○:委員
●:事務局

第3回 公益法人制度改革に関する有識者会議

−議事録−


平成16年1月23日(金)10:00〜12:30
場所:虎ノ門第10森ビル3階 会議室

○ 皆様おはようございます。寒いところを朝から御出席いただきまして、ありがとうございます。
 今日は第3回有識者会議でございますけれども、佐藤総理補佐官の御出席をいただいております。そして、岩原委員が遅れておいでになると伺っております。場合によってお出にならないかもしれません。それから、宇賀委員は、今日は残念ながら御欠席でございます。
 今日は、午前中に公益法人制度改革に関する有識者会議がございまして、午後は引き続き非営利法人ワーキンググループというふうに盛りだくさんの1日でございます。したがいまして、ワーキンググループに引き続き御出席をいただく委員の方々の御負担は極めて大きいと思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 これから会議を始めるわけですが、会議に先立ちまして、今日予定している議事内容、それから、配付資料等については事務局から御説明を申し上げます。

● 本日の議事と配付資料でございます。最初に、佐藤名誉教授、その次に大村教授から御説明いただきまして、意見交換を予定してございます。
 その次に、改革の意義に関するフリートーキング、改革の意義につきましては第2回目になりますが、資料3として用意してございます主な検討の視点を参考にしていただきながら、改革の意義について御検討いただきたいと思っております。
 それから、残された時間で公益性の位置付けの御議論をいただければと思っております。公益性の位置付けにつきましては、時間の関係もございまして、本格的な検討は次回ということにさせていただければと思いますが、今回はその導入部として公益性の考え方について一般論の御論議をいただければと思っているところでございます。
 12時半ごろまでを予定してございます。その後、昼食を用意させていただいているところでございます。
 以上でございます。

○ ありがとうございました。今回は、前回に引き続きまして、公益法人制度改革の意義について十分に御議論をいただくとともに、残された時間を使って、新たな非営利法人制度における公益性というような分野についても御議論をいただきたいと存じております。
 今日は、早稲田大学の佐藤名誉教授から大変懇切なレジュメととともにお話をいただくことになると思います。御説明がとても30分では足りないというお話でございましたけれども、何とかその後の質疑ほかを含めて、できるだけ有効に時間を使わせていただきたいと存じておりますので、大変失礼でございますが、佐藤先生、よろしくお願いいたします。

◎佐藤早稲田大学名誉教授 佐藤です。今までここで論議なされたいろいろな資料を拝読いたしまして、かなり問題がいろいろ出ています。だから、私が今日話すことが、また屋上屋を架するようなことになる可能性もないわけではありませんけれども、私は法律家ではありません、私は社会学者ですから、もうちょっと広い立場から公益法人あるいは非営利組織というものを位置付けてみたいと思っています。
 時間が限られていますので、早速レジメに沿いながら補足していこうと思っています。
 私のレジメは5枚あります。4枚目は全体を図表化をしたものです。それから、お手元にもう1枚、事務局の方でコピーしていただいた図表があります。「NPOセクターと社会システム」というものです。この図表を説明すれば大体事足りるかなと思いますけれども、それも兼ね合わせながら見ていただきたいと思います。
 まず、第1に、今日の私のテーマが「ボランタリー・セクターと社会システムの改革」という非常に大きなテーマになっています。ボランタリーとは何かというのはまた後で出てきますが、「ボランタリー」というのは日本語で「自発的」。では、自発的とは何かというと、非常にあいまいなところがありますが、ここではボランタリー・セクターというのは「非営利・非政府の市民の自発的な活動セクター」というふうに理解しておくのが一番いいでしょう。レジメの最初に「序」というものがあります。序は大体私の考え方をざっと述べてあるところです。
 最初に、滅私奉公とか官尊民卑イデオロギーの残存と書いてあります。滅私奉公というのも結局は公私混同、つまり自立した市民が成立していなかったところで、公共とか公益の名を借りて特定利益の追求というものが行われてきた。こういう問題がいまだに問題になっています。それから、政官業の癒着構造というのも言うまでもありません。天下り、献金、汚職、いろいろな問題があります。官の許認可権による公益あるいは民益の支配という問題が当然大きな問題としてあるわけです。
 いずれにしても、こういう日本社会に戦前からあるものが、戦後五十何年経っても今なお問題になっている。それがようやく批判の対象になり、改革の目が向けられるようになってきた。官僚制組織というのは御存知のように戦後改革されなかったんです。公益法人などというのは明治29年に法制化されましたが、それがそのままずっと存在してきたこと自体が驚くべきことなんです。市民社会の欠如の背後に国家による温情主義とか恩顧主義がありました。その考え方が今日も完全に払拭されていません。
 それから、第2番目の問題は経済あるいは市場経済に伴う問題です。ここに書いてありますけれども、確かに市場経済というのは我々に対して非常に物質的な豊かさをもたらした。よく言われることです。しかし、その代償として非常に多くの問題をつくり出してきた。貧困問題、つまり南北問題、これもグローバルなレベルで考えていく必要があるでしょう。環境問題にしても人権問題にしてもそうです。それから、特に日本の場合に言いたいことは教育問題です。これが非常に重要な問題としてある。そして、いずれにしても既成の政治システムとか経済システムの持つ守備範囲を超える問題がどんどん起こってきている。バブル経済崩壊後の今日の問題を見ればわかりますように、いろいろなリスクが生じている。社会学では「リスク社会」という言葉を最近はよく使います。リスクというのは、要するになかなか予見、予測できない危険です。どこでどういうリスクが起こるかわからない、起こってみないとわからない。自分たちがある意思決定をし行動した結果、リスクが生まれてくるという時代なんです。だから、これは政府が法律をつくって対処するということだけでは問題は解決できない。そういうさまざまなリスクがグローバルに起こってきている。その典型的なものがテロです。これは全く予測できない問題として起こってきている。
 それから、日本の場合は、今、経済的なさまざまな問題がありますけれども、非常に犯罪が増えてきた、自殺者が非常に多くなった。年間3万人、1日に90人ぐらいの人が自殺しているんです。そういう状況をどのように考えるかということなんです。それから、モラルの崩壊。つまり、社会的なルールとか規則というものがなかなか守られない。
 そういうさまざまな問題に、政府とか市場では対応できないということから、さまざまな領域でNPOとかNGOの市民活動が起こってきたと見ることができます。日本でも御存知のように、ようやく1998年に特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法というのが成立しました。結社の自由というのがようやく実定法化された。憲法においては結社の自由はうたってあります。だけれども、それが実定法化されたのは、ようやく1998年。フランスでは1901年です。これは今日お見えになる大村先生の専門領域の問題です。日本はとにかく100年遅れている。それがこれからどういうふうに発展していくかというのが、私の非常に大きな関心事なんです。
 いずれにしても、市場と国家の二元構造だけでは社会が成り立たないという時代になってきた。社会とは何かというのは、私は社会学者ですから非常に関心がありますけれども、政官業のよく言えばコーポラティズム、悪く言えば癒着構造という問題も繰り返し、繰り返し言われてきたことです。こういう構造では今日起こっている諸問題に対応できない。だから、恐らく非営利で非政府のセクターが21世紀において非常に重要な役割を果たしていくだろうということなんです。そういうものを支える価値観として、やはり価値の転換が必要だろうと思います。それが物質主義から非物質主義への移行ということです。ものをつくることから人をつくることへ、人と人との関係をいかにつくっていくかということなんです。結局、教育とか文化の問題なんです。新聞を見ると、大体経済の問題とか今はイラクの問題とかいろいろありますけれども、教育というものがどうも日本の場合は遅れている。教育、研究、文化という領域が充実しないと、本当の豊かさはないだろうと考えます。
 そこで、人と人との相互肯定的な自発的な協力システムをどうやってつくるか。これは市場とか法律ではつくれないんです。人々の日常生活の中でつくっていくものなんです。私の考え方では、人と人との相互肯定的な自発的な協力システムを「社会」と呼ぶ。そういうものが崩壊しているときは社会の崩壊なんです。今日、社会の崩壊がいろいろなところで見られる。
 そういうことを踏まえながら、「市民社会」という言葉が最近、社会科学の領域では非常に重要視されてきました。これは話していると長くなりますが、市民社会というのは何かといったら、非営利で非政府の自立した市民の自発的な活動セクター、それが市民社会なんです。大体そういう了解でいいのかなと思います。そうすると、皆さんのお手元に配りました図表を見ていただきたいと思います。「NPOセクターと社会システム」という図表があります。これを見ますと、社会を全体的にどのように考えるか、社会はいろいろな機能から成り立っています。基本的に経済のシステム、政治のシステム、政治のシステムの中には法システムとか行政システムも当然含みます。それから、真ん中に共的セクター、ここが非常に重要な焦点になりますけれども、ここでは「共的セクター」と書いてあります。つまり非営利、ボランタリーあるいはNPOセクターです。NPOということはここで広くとらえています。別に法人化されたものだけではありません。むしろ、法人化されないものの方が多いということなんです。そして、一番下にコミュニティ・セクターがあります。問題は、このコミュニティ・セクターにおける人々の生活をいかに豊かにするかということなんです。このコミュニティが今、崩壊している。そこが非常に大きな問題です。つまり、日常生活の中で自発的な相互協力システムが衰退してきている。なぜかという問題。これが非常に大きな問題になってくる。
 なぜ、コミュニティが崩壊してくるかという問題は、市場の失敗とか政府の失敗とかいろいろあります。そして、何よりも市場商品化の波が人々の日常生活の中に押し寄せています。お金の問題、マテリアリズム、金銭主義です。犯罪などは大体お金絡みが多いんですけれども、そういう問題がコミュニティの人々の関係を非常に希薄化してきているわけです。学校において、地域において、本当にボランタリーな協力関係が成り立たなくなってきている。その理由は何かということが非常に重要なんです。犯罪が増えたから警察官を増員するということでは、基本的な問題解決にはならないんです。その根底にある問題をとらえていかなければならないということなんです。
 この図表の真ん中に共的セクター、ボランタリーあるいはNPOセクターというものをやや大きく書いてあります。これは強調するため。日本は、まだこれは極めて弱い。日本でNPO法人というのは今大体、去年10月か11月で1万6,000になっています。アメリカは法人化されたものが130万あるんです。日本は、たったまだ1万6,000。非営利セクターで法人化されないものが日本でどのくらいあるかわかりませんけれども、その10倍はあるかもしれません。このセクターを充実することが市民社会を豊かにするし、あるいはリスク社会に対応するためには、いろいろなNPOが必要になってくるんでしょう。以上が基本的な考え方であります。
 ここで、私は経済の領域はマーケット・エコノミーの問題と、パブリック・エコノミー、それから、真ん中に社会経済、大体「社会的」経済と言う場合が多いんですけれども。社会的経済、これはフランスから出発していますが、今日、大村先生が見えればわかると思います。エコノミ・ソシアールという概念なんです。これは主として共同経済なんです。協同組合とか共済組合とか、そういう共同経済を言うわけです。後で述べますけれども、この社会経済という概念の方がNPOという概念よりも広い概念なんです。時間がなくなりますから急ぎます。
 それから、もう一つ社会の根底にあるのは、今言ったように他者を配慮した相互肯定的な関係です。他者を排除するのではなくて、連帯なんです。私の図表に書いてありますけれども、メディアを考えていくと、市場は貨幣メディアです。最終的に貨幣の問題が出てくる。それから、国家というか政府・行政は、最終的には法権力の問題が出てきます。政府というのは何でも法律をつくらなければ何もできないんです。そんな法律をつくっていては間に合わない事件が幾らでもあるんです。そういう状況の中で、実は社会というものを考える場合に、この図表で言うと共的セクターとコミュニティ・セクターが社会の基本にあるんです。これが崩れてきている。だから、これを確立していくためには、さまざまなNPOセクターが必要だろうと考えます。
 共的及びコミュニティー・セクターのメディアは言葉そのものによるコミュニケーションです。ここで新しい概念として社会関係資本という概念が出てきます。ソーシャル・キャピタルと言うと社会資本という概念と混乱しますから、社会関係資本という概念を使います。つまり、ここに書いてある自発性とか信頼とか互恵性とか対話とか連帯が社会関係資本なんです。この社会関係資本をいかにつくるかというのが、今日の最大の課題だろうと思うんです。その1つの役割を担うのがNPOセクター、さまざまな非営利セクターです。あるいは公益法人もそういう方向で見ていく必要があるだろうと思います。
 レジメのIIの方も、大体今、私が述べたことですが、一番重要な問題は、官による公益とか公共性独占の終焉ということです。官だけが公共性とか公益を担うのではないんだということです。だから、「市民的公共性」とか「市民的公共圏」という言葉を私たちはよく使います。市民が自らつくっていく、そういう方向で、実はそういうものをいかに財政的にも法律的にもサポートするかということが行政の役割になるということです。
 そこで、先を急ぎますけれども、レジメの2ページ目のIIIに行きます。アメリカにおける非営利組織、これは政府税調、税制の問題にかかわってきます。アメリカでNPOというと、税制上は免税団体を非営利組織と言っていまして、これは2つに大きく分かれます。公益的非営利組織、英語ではチャリタブルという概念を使います。チャリタブル・ノン・プロフィットという公益です。公益というのは社会奉仕的なもの、社会貢献的なものです。他方、共益的なノン・チャリタブル・ノン・プロフィットは会員制の組織です。例えば、私は協同組合というものにも非常に関心がありますけれども、協同組合というのは組合員の組織です。労働組合もそうです。そういう人たちの組織だけれども、実際は労働組合にしても生協にしても、さまざまなボランティア活動だとか、さまざまな社会活動をしているわけです。つまり、共益法人でありながら社会活動、公益活動を幅広くしているんです。これは非常に重要な問題になってきます。これは税制上どのように考えるかというのは非常に大きな問題です。
 それから、もう一つは、やはり公益とは何かということです。公益の類型化はある程度できます。これはNPO法人で幾つかの領域を、今17ぐらいに分けていますから、これはかなりできます。ここにアメリカの問題点を書いてありますけれども、類型化はできるわけです。とすれば、類型する場合の基準を考えればいいわけです。
 それから、もう一つ重要なことは、アメリカの場合は助成財団という非常にしっかりした大きなものがあります。カーネギーとかロックフェラーとかいろいろな企業自体がつくっているもの、その助成財団がNPOを支援しているのです。大学に寄附するとか、交響楽団に寄附をするとか、メトロポリタン美術館に寄附するとか。それが日本では非常に弱い。日本では日本財団というのがありますけれども。だから、アメリカのことは勉強して役に立つけれども、それを日本にそのまま持ってくることはできない。文化が違います。アメリカは基本的にはボランタリズムがあります。それから、チャリタブルな精神が非常に強くあります、ボランティア活動が盛んです。だから、そのまま日本へこの法律を適用できないという問題が出てきます。
 公益性判定テスト、これはパブリック・サポート・テストという、日本でも3分の1サポート・テストというのがあります。あれはそのまま日本に適用できない。だから、今は1万6,000ぐらいNPO法人ができましたけれども、認定法人はわずか数えるしかないんです。これは、そのまま適用するからそういうことになってしまうんです。これは非常に問題が大きい。
 次にレジメのIVに行きます。国際比較研究のためのNPOの構造的概念規定、これは非常に有名な概念規定でありまして、アメリカのジョンズホプキンス大学の先生を中心にして、各国のNPOセクターの比較研究をやっています。それぞれNPO・イン・ジャパンとか、イン・アメリカ、イン・ジャーマニー、イン・ブリテン、イン・イタリー、イン・ハンガリーという、結構厚い本が1冊ずつ出ています。そのときに、NPOという概念をどう規定するか。それは次のような概念規定です。
まず第1に、フォーマルに設立されたもの。フォーマルに設立されたということは、ある程度制度化されていることであって、法人化されているとは限らない。アメリカの場合は、かなり法人化されていて、さっき言ったように130万。130万のうち大体90万ぐらいが公益的なんです。後は共益的。これは免税のあり方が違ってくるわけです。そういう税制上の区別をするというのは必要かもしれません。
 それから、第2番目がプライベート、民間のもの、すなわち制度的に政府から分離しているということ、これが非常に重要な問題です。非営利であり、かつ非政府であるということです。別に非政府というのは反政府ではないです。政府と協力する、これから政府と民間がどういう形でコラボレーションするかというのは、非常に大きな課題になってきます。
 それから、3番目も非常に重要な問題です。営利非分配の原則です。つまり、生み出された収益あるいは収入を、その組織の所有者や経営者やメンバーに分配しないということです。利益が出たら、本来のNPOの目的、ミッションのために使うということです。当然そこで働くスタッフの給料は出しますけれども。理事会が必要ですが、大体理事長というのはボランティアなんですよ。日本は、政府系の公益法人の理事長などは高い給料をもらってる。日本にはボランタリズムが基本的にない。
 それから、4番は、自己統治、つまりガバナンスの問題です。組織の運営が自律的であるか。だから、政府にぶら下がっているものは自律的にはできないではないですか。そういう大きな問題が組織論的には出てくる。
 それから、5番目はまさにボランタリーの精神です。ボランタリズムとは何か。つまり、組織への参加が自発的である。自発的であるということは非営利であり、非政府であるということ。それから、ボランタリーというのは無報酬とまでは言わないけれども、やはりそういうボランタリーな精神が日本の場合にはない。特に政府系のものはそうだったと思います。それが問題になっている。だから日本の場合、政府系の公益法人・社団法人と民間のそれらとは区別して考えるか、あるいは同じ論理で考えるかです。アメリカの場合は、非営利組織は民間の非営利のことです。
 それから、6番目が公益の役に立つということ。公益の類型化が今アメリカの場合もありますし、日本の場合でも、これはつくるのはそんなに難しいことではない。言うまでもなく、公益というのは民間の行う公益活動であって、政府の活動とは区別されるべきものです。
 公益法人は大体今、日本で2万6,000ある。すべてではないがとりわけ政府系の日本の公益法人は、今述べたような規定に合わない。特に、官系とか政府系のいわゆる外郭団体の公益・社団法人は、概念的には非営利組織ではありません。それらは政府から自律して意思決定ができないものであり、ボランタリーな要件を十分に備えていないものであり、何よりも人事において天下りがある。そして、特定政府機関からの仕事の委託を受けている親方日の丸的な外郭団体というのが非常に多いわけです。だから、それらは隠された官の領域として批判されています。市民の税金をむだ遣いしてきた。建物の立派な保養所をつくって、ほとんどただみたいに地方公共団体に払い下げているという問題が新聞に大きく取り上げられています。それから、道路公団の問題もファミリー企業がずっとぶら下がっている。その多くは公益の名のもとに我々の税金をむだに使ってきた。これらは明らかに「政治の失敗」の例です。
 次にレジメのVとして、社会の類型をちょっと考えて、あるべき日本の社会のあり方を考えてみたいと思います。アメリカ型社会かヨーロッパ型社会か、あるいはいずれでもなく日本型の社会を21世紀にどういうふうに考えるかというのは非常に大きな問題です。アメリカ型というのは御存知のように福祉国家ではありません、福祉社会でもない。基本的に経済市場主義であり、市場原理主義。つまり、非常に強い経済成長志向がある。しかし、強い経済成長志向だと必ずその代償として貧困問題が出てくる。貧富の差がものすごくアメリカの場合は大きいです。それから、犯罪も多いです。教育問題も公教育が成り立たない、そういう状態にニューヨークなどはあります。経済成長主義の払うコストというのは非常に大きい。だから、日本が小泉改革によって、営利民営化に持っていったら非常に大きな問題が出てくるのではないでしょうか。貧富の差が拡大していきます。そして、リストラだ、失業だといろいろな問題が出てくる。アメリカではそれをカバーしてきたのは、実はさまざまなボランタリー・アソシエーションとしてのNPOセクターなんです。建国以来アメリカは、国家ができる前にボランタリー・アソシエーションがあったんです。それが国家をつくっていったわけです。国家も1つのアソシエーションであったんです。企業ももともとアソシエーションとして、それがだんだん巨大化していったわけです。トクヴィルというフランス人が『デモクラシー・イン・アメリカ』という有名な本を書いている。これは恐らく大村先生が詳しいんでしょうけれども、フランス人でアメリカに行ってあの書物を書いた。アメリカはトクヴィル的に言えば、アソシエーション中心社会なんです。つまり、できるだけ小さな政府で、できるだけ市民がやれることはやっていこうと。そういう意味では、アメリカはボランタリー・アソシエーションが、それぞれの時代において非常に繁茂した。だから、アメリカの場合は、ボランタリズムというものを非常に強く強調しています。
 次にいきますと、ヨーロッパ型組織というのは比較的大きな政府で、ヨーロッパは伝統的に社会主義が非常に大きい影響を持っています。これはアメリカと基本的に違います。だけれども、大きな福祉国家、大きな政府ではとても財政的に成り立たないから、今は福祉国家から福祉社会へという方向に向かっています。そこで、社会的経済という概念が出てきて、ヨーロッパではNPOという概念は余り使わない。どちらかといえばEUなどでもEUの部局に社会経済部局というのがありますけれども、そこでは大体、協同組合とか共済組合プラスアメリカ型のNPOが考えられています。アメリカ型のNPOの中では協同組合というのは共益組織、中間団体です。だから、むしろ社会的経済という大きな枠組みの中にアメリカのものを入れておく。組織原理はアソシエーション、フランスではアソシアシオン、大村先生はアソシアシオンの問題を今日はやられると思います。国家の官僚制組織をできるだけ非営利民営化していこう。つまり、官から民へと言うときに、営利民営化ではなくて非営利民営化の方向を考えている。
 もう一つの構造改革というのは、まさにここで言った非営利・非政府の民営化の方向なんです。だから、小泉内閣の官から民の方向は営利民営化であるとすれば、それをサポートするものとして非営利民営化の方向がないと、資本主義社会は成り立たないです。お互いの企業が切磋琢磨して競争して、つぶれたり、リストラして失業する者が多く出るわけですから。日本の社会のあり方をどういうふうに考えるかというと、千葉大学の広井さんという人が、持続可能な福祉社会ということを考えているんです。これを読んでいただければわかる。つまり、いずれにしても21世紀はNPOやコミュニティ的な活動が発展していかないと、資本主義社会そのものがもたないということです。資本主義社会が存続するためには、非資本主義的な要素がないと資本主義は存続できないということです。それがここに書いてある、私の基本的な考え方です。
 それから、レジメのVI「官僚制組織からアソシエーションへ」。アソシエーションというのはここに定義が書いてありますけれども、人々がある目的あるいは使命のために市場原理と国家権力から自律して、相互に対等な立場で自由意志によって自発的に参加し、対話的行為を通して意思決定し、実践するところの民主的で非営利・非政府のネットワークなんです。ネットワークは官僚制組織とは基本的に違うものです。だから、官僚制組織対ネットワークあるいはネットワークを官僚制組織の中に組み入れることができるかできないか。これが組織論の課題としては非常に大きな課題です。官僚制組織は指令組織、命令組織だから上下関係、ヒエラルキーがあります。ネットワークはヒエラルキーはない、横の対等な関係があるわけです。
 そういう組織論でいきますと、私もスウェーデンに行っていたことがあって、スウェーデンは福祉国家の典型的なものと言われてきましたけれども、今は非常に財政的に厳しいから、もう少し民間の、だけれども、民間でも非営利民間の方向を目指しています。保守党は営利民営化のことを考えるけれども、社民党は非営利民営化の方向です。両党は、基本的に違う。そういう違いがあっていいんですが、いずれにしても、アソシエーションにおいては割合、人々の自発的な参加が出てくるし、仕事に対しても創意工夫が出てくるし、それから、福祉などのサービスにおいても福祉供給者と需給者のコミュニケーションが割合うまくできて、両方が満足し得る、そういう状況があるということは調査の結果わかってきています。
 そして、最後のVIIすけれども、21世紀社会のシステムの在り方として、ここにちょっと書いておきました。いずれにしても、現代社会はリスク社会です。なかなか先の見通しがつかない社会です。だから、特定の組織が他の組織を支配するということでは社会が成り立たない。国家がすべての社会をコントロールするということはあり得ないことです。独裁国家ならともかく、民主的社会にはいろいろな価値観がある。いろいろな機能が分化している。ここでいう共的セクター、これは非営利・非政府セクターのNPOセクターと考えます。そのセクターは国家と市場との間にある比較的自由な活動空間なんです。共的セクターと他のセクターとの間には固定した関係はない。絶えずコラボレーション、かつては国家・政府に対する絶対的対立とか反対分野があったのですが、最近は割合セクター間のコラボレーションとかパートナーシップということが考えられています。行政と民間NPOの協働の方向が模索されています。共的セクター、あるいはNPOセクターと他のセクター、政府とか市場との間に固定した関係はないのです。それぞれの責任を分担するセクター間の関係、すなわち国家、私企業、非営利組織、世帯、コミュニティとの関係は自律と連帯の関係で、その関係を基盤とする社会的交渉、バーゲニングとか協働、パートナーシップを組みながら、互いに協力していくという全体的な社会的なシステムをいかに構成するかということが21世紀日本社会の課題だと考えています。
 時間になりましたので、大体以上で終わらせていただきます。

○ ありがとうございました。
 大変大きな問題を時間を厳しく制限してしまいまして、先生には大変失礼をいたしました。足りない部分を皆様からの質疑で少し補っていただきたいと存じますので、今から15分ほど質疑の時間を設けたいと存じます。よろしくお願いします。

○ 全体を概観していただきまして、ありがとうございました。
 1点は、非常に僣越ですが補足と、あと1点は質問をさせていただきます。
 ジョンズホプキンスのリサーチに関しては、私はこれに助成金を出すという仕事を担当していたこともありまして、これは比較した対照の国は、最初フェーズ1のときは12か国。その後、あと5年は22か国に広がっております。日本がここで定めた非営利組織の定義に合わないといった物議を醸しだしたことがありました。なぜならば学校と病院を入れてしまったために、この定義で言うと、アメリカでは非営利セクターの中に学校と病院が入ってしまうんですね。それが日本に適用しようとしたときに、これらは官のセクターの領域であるということで、かなりもめたという経緯がございました。これが僣越ですけれども補足です。
 それから、2番目は質問ですが、アメリカの例をとられていますが、501(c)(3)と501(c)(4)、この共益と公益なんですが、実際に活動の内容を見てみますと、日本の場合にとってみれば、なかなか境界線を引けないのではないかと思います。例えば、グループホームのように高齢者や体にハンデを持った方たちが集まって一緒に暮らすような活動がありますけれども、確かに直接のベネフィットというのは、そこに住んでいる方たちですが、同時に障害者やハンデを背負った方たちへ福祉の向上ということについてのアドボカシー活動もしているわけです。そういう意味で、実際にはこの共益と公益というものについての境界がなかなか引けないのではないかというのが、私の質問であります。

○ 1番の補足は、学校、病院の社会的位置づけが違いますから、アメリカはまさにそうかもしれません。学校というと例えば、私はヨーロッパの例を出しましたけれども、スウェーデンとかフランスとか大学はみんな基本的には国立なんです。授業料はただです。日本は私立大学が非常にたくさんありますから、基本的に違ってくる。
 それから、公益と共益の線引きをするのは非常に難しいというのはそうです。例えば、さっき私は生協の例を挙げましたが、生協だっていろいろな形がある。それから、今言われたことは恐らく自助グループの問題ですね。それは、まさに単なる共益というわけでもない。自助団体に助成財団がサポートするとか、あるいはほかのNPOがサポートするとかいろいろありますけれども、この線引きをするのはなかなか難しいということは私も言ったとおりです。
 私の4枚目の図表を見てください。説明しなかったんですが、これは法人組織の分類という形で、大体このような図表がいろいろなところで描かれていますけれども、日本の問題を考える場合に一番重要なことは、一応、政府というか官の領域と民間を分けますけれども、事実は民間の上に官があったんです。官の血脈がずっと個人にも法人団体にも流れてきたんです。要するに、民がなかなか官から自律できなかったんです。だから、官と民とが並行してあるのではなくて、上に政府とか要するに官僚行政組織があって、それで民を支配し個人を支配する、法人も支配する、そういう流れなんです。そういうふうに考えればいい。特にここで重要なのは、法人でない団体がたくさんあると言いました。ここで各種市民活動団体、これは非常にたくさんある。町内会とか自治会といっても、これがまた結構いろいろな流れがありまして、PTA、子ども会、文化サークルもたくさんある。今、自助グループというのが出てきました。これは法人化されているものもある。もしくは法人化するとすれば、これを共益法人にするかしないか、この線引きはなかなか難しい問題として出てきます。こういう法人でない団体が恐らく、今、法人化されたものの10倍とかもっとあるかもしれません。そういう中で法人化されてNPO、特定非営利活動法人になるものもあるわけです。いわゆる、この流れの中で、非営利法人で法律的には共益法人というのは日本の場合は中間法人となっています。この分類はなかなか難しい。しかし、現実には非営利法人組織は、多かれ少なかれ公益的要素と共益的要素とが、程度の差はあれ、含まれているのです。しかし、法制化する場合に非常に大きな問題になります。
 それから、公益法人に財団法人と社団法人があります。今日大きな問題となっているのは、実は政府や地方公共団体の抱えている特殊法人、財団・社団などの外郭団体です。この改革こそがむしろ問題なんです。地方公共団体の市町村の方でこの見直しが非常に進んでいるところもあります。外郭団体を完全に廃止するか、廃止を含めて見直す、統合できるものは統合する。それから、官でできるものは政府・自治体でやればいいのではないかという考え方も当然あります。ご存知のように行政委託型公益法人というのがあって、そこで論議されているんだけれども、実際はそこが問題なんです。私の基本的な考え方は、非営利法人の中に公益とか共益を区別する必要はないだろうと思います。あとは、税制上の問題になってくるだろうと思います。
 レジメの4ページの下の図では、官営、民営、公益、共益と分けてありますけれども、官営系の法人が問題なんです。政府系の公益法人とか共益法人とかあるいは財団とか社団というのが問題です。民営の法人、これはしっかりと法律上明確にしていかなければならない。行政委託、これはどういう改革をなされるかよくわかりませんけれども。私も公益と共益の区別はなかなか難しいけれども、アメリカでも税制上の問題で、共益の場合も非営利法人になっています。税制上の問題。だから、これは皆さんが知恵を絞って考えていく必要があるだろうということです。

○ ありがとうございました。
 ほかにございますか。

● よろしいですか。ありがとうございました。佐藤先生の非常に重要な指摘、特にNPO的なものが存在しないと資本主義社会はもたない、私は全くそのとおりだと思います。資本主義社会というのは大いに稼いでいい、大いに儲けて、大いに蓄えていい。しかし、地域あるいはそれぞれの分野にコントリビューションというか奉仕あるいはライオンズ的というか各地域にありますね。そういうものがないともたない。ハゲタカ集団ばかりではだめだという気がしていまして、全面的に私は問題意識に共感します。
 そして、4ページの先生が御指摘されました法人でない団体で、この分類は私はすばらしいと思っているんですが、ここのところに町内会・自治会というものを御指摘されています。私は福島なんですが、1月1日から動き出す行動というのはどういうことかというと、1月1日にその地域のコミュニティとも違うんですね、私は村落と言っているんです。昔は福島県信夫郡野田村上野寺竹内、この上野寺字というのが村落なんです。全国に13万ある村落のその6割が今、過疎的になって自然減が多いんですが、この村落が中心になって1月1日に集まるんですよ。それで、ああだこうだどうしようか、3時間か4時間ぐらいやって、そして1杯飲むというのでやっておるわけです。村落はそんなふうにやっている。都市の場合には町内会というのがあるでしょう。そういうところで、私はやはり日本で村落部分があれば、それがしっかりしておれば、県がどこと合併しようと、そういうふうな形で地域はもてると。ただし、そこが今度は貢献するボランティア活動、ライオンズの活動、そういうのはできない。そこで、NPOが皆さん方、町内会、中間法人でNPOみたいな人をつくってくださいよというようなことで、私は問い掛けをしているんですが、現実に言いますと、田舎に行きますと、そこがしっかりしているんです。まさしく村落社会で都市と、東京と違うと思います。東京のような会社で法人、ローヤリティ、隣の人は誰知る人ぞというようなことでやっているのと違うところがあって、この日本の御指摘の法人でない部分の団体をうまく活用すると、自分の間違いを自分で守るというような形に利用できるし、片方のNPO的なものも活用できるということだと思います。また、御指摘の政府・地方公共団体の特殊法人、公社・公団、外郭団体のここが重要なので、これを合理化する。私は行政改革の副大臣もやっておりますが、そういうことで、今ここのところの問題も御指摘はそのとおりだと思いますし、公益の面の運営、天下りのために官が中心的につくってしまっている財団法人等々ありますから、そういうような問題がまた中心的な課題になるのだろうと思っていますが、私は問題の部分として非常に勉強させていただきまして、ありがとうございました。

○ ありがとうございました。
 それでは、○○委員、最後の質問ということになりますが、よろしくお願いします。

○ それでは、簡単に伺わせていただきます。公益という問題について、ちょっと観念的なことになりますけれども、法律学者は普通は非営利の活動をする組織のうち、不特定多数の利益を追求する組織であるという説明の仕方をしますけれども、これをもう少し実質的な基準で定義することができないだろうかということを前から悩んでおりまして、それで新村さんの辞典を見ましたら「国家公共の利益」と書いてございまして、これはまさに先生が否定された考え方ではないかと思うんですが、公益ということを不特定多数の人の利益ということを、もう少し実質化した基準で説明することができないだろうかという、ちょっと観念的な質問になって恐縮ですが、どういうふうにお考えでしょうかと思いまして。

◎佐藤教授 公共性という概念は比較的概念化できるんです。公共性と公益がどう違うか、これもまたなかなか難しい。公益の領域のある程度の特定化できます。むしろ、そこから進めた方がいいのかなという気がして、公益の一般概念というのは、公とか私というのは何かという非常に公共哲学的な論議になってきますから、なかなか難しい。公益・共益領域のある程度の類型化はできます。そういう中で、公益とは何か。国のやることはみんなある意味では公益なんです。一般の人たちのために国がいろいろな法律をつくってやるわけですから。問題は、非営利で非政府組織の行う公益ですね。非営利・非政府組織の行う公益は、むしろ民間の資金・サービスで行うものです。そこでサブシディアリティという概念が出てきます。補完性の原理です。ヨーロッパでもアメリカの場合でもそうですけれども、国がどの範囲で助成金を出すかというのは非常に大きな問題。ただ、国の助成金が非営利組織の唯一の収入源ではない。国はワン・オブ・ゼムでなければならない。ほかにもいろいろな組織や個人が寄附をしてNPO組織を財政的に支えていくということなので、公益的概念は先生の言われるように、私もなかなか難しいと思います。

○ 本当に私もそう思いますけれども、一応ここでは公益法人制度の改革について検討することが任務ですので、一応は非営利で不特定多数の人々の利益を目的とする活動をする組織だというふうに考えておいていいと思うんですが、先生のお考えだと、やはりそれだけでは足りないので、個別の組織ごとによく判断していくべきだろうということに恐らくなるのでしょうね。

◎佐藤教授 多分、それはある程度類型化できるのではないでしょうか。これはアメリカの場合でもちゃんと類型化してありますし。
 もう一つは、どうしても私の考えでは非政府というのを入れたいんですよ。民間非営利でもいいですけれども、これは非常に重要なことであって、政府がやることは基本的には非営利です。だから、民間非営利・非政府、このことを私は重要視したいと思うんです。別に非政府と言っても政府に反対をするわけではない。つまり、対等な立場で民間と政府とがいかに協力するかということです。

○ ありがとうございました。

● 佐藤先生、座長の許しを得てもう一回お尋ねしますが、アメリカはトラストとファウンデーションと分けているんですね。ファウンデーションというのはロックフェラー、財団です。トラストというのは、日本で言いますと信託法の大正11年でしたか公益信託というもの、これはトラストなんです。これも5万ぐらいアメリカはあるんです。アメリカは脱税される心配のために、公益信託というものについては税務当局は非常に手を縛っておる。どこが違うのかというと、日本の場合には財団法人は事務所が要るんですよ、寄附行為も要る、専務理事も要る。公益信託というのは、事務所も要らなければ、専務理事も要らなければ、信託銀行が信託契約をやればいいわけですから、そして、佐藤何々、留学何々、現実に今あるわけですね。そういう公益信託というようなものをうまい形で活用してやっていけば、先生のおっしゃっているまさしく非営利、例えば、ケニアからの音楽隊をこっちに、あるいはケニア向けの、そういうふうに書けばいいわけですから信託に。そうすると、信託銀行が自らやってくれる。ということで、私は公益信託というのを法律的な形で入れたのは、基盤技術研究促進センターというものを立案してやったときに入れたんですよ、法律条文に。これは活用したら同じ先生の指導の非営利、そして、公益の管理が私は出てくる問題だと思います。ですから、是非、この審議会でも公益信託についてご審議いただいて、座長。

○ わかりました。先生何か一言ございますか。

◎佐藤教授 私は、法律のことは全く素人ですけれども、法律をつくる場合にどういう理念で、どういう方向でつくるかということで、単なる技術論とかそういうことではなくて、なぜ改革が必要かという辺りをしっかりと踏まえてやってほしいなということです。

○ ありがとうございました。佐藤先生には大変すばらしいお話をいただきまして、ありがとうございました。もっと質問が本当はあるのでしょうけれども、ただいまのところは大村先生にお待ちいただいておりますので、大村先生に引き続いて結社の問題についてお話をいただきたいと思っております。佐藤先生には引き続き、大村先生のお話を一緒に聞いていただきます。
 それから、佐藤総理補佐官はここで、先ほどのお話のように御退席になります。ありがとうございました。

(佐藤総理補佐官退室)

○ それでは、お忙しいところ大村先生においでをいただきまして、これから結社の問題について、私たちの勉強をさせていただきたいと存じております。よろしくお願いします。

◎大村東京大学教授 東京大学で民法を教えております大村と申します。お手元の説明資料に従いまして、結社の自由と非営利団体というテーマで、少しの間だけお話をさせていただきます。
 まず初めに、どのような観点から何についてお話をするかということを少しお話しさせていただきます。
 恐らくこれまでここでお話しになった方々は、団体論あるいは法人論の専門家ばかりだったかと思いますが、私はこれらの領域についてずっと以前から研究を続けてきたわけではございません。これまでは消費生活ですとか家族の問題といった、日常生活にかかわる法律問題を主たる研究テーマとしてまいりました。その延長線上で、最近では人々が日常生活において任意につくるさまざまな団体あるいはそうした団体をつくり出す人と人のつながり、きずな、こうしたものを私は「社交」という言葉で呼んでおりますけれども、これに関心を持つにようになりました。
 具体的には、フランスにおける団体を取り上げて研究対象としております。19世紀の思想家にトクヴィルという人がおりますが、彼が『アメリカにおける民主主義』という本を書いて以来、フランスでは国家と国民とが直接に向き合っていて、この間に中間団体が介在しない、こうした社会イメージが広く行き渡っております。現代日本の憲法学の研究におきましても、中間団体を重視するアメリカに対して、これを敵視するフランスという図式が描かれております。民主主義のスタイルが違うという見方がされているわけです。
 確かに、少なくとも近代の初頭においては、フランスは結社の自由を否定しまして、中間団体に対して極めて敵対的な態度をとっていました。しかし、19世紀の後半に入りますと、状況が大きく変わり始めたわけです。そして、今日では広く存在する非営利団体、先ほど佐藤先生が言及されたアソシエーションに対応するもので、フランスでは同じ言葉を「アソシアシオン」と発音しますが、このアソシアシオンの活動を無視してしまっては、フランス社会の在り方を十分に理解することは非常に困難な状況に立ち至っていると考えております。
 そこで、当初は非営利団体に対して否定的であった1つの社会が、いかにして非営利団体を重要な構成要素とする社会に転じつつあるのか、こうした観点からフランスの経験を振り返る、これには一定の意味があるのではないかと思いまして、今日お話をさせていただく次第です。
 そこで、歴史的な経緯と現状とに分けまして、フランスの状況を御紹介しつつ、私のコメントをつけ加えさせていただきたいと存じます。
 その際のポイントは、表題で括弧をつけた2つの言葉にありまして、結社の自由をどのように基礎付けるのかということと、非営利団体をどのように位置付けるのか、この2点です。
 まず歴史についてですが、お手元にお配りしましたものに簡単な年表のようなものをつけておきました。先ほども触れましたように、近代の初頭、フランス革命直後には、フランスではル・シャプリエ法という名前の法律によりまして、団体あるいは結社が禁圧されたわけです。ですから、ナポレオンがその後につくりましたフランス民法典には、団体の法人格に関する規定は置かれておりません。また、刑法典には一定の規模の団体を刑罰によって禁止するという趣旨の規定が置かれていました。
 法制度はそのようになっていたわけですが、実際にはどうかと申しますと、今申し上げたような法制上の禁圧にもかかわらず、19世紀を通じてさまざまな種類の団体が存続し続けたということが、しばらく前からフランス史研究では指摘されているようです。
 そして、19世紀も後半に入りますと、そのうちのある種類の団体の存在を法的にも承認する、個別の立法を求める動きというのが出てまいります。第3共和制になりますと、この動きは更に加速されまして、20年に及ぶ議論の末にとうとう1901年に、当時の総理大臣、ワルデック・ルソーという人ですが、この人のイニシアチブによって非営利団体、すなわちアソシアシオンの結成を一般的に承認するという法律が制定されるに至るわけです。
 この1901年の法律は、形式的には1つの単なる法律にすぎないわけですけれども、70年後の1971年に、フランスの憲法院の判決によって、憲法と同等の価値を持つとされるに至っております。具体的には、1901年法は事前の許可を要せずに団体の設立をすることを認めておりますが、これを変更するような立法は違憲になるという判断がされまして、1901年法は形式的には法律であるけれども実質的には憲法的な価値を持つということになったわけです。
 そして、2001年には、この法律の100周年が国を挙げてまたアソシアシオンを巻き込んだ形で盛大に祝われるということになるわけですけれども、このことは1901年法がフランス社会にとって非常に重要な意味を持つようになったことを象徴的に示しているのではないかと思います。
 ちなみに今年2004年は、フランス民法典200周年の年でありまして、やはり盛大な記念行事が行われることが予定されておりますけれども、フランス民法典はフランス社会で非常に大事にされております。フランス社会の真の憲法だと呼ばれるわけですが、1901年法もこれに匹敵するような重要性を持つ法律として認識されていると言ってもよろしいかと思います。
 こうした歴史との関係で注意したい点が2つございます。事実の方に即して申しますと、結社の自由というものは当然には与えられてこなかった。法律の禁止にもかかわらず、中間団体が現に存在し続けるという社会的な力に促されて、法律の方が改められたということです。この点が1点です。
 それから、もう一つは、1901年法の立法に当たって結社の自由に関する根拠付けとして、個人の自由としての契約の自由が掲げられたということです。現にこの法律は、アソシアシオンを契約として構成しております。そして、法律の名前も正式には「アソシアシオン契約に関する法律」という表題がつけられていたわけです。
 これは何を意味するかということですけれども、日本では結社の自由を出発点として、団体の権利あるいは法人の権利が当然のことのように語られることもあります。憲法は結社の自由を認めている、だから、結社には人権があるんだといった論法がとられることがありますが、フランスでは結社の自由はあくまでも団体をつくる個人の権利として理解されているということです。革命によって否定された古い団体、拘束的な団体とは異なり、近代の共和制の下で人々が自発的に契約によって団体を構成するというように原理的な転換が図られているわけです。その際の理由付けが、契約の自由であったということです。
 別の言い方をしますと、人間というものは個人の自由あるいは自律を守りたいと考える存在であると同時に、それを前提あるいは出発点として、他の人とともに何かをしたい存在でもあるという認識に立ちまして、そうした個人の権利を保護するという立法がなされていると見ることができるのではないかと思います。そして、個人の結社する権利に対する法的な支援といたしまして、必要に応じて法人格を段階的に付与していくという立法技術が採用されたわけです。
 団体は、一定の目的のために設立され、それ自体が独立の法人格を有するわけですけれども、それはあくまでもその団体に集まる個人の集団的な活動を支援するためであるという考え方が貫かれていると言ってよいのではないかと思います。なお、更にその上で、一定の公益性が認定された団体には、より広い範囲の法人格が認められ、これとは別に税制上の優遇措置や各種の補助金の交付もなされております。
 もっといきますと、一定の要件の下に、団体訴権、公共的な利益を訴訟で争うための訴権をこれらの団体に付与することも、かなり広い範囲で行われております。
 続きまして、現状についても少しお話をさせていただきます。1901年法の下では、団体の設立自体は全く自由ですが、届出をすることによって団体としての会費の徴収とか補助金の受領、あるいは事務所の設置のための契約などができるようになりますので、多くの団体がこの届出をしています。届出がされますと、その内容が官報に載ることになります。資料の2枚目の官報のコピーをつけておきましたが、別冊の形でアソシアシオンの公示に関する冊子が出ます。右側の方に、細かな記載が少しずつ、空白を置いて並んでおりますけれども、この1つ当たり数行の記載が届出に関するものでして、この程度のものが出れば、それで公示がされたことになるという扱いがされております。
 この公示がなされますと、直前に申し上げた限度での法人格が取得される。会費、補助金の受領ないし事務所の設置などができることになるわけです。
 このような手続で設立されるアソシアシオンの数ですが、資料にグラフをつけております。少し古いものですが、これをごらんいただきますと、大体最近では6万件から7万件程度が1年間に新たに設立され、届出がなされる状況になっております。全体としてどのくらいあるのかは正確にはわからないのですが、大体80万件程度だろうと言われております。
 80万件ほどあるフランスのアソシアシオンが、フランス社会においてどのように受け止められているのかということですけれども、この点に関しては、数年前に調査が行われました。それが資料に掲げたものでございます。これは実際には、もっと細かな項目についても調査が行われたのですが、冒頭に置かれました最も一般的な質問だけを取り上げて御紹介したいと思います。
 1つは、どのような領域においてアソシアシオンの活動が期待されているのかということでして、これが上の方のアンケートです。いろいろな領域について「これらの領域は国がやるのがいいのか、アソシアシオンがやるのがいいのか、それとも私企業がやるのがいいのか、どれがやっている活動を一番信頼できるか」という問いです。そこに挙がっているように、消費者保護とか、人種差別反対あるいは社会連帯などといった項目のほかに、スポーツ、文化あるいは学校関係の活動などが中心になっているということがわかります。
 もう一つのアンケート、下の方ですけれども、これはアソシアシオンに対する社会的な信頼度を表すものです。「次に掲げるようなものについて、一般的に言ってどういう意見を持っているか」という問いですが、アソシアシオンについては「非常によい」と「よい」を合わせて、実に95%の人が好感を持っているという答えを出しているわけであります。
 実は、フランスでも非営利団体のスキャンダルというのがないわけではございません。そうしたことがマスコミ等で騒がれたこともありますし、これを批判するような本なども書かれておりますが、それにもかかわらず、これほど高い支持がなされているというのは、注目に値することなのではないかと思います。
 このように、多数のアソシアシオンが届出をいたしまして、一定限度ではありますが法人格を得て活動しているわけですけれども、これほど多数の届出があるというのは、ひとえに手続が簡単だからということに帰着するのだろうと思います。規約2通をそろえて、届出書きを県庁に提出するというだけで手続は大体済んでしまうわけです。しかも、その届出書きは1枚紙でありまして、ごく簡単なものでございます。
 こうした制度の下で、先ほどのグラフでお示ししましたように、ここ30年ほど毎年の届出数はほぼ右肩上がりで増え続けてきたわけです。ごらんになると、ところどころ少し上がってまた下がるというジグザグ様の増加の傾向を見せております。グラフには数字が振ってありますが、数字が振ってあるところでは、ある種類のアソシアシオンを促進するような幾つかの立法がなされております。法律ができますと、それに応じて少し増える。その山を越えますと少し減るんですけれども、また別の立法があると、それに促されて数が増えるという形で、右肩上がりで増えてきたわけです。
 このようにアソシアシオンが非常に増えたということで、最近ではアソシアシオン・ブームですとか、あるいは立法者の名をとってワルデック・ルソーの第2の成功の時代が訪れたということが言われるほどの活況を呈するようになっているわけです。
 これは数の問題だけではなくて、先ほど見たように、国民から強い支持が得られていることも注目に値するところだろうと思います。その背後には、勿論、非常に著明な団体が存在するといったことがございます。ノーベル平和賞を受賞しました国境なき医師団などがその例です。あるいは非常に重要な社会問題についてアソシアシオンが活躍したという事情もあります。比較的近いところで申しますと、1999年に英仏海峡でタンカーが座礁して、原油が流出する事故がありましたが、このときのアソシアシオンあるいはボランティアの活動などが、国民に好印象を与えているという面もあるかと思います。そうした要素も確かにあるんですが、ここで注目すべき点は、身近なアソシアシオン、先ほども申し上げましたが、とりわけスポーツ・文化関係のものですとか、学校関係、父母会などの日常的な活動を行うものが非常に大きな意味を持っているのではないかと思います。
 実際のところ、15歳の以上のフランス人の2人に1人は、何らかのアソシアシオンで活動しているというデータがございますが、団体には入っていない人も含めまして、人々はアソシアシオンの活動から日常的にその恩恵を受けていると言える。その結果が95%という数字に表れているのではないかと思います。
 この点は、アソシアシオンの機能にもかかわってまいります。フランスのアソシアシオンは地方自治体のパートナーとして大きな働きをしていると言われております。例えば、町のスポーツクラブや文化サークルは自治体との連携の下で、自治体の支援を受けてアソシアシオンによって運営されております。
 こうしたスポーツクラブとか文化サークルなどは、第一次的にはメンバーがスポーツないし文化を楽しむ、そのための団体であるわけですけれども、そうした団体が存在するということを通じて、社会統合の大きな役割を果たしているということが最近多くの論者によって指摘されるようになっております。スポーツや文化など日常的な関心事を通じて、近隣の人々がさまざまな団体を形成すること自体が人々の社会的な結合を強める、あるいは若い人たちの社会化の機会になっていると言われているわけです。
 少し横道にそれますけれども、今申し上げたような日常的な次元でアソシアシオンに参加したことがあるという経験は、より公益的な色彩の濃い団体に参加するきっかけになるとも言われております。日本との対比で申しますと、これは佐藤先生の御専門にかかわりますが、学生時代に大学生協を経験した人々は、卒業後に抵抗感なく地域生協に参加できるといったことがあるかと思いますけれども、身近なアソシアシオンで活動した経験を持つことが、その先もより広い範囲でのアソシアシオン活動に入っていくというきっかけになることがあると言われております。
 このように、非営利活動というのは、それが狭い意味での公益活動を目的とするものでなくても、それ自体が公益的な意味を持っているということに留意する必要があるのではないかと思うわけです。
 時間になりましたけれども、最後に一言だけ、制度あるいは法の役割について述べさせていただきまして結びに代えさせていただきます。人間は日常的に生活をしていく上で、必要に応じてさまざまな工夫をしています。たとえ契約法がなくても契約が必要ならば契約が行われるでしょうし、家族法がなくても家族は存続していくわけです。非営利団体につきましても、それが本当に必要なものであるならば、どんなに不合理な法制の下であっても、たとえ禁止法令があったとしても、それはなくならないだろうと思います。しかし、先ほどのグラフにも表れておりましたように、制度や法の在り方が人々の活動に影響を与えるということもまた事実です。契約や家族の話をいたしましたが、契約や家族は第一次的にはそれらの関係を結ぶ人々のためのものです。契約を締結し、家族として生きる、その人たちのものでありますけれども、この社会に契約が存在し、家族が存在するということには、それが多くの人々の私的な関心事であるというのを超えた意味があるのではないかと思います。契約法や家族法は、これらの営みをサポートする仕組みを提供しているわけですが、同様に、今日では非営利団体についても、その存在自体の価値を積極的に評価して、制度や法の整備を図ることが必要なのではないかと考えております。
 若干、時間が超過いたしましたが、これで私の話を終わらせていただきます。

○ ありがとうございました。佐藤先生からも大村先生からも、大変わかりよい説明をいただきまして、大変ありがたく存じております。
 ここで、大村先生の御説明に対する御質問があればどうぞ。たくさん質問が待ち受けておりますので、○○委員から簡単に。

○ このアソシアシオンについて御説明いただいたんですが、フォンダシオンに関しての御説明をできればいただきたかったです。というのは、フランスでフォンダシオンを設立しようとするときに、理事の1人に必ず役人を入れることという条件を提示されたことがございました。いわゆるNPO的なアソシアシオンについてもいいんですが、フォンダシオンについても何か言及をいただければと思いますが。

◎大村教授 財団について私は必ずしも十分に勉強していませんが、もともとフランスの財団というのは相続財産の受け皿として生成してきたようです。遺産を何かの活動のために残すのに、既存の団体があればそこに遺贈すればいいわけですけれども、遺贈する受け皿がない場合に、遺贈される財産に法人格を認めるというのが、財団の出発点であったと言われております。ですから、必ずしも広い範囲で財団法人というものを認めるということでやってきたのではないと思います。そのことが、御指摘になったことと絡んでいるのではないかと憶測しております。
 ただ、今のお話がいつごろのことだったのかわかりませんけれども、1980年代後半から1990年代前半にかけまして、財団にかかわる法整備等も徐々に進んでいると仄聞しております。ですから、現在の状況がどうであるかということはよくはわかりませんが、出発点ではかなり制限的であったものが、財団の役割を認める方向に動きつつあるのではないかと思います。
 それから、もう一つ、政府の役人を入れるということでございましたけれども、そこも十分なお答えはできないんですが、これも間違っていると申し訳ないんですが、公益性を認定された財団の活動等については、政府がコントロールを加えるという観点から、例えば、理事会への出席権が所轄官庁に認められているというようなことはあるやに伺っております。

○ ありがとうございました。私もそのようなことを聞いたことがありまして、マダム・ミッテランのつくられましたフォンダシオン・リベルテの日本支部の仕事をしておりましたけれども、そのときに大変フォンダシオンはつくりにくいものだというふうに伺っておりまして、日本の方がつくりやすいというのは一体どういうことかなと不思議に思っておりましたが、今、少しわかったような気がします。
 ○○委員、どうぞ。

○ どうもありがとうございました。エネルギッシュな説明をいただいて、フランスのことが大分わかるようになってきたんですが、ちょっと素人なので的を射ているかどうかわからないんですが、先生がおっしゃっていただいた今回の非営利団体というものは、非営利法人とアソシアシオンは違うのかというのが1つと、もう一つは、お聞きしていると、日本で言えばNPOに近い団体と、先ほど佐藤先生が類型化してくださいましたPTAとかサークルに近いものが先生から御説明いただいた範囲だと思うんですが、それが届出だけでできるという形になっていますけれども、これはいわゆる類型化とか範囲が決められているものなのかどうかというのをお聞きしたいと思います。

◎大村教授 ありがとうございます。本来ならば法制度について立ち入った説明をすべきところなんですけれども、その時間がありませんで、失礼いたしました。今の御質問についてですが、非営利団体については、フランスは基本的には一元的なシステムをとっていると考えてよいかと思います。すべてが1901年法に基づくというのが出発点だろうと思います。ただ、特別法によって1901年法の特則を定めていることがありますけれども、考え方としては、すべてが1901年法によって届け出られるという発想だろうと思います。ですから、日本で言いますとNPOのようなものも、それから、先ほど話題になっておりましたけれども、地域の町内会的なものも、著名なサッカークラブなども、すべて基本的には同じ法律に基づいて設立されるということになります。
 非営利法人とアソシアシオンとは同じなのかというお話でございましたが、アソシアシオンは、かつてはつくること自体が禁圧されていたのに対し、1901年法以降はつくるのは自由につくって構わない、ただ、届出をしないと法人格はないということです。法人格がないと会費を受け取ることもできないし、もっと重要なのは、助成金を受け取ることができない。会費や助成金を受け取ることが必要ならば、法人格を取得する必要がある。そのためには届出がされることになります。届出をしますと、比喩的に「小さな法人格」と言われることがありますが、必要な限度での法人格が付与される。更に、公益性の認定がなされますと、より広い範囲で活動ができるようになる。例えば、先ほど遺産の話をしましたけれども、遺贈を受けるというようなことは、公益性を認められた団体になって初めて認められることです。更に、もう一段階あったかと思いますが、段階的に法人格の範囲、すなわち団体が団体としてできることの範囲が広がっていくというシステムがとられております。

○ もう一つ。公益性の認定はどこがされるかを教えていただけないでしょうか。

◎大村教授 公益性については、2つのことを申し上げる必要があるのではないかと思います。1つは、1901年法上の公益性のあるアソシアシオンについてで、これは先ほど申し上げたように、法人格の範囲を決めるものでして、これは1901年法の手続に従って行われます。これと別に、さまざまな税制上の措置ですとか、それから、補助金について、これは細かくいろいろな制度がございますけれども、これらは別個それぞれについて所轄官庁というものがあって、それぞれの基準で行われるのではないかと思います。ですから、ある団体が公益性を持った非営利団体だというときに、1901年法によって公益性を認められた団体であるということと、それから、その活動のある部分に着目して租税あるいは補助金につき優遇措置を受けられると認定された団体であるということと、重なり合う場合も勿論あるわけですけれども、別個のところで審査をしているのではないかと思います。

○ もう一つだけ。追加質問ばかりで申し訳ないんですが、活動ごとの基準が違うとなると、例えば2つ違う事業をしている場合に、1つは、いわゆる減免といいますか、課税対象、もう一つは課税にならないという場合の事業にもなるという可能性はあるわけですね。いわゆる事業ごと判断という形でしょうかね。

◎大村教授 事業ごとの判断というよりも、むしろ租税優遇措置あるいは補助金給付など、その事項ごとの判断ということだと思います。私は租税の専門家ではないので詳しくはわかりませんけれども、租税ごと、例えば、消費税なら消費税について、一定の優遇措置を得るためにどのような手続が必要であるかというような形で規律されていると認識しております。

○ よろしいですか。
 では、○○委員、どうぞ。

○ 今の質問と同じようなことでお聞きしたいと思ったんですが、1つは税制でアソシアシオン、一般に原則的に課税なのか、非課税なのかというところをもし御存知であればお聞きしたいなと思っておりまして、それから、先ほどおっしゃった公益性を認める云々というお話がありましたけれども、それに関してそういう税制面とかほかの面のアソシアシオンの中で公益性を認められたものと、認められていないものとの扱いの差異について、何か御存知のことがあったら教えていただきたいということでございます。

◎大村教授 税法上の取扱いについては、はっきりとは把握していませんが、1901年法によって法人格が与えられて、非営利団体として一定の活動をする。そのことから直ちに租税上の優遇措置が導かれるという仕組みには、少なくとも理屈の上ではなっていないと認識しております。
 それから、公益性がある団体であるかどうかで、どのような違いがあるかということですけれども、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、1901年法によって公益性が認定されているかどうかによって、民事上は行いうる行為の範囲が違ってくるということだろうと思います。
 実際の社会活動を見ますと、小さなアソシアシオンが限られた範囲の中で私法上の行為をしている。しかし、一定の要件を満たして補助金をもらっていることはあるように思いますので、1901年法上の公益性の有無という問題と、それ以外の問題との間で、やはり少し出入りがあるのではないかと考えております。

○ では、○○委員、お待たせしました。

○ 伺いたいことの幾つかは、もう既にお答えをいただいている部分もございますけれども、1つは、佐藤先生のお話で、NPO法というのが結社の自由の実定法化だというのは、非常に私にとっては、それこそ目からうろこが落ちるようなお話だったと思います。法律はあっても、それが本当に実態としてきちんと整えられていなかったということであって、そういう意味でいけば、これからの公益法人改革についても、本当に実定法というところまで行くまでのものがつくられなければ、法律ができても意味がないのではないかなという感じがいたしました。その観点から、結社の自由ということの中で、今、大村先生のお話の中で、段階的にいろいろな支援策が付与されているというお話で、その段階にどういうものがあるかというようなことは、今、○○委員の御質問の中で幾つか例を挙げていただきましたけれども、段階的に何が許されているのかとか、何が支援されているかというような資料がもしおありになれば、後ほどで結構なのでございますけれども、そういったものを教えていただければ大変ありがたいと思います。
 それと、その段階的付与というのが、最初の想定の段階からある程度、ただいま非営利法人の1階方式、2階方式とか言われているように、最初からそういう段階を考えてつくられたのか、あるいは時代のいろいろなニーズに従って、時代的に段階的に付与されていったのか、その辺りを伺えればと思います。

◎大村教授 後の方の御質問からお答えしたいと思いますけれども、何度も繰り返して申し上げておりますが、アソシアシオンの存在を認め、これに法人格を与えるという観点からつくられた基本法である1901年法に関して申し上げますと、これは当初から段階的に法人格を付与するという立法政策がとられておりました。しかし、そのことの意味ですけれども、当時はまだ法思想の上で法人格付与に対する抵抗もかなりあったわけです。そこで、必要な限度で与えればいいのではないかということで、軽い手続のものについては、先ほど比喩で申しましたが、「小さな法人格」を与えればいい、そして必要に応じて徐々に拡大していけばいいということで制度ができたわけです。この制度がそのまま現在の日本にふわさしいかどうかはまた別だろうと思いますけれども、事実としては、当初から段階化が考えられていたといえます。
 その他のさまざまな支援措置については、最初から設計されていたというものではなく、問題ごとに徐々に形ができてきたのだろうと思います。具体的にどのような措置がなされているのかということについては、非常に細かな情報になりまして、なかなかこれをまとまった形で示すのは困難です。参考書として本を1冊持ってきたのですが、この手の実務的なガイドブックはたくさん出版されています。どのような活動について、どのような要件を満たしていればどういう便益が得られるというようなことが書かれております。
 具体的なイメージをお示しするために、私が少し知っているスポーツクラブの例を申しますと、地域のスポーツ活動は、ほとんどスポーツクラブで担われております。先ほど表でもお示ししましたが、スポーツはアソシアシオンが担うべきだと人々は思っているんですね。私企業ではなくて、非営利団体がやるべきだとフランス人たちは認識しているようです。例えば、それらの団体のために、自治体がまとまった形で各団体への連絡を受け持つ事務所のようなものを設けておりまして、あるスポーツ活動をやりたい場合には、その事務所に連絡すると、それぞれのスポーツ団体に連絡ができるようになっているといった仕組みがあるとか、あるいはスポーツ活動について会費を支払うことが必要なわけですけれども、これについては国レベルで助成を行っておりまして、金額は正確には覚えておりませんが、粗雑に申し上げますと、スポーツ振興券みたいなクーポンが配られるわけです。自分が入りたいスポーツクラブに、そのクーポンを使えばよい、これによって年間の会費が支払われるといった形の助成もなされております。あるいは、スポーツの試合などをして、入場料などを取ることもありますけれども、この入場料については、これも正確なことはわからないんですが、金額はいくらまで年に何回までならば非課税、しかし、何回を超えると課税するといった扱いがされているという話を聞いたことがあります。こうしたさまざまな形で細かな対応がなされていると考えております。

○ ありがとうございました。よろしゅうございますか。

○ 今の○○委員の話の延長線上なんですが、所轄官庁というとすべて国の機関なんですか。地方自治体もあるのでしょうか。あるいは第三者機関というのはよくわからない言い方なんですけれども、そういったものもあるのかどうか。

◎大村教授 自治体レベルで対応しているものはあると思いますけれども、おっしゃったような公益性の認定ですとか、さまざまな援助について第三者機関がどの程度関与しているのかは、申し訳ございませんが、私は把握しておりません。

○ それでは、予定の時間になりましたので、お2人の先生のお話と質疑をこれで一応終わらせていただきます。また、佐藤先生、大村先生には、これからもいろいろ御指導いただく場面があるかもしれませんので、どうぞよろしくお願いします。今日はありがとうございました。
 引き続きまして、ただいまのお2人の御説明をいただいた上で、前回に引き続きまして、公益法人制度改革の意義について皆様の活発な御議論をいただきたいと存じております。そこで、検討項目のたたき台ができておりますので、前回からの修正点もありますので、それを事務局から御説明を申し上げます。

● では、前回からの修正点だけを簡単に御説明させていただきます。
 まず、お手元の資料3の2ページ目でございます。1点目は、○○委員の方から御指摘がございまして、2ページ目の右側「留意点」の上から4つ目の「・」でございますが、民間非営利活動について、一般の人々の信頼を得るためには、活動の透明性が高い方がいい、その後に、いわゆる社会的に倫理的な側面が要求されるのではないかという記述をしておったのでございますが、ややわかりにくいという御指摘がございまして、ここにございますように「社会的な公正が求められる」というふうに変えさせていただきました。
 なお、その民間非営利活動の主体につきまして、それが公益的かどうかによって、また視点も変わろうかと思いますので、その旨書いてございます。
 2点目につきましては、1枚おめくりいただきまして、3ページ目の2つ目の「公益法人制度の諸問題への対処」のところでございますが、中ほどの「見直しの視点」の2つ目の「・」でございます。○○委員の方から御指摘がございまして、法人のガバナンスを強化するという言葉が明示的にないので書いた方がよろしいのではないかという御指摘をいただきましたので、そこにつけ加えさせていただきました。
 変更点は以上でございます。よろしくお願いいたします。

○ それでは、ただいまの御説明を踏まえて、公益法人制度改革の意義について、前回非常に短時間の議論をしたわけでございますが、引き続き御議論をいただきたいと思っております。よろしくお願いします。どうぞ、どなたでも。

○ 法律の専門家ではないので、ちょっと的外れになるかもしれませんが、これから民間による公益的な活動を大いに増やしていかなければいけないというときに、公益というものをどう考えるかということで、これについての法的な議論は全く不案内でございますので、感じとして申し上げるのでございますが、大阪大学の本間先生のお話などを聞いておりますと、今までの公益というのはどちらかというとナショナルミニマムとして、そこを不特定多数ということで扱われてきたけれども、これからはそれに加えてといいますか、民間によるということになりますと、どちらかというと不特定少数というか、例えば、地域的に限定されるというようなことかもしれませんが、そういうものも含まれるということになると考えます。それから、公益の概念というものが非常に多様化してきているということになりますと、これは多数のための公益ではないけれども、ある見方によっては非常に重要な公益だと評価する人たちがいることになります。ですから、多数のための公益ではないけれども、少数だけれども営利とは全く違う公益だというようなものをどう位置付けていくかということになろうかと思うのですが、そういうときに、これからのいわゆる官による公益だけでなく、民による公益ということも考えた場合に、不特定多数のための公益、これは不特定多数というのをどう定義するのかというのは私もわからないところなのですが、言葉の上から言うと、そういうことだけではなくて、不特定少数のための公益もあるのではないか。民間のいろいろな多様な主体が多様なニーズに合わせて活動していくと、全体として公益活動が活発になってくるということを考えると、不特定多数のための公益だけではなくて、少数のための公益というものもあって、それを民間が担っていくのではないか。そういうことによって、社会全体の公益活動が発展していくということも考えられるのではないかと思いまして発言させていただきました。

○ ありがとうございます。公益とは何かという、現代における公益ということについては、次回あるいはその次の回に、もう少し突っ込んで言及をさせていただきたいと思いますし、それから、今の少数者のための公益活動については、第2回に小松先生がかなりお触れになったところでありまして、それから、もう一つは、今の公益の社会的な意義については、今、佐藤先生がお話しされたところで、かなりカバーされていると思います。後ほど、公益ということについて、今の法律体系の中ではどのようなところで、どのように言及されているということについて一覧表を用意してございますので、御説明をいたします。
 ほかにございますか。

○ 今日は、お2人の御報告の中に共通していた問題として、公益と広い意味での非営利の連続的な側面と違う側面とがある、それが1つの焦点だったような気がするんです。2人の報告はいわゆる私的なというか、非営利的なものが同時に公益と非常に密接に結びついている連続的なものだということでございました。この点は恐らく今回の法律・制度をどう考えるかということと非常に密接に関係しておりまして、私もしょっちゅう揺れている点でございますけれども、私は本来は非営利と言うときには純粋に私的なものが入って、ただし経済的な利益はだめですが、経済的ではない私的な利益を追求するものがあっても構わない、と考えています。これは、公益とは言えないかもしれないけれども、個人の私的な満足のために団体を使うということは、本来の個人の活動の発展としてあっていいと思います。ただ、その場合は税の優遇措置などはなくても構わない。そういうものが一方の極にあって、ここでは自由が基本的な考え方になる。開示なども余り要求しない、情報開示も要らない、そんなものが一方の極の理念にあったんですけれども、今日のお話を伺っていますと、大村さんの中に非常にはっきり出ていましたが、スポーツクラブなどの個人の私的な集まりでもって結びついていた団体が、ある種の社会的な連帯というのをそこで生み出す。そういう連帯の存在が社会全体にとって活性化なり、社会のいい意味につながるので、そこにも公益的な側面を見ていいのではないかという御意見だったと思うんです。これはいろいろなインパクトがあります。1つは将来、制度をつくったときに、仮に第1段階として非営利法人制度ができたときに、今までの議論は、これには税の優遇措置などは与えないという議論が強いわけですけれども、そういう非営利団体であっても、ある種の社会的な意味があるので、できれば最小限の税の優遇措置も含めて、何らかの支援があっておかしくないのではないか。そんな議論にもつながるのではないかと感じました。

○ ありがとうございました。

○ 理念について前回と今回のお話を聞いていて、NPOを推進し、つくってリードした方々の議論と、今日のは随分ダブっていると思うんですね。ところが、与えられたテーマは、NPOはまた別、宗教団体、福祉団体も別にある。NPOはちょっと別にして、既存のお役所が天下り機関としてつくったのが半分くらいあるわけだから、それがうまく機能しないかもしれない。人事も金の使い方も全部。そういうものを頭に置いて、我々がこれからつくり上げていこうとする非営利団体という、登録するのはいとも簡単にできるというのがどれだけ対抗的な意味を持ち得るのか、既存の欠点を全部頭に入れておいて、そうでないようなものをつくり上げたいと思うのか、NPOとの線をどうするのか。今ちょっと先生がおっしゃったけれども、いきなり税金の話について要求を出せるのかどうかということを議論しないと、私は税調委員で前回この議論を何回かやった経験からすると、そこのところが不分明だと球を打ち返されてくることは間違いないんです。何も、私が全体を左右しているわけでも何でもなくて、たくさんの人がいるわけで、財務省の役人もいるわけだから、そのキャッチボールになるんですよ。当然そうなると思うから、ここで案を決めたら、それで向こうも結構ですということには、ほとんどならないと思っているから、建設的な意味で議論するためにも、そこのところをはっきりしておく必要が私はあると思います。そうでないと、有効な議論にならない。

○ 理念をはっきりしておくと。
 それから、NPOについて、お2人の先生もかなり言及されていたことなんですが、NPOを切り離してはこの問題は考えられないわけですよ。ですから、別にNPOを考えるのはこの会議の目的ではないんですが、そこも考えておいて、今度本当の非営利組織のことを考えようというのが今の私たちの考えだと。

○ 無理やり切り離したから困っているんです、混迷しているんですよ。

○ そうなんです。そうなんですが、ここではそこまで論議すると、ではこの会議は何をやっているんだということになりますので。とりあえず、その問題を中心に進めていって、そして最後にこういう問題がありますよというようなことを報告書に盛り込むということは可能であると私は考えています。それでよろしいですか。

○ 結構です。

○ 他にいかがですか。

○ 前からこの委員会では、はじめに非営利法人というものを設立し、そこから公益的な法人を拾い上げようという基本的な考え方があるのではないかなという気がして承っておりました。ここで触れると次回というお話になるかもしれませんが、公益部分を切り出すという作業は、今お2人の先生のお話を承ってもなかなか難しいんだろうと思うんです。ですから、公益法人か公益法人ではないか、事業内容だけで見ていくというのは、なかなか難しい。ということは、法人の目的とか事業とかガバナンスであるとか、そういうものを総合的に見て公益性を判断する必要がある。社会的には寄附者もいますし、納税者もいます。その人たちが認めて、これならば税制上の優遇を与えてもいいと認められるようなものをこの委員会から制度として提案していく必要がある。そうしないと、先ほどのお話にもありましたけれども、税制の委員会の方で賛意が得られないというようなこともあるかもしれません。したがって、きちんとした制度をつくるというのは非常に賛成でして、その場合に、公益性の判断に際して事業だけを切り離して考えずに、組織全体としてそれが公益性のある法人として社会的に認められるものかどうか、そういう議論をしたらいかがかと思うんです。

○ わかりました。ありがとうございます。

○ こちらの○○委員と今の○○委員の御意見の追従になりますが、既に論点の中で個人の価値観が多様化し、社会のニーズが多岐にわたりというのがありまして、先ほどのプレゼンテーションを伺いましても、プルラリズムとか多様な価値を認める社会の醸成というものが、公益法人やNPOの重要な役割ではないかと思います。このような多様化を認めた考え方を公益に含めて定義しようとすると、相矛盾する側面が出てくるのではないでしょうか。やはり社会が何を求めているのかということに関して考えるときには、公益に加えてプルラリズム、多元的な価値を認める社会の醸成というものも、下敷きに置いた方がいいのではないかと思いますが。

○ ありがとうございます。
 ちょっとここで私自身もこんがらがってしまっているのは、公益というのは国益なのか、それとも国とは違う次元の社会の益なのか。つまり、社会をみんなでよくしましょうという益なのか、それによって結局は国がよくなるということになるのか、それを切り離していいのか、あるいはそれをうまく組み合わせることができるのか、この辺のところは私自身もわからなくなりましたので、また、いろいろ皆さんで議論していただきたいと思います。

○ 今の座長の御指摘は、私も重要だと思うんですけれども、公益という概念は非常に多元的に使われることがあって気をつけなければいけないと思うんです。一方で、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、行政が行うことが公益であるとか、そういうときはやはり、対象は社会ですけれども、やはり国家的な利益を考えているんですね。けれども、これから、民間での活動形態としての法人というものを考えていく際には、国家的利益そのものを追求するための団体をつくるわけではなくて、やはり社会にいろいろ貢献する団体をつくることを考えるのでしょうから、ここで言う公益というのは我々の中では例えば「社会貢献」というような意味に使った方がいいのだと思います。これは、皆さん恐らく共通の御認識だと思いますけれども。

○ わかりました。大変よく整理していただいて、ありがとうございます。

○ ちょっと頭の整理でよろしいですか。聞いていると、非営利法人というものをつくって、これがベースにあって、その中で幾つかの条件が満たされれば、公益的な法人というものが1階でも2階でも、別のくくりでも何でも構わないけれども、そういうふうに頭を整理して、公益法人ということになれば、何がしかのお国の方で税金をまけるという話は、要するにそういう意味でこれは補助金ですから、本来なら取るべきものを取らないということは、国が一般会計から補助金を出すということだから。

○ 今の2階建ての……。

○ それは決まった話ですか。

○ いえ、そのことについては、この前議論は出ましたけれども、それは結論になっていないと私は考えています。

○ そうですか。

○ ですから、2階建てということがあるなという認識だと思います。

○ 2階建てでないような考え方もあるということですね。

○ それはあります。

○ それは、その方がいいと思いますね。

○ それでは、どういう考え方があるか、また是非。

○ だから、法人として、そういうふうにくくられるだけの幾つかの要件があって、くくるとしても誰がそれを認定するのか。去年、税調をやったときには結局、第三者で見るといってもこの行革の世の中に誰がそんな金を出すんだと。第三者という本当に権威のある者がいるのか。結局、税金の問題で認定するなら、国税庁の窓口だろうと。そんなことがいいのかねと。税金取りの連中が裁くということになると、それだけで不愉快ではないかという議論もあると同時に、そんなことを言われても嫌だから、そんな認定作業国税庁の役人はやりたくないと。幅のこんなに広いものを俺の認定ではこの人は結構、これはこうしようと、そんなこと役人としてできるかと。つまり認定の基準がはっきりしないと、法人を公益の法人と認定するかどうかというのは大作業なんですよ。現実問題として誰がやるかと。それがなければ、税法上の優遇措置を与えることはできないかもしれない。2階建て論だとすれば。

○ おっしゃるとおりですね。ただ、これまでの問題は、その認定が、例えばある省で認定されたものが、ほかの省では同じようなものが認定されにくいとかそういうことがありましたので、スタンダードをはっきりしようと。それが、ここの1つの目的でもあるわけです。まだ、今の段階でそれを結論付けることは難しいと思います。というのは、先ほど話したように3月いっぱいあるいは4月の初めまで、そもそも今のような基礎的な勉強を積んだ上で、今度はそこの手段のところに入ってくると。その時点で議論をさせていただきたいと思います。
 この辺で、時間がだんだんなくなりますので、次の議題に移りたいと存じますが、次は新たな非営利法人制度における公益性の位置付けという議論をしていただきたいと存じます。今日は、残された時間が少ないわけでございますので、冒頭に事務局から御説明がありましたように、言わば公益性の概念の導入部だけ御議論をいただくことにいたしまして、公益性の位置付けの本格的な議論については、次回の第4回の会議に、これは2月4日だと思いましたが、民法学者の星野先生からのお話を伺うということを予定しております。
 では、○○さん、説明してください。

● では、資料4でございます。今、座長の方からも御説明いただきましたように、今日はお時間の関係で1ページ目の1「公益性の概念」(1)「公益性についての考え方」のところだけ御議論いただければと考えております。御議論いただきたい留意点でございますけれども、まず1点目、これは先日、小松先生の方から御提示のあった点でございます。公益性については、自分を超えるという視点が大事だということ。
 それから、まさに先ほどの御議論で、これまで出た議論ということであれば、○○委員の方から、今回こういった仕組みを考えていくに当たっては、公益性について国家的利益を追求するという視点ではなくて、むしろ社会貢献といった視点という御指摘がありました。そこも含めて御議論いただければと思います。
 それから、その下2つほどの「・」で申しております点は、現在の法律上、どういった使われ方がされているかという点でございます。1点目は、公益について法律上直接その概念を規定しているものはない、これは民法も含めまして。
 それから、もう一点目につきましては参考資料を用意しておりまして、一番最後の参考資料2をごらんいただきたいのでございますけれども、『「公益」という用語の法令上の用例について』というものでございます。これは法律を法令検索を掛けまして、この目次にございますようなこういった分類がどうかという点はあろうかと思いますけれども、差し当たりこういった法人あるいは信託、人、物、事業、機能、その他ということで分類をさせていただきました。2ページ目以降につきまして、バックデータとして関係条文をそのまま記載させていただいております。これを見ますと、いずれの法律も個々の立法趣旨に応じまして、法律の体系の中で公益についての概念規定がなされていると。そういたしますと、どうやらこういったものを機能的に一般的に取り出して公益を定義しようとしても、どうも難しかろうと思われます。その点を3点目に書いてございます。
 4点目につきましては、こういった状況の中で、一般的な「公益」概念を客観的かつ明確に定義できるだろうかと考えます。
 また、一方で、その下にありますように、これは改革の意義でも御議論いただきたいとした点でございますけれども、現行の主務官庁制をやめた場合、どういうふうな考え方で公益性をとらえていくのかという点も念頭に置きながら議論する必要があろうかと思います。
 そうした中で、その下2つに書いてございますのは、考え方として、まず1点目は、今求められているのは公益一般の定義をすることではなくて、むしろ法制上要請されているのは、公益性を有する非営利法人の定義ではないか、こちらを考えるべきだという御指摘。
 それから、一方で逆に、今回の考え方でいけば、法人格はいわゆる1階という言葉がよろしければ、その1階の非営利法人法制のところで付与されると、そういった状況の中で、公益性を取り扱う場合には法人そのものに着目するのではなくて、むしろ事業に着目すべきではないかといった見解がございます。この点を含めて、どう考えていくか御議論いただければと思います。
 よろしくお願いいたします。

○ ただいまの御説明のとおり、公益ということについての概念規定というのは一体、過去においてはどうだったのかということを克明に調べていただいたのがお手元の資料でございます。そうしますと、簡単に言えば普遍的に通用する概念規定はないと、個々の法律によって通用させるような公益という概念があると。今回これを一体どうするのかという、つまり新しい公益という概念の一般的な概念規定をするかしないかということも、これからの問題であります。それはまた、長い議論が必要だと思いますので、今回の第3回では、まず、お配りしました資料4の1「公益性の概念」の(1)「公益性についての考え方」という非常に抽象的な部分だけについて、残った15分ほどで御議論いただきたいと存じております。(2)公益性を有する非営利法人の捉え方」以降のところは星野先生のお話を伺った上で議論をさせていただいた方がより有効であると。ここで先にいろいろなことを話し合っても、星野先生においでいただいて、そこをまずクリアにしてから皆さんの御質問あるいは御意見をいただいた方がいいと思いますので、1(1)の部分だけについてという言い方もちょっと難しいんですけれども、主としてこの部分についての御意見をいただきたいと存じます。よろしくお願いします。

○ 事業について公益性を判断するということには賛成です。ただ、これだけでは不十分で、例えば、法人の目的、ガバナンスなども併せて考えないといけない。
 それから、公益性という概念が、非営利から公益というところに連続的に変わっているという状況にかんがみて、事業の目的、内容等をどんどん変えていくことのできるようなシステムを導入すべきだと思うんです。例えばイギリスにチャリティ・コミッションがあって、そこではいろいろな判例が積み重ねられ、公益概念がだんだん形成されてきました。日本ではなかなか判例を積み重ねるというわけにはいかないでしょうから、判断基準をなるべく法律ではなく、それより下のレベルの政令、規則、告示といったより改正しやすいところに蓄積していくのが良いと思う。先ほど第三者機関のお話がありましたけれども、そういうところに判断基準の策定を依頼して、あるいはそこに権限を与えて、そこで社会の流れに適切に対応できるような仕組みをつくっていくということも可能ではないかと考えております。

○ 私も、今おっしゃったことと比較的近いかと思いますが、さっき佐藤先生に観念的な質問をしましたけれども、それは、このところに関連するものですから伺ったんですが、不特定多数の利益ということをもう少し別の非営利の組織で、しかも不特定多数の利益の追求を目的とするというところを、もう少し何か言い換える工夫はないものかという感じがいたしまして、同じことなんですが、構成員の利益を超えた社会公共の利益の推進を目的とするとか、さっき座長がおっしゃった社会貢献性ということと基本的には同じなんですが、あとは、さっき○○委員がおっしゃったように、中立的な組織でこの法人は非営利法人の中でも特別の待遇を与えるに値するかどうかというのは、ある程度抽象的な基準をつくっておいた上で、具体的に当てはまるかどうかは、そういう組織で判断してもらう。まさにアングロサクソン的な経験主義の世界になっていくかと思いますが、そういうやり方をする以外に、恐らくは妥当な解決は得られないのではないかという感じがしております。ちょっと先走った言い方をいたしまして申し訳ありません。

○ 私も○○委員の説に賛成でございます。一般的な目的として公益性ということで、先ほど不特定多数ということを多少言葉を変えてつくることと、具体的なケースでできるだけ具体的に判断できるようにするということと、それをやはり法律に明記して国民の誰が見てもこういう行為でやれば公益法人、どういう言葉になるかわかりませんが、公益性のある民間非営利法人だという認定がもらえるということがあらかじめはっきりわかるような形にしておくことが必要ではないかと。先ほど○○委員がおっしゃったように、そういう公益的な行為というのは時代とともに変わってまいりますから、それを時代に合わせて変えていくような制度、枠組みをつくることも必要ではないかと思います。

○ ○○委員はNPOの専門家だから、ちょっと聞きたいんだけれども、こういうものをつくるとするでしょう。今までその方向で何かやりたいと思っている人は今でもたくさんいらっしゃるわけです。そうすると、NPOの法律がありますから、そんなのはこちらに来るのではなくて、NPOの法律を生かしたあっちの組織になろうと思う人の方が多いのではないですか、違いますか。NPOに行きたいと思っている連中が、いや、これの方がまだ使い手があるなというふうになって、こっちは魅力があるから、こちらになだれ込んでくるということは起こるんですか。

○ むしろ、これは実際に活動をやっておられる○○委員に伺う方がいいのではないかと思いますが、私は団体の枠組みというか、法人格の性格が余り活動を左右しない方がいい、基本的にはそうだと思います。さっきのお話のとおりで、公益の中身というのは変わるわけですし、地域によっても当然違うと思います。過疎地と街の真ん中と雪国と暖かいところではいろいろ違うわけですから、これは恐らく次の星野先生の話の根幹はこういうことではないかと思いますけれども、公益性というものを国がかなり詳細なところまで決めるということ自体の妥当性、非常に概念的な話ですが、それが問われているということなんだと思います。ですから、そこのところを変える、ここでは公益性という抽象概念についてしか話をしていませんけれども、むしろNPOより私は役人としての生活が長いものですから、これは建築基準から、消防基準から、学校の大きさから、そこに置く教師から、教え方から、テキストからあるいは保険の基準からすべて同じなんですね。すべて同じ背景に考え方があるのだと思います。これがいいんだということを公益性というふうに抽象的に決めるか、あるいは「何とか基準」というふうに決めるか、「何とか計画」と決めるか、規制を決めるか、それはすべて同じことなんです。役所がこれがベストだというふうに決めて、それを各省庁でやっている。ここではそれを公益性という抽象概念で議論しているというだけの話ですから、私はそこを崩せるかどうかということが国家のガバナンスにかかわる根本的なことだと思います。ですから、そこが私は何よりも大事な部分だと思います。まさに官の役割。ですから、それを議論するというのが非常に大事なところであって、すみません、全然お答えになっていないんですけれども、ですから、実際にある活動をしようと思う団体がどういう法人格を選ぶかというのは、その次であって、そこは私はここでどういう仕組みができるか次第だと思います。○○委員のように財団法人でやっていたけれども、そんな窮屈な、ああだこうだ言われるのはかなわんなと、株式会社でやった方がいいというところもあるでしょうし、場合によっては、やはり公益法人という名前の魅力は大きいんだというところもあるでしょうし、そこはわかりません。ただ、私はそのことについても、なるべくどっちにも行けるように、余りこの入り口から入ったらこれしかできないとはしない方がいいのではないか。そういう意味では、この会に与えられたマンデートはどこまでなのか、さっき座長のお話にもありましたけれども、あくまでも公益法人をどうするかということが中心にあるにしても、将来的にNPO法人とか中間法人とか全部合わせて、どういう概念整理をしておくかというのがないといけないのではないか。
 それから、ついでに○○委員がさっき税調の話をなさいました。○○委員が税調の委員もされて、その議論をお聞きになってあるいは御苦労もされてきたということは重々承知の上で、やや偉そうな言い方をしますと、税金を取るに当たって、誰がどう公益性を認定し、かけたり、かけなかったりするかということよりも、ここで議論すべきことがずっと上等なことではないかと私は思います。ですから、やはりこっちで概念整理をしておくということが、勿論、具体的な手続の話も避けて通れない、そっちを議論する方が得てしてパワフルなことになり得るんですけれども、それは承知の上で、やはりちゃんとした概念整理をするのは大事なことではないかと。すみません、全然お答えになっていないんですけれども、ついでに申し上げました。

○ 今の○○委員がおっしゃったのは、かなり次元の高い包括的な、しかし、境界がどこにあるかわからないし、基準がどこかわからないということで、とにかく理念をまとめてもいいんだと。役人が末端で認定するかどうかというのを役人に任せるかどうかわからないんだけれども、つべこべ言うなと。言われる役人が今度は困るわけです。末端で認定する立場に追い込まれれば。主税局の局長がやるわけでも何でもないわけで、国税庁の窓口職員がやるわけだから、そこのところも考えてやらないと、○○委員が言われるのはよくわかるけれども、具体的に認定する作業が必要ならば、必要なければ別ですよ、必要があると、2階建てをやるのだったらば、そこのところについて配慮がないと物事は進まないわけです。

○ 長くなって恐縮なんですが、私自身はこれは今後の議論、今日の議論ではないと思っていたんですけれども、公益性というのは一律に決めて法律上に書くということは基本的にできないし、私もその世界でずっと行政をやっていましたのでよくわかるんですが、一度書いたら非常に固定化する。特に日本の官僚制度の下では、それはカチンカチンに固まりますし、しかも、末端に行けば行くほど、現場に行けば行くほど厳しく、過剰防衛的に運営されます。ですから、そういう意味では、私は○○委員のさっきの法律上書くというのは、半ば賛成、半ば反対なんですが、大枠のプロセス、私は公益性というのは民主主義の世の中においてはプロセスだと思いますから、どういうプロセスを経てそれが公益性と認定されるか。一国全部のプロセスにおいて認定された公益性が国益と呼べるとすれば、もっとローカルなものがあるんですね。ですから、プロセスに関する大枠の要件を法律で書くのはやはり必要でしょうけれども、その下で具体的なものはなるべくローカルに判断できる仕組みがつくれないかなと。これはまだ具体的にわかりませんが、期待しております。
 もう一つ、税について言うと、それでは、私は税務当局に聞きたいのは、自分で責任はとりたくない、では、よその官庁あるいは機関が公益性についてイエス・ノーを判定したものに関して、では、おまえはその判定に四の五の言わずに従うかというと、やはり従わないと思います。ですから、そうであれば、さっきのフランスなりあるいはイギリスのように、私は税務当局が税に関しては公益性の判定もするし、責任もとるという仕組みも1つ選択肢ではあり得ますし、私は余りそれは望ましくはないけれども、そこに限定するならあり得ますし、もっと広範な公益性の認定のシステムというものを別につくる、できればそれが望ましいと思いますが、そうであれば、税務当局は四の五の言わずに従わないといけない。どっちを選択するかという、その覚悟は実は税務当局にはまだできていないと思います。責任をとるのは嫌だけれども、全部手放すのは難しいなと。長くなってすみません。

○ ここで重要なことは、さっき○○委員が御提起されたように、硬直化していないシステムをつくり得るかどうかということもあるんですよね。それが概念規定のところにもかかわってくるわけでして。

○ 先ほど○○委員がおっしゃっていましたけれども、法律で規定するというのはもうちょっと大枠で、例えば、社会貢献するというようなことを意味しているのだろうと思います。
 それから、今、税務当局云々のお話が出ましたけれども、決めるときに税務当局のしかるべきところときちんと相談して決めるというプロセスをとれば、きっとうまくいくと思うんです。実際に、イギリスでは、チャリティ・コミッションが書類を2枚つくって、一枚を課税庁の方に必ず送るとことになっている。ただ、それに対してこれは非常に不適当だとなる例というのはごくまれで、もし意見が異なる場合には両者で話し合って決めるというようなプロセス、手続を踏むということが必要なのだろうと思います。

○ お知恵をいただいて。

○ ○○委員の答えが私の方から出るかもしれないので、ちょっとだけお話をさせていただきたいと思うのですが、私は今、現場で毎日のようにNPOの設立の御相談を受けながら、実際にNPOの方と事業をしております。もともと公益法人だったものを枠が非常に縛られているということもあって、株式会社でやっても公益と言われているような事業はやはり続けているんですが、今回の一番重要なところは、民間の非営利活動を促進するというのが今回の一番の改革の元になっている部分です。
 実際、私がここに来るに当たって、近くのNPOの方ともいろいろな議論をさせていただいてこちらに出てきているんですが、実際は、公益性の認定の有無ということについて、それを自覚してやっているNPOさんというのはそんなには多くないんですよ。それよりも、今日非常にはっきりしたのは、先ほど大村先生が御指摘されたように、自分たちが地域で必要だと思っていることをやりたい、それがちゃんとした法人格としてとれるNPOを自分たちの手で自分たちの意志に基づいてやるんだという思いが、このNPO法によってやはり背中を押されて、今まで動かなかった方が動き始めたという事実が現状にある。それはすごく重要なことなので、更にそれがもっと広がったり、更に税制面で寄附、つまりほとんどの方がNPOであっても実際に課税対象なわけです。その方たちへの寄附が集まるような制度に、この会が是非、改革を通じて実際の動きになるような形で動く必要があるだろうと思っています。そういう意味では、公益性の判断そのものの概念規定よりも、実際の先ほど来言っている結社の自由であるとか、実際にそれを認定するというそのものの透明性が担保される。現状では担保されていないわけです、公益法人そのものについては○○委員に御指摘いただいたように、末端というのは判断基準がないまま、個人の判断に依拠しているというところに非常に難しい現状、制度がありますので、そういう意味での先ほど来お話が出ている公益性の書きぶりよりも、実際判断を常に、その時代、地域に即して変えられるという仕組みを、この会で是非御議論いただくという場にしていただきたいと思います。

○ そうですね。大変重要な御指摘をいただきました。

○ 今のコンテクストの中での意見が先にあるようでしたら先にしていただいて、最後のポイントのところだけ。

○ 最後のポイントというのは。

○ 事業か法人かというところですが、いいですか。そうすると、議論の流れがちょっと変わってしまいますが。

○ 今の話の続きをさせていただきたいと思います。私は、○○委員のおっしゃったことは大変重要なポイントであって、公益を国が決める妥当性があるかないかということをここできっちり議論することが、この有識者会議の動きを見守っているNPOの人にとっても、公益法人の人にとっても大きな関心事だと思うんです。先ほどの○○委員の御質問にもある意味で答えることになるかと思うんですけれども、NPOの多くの人がこの改革からNPOを外してくれと言った1つの理由は、改革がせっかくつくったNPO法人よりもより悪いものになるのではないかという疑心が非常に強いわけです。したがって、悪いものに組み込まれるよりも、もう少し頑張って新しい改革ができたときに、公益法人の新しい法人の方に移るか、NPO法人に行くか、自分たちとしてはオプションを何が何でも残しておきたいんだと。そういうような考えがあるわけですけれども、更にその後ろには、公益というものを狭めて決められてしまうのではないか、そうすると、ここで言われております検討の視点のところにもある改革の意義の個人の多様性、個人の自主性、NPOのそういった活動を活性化するという目的が、結果的に損なわれるのではないかということにつながる話だと思います。公益というものを文章上どうこうするというよりも、それを本当に国が決めていいものなのか、あるいは個人の活動というのが多様であるから、そういったようなもので縛るということ自体が本来間違いなのかというような、いろいろな意見をもう少しというか、きっちりとここで話し合っているということを外に対しても私は示す必要があるかなと思っております。

○ それに関連してよろしゅうございますか。私は、どっちがいいか悪いかというのは、これからつくる制度の内容いかんによって決まると思うんです。要するに、2階に上ることができた非営利法人は免税措置の適用を受けるということになると、どこかが決めるほかないので、そうすると、やはり国家機関が決めるほかないということになると、やはりそこは中立的な組織をつくってやるほかはない。税務行政庁がやるというのは、恐らく実際問題として困難だと思いますし、嫌がるのではないかという感じもいたしますし、もう一つ大変なことは、認識しておいた方がいいと思うんですが、今ある公益法人を新しい制度ができた場合にどうするのかという大きな問題もありますし、もし仮にそういうものを非営利法人として分類した上で、もう一度公益法人に当たるかどうか審査し直すということを考えるとしますと大変な作業で、それを国税庁とか税務署がするということは困難なことではないかと私は思っています。

○ 私も、○○委員と同じ問題意識なんですが、どうしましょうか。よろしいですか。法人に着目するか事業に着目するかという点で、今までのお話ともつながると思うんですけれども、法人に着目することは、それなりの意味があるのではないかという点を考えてみたんです。今日のお2人のお話を伺ってそう思ったんですけれども。1つには、事業に着目するというのは、どうしても税の面に焦点が当たるのではないかという気がします。しかし、もう少し広い意味があるのではないかと思っているんです。それは特に今日の佐藤先生のお話からそう思ったんですが、単に国との関係だけではなくて、私的なセクターとかあるいは市場からあるいはコミュニティからの意義というものもあるだろうと思います。そうすると、組織のしっかりした法人というものを提供するということは、社会との関係でも意味があるのではないかということを1つ思いました。
 それから、2番目には、大村先生のお話から思ったんですけれども、国の支援の仕方というのは決して税だけではなくて、段階的にいろいろなものがあるんだというお話をいただきまして、例えば、1901年法による認定によって一定の支援をする、それから更に、税の認定によってまた支援をするというようないろいろな段階があるわけですから、そこで法人というものが持つ意味があるのではないかと思いました。
 それから、最後に、3点目として、安定的で効率的な公共的活動の基盤をもたらすという意味で、やはり法人というものもそれなりに意味があるのではないかと思いました。
 以上です。

○ ありがとうございました。大変重要な点であると思います。
 ○○委員、お願いします。

○ ありがとうございます。法人か事業かということで分けてお考えになっているようなんですが、非営利組織というのはドラッカーの言葉の受け売りになりますけれども、使命に始まって使命に終わります。したがって、その組織が持っている最終的な使命、それから、合理に基づいて事業というものをつくり、そして、事業が進捗しているのかどうかということをチェックするときには、最終的に使命に立ち返ります。これは、非常に平たい言い方になりますが、ガバナンスの問題になっていきますので、後で検討していくガバナンスの問題につなげるという意味でも、これは切り離して考えることができないのではないかと思います。
 以上です。

○ では、最後に○○委員。

○ これは、座長あるいは事務局に対するお願いあるいは提案なんですが、1人呼んでいただきたい方がいるんですが、先ほど来の公益性の認定の仕方についてなんですが、実は自治体でいろいろな試みがあります。一番近いところで言えば、千葉県の我孫子市で補助金の公募制を導入しています。もう何年か前からです。ほとんどのところでは補助金というのは市であれば市が金をつけるわけですね。そこは判断をして、あそこはOK、ここはNOとつけるわけです。ところが、ここは公募制にして5人の市民から成る認定委員会をつくったわけです。そこがOKと言ったところについては、市はその判断にそのまま乗っかってつけると。これは、ある種の公益性のプロセスを行政から切り離したやり方ではないかと思います。福島という我孫子市長は、なかなかユニークなしっかりした方ですから、もし時間の余裕があれば、この方のお話を聞くのはよいかと思います。

○ 大変重要な御提言をいただきましてありがとうございます。今の我孫子のケースをここでお話をしていただくか、あるいは私と事務局が吸い上げて、それを皆さんにペーパーで御報告するか、いずれかにいたしましょう。
 ということで、御用意いただいた時間がなくなりましたし、記者会見も待っておりますので、本日は大変活発な御意見をいただいて、かなり皆さんのお考えの中で前進したところもあるのではないかと考えております。前進しないで分散してしまったところもあるかもしれませんが、しかし、私は前進したというふうに認識しております。今回、時間も例によって足りませんし、それからまた、今回発言できなかった御意見があろうかと思いますので、先ほどお話ししましたとおり、星野先生の御講義を聞いた後で十分なディスカッションをしたいと考えております。
 それについて、事務局から次の日程を御説明申し上げます。

● 資料5でございますが、次回は2月4日水曜日、午前10時から12時半まで、場所はこの会議室を予定してございます。議題は座長が言われたとおりでございます。
 それから、非営利ワーキンググループにつきましては、本日午後1時半からこの後予定しております。

○ ありがとうございました。
 それでは、これで第3回の会議を終わらせていただきます。御出席ありがとうございました。この次もよろしくお願いいたします。


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