第5回 公益法人制度改革に関する有識者会議

−議事概要−


1.日時:平成16年2月23日(月)9:30〜12:30

2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室

3.有識者会議出席者

(座  長)福原義春((株)資生堂名誉会長)
(座長代理)能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
宇賀克也(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
加藤秀樹(構想日本代表)
金子宏 (東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(岩原紳作東京大学教授は所用により欠席。)
(50音順)
(政府側)堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官

4.議事次第

(1)非営利法人ワーキング・グループの検討状況報告(能見善久非営利法人ワーキング・グループ座長)
(2)新たな非営利法人制度における公益性の位置付けについて(3)
(3)公益性を取扱う仕組みのあり方について(1)

5.議事概要

(1) 非営利法人ワーキング・グループの検討状況報告(能見善久非営利法人ワーキング・グループ座長)
 能見非営利法人ワーキング・グループ座長から、非営利法人ワーキング・グループにおける検討状況について資料1に基づき説明があり、その後、質疑応答を含め、討議が行われた。主な内容は次のとおり。

[検討状況に係る報告について]
  • 一般的な非営利法人の中には、公益的な活動を行う団体から私的な利益を追求する団体まで幅広い団体が含まれるため、一般的な非営利法人についての統一的、積極的な意義を見出すことができるのかを検討している。その中で法人の活動内容に着目する考え方や、活動の内容に着目するのでなく、団体の自由活発な活動を促進するといった考え方等が議論されている。
  • 新たな非営利社団法人制度の設計に当たっては、自由で柔軟な活動を行うことができるよう、法人自治の下できるだけ自由度の高い制度とする方向で検討している。
  • 財団法人については検討を始めたところであり、現在、非営利財団の準則設立を認めるかどうか議論しているところ。
[検討状況に係る質疑応答について]
  • 非営利法人の社員は出資義務を負わないとあるが、現在増えつつある出資型のNPOは非営利法人になれないのかとの質問に対し、法律上社員に出資義務を課すものではないということであって、定款で社員に出資を求めることは妨げない、ただし、その出資が持分になるものではないとの回答。
  • 現行のNPOと非営利法人とはどちらが自由で柔軟な法人制度になるのかとの質問に対し、その両者は理念的に異なるものであり、NPOは公益的な活動を行う団体という性格を有し情報開示や事業の報告などを積極的に行う必要があるが、非営利法人は私的な利益を追求する団体であり情報開示もそれほど徹底しなくてもよいものになるのではないかとの回答。
 
(2) 新たな非営利法人制度における公益性の位置付けについて(3)
 前回に引き続き、「新たな非営利法人制度における公益性の位置付け」(資料2)について討議が行われた。主な意見は次のとおり。
  • 公益性を判断する基準について、どのような判断主体であれ、裁量を少なくし、客観的で、国民に分かりやすいものとすべき。目的、事業内容、組織要件や規律を具体的に規定していくことが望ましいのではないか。
  • 非課税となるなら、よほどしっかりした法人でないといけないというのが普通の考え方。このため、公益性の要件が大きな問題となる。それがあまり緩やかな要件となるなら、非課税とならず、さらに追加的な要件を非課税のために作るのかという問題もある。よく議論すべき。
  • 今後の社会で非営利活動が重要であることを考えれば、準則主義で法人格が取れるということだけでなく、何か他のメリットが必要ではないか。
  • 非営利法人のメリットという点では、仮に税の恩典がないと営利法人と同じになってしまうが、@営利目的でないことを訴え、社会からの共感を得る、A営利法人制度は債権者保護の観点から「重い」規定を置いているが、非営利法人は、そこまで重い規定を置かなくてよいのではないか、といったものが考えられる。いずれにせよ、手軽に柔軟に使えることがメリットとなるのではないか。
  • 公益性のある非営利法人は、いったん非営利法人にならないと公益性の資格を得られないのか。非営利法人となった上で、公益性の資格を得るという方法の他に、準則というわけにはいかないのだろうが、いきなり公益性のある非営利法人になるという選択肢があっても良いのではないか。
  • 公益性の資格を得るためには、まず非営利法人となるのであり、いきなり、公益性のある非営利法人になるというのはどうか。時期としては、非営利法人の設立と公益性を得るのが同時でも良いが、制度としては、まず非営利法人となるということなのではないか。
  • 法人格を取ること自体は資格でもなんでもなく、これがある種のお墨付きとして捉えられるというのが問題だと考える。また、企業の設立と上場の関係が、非営利法人と公益性の付与のあり方について参考になるのではないか。公益性については、形式的な要件と実績の要件の両方が必要であり、形式的な要件のみで良いとするなら、入り口の段階で公益性があるものとないものを分ければよいという議論になりかねない。また、客観的で明確な要件という考えは理解するが、法律である以上、細かく決めたとしても、抽象的な部分は残り、その点で裁量が伴うことになるので、議論が必要だと思う。
  • 非営利法人が営利法人より一段上と捉えるのはおかしく、企業は立派なことをやっている。非営利だから良いものと決めつけるのは偽善ではないか。NPOでも問題なのがある。美化すると足元をすくわれる。
  • 非営利法人になりたいという社会的ニーズは増えている。その多様性を踏まえれば、非営利法人とするハードルは低くすべき。また、公益性を名乗れることは、社会的な評価を得ることができ、人的、地域的資源の活用やそこで働く人の動機付けという点でも意義がある。したがって、非営利法人の中で公益性のある法人を残してほしい。また、非営利法人を登記する段階でも、要件が整えば早い段階で公益性を名乗れることが重要。その上で、事業の評価を行うべき。今までのように設立段階での判断を重視するのではなく、法人格を取った後の事業評価が重要。税制上の措置は、あればなおよいが、必ずしも一体でなくてもよいのではないか。
  • 実績要件は重要と思うが、どの段階で要件とするのかが問題。実績要件がないと公益性を得られないとすると、設立後すぐには公益性のある法人になることはできない。他方、定款、組織等一定の要件を備えれば、税がどうなるかは別として、公益性を名乗ることができるとする考えもある。また、非営利だから偉いとは自分は考えていない。私的な利益や共益を追求することに対して、法人格を与えるものと考えている。ただ、このような私益や共益を目的とするものと、公益を目的とするものが非営利の中にまとめられるので、どちらに引きつけてとらえるかにより見方は変わり得るだろう。
  • 公益性を得るための要件と、公益性が維持・確保されるための要件は分けて考えることが可能であり、この点は、次回に議論されることになっている。また、非営利の概念を偉いものと捉えないという点に自分は同感だが、ただ、これは法律家の視点であり、一般的には「非営利」に積極的なイメージを持たれることが多いというズレを認識すべき。
 
(3) 公益性を取扱う仕組みのあり方について(1)
 事務局から、資料3−1及び3−2について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。

資料3−1 基本的な考え方について]
  • 公益性に着目した区分については、専ら税の観点から行うというのでは対象も理念も狭くなってしまい適当でなく、税制以外の社会的な意義を考えるべきではないか。国等の機関が公益性の判断を行わないというのは考えられなくはないが、例えば、税などには信用付与の効果が伴うので、国等が環境を整備して支援するという発想で何らかの関与をすべきではないか。
  • 税の優遇を考えた場合に、公でない組織が判断することはあり得るのか。
  • 政府、学識経験者と民間を含めた委員会組織のような判断主体もあり得るのではないか。
  • 自由に考えれば民間が公益性を判断するということも不可能でないが、従来はなかった。公益法人類型を法律に設けるのであれば何らかの公的機関が判断するのが通常だが、公的な機関の関与の仕方には色々あり得る。
  • 自称公益法人を自由に認めるという考え方もあるかもしれないが、税の優遇をしようという場合には、財務省が絡まないと困難。
  • 自称公益法人とはいっても、法律の要件を満たしたもののみが名称を使用できる。準則の公益法人を考えることは不可能ではなく、事後的に調査や情報開示を要求して社会的に監視することなどと組み合わせることも考えられるのではないか。
  • 国等の機関が公益性を判断することにより社会的信用を高めるという発想をなくしたい。一方、例えば税を優遇するには、課税庁が判断することになるが、法的なルールが必要で、これは国が作る。そこに矛盾する要素があり難しい。また、例えば、我孫子市では補助金をつけるときに委員会による公募制をとっているが、何か参考になるのではないか。
  • フランスのように、私人が公益活動を行いたいというときに、法人格として結実するようになってほしい。公益性の判断の時期と要件の関係については、一定の要件が整った段階で、設立登記後すぐに公益法人の呼称を付与してもよいのではないか。その上で、事業実績の判断などを踏まえ、課税の取扱いなどを決めたらよいのではないか。
  • 自分はフランスの法人の出納長をしているが、税務当局の監督は厳しい。税が絡むと当局の裁量行政になり、フランスの法人もやりにくいという面もある。
  • 今の公益法人に関する主務官庁制では、やりたいことができないというのが問題。事後的にチェックするという方が改革の趣旨に適っているのではないか。
資料3−2 判断主体について]
  • 公益性の要件は概念的なものにならざるを得ないが、個々の判断は、社会の変化に対応したものである必要。また、公益性の判断を課税庁に委ねるのは適切ではなく、第三者機関が望ましい。そうした専門の組織で公益性の判断事例を蓄積していくことが重要。
  • 判断主体について、設立時の判断と、実績段階の判断とが同一の機関である必要があるのかどうか。また、実績については、恩恵を受ける市民に近いところで判断すべきではないか。
  • 官のお墨付きという考え方からの脱却は必要なのは分かるが、民間機関でうまく対応できるのか。税を念頭に置けば、民間第三者機関の場合は、例えば、税との関連を考える専門部会を作り、そこに国税庁の職員が入ることまで必要かもしれない。税金のことに関する限りは税の裁きを適切にできることが必要なのではないか。
  • 判断主体には、専門性と継続性が必要で、常に原点に戻り、高い見地から判断できるようにすべき。本来業務が別にあり、片手間で公益性判断に携わるようなことは不適当。また、判断を受けた者等が不服を申し立てることのできる仕組みが必要ではないか。
  • 判断主体については、@準立法・準司法的機能を持つアメリカ型の行政委員会とする考え方や、A現行の公益性判断の関わりが少ないどこかの官庁とする考え方の他、B税制適格法人という考え方などがある。本格的な組織を考えるのであれば@がよいのではないか。Bの場合は、要件等を法律で規定することが必要だが、現業部門の国税庁が判断可能か疑問であり、国税庁に民間人が入る何らかの委員会を設けて公益性を判断することも考えられるのではないか。
  • 英国のチャリティ委員会は内務省下の組織だが、大臣の指揮は受けず、報告のみ行い、他方チャリティに対しては監督権限を有している。チャリティ委員会の仕組みは、税務当局、チャリティとの関係も含めて、全体として非常にうまく機能しており、公益的活動を活発にしている。
  • 英国ではペイロール・ギビングという時限の制度があり、個人が天引きでチャリティに寄附すると、政府がこれに10%上乗せする仕組みが今も延長されていると聞く。
  • 英国は長い伝統と文化を持ち、日本と状況が相当違うことに留意すべき。
  • ただし、久しく日本ではボランティアが育たないと言われながら、阪神大震災によるボランティア元年以降、現在の状況にあることを考えれば、社会的動向のいかんが重要で、例えば、宗教的背景の違いといったことで片付けることは疑問。
  • 英国の仕組みは素晴らしい部分もあるが、かつては複雑な税の還付の仕組みがあり、それゆえ寄附が集まらなかったと批判されていた時代もあったことを認識しておくべき。
  • 英国のチャリティになるには法人格は必須ではないとされているのは、法人格なき社団や公益信託が公益活動をしている場合にチャリティに登録できるようにとのことではないか。
  • 日本でも、税の世界では法人格がなくとも、まとまった団体が収益活動をしている場合は、法人とみなして課税しているのだから、逆に、人格なき社団を非課税にするという考え方があってもよいのではないか。
  • 判断主体については、@その機関としての位置付けと、A構成員がどういう人であるか、という2種の問題がある。判断主体は法律で決める以上、公的なものになると考えられるが、構成員については、民間の考えが反映されるようにすることも可能ではないか。

(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)


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