第3回 公益法人制度改革に関する有識者会議

−議事概要−


1.日時:平成 16年 1月 23日(金)10:00〜12:35

2.場所:虎ノ門第 10森ビル3階会議室

3.有識者会議出席者

(座  長)福原義春((株)資生堂名誉会長)
(座長代理)能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
加藤秀樹(構想日本代表)
金子宏(東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(岩原紳作東京大学教授、宇賀克也東京大学教授は所用により欠席。)
(50音順)
(政府側)佐藤総理補佐官、堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官

4.議事次第

(1)識者ヒアリング(佐藤慶幸早稲田大学名誉教授)
(2)識者ヒアリング(大村敦志東京大学教授)
(3)改革の意義についてA
(4)新たな非営利法人制度における公益性の位置付けについて@

5.議事概要

(1) 識者ヒアリング(佐藤慶幸早稲田大学名誉教授)
 佐藤名誉教授から「ボランタリー・セクターと社会システムの改革」について資料1に基づき説明があり、その後、質疑応答を含め、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
  • アメリカの内国歳入法では公益と共益が線引きされているとのことだが、例えば、グループホームのようにそこに住んでいる人に直接ベネフィットを与え、同時にアドボカシー活動を行う団体もあるなどといった実際の活動内容をみると、日本の場合、公益と共益の間に境界線を引くのは難しいのではないか。
  • 公益と共益の線引きは確かに難しい。また、実際には、法人でない団体が多数ある点に留意が必要。全体の中ではむしろ特殊法人などの政府系の法人の改革が重要ではないか。自分は、非営利法人の中で、公益と共益を区別する必要はないと考えている。
  • 21世紀の資本主義社会は、NPOやコミュニティーなどの、いわゆる非営利セクターなくしては存続できないとの考えに共感を覚えた。
  • 都市と地方でやや事情が異なるが、村落社会の組織をうまく活用すれば、こうした組織は住民による自治に寄与するほか、非営利活動も担いうるのではないか。
  • 公益とは非常に観念的な言葉であり、公益組織とは非営利活動をする組織のうち不特定多数の者の利益を追求する組織であるというのが法律学者の捉え方だが、もう少し公益概念を実質的な基準で捉えられないだろうか。
  • 公益概念を実質的に捉えることは難しいが、公益の領域をある程度類型化、特定化することは可能であり、そこから検討を進めたらよいのではないか。
  • 公益の概念を捉える場合、非営利だけではなく、非政府であること、すなわち、民間非営利であることが重要ではないか。そうしたセクターが政府と対等な立場でいかに協力関係をつくるかが重要ではないか。
 
(2) 識者ヒアリング(大村敦志東京大学教授)
 大村教授から『「結社の自由」と「非営利団体」−フランスの場合を中心に』について資料2に基づき説明があり、その後、質疑応答を含め、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
  • フランスのアソシアシオン(非営利社団)について説明があったが、フォンダシオン(財団)については、もともと相続財産の受け皿として生成された経緯があり、社団のように広い範囲で積極的に認められてこなかったのではないか。ただ、財団に関する法制度も徐々に整備されてきており、財団の役割が認められつつあると聞いている。
  • フランスでは、NPOに近い団体も、PTAやサークルに近い団体も届出で法人として設立されるようだが、これらについては類型化がなされているのか。
  • フランスの非営利社団については、一元的なシステムが取られており、基本的には、全て1901年法に基づき設立されている。アソシアシオンを結成すること自体は自由だが、届出をしないと法的能力を持たず、届出により会費や補助金を受けることや事務所を設けること、いわば小さな法人格を持つことが可能となる。さらに、公益性の認定を受けることにより、遺贈を受けることが可能となるなど、段階的に法人としてできる範囲が広がるというシステムとなっている。
  • 公益性の認定について、1901年法では、公益性を有する法人の能力の範囲が定められているが、これとは別に、税制上の措置や補助金などは所轄官庁によりそれぞれの基準に基づき行われている。
  • アソシアシオンについて、原則課税となるのか、原則非課税なのか把握していないが、1901年法上の非営利社団であることから直ちに税制上の優遇措置が講じられるわけではない。
 
(3) 改革の意義についてA
 事務局から、資料3の前回からの修正点について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
  • 公益概念が多様化している今日では、従来言われてきた「不特定多数」の利益よりも「不特定少数」の利益を公益としてどのように位置付けるかが重要ではないか。「不特定多数」というのは従来のナショナルミニマムの発想であり、今は社会的ニーズも多様化しつつあるのではないか。
  • 公益と非営利の概念の間には連続的な面があり、これをどう捉えるかは極めて難しい問題。
  • 非営利法人について、非営利の概念の中には私的な利益の追求を含め、法人として自由な活動が可能なものとして捉え、税制などの優遇措置はなくてもよいとの考え方がある一方、例えば、団体を作ることにより、社会的連帯を生み出すことなどある種の社会的な意味に着目する見方をすれば、一般の非営利法人に対し、最小限の支援はあってもいいという議論につながっていくかもしれない。
  • 改革の理念については、税についてきちんとした要求を出すという観点を踏まえ、非営利法人制度の意義やNPO法人との関係などを含め、相当明確にしておく必要があるのではないか。
  • 非営利法人の中から公益的なものを切り出すアプローチは難しいのではないか。組織全体として、社会的に認められる法人の制度は何かといった視点から議論すべきではないか。
  • 多元的な価値が認められ、多様な社会という考え方は重要だが、公益性を国等が定めるとすればこの考え方と矛盾する面があるのではないか。
  • 公益を考えていく際には、国家的利益を求める視点よりも、社会に貢献するという視点が大切ではないか。
  • 公益性を判断する主体については、行革が要請される中、課税庁を含めて何が適当かについて政府税調で議論があったが、いずれにせよ、判断の基準を明確にする必要があるのではないか。
 
(4) 新たな非営利法人制度における公益性の位置付けについて@
 事務局から、資料4の1.(1)「公益性についての考え方」の部分について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
  • 公益性については、事業ごとに判断するというのも賛成だが、併せて目的なども考えることが必要。また、公益性を時代とともに変えることのできる仕組みを検討すべき。法律ではなく、政令・規則・告示といった改正しやすいレベルで規定すべきではないか。
  • 「不特定多数の利益の追求を目的とする」という公益に係る説明を言い換えられないか。例えば、「構成員の利益を超えた社会公共の利益の推進」といった社会貢献に近い表現が考えられないか。特別の優遇を与えるかどうかについては抽象的な基準を作る一方、具体的には、中立的な組織を設けて、組織を基に判断していくという経験主義的なやり方にならざるを得ないのではないか。
  • 一般的な目的としての「不特定多数の利益」と具体的な判断基準を法律に明記し、公益性判断についての客観性を確保すべき。また、時代とともに公益性が変わり得る仕組みが必要。
  • 公益の中身は地域によっても異なる中、国が詳細に一律に公益の基準を決めることの妥当性が問われているのではないか。
  • 公益性の認定を役人に任せるかは分からないが、公益性の判断基準を考える際には、実際に認定を行う現場の事情も含め、認定主体への配慮も必要ではないか。
  • 公益性を一律に法律に規定することは困難であり、一度規定されると固定化するおそれがあるのではないか。公益性についての大枠の要件や認定のプロセスを法律に規定する必要があるにしても、細かいことはローカルに判断できる仕組みがよいのではないか。なお、税に関しては、税務当局が別の機関による公益性の判断に従う仕組みを是とするかどうかが重要ではないか。
  • 公益性について、法律で大枠を規定するイメージではないか。その際、イギリスのチャリティ委員会と課税庁との協議の例を参考にしつつ、税については、判断機関が税務当局と手続を踏んで協議する仕組みがよいのではないか。
  • 今回の改革の一番のポイントは民間非営利活動の促進ではないか。NPO法により地域で自分達がやりたい活動を自分達の手で行うようになった。改革を通じて、そうした団体に寄付が集まるような動きがさらに出てほしい。また、公益性の概念規定よりも、結社の自由や認定主体・手続の透明性の確保が重要。
  • 公益の定義よりも、国が公益を決めることの妥当性をきちんと議論すべき。
  • 公益性のある法人が免税となれば、どこかの国家機関が決めるしかないが、中立的な組織を作るしかないのではないか。実際には課税庁が行うのは困難ではないか。
  • 公益性の判断に際して、事業ではなく法人に着目することに意味があるのではないか。一つは事業に着目すると税に焦点が当たるが、もう少し広い意味で、組織のしっかりした法人を社会として提供することに意味があるのではないか。また、フランスのように、国の支援の仕方は、税だけでなく段階的に色々なものがあり得るとすれば、法人に着目することに、より意味があると言えるのではないか。さらに、安定的で効率的な、公共的活動の基盤をもたらすという点でも、法人に着目することには意味があるのではないか。
  • 非営利組織というのは、「使命に始まり使命に終わる」ものであり、組織のもつ使命に基づいて事業を作り、事業をチェックするときは使命に立ち返って考えるべきで、結局、ガバナンスの問題にもつながるという意味でも、事業と法人というのは切り離せない問題。

(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)


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