第4回 公益法人制度改革に関する有識者会議

−議事概要−


1.日時:平成16年2月4日(水)10:00〜12:35

2.場所:虎ノ門 第10森ビル3階会議室

3.有識者会議出席者

(座  長)福原義春((株)資生堂名誉会長)
(座長代理)能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
岩原紳作(東京大学教授)
宇賀克也(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
金子宏 (東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(加藤秀樹構想日本代表は所用により欠席。)
(50音順)
(政府側)堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官

4.議事次第

(1)識者ヒアリング(星野英一東京大学名誉教授)
(2)新たな非営利法人制度における公益性の位置付けについてA

5.議事概要

(1) 識者ヒアリング(星野英一東京大学名誉教授)
 星野名誉教授から「法人制度上「公益性」を判断する意義、「公益性」を有する非営利法人の捉え方」について資料1に基づき説明があり、その後、質疑応答を含め、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
  • NPOや公益法人を実際に運営する際には、会員を維持し、活動する気になってもらうため、会員やボランティアに対する一定のインセンティブ・特典を付与するということをやっているが、このことは、不特定多数の利益の不特定という点からどう捉えればよいか。
  • 法人として、不特定の人のために活動していることが求められるのであり、自分たちのためだけの活動なら中間法人になってもらわなければならないが、不特定を対象とした活動を行う過程においては、そのために働く者を法人内部で養成するなど、構成員を対象にした多少の活動があってもいいということではないか。
  • 有識者会議では、NPOを横に置いて非営利法人制度を作り、その上での2階建てをどうするかについて議論をしようとしているが、このような枠組みを作った場合、誰がどのように新たな制度を利用しようとするのか。
  • 公益法人について理想的なものをまず考えるべき。公益法人にも色々な問題があるし、現在存在する公益法人のかなりの部分が中間法人になるべきと考えている。また、公益法人は、法律上、厳しい規制を受けるべきと考えている。公益法人をまずきちんとすることが必要。その上で、NPOを含めて再整理する必要があるかどうかは後で考えれば良いのではないか。
  • 一般的な非営利法人制度を作るより、公益法人法をしっかり整える方がよいということを前提にしているのか。
  • 公益法人法を作った方がよいというわけではない。ただ、非営利法人制度はワーキンググループで検討することとなっており、親会議の検討内容としては、非営利法人制度の中から、公益的なものをくくり出すということだと聞いていたので、立法論を中心に議論を絞ったもの。どちらがいいということではない。
  • 準則だから課税という根拠は十分理解できない。準則でも、きちんとしたものであり、公益のみを目的とするのであれば税制上の措置があっても良いのではないかと個人的には考えるが、この点はいろいろな議論があるところと思う。
  • 非営利法人制度を作るべきという前提で、その中で公益的なものをどうくくり出すかが問題となるが、非営利法人全体をどのような統一的理念でまとめることができるか苦慮している。非営利には、構成員の私的利益を追求する共益的なものも入ってくるし、むしろ私的な行為を自由に追求することが社会の活性化につながるという意味で、非営利の基本的な理念として適当ではないかと考えているが、これを公益的なものにどうつなげるかは難しい。
  • 不特定多数を対象にする営利法人の事業の方が、事業という意味では、自分たちの利益を追求する共益的な法人より、公益法人に近いという指摘は興味深い。営利・共益・公益と3つがある中で、非営利でくくる理念についてどう考えるか。
  • 公益的な法人を作るときに邪魔にならない非営利法人制度を作らなければならない。中間法人法を作った上で、非営利法人を作るというのは難しい。本来の立法順序としては適当ではなく、そのために非営利法人制度の作業で苦労されているということは理解する。
  • 非営利の積極的な理念を考えるとすれば、国家ではない個人の自由な活動を盛んにすることが重要であるという考えがあるのではないか。このことが私人の公益的活動を促進させることにつながるといった考えがある。その意味で、大村教授から説明のあったフランスの事例は参考になるのではないか。
  • 法人が本来の公益的な活動を行っていくために、収益事業を行っていることについてどう考えるかだが、収益事業の収益を公益的な活動に充てるということであれば良いのではないかと考える。
  • 法人の事業の内容を具体的に書くことは消極的とのお話があったが、国民に知らせるという意味も含め、公益的な事業の分野をある程度明確に書いておくことが必要ではないか。イギリスのチャリティ委員会の改革でも、従来は4つの分類だったが、改正案では12の目的が掲げられ、その際に「その他地域社会に有益なこと」といった書き方がされ、具体化と一般化の両方を図る工夫がされている。
  • さしあたりはそれがよいのかもしれない。ただ、例として挙げるのは良いと思うが、個別に列挙していくと足りないのも出てくるし、また、問題となる部分もあるのではないか。必要性が変わったときに、法律を変えるのは大変。政令で定めるという考え方もあるが、行政が決めるという意味での問題がある。
 
(2) 新たな非営利法人制度における公益性の位置付けについてA
 事務局から、資料2の1.(2)「公益性を有する非営利法人の捉え方」の部分について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
 なお、2.「法人制度上公益性を判断する意義」の部分については、事務局から説明があったが、討議は次回に行われることとなった。
  • 準則主義により設立される法人には課税ということを前提とせずに議論してもよいのではないか。
  • 公益法人を公益性を有する非営利法人として議論しようとしているが、そのような非営利法人制度を前提とせずに公益法人そのものを議論すべきではないか。
  • 登記だけで公益を有する法人が設立できてもよいのではないか。
  • 一般的な非営利法人制度を創設することとし、その中から公益性をどうくくり出すかを検討するのが今回の改革の議論の筋道。
  • ここではNPOをどうするか正面から検討するのではなく、現在の公益法人制度の問題点を踏まえ、白地から公益性のあるべき姿を考えていくのではないか。その際、できるだけ広く公益性を捉えるべきであって、その結果としてNPOとあり方をどのように調整するのかという論点が出てくるのではないか。
  • 公益性の捉え方については、その理念だけで議論するのではなく、@理念をどう設定するか、Aその理念をどう担保するか、Bそれにどのような効果を結びつけるか、という3点セットで考えるべきではないか。現在ある法人制度との整合性は、理想的な姿を検討した後で検討すべきではないか。
  • 一定の優遇措置を与える法人についての検討は、特に税の優遇措置を受けられるようにするにはどのようなものとなるかとの観点から議論せざるを得ないと思う。その要件は厳格なものであるべきではないか。また、登記官によるチェックだけでは十分ではなく、行政庁の監督に替わる監視の仕組みや活動状況を公開して社会的にチェックする仕組みが必要ではないか。
  • 税の議論をするのであれば抽象的な議論だけでは不十分。また、複数の選択肢を用意しないと建設的な議論にならないのではないか。議論の着地点をよく考える必要があるのではないか。
  • 公益性を有する法人を民法又は民法の特別法で規定するのか、租税法で規定するのかについてできるだけ早い段階で決める必要があるのではないか。租税法だけで規定するのであれば、それは国税庁が個別に公益性を判断するということになると考えられるが、課税庁としての立場も考慮しつつ検討すべきではないか。
  • 例えば、残余財産の分配の禁止・制限は私法上のルールであって、単なる税の優遇措置の条件ではないことを考えると、公益性を有する法人は租税法で規定することにはならないのではないか。
  • 寄付金は別として、もうかったら税金を払うのは当たり前ではないか。もしNPOが儲かるなら税金を支払えばよいのではないか。
  • 利益についての考え方は非営利組織と営利法人とは異なったものであるということを認識すべき。非営利組織の場合、無償のボランティアの労働力が経費として計算されておらず、仮にその経費を計算に入れると赤字になってしまうものも多い。この点、基本的に人件費を計上している営利企業と同じように考えるのは、非営利組織の性格を十分に理解していないのではないか。
  • 公益性の捉え方を検討するに際しては、共益的な活動をどの程度まで認めるかといった視点や、税制上の優遇を受ける視点、更に非営利性に公益的意義を見出す視点などがあり、こうした点について十分に議論した上、いくつかの選択肢を用意し、それぞれの長所・短所を整理することが必要ではないか。

(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)


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