1.日時:平成16年11月9日(火)10:00〜12:30
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
金子宏(東京大学名誉教授)
関幸子((株)まちづくり三鷹事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会理事・総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(岩原紳作東京大学教授、宇賀克也東京大学教授、加藤秀樹構想日本代表、河野光雄内外情報研究会会長・経済評論家は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 松田事務局長、西室長、横田参事官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 報告書の審議(4)
5.議事概要
○ 報告書の審議(4)
事務局作成の報告書のたたき台を基に討議が行われた。主な意見は次のとおり。<総論について>
- 民間非営利部門が今後、社会で占める役割の大きさを強調しているが、法人を構成する個人、財産を出捐する個人の活動や企業の善意の促進という意義もあるのではないか。個人の公益活動を支え、そして個人が集まってできた法人がまた、公益活動をするという2段階の構造があるのではないか。
- 日本における民間非営利部門は、政府や企業のセクターに比べ脆弱。今後重要な役割を担わせるためには、法制の改革等により非営利セクターを支援強化し、以って政府や企業とともに社会のあり方を変える一員となるということではないか。また、戦後の高度成長を支えた諸制度が大きな転換期を迎える中で、新たな社会のあり方、ガバナンスが求められており、この動きに合わせ公益法人制度も変わっていく必要があるということではないか。
- 公益法人制度の抱える諸問題に対処する観点より、公益活動の推進の観点を強調すべき。
- 制度の運用として重要なのは、制度の理念に沿った適切な運用がなされること。制度の悪用に対する配慮は付随的な話であり、いかに理念に沿った運用ができるかを考えるべき。
- 判断主体には市町村は含まれないが、法人の実質的な支援者、法人と共に歩みを進める者として基礎自治体は重要。市町村の役割についても言及すべき。
- 政府主導で今後検討を進め、これに民が協力するというのではなく、自立した民が積極的に役割を担うことへの期待が大きいがゆえに、民の協力が不可欠、ということではないか。
- 判断主体に参加する民間人の立場や、判断主体の機能の一部のアウトソーシングも考えれば、民の自立という視点は重要。
- 本会議は閣議決定に基づく会議であるが、議論までもが閣議決定に縛られているというイメージがある。議論の範囲は自由な発想に基づき、閣議決定外にも及んだことを記述してはどうか。
- 法人関係者等は本会議から何が生まれてくるか注目している。8条委員会というとどうしても既存の器というイメージが強く、民間有識者が事務局の作成するものに受身の形で判断するという印象がある。8条委員会ではあるが、民間のイニシアチブが反映される、これまでにない新たな組織を作るのだというメッセージを発信すべきではないか。
<改革の意義について>
- 改革の基本方針の部分について、明確に表現すべき。
- 改革の基本方針については、@現行の主務官庁制を廃止し、A準則による一般的な非営利法人制度を創設するとともに、B一定の基準を満たす一般的な非営利法人には公益性を認定するという3本立ての方が分かりやすい。
<一般的な非営利法人制度について>
特段の議論なし。<公益性を取り扱う仕組みのあり方について>
〔公益的事業の規模〕
- 公益的事業の規模について、何をもって法人事業の過半となるかは難しいので、一定の規模が必要というくらいを記述すればよいのではないか。公益的事業の規模の判断の際、事業費の多寡のみで判断するのでなく、無償の労務提供なども判断することが必要。
- 現行公益法人については、支出額で公益事業の規模を判断してきたが、仕入れをしなければならない事業では基準を満たすのは困難。売上高から原価を引いたもののうちどれだけが公益的事業に使われるかということで判断すべき。
- 支出額のみでなく、数字で表現されないものをどう評価するべきか。
(← 公益的事業の規模をどう判断するかは、公益性の判断要件の中でも一番困難なところ。現行指導監督基準でも、本来事業の規模を総支出額の2分の1以上としており、要件を緩めることについては批判が想定される。また、できるだけ客観的・明確な要件としないと判断主体が困ることにもなる。)- 裁量の余地を残すのも問題だし、支出額のみで判断するのも問題となり難しい。
- 初めから現行指導監督基準よりも後退したところに基準を置くべきでない。また、合理的な理由がある場合には基準を満たさないことも許容することとしているので、適切に運用すればよいのではないか。また、合理的な理由を情報開示するとあるが、判断主体が情報開示するのか、法人に開示を義務付けるのか。
(← 法人に対し、合理的理由についての開示を義務付ける方向で考えている。)- 何をもって公益的事業の規模を量るかだが、一般に支出が大きくても剰余が少ないケースもあり得ることから、支出額によるのではなく、一般論としては、"法人の公益的事業の規模は、営利事業の収益より大きいものであるべき"、というように記述するべきではないか。
- 結局のところ、公益的事業の規模の量り方については、判断主体の社会常識に委ねられるのではないか。
〔公益的事業の営利競合等〕
- 公益的事業の営利競合等については、初めから営利競合すべきでないというのではなく、営利企業の事業と重なり合うことがあるという趣旨を明確にした上で、営利法人として行うことが望ましい事業かどうかは、非営利法人の行う多種多様な事業を判断主体が1件1件判断するということを明確にすべき。
(← 原案は、公益性を有する法人が、本来営利企業として行うことが望ましい事業を行うことは適当でないという原理原則を書いたものである。)- 民間非営利部門が民間営利活動を阻害しないことのみならず、介護事業の分野に見られるように、資力のある民間営利企業が民間非営利部門の分野を侵食している現状も踏まえるべき。NPOバンクの例では、民間営利部門の金融機関も低金利商品等の開発で対抗してきている。一方が一方を阻害してはいけない、ということではなく、単に、公益性を有する非営利法人であるゆえ制約がある、ということでよいのではないか。
(← この報告書案では、民間営利活動と民間非営利活動とが競合することを否定するものではなく、イコールフッティングの観点などを踏まえて、公益的法人が民間営利活動を阻害することを問題としている。)- 民間営利部門の事業分野と民間非営利部門の事業分野とを完全に分離しては、両者の中間に位置する分野の発展が妨げられる。両者の競合が全体の向上につながる。
〔収益的事業に伴う利益の公益的事業への使用〕
- 収益的事業に伴う利益は、原則として公益的事業のために使用するということでよい。
〔理事構成及び評議員構成の制限〕
- 現行指導監督基準では、理事構成等に関し、同一親族、特定企業関係者、主務官庁出身者、同一業界関係者の占める割合を制限しているが、主務官庁制がなくなる場合、主務官庁出身者の制限はどうなるのか。主務官庁制がなくなれば規制は不要か、それとも特定官庁出身者の占める割合に制限を課すべきか。
(← 趣旨として現行指導監督基準の内容を大きく変えることは考えていない。官庁出身者については、公務員制度改革の動きも踏まえて検討することが必要。)- 報告書では、同一親族等の特定関係者の占める割合を制限すると記述すればよいのではないか。
〔役員報酬等〕
- 多額であればほぼ不適切な利益配分であるし、実態もそうであるから、そのように言い切ればよい。何をもって不適切と判断するかについては、最終的には裁判所の審理事項になり、行政の自由裁量が認められるわけではない。
〔公益性を失った法人の財産の取扱い〕
- 原則的には区分されて帰属先や使用目的の制限がかかる、という趣旨が明確になるようにすれば、一般に納得しやすくなるのではないか。一般的な非営利法人になる場合と営利法人に転換する場合とを分けて記述すべきではないか。
(← この報告書案では、A:公益目的に使用されるべき財産を、公益性の喪失時点で区分せず、法人を解散した場合の残余財産の帰属者に係る制約を課す方法と、B:公益目的に使用されるべき財産を、公益性の喪失時点で区分した上で、当該区分された財産について、その処分を公益目的に限る規律を課す方法とに大別している。)- Bの方法において、適切なタイミングで類似の公益目的の法人に対する寄附を行うというのは、法人がそのタイミングを選択するのであり、制度により強制することは法人にとって負担だという記述は不要ではないか。
(← 適切なタイミングとは、法人が選択することだけではなく、制度設計の中で決まってくることも想定している。)〔登記と公益性の判断の関係〕
- 設立の登記と公益性の判断を同時に行いたいと思うのが、利用者の合理的な考え方ではないか。
(← 登記は登記所が行い、公益性判断は判断主体が行う。現行公益法人も主務官庁が許可して登記所で登記している。登記と公益性判断が同時に行えれば便利だとは思うが、法人設立と公益性判断を分離するメリットがあるから新制度では分離させている。また、制度的に登記と公益性判断をセットにしないと実現できない話でもなく、運用上工夫の余地がある。)- 登記所と判断主体が密に連携をとることによって、より迅速に対応するということも検討できるのではないか。
(← 制度的に連携させるという方法もあり得るかもしれないが、例えば、活動実績を求めない以上、法人設立前に判断主体と事前に十分に相談しておくなどの方法により法人設立と公益性判断の取得を同時的に行うことも可能であり、利用者側もこのような工夫ができるのではないか。)〔定款で拠出金の拠出を定める法人の取扱い〕
- 拠出と社員資格との連動はあり得るのか。
- いわゆる1階部分は定款次第であるが、2階部分は今後検討。
〔会計基準〕
- 適切な会計基準が整備されることが重要とあるが、現行公益法人については、新公益法人会計基準を平成18年4月1日以降開始する事業年度から適用することとしており、新たな公益性を有する非営利法人についても、会計基準を作り直すのではなく、新公益法人会計基準を適用すべきではないか。
〔一定期間ごとに公益性の有無を確認する仕組み〕
- 更新制度の導入のメリット(制度の濫用防止、法人の活性化等)とデメリット(実効性が明確でない、法人や判断主体の負担が一時期に集中する等)を記述すべき。
- 更新制度には相当のデメリットがあるうえ、ルーチンワーク化する恐れもある。内部通報等により必要に応じて事後チェックがなされればよいのではないか。
〔公益性の判断に伴う主な効果〕
- 税法上の優遇措置について、例えば、公益活動を促進する観点からの検討を期待したい、くらい書いてもいいのではないか。
- 税は公益性の効果として当初から議論してきたところであり、もう少し強い論調で書いてほしい。
- 言葉の選び方の問題もあり、慎重に考えたい。
<現行公益法人制度の新制度への移行のあり方について>
- 移行措置の基本的な仕組みについて、移行期間内に公益性の判定を受ける仕組みと、新制度施行時に一旦公益性を有する法人とみなした上で公益性の判断を受ける仕組みの両方の記載を残す必要はあるのか。会議では後者が多数だった気がするが。
- 必ずしも全部の公益法人が、新制度施行時に一旦公益性を有する法人とみなした上で公益性の判断を受ける仕組みを望んでいるとは思わない。移行期間内に公益性の判定を受ける仕組みを残すことで、非営利法人に移りたいところは移ることができる。両方の仕組みを残すことに意義があるのではないか。
- 財産の継承の際に、債権債務の部分を一旦きれいにするようにすればいいのではないか。
- 経過措置の問題だろうが、新法が公布されても旧制度の公益法人は一定期間その名称を称することができるのか。
- 新制度下の2階建ての部分に適当な名称があれば良いが、適当な名称がないのが現状。
- 移行期間内に公益性の判定を受ける仕組みであれば、公布後も引き続き前の名称を使うところがあるのだろう。新制度施行時に一旦公益性を有する法人とみなした上で公益性の判断を受ける仕組みであれば、移行を境に前の名称は使えなくなるのだろう。
<その他>
- 報告書についてパブリックコメントはやるのか。
- パブリックコメントは中間整理の段階ですでに頂いており、また、主要な法人の意見は事務局が伺っている。そのため、各界の意見はすでに吸収していると認識している。
(← パブリックコメントは中間整理の段階で行っており、今回は考えていない。仮にやるとすれば来年以降の作業の段階で考えることになる。)- 中間整理よりも今の案は具体的な内容になっており、是非来年の作業の時点でパブリックコメントの機会を設けてほしい。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)