そういう市民の非営利の活動というものが非常に重要であって、社会経済システムの中にも積極的に位置付けるんだと明言されていますが、それはただ単に公益的活動をしている非営利法人だけではなくて、私的あるいは共益的といったような活動をしているものも、価値観の多様化の具現化であるという考えのもとに意義を認めるのだと思うのです。そうすると、やはりそこにおいて、私は準則主義以上の何らかの優遇措置を認めるような枠組みというものを考えなければいけないのではないかという気がいたします。

○ 基本的な御意見は全く私も共通しております。非営利法人制度というものを新たに設けたときに、どういう人たちがそれを使うのかというのが一番端的なお答えなのだと思いますけれども、税の優遇措置が仮に無いといたしますと、その点では営利法人とかなり共通するわけですね。しかしながら、恐らくこの非営利法人制度を使おうというのは、一方で積極的に自分たちは非営利の活動をしているんだと、営利活動ではないということを訴えることによって、社会から一定の共感を得たいという人たちが使うのが1つでしょう。
 それから、もう一つは、やはり営利法人というのは、これはワーキング・グループなどでしょっちゅう商法の先生方と議論になるところですけれども、やはり債権者保護ということを非常に重視いたしまして、そのために非常に重い規定がたくさんあるのです。非営利法人制度は、そこまで強く債権者保護ということを言わなくてもいいのではないか。やはり利益は分配しないという原則ですから、その利益はすべてその非営利法人の中に一応残っているわけです。その非営利法人をある程度把握すれば、大体債権者からすれば満足できるわけで、徹底的な開示とか債権者保護までする必要はないだろうと。そういう意味で、やはり手軽に柔軟に自分たちのいろいろな活動に使えるというところに、恐らくメリットがあるのだろうと思います。

○ よろしいでしょうか。

○ 今の御質問に関連するのですけれども、再確認です。事務局と○○委員のお二方に確認なのですが、公益性ある非営利法人に関しては、一旦、非営利法人としての資格を有しない限りは、公益性ある非営利法人としての資格を得られないのでしょうか。それともそうではない方法があるのでしょうか。

● 基本的には、閣議決定の前提は1段階と2段階ということで言えば、2段階説をとっているということで、基本的に法人格と公益性の取得というのを別々の手続としてやるというのを前提としているということは言えると思います。ただし、それをどこまでくっつけられるか、その辺についてはこれからの御議論だと思います。どんな仕組み方にするかによるのだと思っておりますが、いかがでしょうか。

○ ○○委員は、どういう方法があるとお考えですか。

○ 全く法律の専門知識が無いままに、もしかしたら無理なことを申し上げるかもしれませんが、いきなり準則というわけにはいかないでしょうけれども、公益性ある非営利法人というものを初めからその法人格で取得するという方法、つまり1階、2階の議論は、社会に混乱を招く表現なので個人的には余り好ましいと思っていません。しかしあえてこの表現を用いれば、1階の部分に準則とは限りませんが、何らかの形で公益性のある非営利法人という枠組みを残しておいても、よいのではないかと考えます。また、手続きについては1階のところで、公益性のある非営利法人として申請することも可能であり、あるいは2階の論理にのっとり、一般非営利法人として登記した後に公益性ある非営利法人として申請することも可能であるという、選択肢が2つあってもいいのではないかと私は考えているのですが。

○ 実際にはそうなります。最初の御質問に戻りますと、一応、法人制度としては非営利法人制度というのが全体をカバーしますので、公益的な活動をする法人であっても、非営利法人制度の下での法人格を取得すると。だけれども、税の優遇措置とかそういうものを受けたいという場合には、更に幾つかの条件を満たさなくてはいけないと考えるのが1つの考え方で、例えば、先ほど言いました残余財産が社員に分配されてしまうようなことでは具合が悪いだろうと。したがって、残余財産を分配しないという条件を満たしてくださいと。そういう条件を満たすと、例えば税の優遇措置が得られる。非営利法人制度を基にしながら、更に追加的に幾つかの条件を満たすと税の優遇措置が受けられる、そんなのが1つのイメージでございます。今現在、非営利法人になって税の優遇措置を受けていないものが、後から条件を満たして、例えば定款を変更して公益的な活動をするということで税の優遇措置を受けることもできるでしょうし、最初からいきなり設立するときに公益的な活動をするので残余財産の分配などをしないという方針をつくって、それも恐らく手続としては非営利法人制度の下での法人格を取得して、同時に公益的な要件も満たすということで、いきなり公益法人的なものになるということで、○○委員がおっしゃったような形になるのではないかと思います。事務局が言われたのも恐らくそういう趣旨だと思います。

○ 今の○○委員の御発想も、それから、○○委員のお答えもちょっと曖昧だという感じがしてしまいまして、2階に上がるには1階を通らなければならないというのが一般に考えられているところではないかと思います。ですから、まず1階に上って、それから、2階に上るための要件を満たすという方法と、1階を通らないで2階に最初からはしごか何か、外についているもので上ってしまうものもあると、制度として非常に複雑になるので、やはりまず非営利法人になって、それと同時にでもいいですが、2階に上る要件を満たしていくべき。観念的にはやはり、まず1階に入って、それから2階に上る。1階を通らなければ2階には上れないと考えるのではないかと私は理解しておりましたが、どうでしょうか。

○ 今の○○委員の御質問に対してお答えしたのはその趣旨であります。○○委員は、恐らく法律的な形での御質問ではなかったので、私が少し法律的な観点から、必ず非営利法人制度の法人格を取得して公益法人になるとお答えしたわけです。だけれども、それを手続として一遍にやることも、設立する段階で両方の条件を満たすこともできるでしょうと。

○ 今の○○委員のお答えで、私がしゃべる必要はなくなったのかなと思いつつ、やや蛇足なのですが、さっき○○委員が資格とおっしゃったわけですけれども、私は法人格を取るということは、基本的には資格ではないと考えておいた方がいいのではないかと思います。これは単に人格を持つか、持たないかということです。ですから、資格と考えると、そのこと自体が1つの優遇措置ではないのだけれども、ある種のお墨付きみたいな感じになって、私はそれが今のNPO法人格を取っているNPOが、あえて言えば陥っている落とし穴になっていると思いますので、そこは少し気をつけた方がいいのではないかと私自身は思っております。
 それから、今の○○委員のお答え、それから、3人の方のお話なのですが、私はやはり○○委員がおっしゃったように、制度というのはなるべく単純にしておいた方がいいだろうと。私自身、行政の執行に関わってきて、それは関わった者としてなるべく単純でないと、執行する人間というのは複雑にしたがるものですから、単純であるべきではないかと。ですから、これはやや乱暴な類推を使えば、会社、企業の上場のようなものではないかと思っています。企業をつくるということと、それから、何年かの行動を踏まえて上場する。上場するには、より広い人からお金を集めるわけですから、それを認められるような要件を整えないといけないということだと思います。そこで恐らく問題になってくるのは、整えないといけない追加的な形式要件と、そこで行ってきた行為、実績の公益性の中身ということで、この両方が関わってくるわけですから、形式要件だけ整えればそのまま優遇措置がつくということでは必ずしもないのではないか。形式要件だけでいいとなれば、結局また、元の木阿弥になって、一般的な公益性のない非営利法人と公益性のある非営利法人を入口で2つに分ければいいではないかという議論に戻ってくるのではないかと思うのです。ですから、そこの形式要件プラス実績で判断するという中身が、まさに公益性の判断のところで難しくなってくるのではないかと思っています。
 ちょっと長くなって恐縮なのですが、そうなってくると、今度は最初の○○委員のお話とまた関わってくるわけなのですが、客観的で裁量はなるべく少なくすべきだというのは、私も趣旨としては全く同じ気持ちを持っておりますけれども、多分、○○委員御自身あるいは○○委員、○○委員のお話を伺いたいと思うのですが、法律というのはこれまたどこまでいっても抽象的なものですから、細かく決めれば決めるほど裁量項目が増えるという、これもまた行政に携わった人間として自戒を含めて申し上げているわけですけれども、そういうことになります。ですから、客観的で裁量が少ないようになるべく細かく決めましょうというのも、実は逆に落とし穴がいっぱい待っているという、私自身がそこに答えを持っているわけではないのですが、ですから、ここもよほど議論をしないといけないと考えております。
 この1つのいい例が、今の金融の検査のようなものでして、これはなるべく客観的に分かりやすく債務者区分などを決めましょうといった結果、本当の数字の上での判断に終始するようになって、実績のところが視界から欠落して、ひょっとしたらいい企業が、数字の上でそれが表れていないために削られているという部分がある、これが指摘されているわけですけれども、同じようなことにならないようにしないといけないと思います。

○ 大変、参考になる意見をいただき、ありがとうございました。

○ 民間企業はみんな営利企業をやっている、新聞社も全部同じことです。非営利というと営利企業よりも一格上であるという考えがある。それは半分以上、錯覚みたいな話で、営利企業で看板を掲げてものをつくっているのは大体が志が低いのかというと、そんなこともない。よくよく考えてみれば、普通の企業はみんな公益的な仕事をやっているし、ただ、儲けなければ食えないからやっているだけの話であって、ここで非営利で公益とくると、えらい立派な組織と人間が世の中に存在していて、そこに市民が参集するというのを頭から決めつけるのは半分偽善じゃないかという気がするのです。でも、一般的に世間がそう思っているならそれで結構だから、あと10年、20年はそれで続くと思うし、もっと広くなるのかもしれない。それは分からないけれども、いずれにしても、余り非営利で公益だというと御立派だというふうにだけ評価するのはおかしい。今のNPOの諸君だって随分下手なことをやっているのは1割、2割は現実にあるわけです。全国ベースで調べてみれば。それを見ると、余り一元的に美化するとか評価するということばかりやると、必ず足元をすくわれるという気がするのです。そうならないように、規律から何から全部これからお決めになると思うのですけれども。
 もう一つは、普通こういう制度をつくるときに、今2万何がしかの公益法人がありますでしょう。それが移行期でだんだん移行してくるのだけれども、併せてこれだけ自由にしてやり方を柔軟にするのだし、主務官庁の締めつけがなくなるわけだし、2〜3年すれば、倍になるとは言わないけれども相当増える。つまり数値目標的なものがあり得るのかどうか。こんなものはないと思います、やってみなくては分からない。だけれども、今いろいろな妨害なり拘束があって設立しやすくなっていないならば、その阻害要因を排除してやるわけだから、そうするとかなり増えるのではないかと。今のこういうテンポでいけば、もっと上がるのではないかと展望されているのではないか。そういう気持ちを持った人が世の中にはたくさんいるのではないかと考えるべきなのだと思うのです。ただ、それがどの程度いるかというと見当もつかない話ではあります。

○ 前の方のお話は、ここで皆さんで議論して、そういうことを美化してあるいは上位に置くような概念をつくるということでは全然ありませんので、もっと客観的にそのような本当に公益的な活動があるとすれば、それはそれで認めようではないかということがここの目的ですから、それについては特に気をつけてまいりますけれども、おっしゃるようなことはないと思います。
 後の方の問題は、反対に今こういう活動をやりたくても、主務官庁制度が原因とか、後でお話があるかもしれませんけれども、膨大な書類のやり取り等を考えますと、途中で挫折してしまっている連中もあるわけです。それから、乗り出していない連中もあるわけです。そうすると、それらをひっくるめてこういうことができますと、潜在的な需要といいますか、起業能力といいますか、そういうことが誘発されるということは想定されることです。
 そこで、ちょっと問題になるのは、さっき○○委員のおっしゃった、今NPOが陥っている状況、つまりNPO法人格を取得して、そして、何か資格を取ったからということだけれども、実際にはそれが機能していないというか、その思いどおりにはなっていないというところがあるわけで、この辺も何か防止策を盛り込んでおく必要があるのではないかとは思っております。

○ 2つほど申し上げていきたいと思っています。まず1つは、非営利法人と営利法人の概念のところで言えば、株式会社が営利法人になりますけれども、非営利法人のところでは○○委員の方が今回ワーキング・グループの方で、相当概念をきっちりと御指摘いただきましたように、利益の分配を受けないという意味では、非営利法人になりたいと思っている社会的な人々というのはまだ非常に多いと思っています。営利法人でできることでも非営利としてやりたいという方々の社会的ニーズは今非常に多くなっていて、その多様性の中でこういうような公益法人の改革になっていると思いますので、是非ハードルを低くした形での非営利法人というものをつくっていく意義があると思っています。そういう意味では、非営利と営利という概念の違いで言えば、非営利法人というのは非常に存在の意義がこれから大きくなるだろうと思っています。
 もう一つは、法人制度上の公益性を判断する意義というところなのですけれども、私どもが公益法人、財団法人をつくってきたときには、やはり財団法人という公益性のある団体だということを名乗れるということが、ある意味では非常に社会的信頼を得るものであると。それによって、一定程度の社会的な評価をいただくと同時に、財の部分についても人的なもしくは地域資源そのものを活用させていただけるという有益性があります。更に、社団と財団しか今回この会議では考えていないわけですけれども、社員もしくはそこで活動される団体の職員というものについて、非常にモチベーションも上がってくるだろうと思いますので、そういう意味では、非営利法人の中に公益性を認めるという形での公益法人というものについては、是非、存在として残していきたいと考えています。
 非営利法人の登記と同時に一定の、先ほど○○委員の方からも御指摘がありましたように、備えるべき要件が整っていった段階で、私は早い段階で公益法人というものを名乗るということが非常に重要ではないかと思っています。早くに事業を、つまり公益法人としての法人格の中で事業をやることによって、その事業に判断をいただくということが客観評価につながり、更に社会的な信頼につながるというふうになるものですから、今までの公益法人、つまりつくるところのハードルが非常に高い制度より、これからは一定程度の要件を満たした中で、法人格は差し上げるけれども、事業評価をきちんとし、先ほどのガバナンスとか情報公開をきっちりとしながら事業評価でやる。これについて、もう一つ特徴的に考えなくてはいけないのは、必ずしも私は税制が一体となる必要はないのではないかと思っています。税制はすごく難しい部分なのですけれども、公益法人の皆さんが必ずしも税制も全部欲しいと言うかどうかは、また別問題ではないかと思っているのです。税制上の優遇があればなおよし。ですが、一定程度の要件を満たした中で公益法人格としてやりたいという方は増えるのではないかと思うのです。ただ、その場合に、営利法人との差が、優遇性が無さ過ぎるのではないかという心配もしています。
 それともう一つ、NPOが陥っているある程度の落とし穴のところは、営利法人もそうなのですが、やはり倒産という形で自然淘汰の道が出てきます。そういう意味では、客観評価もしくは非常に数が多くなってきますと、選別というのは自然に行われるだろうと思いますので、今の時点ではとにかくNPOにしろ、こういった公益法人にしろ、社会の多様性に合わせて今は増えていく、人々の思いが形になるという段階のところではないだろうかと考えています。

○ ありがとうございました。大変柔軟な、しかし、広い御意見をいただいて、大変参考になったと思います。

○ 先ほどから幾つか出ていた意見について、私からコメントを差し上げたい点があるのですが、○○委員からこの制度は企業を設立して、その後、上場するようなものだというお話をされまして、その点は全くそのとおりなのですけれども、やはり上場の要件というのをどういう形で書くか、どのレベルで要求するかと言った方がいいでしょうか、そういう問題があるのではないかと思います。つまり、上場の要件の中に法人の組織に関連することがあったりしたときに、これを法律に規定して、その要件を満たせば、例えば公益法人ということを名乗ることができますという形で、つまり上場することができますということを法律の中に書くのか、それともそういうところには書かないで、どこかしかるべき、第三者機関とかそういうものが公益性を判断する条件にするか、そんなところが問題であると思います。
 それから、もう一つの問題は、○○委員の意見の中にも出てきたことですけれども、実績というのは重要だと思うのですが、それをどの段階で要求するかということですね。入口の段階といいますか、法人を設立する段階で実績がなくてはいけないと言えば、これはある意味で、すぐには公益法人をつくることができないことになります。現在もそういうことは時々あるようですが、権利能力なき社団としてしばらく実績を積んでから、やっと公益法人になれるということもあるようです。しかし、それは適当ではない。そうではなくて、やはり入口の法人を設立する段階で、定款や組織が一応、公益法人としてふさわしいものを備えていれば、とりあえず公益法人として名乗ることができる。税の優遇措置はともかくとして、名乗ることができる。実績というのはその後設立してから見ましょうというような考え方と、どっちにするのかというのが大きなポイントになるのではないかという気がしました。
 それから、○○委員の言われた非営利法人のイメージですけれども、私は非営利法人が一段偉いというイメージは全く持っておりませんで、これは人によって違うかもしれませんけれども、私は非営利法人というのは先ほど申し上げましたように、むしろ私的な利益を追求する団体なのだろうと考えています。もし、少し価値の転換をする必要があるとすれば、私的な利益を追求することはいいことなのだと、それは社会の活性化につながることでもあり、ルールさえ守っていればいいことなのであると。そういうことで非営利法人は必ずしも公益的な活動をするわけではなくて、自分たちの私的な利益を追求するものであるけれども、それは法人格を取得するにふさわしい団体であると考えるべきなのではないかと思います。
 ただ、そこから難しい問題が出てくるのは、最初に申し上げたように、そういうことで本当に私的な利益を追求している団体と、公益的な活動をする団体とを1つの非営利法人制度という中でまとめてくくりますので、そういう意味では、そこで言う非営利法人という概念を公益法人の方に引きつけて考えると何か少し高いものに見えるし、私が言った私的な利益を追求する方に引きつけて考えると、特別に偉いものではないというふうになるのではないかと思います。

○ 先ほどからのお話を伺っていて、概念を明確にしておく必要があるのではないかと思いまして、仮に「公益法人」と呼ぶかあるいは「公益的法人」と呼ぶかは別として、それも非営利法人の中にある存在だと、非営利法人の中の1種類だということははっきりさせておく必要があるのではないでしょうか。非営利法人と別の存在になるわけではないということですね。
 もう一つは、ちょっと遡ってよろしゅうございましょうか。事務局がおっしゃった認証のところです。ワーキング・グループの中で話が出ていたと思うのですが、認証というのは基準が決まっていれば公証人に登記のときにやってもらうことができるのだという話が確か出ていたと思いますが、私の記憶違いでしょうか。

○ 定款についてですね。

○ 定款についてですか。そうすると、認証してもらえばそれで登記できるわけですね。

○ 登記ではなくて、認証してもらうということですね。公証人の判をもらう。

○ 公証人から認証してもらえば、それで登記できるわけですね。そこがさっき伺ったとき、必ずしもはっきりしていなかったように思ったものですから。

○ ただ、どういう議論をワーキング・グループでしたか、今は記憶がありませんけれども、それは公証人がきちんと法律の要件を満たした定款がつくられているということを確認する作業があるというだけの話でして、主務官庁が公益性のある団体であるということを認証するというのは……。

○ 公益性の方は別の問題です。非営利の段階で。

○ それはまた別です。それは定款の話です。

○ 先ほどの○○委員の御発言に賛成なのですが、2点ほど補足させていただきたいと思います。
 まず1点目は、さっき○○委員が上場ということについて分けて考えるべきではないかとおっしゃった、それは全くそのとおりでして、2階に上がる要件というものと2階にとどまる要件というのは、やはり区別して考えた方がよかろうと。恐らくそれは今日お配りいただいた資料を拝見しますと、資料3−3というところにそういったことが書かれてありまして、これは恐らく次回にでもここで御議論になることかと思います。ですから、その辺り、今日決めるというのではなくて、また次回も議論していただければと思いました。
 それから、もう一点は、非営利という概念について、○○委員は別に非営利が偉いというわけではないということで、それは私も全く同じ意見なのですが、しかし、それは法律家の視点ではなかろうかという気がいたします。一般的には非営利あるいはノンプロフィットということについて、積極的な意味を持ったイメージでとられることが多いのではないか。そこで法律家が、いや、非営利というのは非常に技術的なものだから、それとは違うのですよということを言っても、ずれというものは多分あるだろう。そのずれを意識した上で考えていかなければいけないのではないかと思いました。

○ ありがとうございました。

○ 今の○○委員の御発言に関連するのですけれども、非営利一般としたときに、効果については論点整理の方に記されているのですが、いわゆるマイナスの影響や、社会的コストというものもあるだろうと思います。一応、NPO法の中では暴力団について記されていますけれども、非営利一般としたときに、この種のものを全部一緒くたに存在するということになりまして、社会的なコストを増すことになり得るのではないかと思います。

○ これは、もう少し先に行ってから留意しなければならない点です。
 ちょうど切れ目になりましたので、お休みをさせていただいて、それからまた本題に戻りたいと思います。

(休  憩)

○ それでは、再開させていただきたいと存じます。
 大変盛り上がったところでありますが、皆様から幅広い、いろいろな価値観の提示がありまして、大変勉強になったと考えております。これからいよいよ具体的な問題になりまして、公益性を取扱う仕組みのあり方について検討したいと存じますが、今日は資料3でお配りしております資料3−1の基本的な考え方と、資料3−2判断主体のあり方についての議論を予定しております。多分これは、ほぼ一体的に考えるべきことであるかもしれませんので、それについて皆様からの御議論をいただきたいと思いますが、まず、事務局から資料について御説明を申し上げます。

● それでは、公益性を取扱う仕組みのあり方のうち基本的考え方の部分につきまして、まず、御説明申し上げます。お手元の資料3−1でございます。資料全体は1ページ目に仕組みの主な考え方、2ページ目から仕組みのあり方、それから、留意点として3ページにその他という構成になっております。
 まず、1ページ目にお戻りいただきまして、主な考え方でございますが、この部分は先ほど○○委員からも御紹介がございましたが、公益性の位置付けの後段の論点でございます公益性を判断する意義、こちらの考え方と連動しておるかと思います。ここでは差し当たり、これまでに御議論いただいたものの範囲内でそれを簡単にまとめさせていただきました。大きく分けますと3つあるかと思います。留意点で申しますと、上から3つの目「・」、こちらが積極的に公益性を有するにふさわしいしっかりとした法人の受け皿をつくるといった方向の考え方。それから、下から2つ目の「・」が、そうではない考え方。一番下が、国等の機関がそもそもそういった公益性に着目して区別を行わない考え方という方向があろうかと存じます。
 最初の3つでございますけれども、1つ目の「・」は、既に御議論いただいたものを、1つには○○委員の方から御指摘のありました、公益性を判断する意義のところで載せさせていただいた考え方に、早稲田の佐藤先生の方から、社会学の観点から21世紀の社会システムの有様について御指摘がございましたので、それを加味して整理したものでございます。
 簡単に申し上げますと、一般に市場経済、いわゆるマーケットでは十分に供給することが難しい財やサービスが存在していて、この点については21世紀の社会システムを考えた場合には、こうした財・サービスの供給を政府部門よりも民間の非営利部門について対応を求めるといった考え方があるのではないか。そうした役割を非営利法人が担い得ると。その際に、公益性を有するにふさわしい、規律のしっかりとした法人の受け皿の仕組みがあれば、寄附やボランティアといった私人の善意の活動の受け皿になる。そういう仕組みがあることによりまして、社会的に重要なそうした財やサービスの供給が安定的になされるのではないか。ただし、その際に、そうした仕組みが是認される条件としては、社会全体としてそうしたことがあることによって効率的であると言えるかどうかという視点があるのではないかというお考えでございます。
 2点目は、もう少し私人のレベルで御指摘をいただきました。こういうような仕組みがあった場合に、先ほどとやや重複いたしますが、寄附や活動といった私人の善意の活動の受け皿になります。そうしたことを通じて、私人のレベルでも公益的な活動が促進されるのではないか。
 3点目は、星野先生の方から前回、御説明いただきましたが、その際にお出しいただいた点で、今の2点と重複しております。積極的な非営利法人創設の意義、その中には、私人の自由な活動を盛んにするといったことがあるけれども、そうしたことが結果的に私人の公益的活動の促進につながるのではないか。その際にも、規律のしっかりした法人がある方がよりよいというお考えでございます。
 一方で、積極的にそうした法人の受け皿をつくらない場合が、その次の「・」でございます。結果的に見ますと、特に専ら税制上の観点から公益性に着目して区別が行われる、そうした方向の考え方。
 最後が、先ほど申し上げたような、国等の機関がそもそも公益性に着目しないという方向でございます。
 1枚おめくりいただきまして、とりあえず今お出しいただいている範囲内で申しますと、こうした考え方があろうかと存じますが、更に一歩進めて、どうした仕組みの在り方があるのかということを整理できないかというのが次の点でございます。
 1つ目の「・」は、これも御指摘を前回いただきまして、こうした問題を考えていく場合に、公益性の理念、どういった公益性を考えていくのか、広いのか、狭いのか、先ほど御議論がございましたがそういった点、それから、理念があってもそれを仕組みとしてどう担保していくのか、また同時に、どういう効果を結びつけようとするのかというのを同時に考えていかないといけないのではないかという御指摘がございました。これを念頭に置いた上で、先ほどのような主な考え方をベースに以下のように整理できないかというのが次の(1)と、それから、次ページの(2)でございます。ここでは、主に機能に着目いたしまして、国等の機関が公益性を有するものを区別するか、しないかで(1)と(2)に分けてございます。もとより機能的には組合せもあり得るところでございますが、誰がどういう基準で判断するのかというのが分かりやすかろうと思いまして、こうしてございます。
 最初の(1)でございますけれども、国等の機関が公益性を有するものを区別する場合に、その考え方として繰り返し出ておりますが、どのような効果を念頭に置くのかということがございます。
 それから、次の「・」が、いわゆる法的効果そのものではないかもしれませんけれども、そうした国の機関が公益性を判断することによって法人の社会的信用を高める、あるいは公益的活動を促進するという効果があるという御指摘がございました。
 それから、その次の「・」が、先ほど主な考え方のところでございました公益性を有するにふさわしい、しっかりとした規律の法人の受け皿をつくるのかどうか。その場合に、○○委員からも御指摘がございましたけれども、こうした仕組みを民法あるいは新たな非営利法人法といった、いわゆる私法の枠組みの中で規定するのかどうか。
 それから、もう一つの行き方が「B」と書いてございますけれども、専ら税制上の効果に着目して、税法以外にそうした仕組みを特に設けない方向でございます。この場合には、その次のパラグラフにございますように、分かりやすく申せば、例えば、いわゆる税制適格非営利法人、税制適格事業といったものが生じる世界となるという方向があろうかと思います。
 それぞれ留意点として書いてございますのは、Aの方につきましては、そうした方向で考える場合にも、前回、公益性を判断する意義の後段で御説明したいわゆる看板の効果、いわゆる1階で法律上、法人の名称は与えられるとしても、それとは別に何らかの呼称を与えることによって、一層、法人の社会的信用やあるいは活動促進効果を期待するといったことは考え得る。
 それから、Bの方につきましては、Aと期待する効果に何らかの違いがあるのかという点でございます。後で出てきますけれども、税制上の効果となりますと課税庁というのが念頭に置かれるわけですが、そうしたところがこうした判断をするのがそもそもどうかといった御議論や、あるいは課税庁による判断によって公益的活動の促進の効果に差が出るかどうかといった点でございます。
 1枚おめくりいただきまして、いずれにしまして、税の効果は関心が強いかと思いますけれども、最終的には政府税調の場で御検討いただく必要があると思います。
 それから、(2)がそうした国等の機関が判断を行わない場合でございます。この場合には、端的には恐らく後ろのところにございますように、民間機関が公益性を判断をするという方向になろうかと思います。
 2つ目は、その場合であっても、何らかの法人の社会的信用を高める効果やあるいは公益活動の促進効果があるかと存じますけれども、国等の機関が判断する場合と差があるかどうかという点がございます。特に、どういった効果を有するかということとの関係で、税制上の措置を含む特別な取扱いをする場合に、その判断の基準が民間機関に任されるといったことについてどう考えるかという点でございます。
 最後は、この点も留意点でございますけれども、いずれにしても課税の取扱いについては、最終的には政府税調の場で御検討していただく必要があると思います。
 その後の「その他」は、先ほど申したように留意点でございます。1点目は、公益性をとらえる場合に、法人全体に着目するのか、それとも専ら事業なのかという御指摘がありました。これまでの御議論で承知しておりますところでは、専ら事業のみに着目して、その主体である法人の性格に関心を払わないといった御議論は少なかったかと存じますが、念のために付けさせていただきした。
 とりあえず、基本的な考えにつきましては、以上でございます。よろしく御審議のほどをお願いいたします。

○ ありがとうございました。
 ただいま御説明を伺ったわけですが、既に前段でこの部分についてはいろいろ御意見をいただいたところですが、なお、補足がありましたら、ここでどうぞお願いいたします。これから先、予定としては次に誰が判断するか。資料3−2になりますが、判断主体の在り方、ここまでを本日の議題としております。そういうことを前提に置いて、ただいまの公益性を取扱う基本的な考え方について御意見があればお伺いしたいと思います。

○ ご紹介いただきましてありがとうございました。私自身は、1ページの5つの「・」のうち、最初の「・」と2番目の「・」とを併せて考えたいと思っておりますが、この2つと次の「・」という最初の3つの「・」は、恐らく、相互に排斥し合うのではなくて、いずれも補完し合うものではないかと思っております。
 それに対して、4番目の税だけで考えるというのは、その対象も理念も狭くなってしまうのではないかなという気がします。もう少し広い社会的意義というものを考えるべきではないかと思っております。
 それから、最後の5番目の「・」ですが、これは確かに国が一切関与しないというのも1つのあり方としては考えられなくはないと思いますが、例えば、税の点で関与するということになりますと、どうしてもそれに信用付与の効果が伴うものだと思いますので、国がコントロールするということではなくて、環境を整備して支援するというような発想で、何らかの関与をするということはあり得るのではないかと思っております。

○ 2つ法律的な側面からの質問をさせていただきます。1点は、私自身の私見ということを述べさせていただきたいと思います。
 まず、1点目なのですが、税法も含む措置に関して、公でない組織が判断をするということは法律的に技術的に可能なのかどうかという点。
 それから、2点目は、課税庁以外のところが公益性について判断をするということは、自動的に民法の規定の中から、民法典の中から公益性のある非営利法人というものの定義というものが消えてしまうのかどうか。
 そして、3番目なのですが、課税庁かまたはAかBかというところが2ページにありますね。それに関しては、やはり課税庁のみで公益性を判断するということについては、判断の幅、基準が狭くなってしまうのではないかというのが私の個人的な懸念であります。

○ 最初の御質問は私がお答えしてもできると思うのですが、必ずしも政府だけに判断の主体が置かれることはないということは、ほかの問題ではあり得ると思います。例えば、政府の方と学界の方と、それから、一般の民間の方を含めた委員会組織みたいなものもあり得る選択の中にはあるのではないかと思います。
 2番目の方については、いかがでしょうか。

○ 勿論、自由な発想で考えれば、民間のある機関が公益性を判断するという形をとりつつ、同時に法律の制度として公益法人というタイプを設けることも不可能ではないと思いますけれども、従来は余りなかったでしょうね。ほかの国も余りないかもしれません。そういう意味では、公益法人という法人の類型を法律の中に設けるのであれば、何らかの形で公的な機関が判断するということが通常だろうと思います。ただ、公的な機関が仮に判断するとしても、判断の仕方にはいろいろあって、つまり準則主義であっても公的機関が判断しているわけですね。つまり、こういう要件を満たせば公益性を主張して構いません、公益法人と主張して構いませんという基準を設けた。これもある意味で国が関与しているわけですから、こういう形の国の関与もあり得ると思います。とりあえず今はそのぐらいです。

○ いかがでしょうか。それでよろしいですか。

○ 前の議論に半分ぐらい戻る話ですけれども、非営利だけでは面白くない、世間の受けももう一つぱっとしない、公益法人を名乗りたい。それを2つに分けて、自称公益法人ならどんどん認めていい。しかし、税金を幾らかまけろというなら、それはまた別。つまり公益法人が2つあって、公益法人を民間の機関が仮に認定するのだったら相当大まかでも構わないと。税金に話を持ってくるのだったら、それは財務省か何かがものを言わなければ、こんな話は現実問題として結論がつかない。だから、自称公益法人というのは自由に認めて構わないと。公益というのは広い概念だから構わないというのは具合が悪いでしょうか。

○ 自称といっても、何でもかんでもそういうことが主張できるわけではなくて、やはり法律なり何なりで一定の要件を書いて、それを満たしたものは公益法人と主張することができますということなんですね。ですから、全く公益活動もしないのに公益法人であるということを言ったりすることはできない。
 それから、先ほど準則主義の形であっても公益法人制度をつくることは不可能ではないと申し上げましたが、しかし、実績というのは確かに重要ですので、本当に公益活動をちゃんとしているかどうかということを事後的に調査といいますか、あるいは開示を要求することで市民一般が監視するとか、そういう制度を組み合わせることは幾らでも可能だと思います。さきほどの○○委員の話と○○委員の話に関連しますけれども。

○ 開示といってもその開示がまた法律的に一体どこまでできるのかという問題はありますけれども、開示しろという要件を伴った場合に、公益法人と称すると開示しなければならなくなってしまって、それでは遠慮しますというところもあり得るんですね。

○ それはありますね。

○ これは私自身の中で矛盾していることを申し上げるのですが、1つは気持ちの上でなのですが、2ページの(1)の2つ目の「国等の機関が公益性を判断することは、社会的信用を高め」云々ですね。やはり私は、この発想はともかく今回のこの改革でなくしたいなと。そのこと自体が問われているというのが気持ちの上での話であります。公益性というのは社会的に結果的に出てくるものであって、国がお墨付きを出すということは、とにかくそういうにおいを極力消せないかなという気持ちの部分と、一方で、税だけでないかも分かりませんが、例えば税金の場合が典型ですけれども、税金を取らないという判断をするのは、根拠として世の中の役に立っていることをやっているから税金を取らないという判断を課税当局がするわけですから、そこには何かの法的なルールがないといけない。そこで、公益性の判断基準というものを国の側がつくらざるを得ないということですから、そこが根本的に矛盾してくるわけですね。ですから、これをどんどん突き詰めていくと、さっきの課税適格何とかというような、個々に判断しましょうと。そうやって個々に判断されて税を免除されたり、いろいろな優遇措置をとっているものを、世の中があそこは公益性を持っているんだなと認識するということになるという話なのだと思いますが、個々にというのは恐らく、特に課税庁が判断するということに関しては非常に大きい抵抗があるようですし、税以外に幾つか優遇措置が仮にあるとすれば、それを個々にというのもまた制度としてややこしくなるのかなと。ですから、そこで国の基準というものを何か最低限のものはつくらないといけなくなる。そこをどうするかということが問われているわけで、私は今ほとんど意味のないことをグダグダと言っているような気持ちはするのですが……。

○ そんなことはないですよ。

○ そこで、またこれも乱暴な先ほどの比喩なのですが、さっき上場ということを申し上げました。上場というのは今まで、例えば、企業であれば東京証券取引所なり大阪なり、上場のルールというものも法律で決められたルールと、あとは法律ではないけれども自主的に決めたルール、今は証券取引所自体が株式会社になりました。これは、やはり公共性を自分たちで決めようということですから、同じではないにしても、ここに何か参考になるものがあるのではないかと思います。
 それから、もう一つだけ、前にも申し上げた話ですが、幾つか自治体に似たような例がありまして、前に申し上げたのは、千葉県の我孫子市は補助金をつけるときに、言わば公益性の認定のための委員会、補助金を公募制にして、応募してきたところのふるい分けをまず行う委員会をつくって、その委員会が行った判断に対して、ほぼ自動的に市が補助金をつけるという仕組みをとっています。ですから、何かその辺のところが参考にならないかなと思っております。

○ 補助金をつける云々は別としまして、課税上の優遇をするとかあるいは寄附の優遇をするということ自体は、実は国民が税をその団体に対して負担しているということになるわけですね。今の我孫子の市民についても、我孫子の市民の納めた税金がその補助金に使われるということですね。ですから、この辺は今これから誰が判断するかという議論に入るわけですが、そこでもう少し深めていきたいと思っております。
 ○○委員の質問を最後にして、結局一連の流れをやっていますので、では、誰が判断するのかという判断の主体の議論に移りたいと思います。

○ 今、○○委員が言われた意見に私も非常に賛同いたします。公益性の判断のところを、やはり今までと同じように国家が認めるということを今回は是非打破していきたいと思っています。前々回フランスの例がありましたように、やはり私人が自分たちの公益をやりたいという気持ちが法人格として結実するような形で、この公益法人制度も改革をしていただきたいと思いますし、私は○○委員の意見に大賛成をさせていただきたいと思っております。
 併せて、公益性を判断する主体の問題なのですが、NPOが今回認証のまま残り並存してくる関係で申し上げれば、今回の公益法人のところについては、先ほども申し上げましたが、一定程度要件が整った段階で登記後、○○委員もおっしゃっていただいたように、公益法人の呼称については、先に判断のないまま一応付与できるのではないか、してもいいのではないかとは思っているのです。これは個人の考え方です。一定程度の要件を満たした後、事業の中で非課税、課税にするかについては、一定程度の事業判断もしくは、いわゆる定款で公益法人という一定程度の要件を満たして、その定款の中でこういう事業を主にやりますということを名乗り出ているわけですね。登記しているわけですから、その登記上の事業の実際の運用がきっちりできているかどうかの中で、課税か非課税かを判断するという手法がとれるのではないかと思っています。
 一方で、これも迷っているのですが、先ほどの我孫子の例もありますけれども、やはり一定程度の第三者機関、市民なり社会的な第三者機関が、先ほどの事業の認定をしてもいいのではないかということで、非常に迷っていて揺れているという現状があります。

○ ○○委員のような方でもお迷いになるし、今も迷っているという話がありましたが、私も実はいろいろなところで迷いを感じながら皆さんの話を伺っております。
 それから、これは議題とは関係ないのですが、今フランスの話がありましたが、フランスは確かにそうなのですけれども、私もフランスの公益法人の出納長をやっているのですが、設立はできるのだけれども、その後は税務当局の方に移ってしまうと、今度は取扱いは裁量といいますか、どう考えるかという当局の方になるので、なかなかフランスもやりにくいところがあるのです。

○ ただ、今の公益法人の主務官庁制度によりますと、やりたいこともできないというのが最大の原因だと思います。

○ それは、再三の○○委員のお話で分かっております。定款変更1つするのができないというね。

○ そうです。新しい多様化の社会の中で対応ができないという……。

○ それはまさにそうです。

○ やった後の後追いという形の方が、はるかに時代に適っているように思いますけれども。

○ ただ、今度は誰が後を追うか、後を追う仕組みは誰なのか。それでまた別な機関をつくるとしたら、これまた屋上屋のような気がしますし、この辺も大変難しいところだと思います。
 だんだん似通った分野に来ておりますので、資料3−2について事務局から御説明いただいた後、今日の最後のところを皆さんで議論していただきたいと存じます。

● それでは、判断主体のあり方、資料3−2でございますが、説明させていただきます。
 先ほど御議論いただきました基本的な考え方を踏まえまして、ここでは誰がどのように判断していくかといった場合の誰がというところでございます。ここも2つに分けております。最初は判断主体についての主な考え方、それから、先ほどの考え方の類型に従って、判断主体のあり方についてどう整理できるかという点でございます。
 まず、最初の1ページ目の主な考え方のところでございますが、ここでは横断的に総論となり得る留意点を掲げてございます。
 1つ目は効果でございます。やはり判断主体につきましても、効果と連動していると考えられるのではないかという点。
 それから、次の「・」が1つ大きな論点かと存じますけれども、仮に、国等の機関が公益性を判断する方向で考える場合も、いわゆる今回の改革につきましては、2つ理念のところで御議論いただいたとおり、そのうちの1つが現行の公益法人問題についての諸問題に対処するということで、その現行制度について指摘された問題の中には、御議論がありましたような主務官庁制の縦割りの弊害というものがございます。これを見直すのかどうかという点でございます。現行は、ある意味で各所管行政分野ごとに、そういった意味で縦割りで公益性を判断しておりますが、それを直すとなると、素直に考えれば、その下のパラグラフにございますように、統一的な機関で公益性を判断していくという方向になろうかと思いますが、それでよろしいかどうか。
 他方で、その次の「・」でございますけれども、現行制度についても一定のメリットがあるのではないかということで、何らかの公益性を判断する際に所管庁がその分野について行政側の情報ではございますが、そうした判断をするに当たって有益な情報を多く持っているのではないかという考え方がございます。これをどう評価するか。
 それから、その次の「・」が別の視点でございます。先ほど○○委員の方からも御議論いただきましたが、地方における判断主体をどう考えるかということで、ちなみに現行制度においても都道府県にそうした判断が委任されてございます。基準は同じでございますけれども、いわゆる自治事務としてそういう判断業務を行っていると。
 それから、なお書きといたしましては、ここもいわゆる効果を念頭に置いて、どの程度の地方における判断主体があり得るのかという点も検討の視点になり得るのではないかという点でございます。
 その次は、一般論で恐縮でございますけれども、判断主体としてふさわしいあるいは求められる特性や性格は何なのかということで、一般には公正・中立といったことが言われますが、そのほか何があろうかという点でございます。
 最後も留意点でございますが、昨今の政策課題としては規制緩和というものがございます。それとの関係で、行政機関を判断主体とすることをどう考えるかといった点でございます。
 こうした点を念頭に置きまして、先ほどの基本的考え方を踏まえて整理できないかというのが次でございます。判断主体のあり方ということで、ここは前置きをしております。まず、公益性を取扱う仕組みを税法以外の法律で規定するといった方向の場合ということで、ここではこの際の前提といたしまして、先ほど申し上げたような主務官庁制の縦割りや弊害を除去するという観点から、統一的な機関で公益性を判断するということを前提にしております。
 その場合に、ここでは2つ選択肢を掲げてございます。A−1とA−2でございますが、前者が第三者的な行政機関ということで、第三者的な行政機関とすれば独立性・公正性・中立性の観点で望ましいと考えられますが、一方で組織を新設する必要がございます。この点は先ほど申し上げたような規制緩和の流れの中でどういったことが具体的に可能なのかという点でございます。
 1枚おめくりいただきまして、もう一方の行き方が単一の行政機関、先ほども御議論がございましたが、この場合は組織を新たに新設する必要は必ずしもございません。一方で、公益性があるかについて実効的なチェックを行うという点と、それから、規制緩和といった行政部門のスリム化の要請がある中で、それがどう調和して実施体制を組んでいくのかという点がございます。
 その際の留意点として下にございますような行政手続法といった、一般の枠組み方とは別に特別に何らかの不利益救済の仕組みが必要かという点もあるかと思います。
 その次の「○」が、公益性を取り扱う仕組みを税法以外に設けない場合でございます。この場合には、直接には課税庁が恐らく公益性の判断主体となろうかと思われます。その場合には、○○委員からも御指摘がございましたが、執行面で問題が生じないかといった点もございまして、そうした点を含めて最終的には政府税調の場でも御議論いただく必要があろうかと思います。
 3つ目が、国等の機関が公益性を判断しない場合ということで、ここも端的には民間機関が判断主体になるということかと思われますが、そのことをどう評価するか。
 その次の2つの「−」は、先ほどと重複いたします。一定の効果が、民間機関が判断する場合もあるということ。それから、民間機関に任せるということと、特別な取扱いを国が行うということについて、どう整合性をとるのかといった点でございます。
 類型・場合分けをいたしますと以上のようなことかと存じますけれども、ここから先具体的に何らかの選択をしていく際にということで、その他の点で1つ挙げておりますのが判断主体の体制ということで、今申した中にも既に出ておりますけれども、公益性があるかについて実効性のあるチェックを行う、適正運営の確保をするという点からは、一定の組織・人員等の体制が必要という要請があろうかと思われる一方で、規制緩和や行政改革の点からは、さっき申しましたような、行政部門のスリム化やあるいは現実問題といたしましては、スクラップ・アンド・ビルドといった条件も出てこようかと思います。こういった点をどのように調和させて選択を具体的に現実的にしていくのかという問題があろうかと思います。
 とりあえず判断主体のあり方、3月までに御議論いただくという点で御説明したのは以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

○ ただいま御説明いたしましたけれども、実は今日の10時ごろからお話をいただいたこととすべて関連する問題であります。特に、先ほどの仕組みの基本的な考え方というのは、ある程度判断を誰がするかということとも関連をするわけで、それによってまた仕組みのあり方というのが決まってくるという総合的関連がある問題でございます。もともと仕組みのあり方というものについて幾つかの価値観が提示されたわけですが、それがまだ今はどれでいこうという結論がないまま判断の主体ということになると、議論が定まりにくいというところがあるかもしれませんけれども、これが今、申し上げたとおり相互に関連し合っている問題でございますので、是非、引き続きこの資料3−2の問題について、資料3−1の部分に戻っても差し支えございませんので、御意見を頂戴したいと思っております。

○ 公益法人をなぜつくるのかという議論があります。一つは、国民の、社会のために役立ちたいという気持ちを実現できるからであり、二つ目は国ができないことを公益法人が代わって実現できるからだろうと思うのです。そういういろいろなことが絡み合っているわけですから、どういう場合に公益法人として認めるかということが問題になります。一定の要件をクリアーすれば公益法人として認めましょうということになった場合に、それはどうしても概念的といいますか、全体を概観するような形にせざるを得ないと思うわけです。そうすると、当然個々の問題に対して判断をしていかなければいけないということになりますから、いろいろな社会の変化に十分対応できるような判断機関というものが必要なのだろうと思います。ここで出てきた課税庁というのは税金の面から考えるわけですから、公益性の判断というようなことは、最も苦手とすることであろうと思うわけです。
 私は具体的には第三者的な行政機関といいますか、委員会組織というところが望ましいのだろうと思っているわけです。その理由は、こういうものは公益法人にしましょう、こういうものは外していきましょうといったときに、その判断をそこにずっと蓄積していくことが必要なのだろうと思います。これは、日本の法律には余りなじまないことなのかもしれません。法律の中では概観的なことを書いておいて、具体的な事例は第三者機関の中に具体的に蓄積していって、今までこういうものは公益法人として認めました、こういうものは認められませんでしたと、そういった形で蓄積していくことが必要なんだろうと思うわけです。したがって、第三者機関に必要な要件の中で公正性・中立性というのが挙げられていますけれども、これに変化への対応性と、もう一つは判断例の蓄積可能性を加えていただきたい。そういったようなことが可能な機関が望ましいのではないかと考えています。

○ 今の第三者機関という問題について、大変重要な御意見をいただきました。

○ 1点は質問で、1点は意見です。先ほど○○委員の方からも、どの時点で判断するのかというタイミングの話がありまして、設立の段階、それから、ある程度実績を積んだ段階というふうに、ある程度時間軸に分けてお話をされていたのですが、これは判断をする主体に関して、設立時と実績を判断するものを同一の機関でする必要があるのかどうかというところが質問であります。
 2点目は私の意見なのですが、設立の要件ではなくて、特にパフォーマンス、実績のところについてなのですが、何が社会の役に立っているかというところについては、やはり一番受益者に、その恩恵を受けた市民に近いところで判断すべきだろうと思います。というのは、冒頭この閣議決定の中でもニーズの多様性をうたっておりますが、どんな効果があったのかということについても、それはその受益者たちに一番近いところでないと、なかなか生活に密着した判断というのはできないのではないかと思います。その意味で、特にパフォーマンスについては受益者に近いところで判断をした方が、より適切な、また、市民に評価されるような判断がより可能になるのではないかと思います。

○ ありがとうございました。

○ これは二元論なんですね。官がやるのか民がやるのかということが資料に書いてありました。やはりお上のお墨付きというのは、本音のことを言えば今だってあるのですよ。お上のお墨付きを欲しがるのはたくさんいるわけです、財界でもどこでも山ほどいるのです。しかし、そういう精神構造から脱却しなければ未来はないというのも1つの新しい流れであることは間違いないですね。それは実に悩ましい話なのですよ。
 それで、そういう抽象的な概念ではなくて、ここのところの二元論で言うと、役人の、しかも、末端の窓口で査定するものは、言っては悪いけれどもレベルは低いし、与えられた枠の中でギリギリ役人風を吹かすことが趣味の連中が9割いるわけだから、それをやったのでは、相変わらずややこしい話ばかり来て、一般の真っ当にやりたい人たちは困るねということが事実としてあるわけです。
 しかし、同時に、民間で第三者機関をつくって、よその国も幾らかケースがあると言いますけれども、一体どういう人間がどれだけ事務局が抱えて、誰の予算でどれだけやるんだという話です。誰が負担するのかということが出てきます。しっかりした判断を持たない連中が集まったって、やはりだめだと、やはりお上に頼むしかないと、建前は建前としてというふうになるかもしれませんし、分かりません、これは実績を見ないと分からない。
 それで、私がこれから言うのは大胆で、お前は何を言っているのだと言われるかもしれないけれども、二元論ではなくて、例えば、民間の第三者機関で大きなことを決めるよと、窓口の役人が威張らない、小役人がつまらないことで威張らない、そういうことを防ぐためには、民間の第三者機関ならいいと。しかし、よくよく考えてみれば、それで本当に大丈夫か。民間の第三者機関をつくる、そこで裁くことにする、世論受けは数年間は間違いなくいい。どうせボロは出ると思うけれども、それは当面しのげるからそれでいいんです。しかし、同時に、税金のことで話を持ってくるなら、さっき申し上げた自称公益法人もあれば、税法上の公益法人もあるというふうに申し上げたけれども、そういうふうに考えれば、民間機関の中にそういう税法のことについて特に面倒を見てちょうだいよという人が現れてくれば、それを分科会か何かで裁かないといけないですね。裁いた上で、上の財政機関がOKだ、だめだということを言うわけだから、税金のことについて考える部会なり専門部会をつくって、そこに国税庁の職員が入ってくるのはやむを得ないと思います。税金専門の学者だけ集めたってだめですよ。必ず邪魔するから。つまり、大筋全部民間で結構だし、金はどうするかなんてそんなことは別に考えてもらえばいい。しかし、実際の税金のことに関していけば、そこに財務省の役人が入ってこなければ、現実問題として有効性を持ち得ない。私の言っていることは極めてリアルな話です。現実的な観点から考えたらどうなるかということで考えているということだけです。

○ 今お話がございましたのは、まさにそうなのですが、今のような信任機関みたいなものを官だけでやるか、民だけでやるかというような二元論になっていますが、選択肢としてはまだほかのやり方が私はあると思います。それから、おっしゃるように、そこの中に国税庁の方を入れておくということも可能だと思うのですが、それはこれから論議して、最後のペーパーをまとめるときに入れる知恵ではないかと思います。

○ 皆様がおっしゃったことのある程度繰り返しになるかと思いますけれども、実際に現行の制度で何が起きているかと、国が判断していると一体何が起きるかということを少しお話しして、皆様のこれからの議論の参考にしていただきたいと思っております。例えば、私どもは外務省の所管で特定公益増進法人というものになっているのですけれども、ここで誰が審査しているかといいますと、私どもは30年の活動をしておりますが、実際に担当する事務官というのは他省から出向している方が多く、私どもの活動についてはほとんど知らない人が担当することになります。要するに、外務省プロパーの人は外交のいろいろなものがあるから、お前やっておけというような感じで、ほかの省から来た人に任せている。そうすると、一から説明しなければいけないというようなことが実際に起こっておりますし、それから、これがまた非常に不思議なのですけれども、実際に審査される財務省の方が公益法人の決算報告の読み方を御存知ない、それに基づく非常に不思議な質問がどんどん出てくるというようなことも起こっているわけですね。
 ここで私が今、申し上げたいのは、○○委員がおっしゃったことの追加になるのですけれども、やはり何かを判断するときには公正性とか中立性ということのほかに、やはり専門性と継続性で一体今までどういうようなことに対して本当に判断してきたかというものが、どこかに蓄積されなければいけないし、いろいろな省庁によって判断の結果が違ってくるというのもおかしいことだと思います。
 他方、多元化が進んで、多様な価値観があったりいろいろなものがあると、それはそれとして、すべてに該当する1つの判断主体とか基準というものがあり得ない世界になってきていますので、そうすると、今度は判断する人たちが常に原点に戻るということができるような人たちでなければいけないと思うのです。原点とは、何のためにこの法律ができたのか、何のためにこういう措置がとられているのか、それから、ここの団体は一体何をしようとしているのかという、そういう大きな見地から判断できるような人がいなければいけない。そうすると、本来業務を抱えている所管省庁の人が片手間で何かを判断するということでは、全く不十分なことになると思います。
 あともう一つ、実際において必要だと思われるのは、判断を受けた方の者が、それに対して不服があるときに申し立てるような仕組みというものが絶対に必要だと思います。例えば特定公益増進法人でも、文句を言うと、財務省にいじめられるから言わずに黙っている人が非常に多いわけですよね。決定を引き延ばされるとか、出してもらえないという恐れを抱くようになっています。そういう非常に不健全な状況というものは打破する。そのためには客観的なクレーム、申立てを受け付けるところが必要だと思うのです。それは市民、団体の側からだけではなくて、反対に国の側からも申し立てることができるとか、おかしい活動をしているということに対しての疑義を申し立てるものが仕組みとして必要ではないかと感じます。

○ 本当におっしゃるとおりだと思います。最初の点は○○委員がおっしゃったことと同じでありまして、また、現状の問題点というのは皆さん痛いほど分かっている方々でございますので、では、それを公正・中立で、しかも、先ほど○○委員が言われたように、時代が変化するごとに柔軟に対応できるか、更に継続性みたいなもので積み上げていくことができるかというような、そういう機関が一体あり得るのかどうかということが、次の回の中心になってくると思いますので、そのときまでにお互いにもう少し勉強して持ち寄ることが必要ではないかと思います。

○ 今おっしゃった次の回と言われたことに及んでしまいそうなんですが、○○委員がさっきおっしゃったような構想が、官と民とで共同責任をとるという組織のあり方としては一番いいのではないかと私は個人的には思います。これは端的に言ってしまえば、アメリカ型の行政委員会でして、要するに、準立法的な機能と準司法的な機能を併せ持ったような行政委員会でして、これは現在でも公取とかそういう幾つかのものがありますが、第二次大戦後はアメリカ法の影響でたくさんできたのですが、次々に廃止されてしまって現在はごく少なくなっておりますが、本格的な組織を考えるとしたら、それが一番いいのではないかと思います。そして、今までの統計資料を見てみて、どこの役所が一番そういう公益法人の許認可に関わった度合いが少ないかというところを見て、そういう役所にそれを置くとか、そういうやり方をするという、それが1つの有力な選択肢だと思います。
 それから、もう一つは、私はこういうものは1つだけの案だと、それが受け入れられないと全部だめになってしまっても大変ですので、さっきの税制適格法人といいますか、そういう発想も1つの発想としてはあり得ると思うのです。そうすると、この前お返事があった点ですが、一般私法の中の制度として公益法人という制度を残すのかどうかという点から見ると、恐らく残らなくなってしまうということになるかもしれないですが、私個人としては残した方がいいと思っています。仮に税制適格法人という発想でいきますと、やはり非課税の公益法人の範囲とか要件、これは法律できちんと規定しておかなければ租税法律主義に反しますから、そうする必要があるのですけれども、しかし、執行の段階で国税庁がそういうことを本当にできるだろうかという、これは非課税の団体であり、これは課税の団体だという、言わば公益法人の範囲を本当に現業の行政機関である国税庁ができるだろうかという疑問は感ずるのです。そうするとやはり国税庁に何か委員会を設けて、そこで判断する、そして、民間の人がなるべくたくさん委員として入る、あるいは調査員として入るというようなやり方だと思いますが、そうすると、発想としては、さっき言った一番いい発想とこの税制適格法人の発想でも、やはり官と民の要素を加味した委員会制度ということは共通なのではないかという感じがいたしました。

○ 先ほどのお話の誰が認定機関になるかということがあるわけですが、実は、その方々は公益法人を認定する方々ではなくて、その方々が日本の公益を実現する人たちなのですよね。まず、そういうふうに考えていただいた方が私はいいのではないかと思います。

○ なるほど。

○ それから、もう一つは、今まで公益法人の認可に余り関わらなかったところというのは、多分私の記憶では前の経済企画庁ではなかったかと思います。こっちはその後NPO法人の設立の中心になったわけですけれども、たしか以前はそういうことではなかったかと思います。

○ 今は、経済企画庁はどこの省庁に……。

○ 内閣府です。ですから、同じようなことになるので。
 それから、私が○○委員に伺いたいのは、今、○○委員からアメリカ型の認証機関というお話があったのですが、ついこの間イギリスを見てこられたので、イギリスの状況を少しお話いただけませんでしょうか。

○ 昨年夏の終わりにイギリスへ参りまして、チャリティ制度を、ちょうどイギリスでも制度改革の途上でございまして調べてまいりました。今はまだ変革の途上ということなのでございますけれども、イギリスではチャリティ・コミッションという、一応、組織的には政府の内務省にぶら下がっているという形なのですが、大臣の指揮は受けない、報告だけするというような関係の独立機関という認識でございました。信託とか公益信託、人格なき社団とか、あるいは法人ですと有限責任会社の組織がチャリティをやりたいということで申請すると、チャリティ・コミッションで、これはチャリティであると、専ら申請する対象はどういう目的で何をやるかということでチェックしてしまうのですけれども、それでOKということになりますと、自動的に税制も優遇される。イギリスの場合は税制の優遇も非常に大きくございまして、そういうチャリティに対する寄附というのは法人の場合は全額損金算入可能、個人の場合は全額所得控除可能ということでございますので、税金をゼロにするまで寄附できるという制度になっております。
 更に、そのチャリティ・コミッションでは、チャリティを監督するという権限を持たされておりまして、定期的な報告を受けたり、あるいはどこかからこれはおかしいという情報が入ったら検査をして是正させる、あるいは最悪の場合はやめさせるといった権能まで持っているという組織でございます。
 イギリスの場合、チャリティ法ができたのが40年ぐらい前らしいのですが、今見ているところですと非常にうまく機能しているなと。それは、税務当局も政府も、それから、一般の国民もチャリティ・コミッションの機能というものに非常に信頼を置いている。チャリティ・コミッションがうまく機能することによって、イギリス全体のチャリティ、チャリティというのは日本の場合で言うとNPOに近い団体がほとんどなのですけれども、それが非常にうまく機能していて、政府の公的な活動の分野でそういうチャリティが補助金を受けて、いろいろな活動をやるというのはたくさんあるのですけれども、社会として非常にうまくワークしているなという感じがいたしました。

○ それは民間の機関ではないのですね、役所なのですね。

○ 一応、内務省の政府組織ということ。ただ、内務大臣の指揮は受けない、報告だけすると。

○ 役人がそれをやっているわけですか。

○ 向こうの場合は、一応役人ではあるのですが、チャリティ・コミッションに就職するわけです。日本の場合のようにお役人がどこかで行き来というのも勿論ありますけれども、民間の方からチャリティに入ったりする方もいらっしゃいます。

○ 委員長とか委員は、どのような方々なのですか。

○ かなり地位の高い方で、コミッショナーという言い方をします。

○ 委員長ですね。

○ そうですね。日本流に言うと委員長になると思います。それを今度増やそうという改革案が出ています。コミッショナーを増やして、監督権限を強化しようと。

○ もう一つは、たしかチャリティの定義が幾つかあったわけですね。カテゴリーといいますか。

○ もともと貧困救済といったようなところから始まって、宗教活動を推進しましょうといったようなところで、判例法の国でございますので、チャリティ法はそんなにたくさん書いていないのですけれども、今度のチャリティ改革では、できるだけ国民によく分かるようにしたいということで、基本的な公益の判断そのものはチャリティ・コミッションがいろいろな過去の事例を積み重ねながら判断していくということなのですけれども、ある程度やはり分かった方がいいということで、チャリティの対象となる事業内容につきまして、今度12の項目を挙げて、学術振興とか宗教の普及とか芸術・文化の保護というような項目が挙がっているのですけれども、そういうものを法律に書き込んでやっていこうという方向で今、改革が進んでおります。

○ 今伺っていますと、チャリティの発想というのはアメリカの行政委員会制度と多分に共通性を持っているように思いますけれども。

○ そう思ったのでちょっとお聞きしました。

○ そうですね。それで、要するに法律でいろいろ規定するとしても、その下で準立法的な機能で規則や準則を定めるというような権限と、それから、そこで決定したことに対して不服がある人は不服を申し立てて、それを裁定するための準司法的機能を併せ持つ、そして、そこから不服なら裁判所に出ていくというような……。

○ 今は不服のある方は裁判所に行くのです。

○ 直接行きますか。

○ でも、裁判へ行くと、ちょっと手間が掛かり過ぎるので、裁定裁判所というトリビューナルというものを新しくつくろうという方向で今、改革の検討をしています。

○ 行政機関の中の裁判所ですか。

○ どうでしょうか、簡単な裁判所というようなイメージで理解しておりますけれども。

○ どうもありがとうございました。

○ 税金の扱いについて、日本の財務省、国税庁の人たちが考えている税法上の公平の問題があって、そう簡単にむやみやたらと優遇しないよという固い立場にいるわけです。財務省は伝統的にそうだから。ただ、それが余りにも一面的でという批判をずっと浴びながらここにまで来ているわけです。だから、○○委員が持っていらっしゃる資料については、あの国にはあの国の長い伝統があってのことだし、日本にすぐそのような文化が来るかどうかというのは分からない。これは文化の話だから分からないのだけれども、今、国税庁の職員が持っているような基準に比べて、こういう基準で公益事業をやるならまけてやるよという話だと、イギリスがやっているのは相当差があるような印象を受けました。それがしっかり分かるようなデータを事務局は持っていますか。持っていたら、それを教えてもらいたいのです。財務省の役人とやるときには、それが1つのベースになるのですよ。簡単にはいかないけれども。

○ その税制は2000年4月から改正されて、幾らでも損金処理していいという制度になりました。

○ それは大分違う。基本的なスタンスが違う。

○ 今の首相と財務大臣と内務大臣が、チャリティについて非常に積極的な考え方を持っていて、政策的にそれを推進しているという背景があるようです。

○ もともと私たちのやっている別の企業メセナ協議会があるのですが、このお兄さんはフランスのADMICALで、その親分はイギリスのABSAなんですよ。ABSAの会長というのはコーリン・トゥイディーといいまして、コーリン・トゥイディーがチャリティ・コミッションの中の重要な役割をして、今度は法律の改正とともに、ABSAというのはA&Bという、Arts & Businessという協会になったのですけれども、そういうふうにかなり民間の力が入っているのではないかと思われますけれども、いかがでしょうか。

● 補足でよろしいでしょうか。先ほどお話ししたとおり、イギリスも含めた諸外国のベーシックな横並びの制度比較を出したいと思っているのですが、ただし、そのチャリティ制度だけを取り出してきちんと詳しく話すのは、他にそういう専門家がおられないかどうか、別に我々のスタッフではなくて、ちょっと検討してみます。

○ 財務省の主張には公平論がベースにある。優遇するだけの理由が明快になければ、ほかの納税者に申し訳ないという話になる。これを論破するのはなかなか容易ではない。イギリスの場合は長い長い年月を掛けて積み上げてきて今日に至るわけでしょう。

○ そうですね。

○ 日本は、まだ始めたばかりなのだから、すぐにこれを持ってくることも難しいと思います。

○ 私は余り宗教論というのに賛同しないのは、かつて10年ぐらい前に、日本にはボランティアというのは絶対育たないという説がありましたね。多くの評論家がそういうことを雑誌や新聞にお書きになったわけです。私はそんなことは絶対ないと思っていて、何のことはない、神戸の震災で130万人でしたか、160万人のボランティアが行った。あれが日本のボランティア元年という、1995年ですね。それから、福井のナホトカ号の重油流出事故だとか雲仙だとか三宅島とか次々と続いたわけですが、結局のところ、ボランティア運動というのは今、諸外国に引けをとらないような国になってしまったのです。ですから、私は余り宗教論というのは与しない方でして、むしろ社会的な動向といいますか、特に、若い人たちの考え方というものでそれが動いていくのではないかと思うのですが、余計なことを申しました。

○ 追加で、税金の話でもう一つ衝撃的なものがありました。ペイロール・ギビングという制度がございまして、これは個人が天引きである団体、チャリティに寄附をしたいということをやりますと、なんと政府が寄附するお金に税金から10%上乗せをして、その団体にやろうという制度がございます。これは時限でございまして、たしか期限が切れたのですが、私の記憶している限りでは今も継続して、延長してやっておるということです。ともかく、驚くべき税制ですね。

○ 1点質問とイギリスに関しては補足なのですが、確かにお話を聞くと、イギリスは素晴らしく聞こえてくるのですが、一方で、ディード・オブ・コヴェナントというシステムがあって、非常に煩雑な税金の還付のシステムがあって、それゆえになかなか寄附が集まらなかったと批判されていた時代もあるということは事実として付記しておきたいと思います。

○ その法律はなくなったわけですね。

○ でも、長い歴史があったということで。
 それから、1点質問なのですが、登録チャリティとして認めるためには、法人格は必須ではないと言われているのですが、これはどう解釈したらいいのでしょうか。

○ 人格なき社団でも、それから、イギリスで非常に多いのは公益信託の形の団体が多いのですが、やっている活動が公益的な活動、例えば救済をやるということであれば、これはチャリティに合致するので、チャリティ登録をしたいということでチャリティ委員会に申請書を出します。そこでOKが出ると、番号とチャリティを名乗るという資格ができるわけです。それでもって自動的に、たしか設立時に遡って税務的な非課税、向こうは免税と非課税という両方の区分けは無いのですが、非課税になるというような制度ございます。勿論、法人の方がいろいろ代表者の責任を有限にできるといったことがありまして、最近は法人でつくられるのが多いのですが、これは保証有限会社という形でつくっておいて、それをチャリティ申請するということになって、法人がチャリティとして認定されると。ただ、そういう会社法上の会社という法的な存在と、チャリティという存在が重なってあるという形でございます。それで余りに不便なので、今度の改革では日本の社団法人あるいは財団法人に相当する公益法人専用の法人制度をつくろうということで、これはその方向で進むのが確実だと見られています。

○ 1つ伺いたいのは、今、番号制度と言いましたが、個人の納税番号はあるのですか。それとの関連も確かめておかないと。

○ チャリティとしての番号が付与されているということです。

○ だけれども、個人でもチャリティになれるというのでしょう。

○ 個人単独ではなくて、団体としてですね。人格なき社団として登録される。あるいは公益信託として登録されるということです。単独の個人ということではないように理解しています。

○ 分かりました。英米モデルというものも1つあり得るということで、今日は認識しておきたいと思います。

○ 1つは、感想みたいなことでここで申し上げるまでもないことですが、国税は非常にリジッドにきつくということをさっき○○委員がおっしゃいましたけれども、そのとおりですが、税に関してはある程度無駄を許容するという姿勢が必要だと思います。
 一方で、税金として集めたものの使い方を見れば無駄はいっぱいあるわけですから、こんなものは人のことを言う柄ではないだろうと、私は言ってもいいのではないかと思います。これは単なる感想で、ここで言うまでもない話だと思います。
 もう一つは、イギリスについて○○委員なり、恐らくイギリスについて詳しい方が委員の中にもいらっしゃると思いますので、次回以降資料としていただければと思うのですが、1つは、審査の仕方です。一人当たり年間どれくらいの審査をしているのか、やはりかなりの分量になると思いますから、それは実務的には詰めておかないといけないのではないかと。結果的にかなり大きな役所ができたのでは困りますし、どうなのかなと。
 それから、さっき○○委員がおっしゃった、やはり世の中の役に立っているかどうかというのはローカルに見ていかないとなかなか分からない、そのとおりだと思います。また、違う例を出しますと、銀行が企業に金を貸すときには、支店単位で見るか、あるいは信用金庫のような本当に目に見える範囲でないとなかなか分からないわけですから、担保があるからということでどんどん貸すと、バブルのようなことが発生したわけですから、そこのローカルに見える仕組みをどうするのか。イギリスの場合には、それはチャリティ・コミッションというところでやっているわけですけれども、そういうローカルなところがどの程度見えるような仕組みをとっているのかというのを是非教えていただきたいと思います。
 それから、最後の、今出ました法人格については、私は日本でも税の世界では法人格はあってもなくても、いわゆる人格なき社団ということで、法人格がなくてもある程度まとまった活動を行っている団体であれば、それは法人格があるものとみなして、そこに税金を掛けているわけですから、逆に言えば、それに対して法人格はなくても税金を掛けない、あるいはそこに対する寄附は控除するという仕組みが本当はあってもいいのだと思います。日本の場合には全体の法体系の中でも整合性の問題になりますけれども、今の税制から言っても、それは本当は無理ではないのではないかと思っています。

○ また、○○委員にお答えいただくにしても、かなり細部にわたるので、公益法人協会が調査団を出して行っているわけですし、それから、こちら側で調べられることもあると思いますので、今の英米型モデルということも1つの参考にするために、次回お出しして、また、今の○○委員の御質問にも答えられるようにしていただきたいと思います。
 それから、もう一つ、○○委員の言われたフランス型モデルというものもあり得るのですよね。これは多分イタリアモデルにも近いのですが。それも考えておく必要があるのではないか。もし、外国に学ぶならばあるのですが、もう一つ学ぶ必要はない、もっと理想的な日本型モデルというものを構築することが、私たちの力でできるかどうかということも問われているのではないかと思うわけです。

○ 意見とお願いと1つずつなのですが、意見は今の御議論ではっきりしてきたのは、判定主体の機関としての位置付けと、構成員がどういう人であるかという2種類の問題があるということが分かってきたと思うのです。その機関の位置付けとしては、法律で決めるという以上、やはり公的なものになるだろうと。しかし、そこを組織する人に民間の考え方ができるだけ反映するようにするということは両立可能ではないかと感じました。これが意見です。
 それから、もう一点のお願いは、もし、イギリスモデルを御調査いただくということになりますと、登録の段階でたしか内国歳入庁との事前の協議というか意見を徴するという手続が入っていると思うのですが、そこの具体的なやり方というのは私も前に調べたのですけれども、どうもよく分からないのです。そこで、その内国歳入庁が一体どういうふうに関与しているのかということが分かれば有用ではないかと思いました。

○ 私も記憶がはっきりしていないのですが、内国歳入庁とチャリティ・コミッションの関係は、チャリティ・コミッションに書類が提出されると、それが2部コピーになっていて、1部が内国歳入庁の方に送られる。何かそこで問題があった場合にのみ、チャリティ・コミッションとの間で協議がなされる。しかし、実際には年間数件しか問題は起こらない。
 先ほどのお話にもありましたけれども、日本で実施に移した場合に課税庁との間で問題が生じるのではないかということなのですが、きちんとした第三者機関で、ある原理に基づいて判断されたら、それに対して課税庁の方からクレームが出るというのは、私はそんなに多くないのではないかと思うのです。

○ いよいよ議論が佳境に入ってきたところでありますが、次回、更に仕組みについて皆さんに御議論を進めていただくわけでございますけれども、今日は予定の時間になりましたので、ここで打ち切らせていただきまして、次回までに今の○○委員の御質問、そのほかも含めてお答えできるようにして、また、皆さんからの追加の御意見があれば頂戴していきたいと考えております。
 それでは、事務局から次の日程、そのほかについてお願いを申し上げます。

● 次回の日程でございますが、資料4でございます。次回は3月10日水曜日、午前10時から12時半までを予定してございます。場所はこの会議室で。議題につきましては、公益性を取扱う仕組みのあり方第2回目の御議論ということで、本日お配りしている資料3−3、資料3−4、判断要件のあり方、適正運営確保のあり方についても新たに御議論いただきたいと思っております。
 以上でございます。

○ というわけで、また、この続きをただいまの熱気を冷まさないように次回に持ち越していただきたいと思います。
 今日の会議はこれで閉会させていただきます。会議の内容でございますが、これまでと同様、これから簡単な記者会見をいたします。
 今日は本当にお忙しい中、御出席をありがとうございました。この次もよろしくお願い申し上げます。


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