1.日時:平成16年11月2日(火)15:30〜17:30
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
加藤秀樹(構想日本代表)
金子宏(東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会理事・総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(能見善久東京大学教授、岩原紳作東京大学教授、宇賀克也東京大学教授、勝又英子(財)日本国際交流センター常務理事・事務局長、田中弥生東京大学助教授は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 松田事務局長、西室長、横田参事官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 報告書の審議(3)
5.議事概要
○ 報告書の審議(3)
事務局作成の報告書のたたき台を基に討議が行われた。主な意見は次のとおり。<改革の意義について>
- 今回の改革は不祥事問題への対応にもなっている点を盛り込むべき。
- 不祥事をなくすには、法律だけでなく運用も重要。
- 言葉のつながりがスムーズでない部分があり、表現振りを考えるべき。
<新たな非営利法人制度について>
- 法人一般に関する規定を民法に置くという部分の表現には配慮が必要。
- 表現振りの案を事務局に提出してもよい。
- 民法に法人に関する規定を置くというのは少数意見というわけではなかったのではないか。
(← 法人として営利法人と非営利法人に共通する事項を民法に規定してはどうかというのが非営利法人WGでの検討結果。非営利法人に関する条文は大部にわたることが予想され、これらすべてを民法に規定するのは現実的ではない。)- 残余財産の扱いや情報公開のあり方に関しては、非営利法人制度と中間法人制度とは異なる。中間法人制度が非営利法人制度に包含されるとは単純に断言できないのではないか。
(← 非営利法人制度における残余財産の扱いは中間法人制度と同じ。また、情報公開についても両者は基本的に同じ。)<公益性を取り扱う仕組みのあり方>
- 判断主体に関し、公益性を統一的に判断するというのは、従来の主務官庁が判断するのでないという意味だと思うが、地方に判断させず国が一元的に判断するという意味に捉えられかねないので注意すべき。また、新たな役所の機関を作ることは一般的には反対が強いので、この改革全体として、官から民へという大きな流れの中で行政の負担を減らすことになるという旨を打ち出すべき。
- 都道府県の役割を国に持ってきて、国が一元的に判断することはないだろう。
- 一定の地域を拠点として活動する非営利法人に関しては、原則として都道府県で公益性の判断等を行うことが適当とされている。
- 一定期間ごとに公益性の有無を確認する仕組みについて、法人にとっては、更新制度と立入検査のどちらの負担が重いかは分からない。また、更新制度であれば民間委員を含めた判断がなされるが、立入検査となれば事務局が判断することとなり、現行公益法人の仕組みに結果的に近づいてしまうのではないか。
- 立入検査というのは法人にとって大変な負担となる。一定期間ごとに確認するとだけ決めておけばよいのではないか。
- 更新制度は、委員によってイメージが異なるのではないか。運転免許の更新のようなものもあれば、アパートの更新のようなものもある。更新制度を厳格に理解し、有効期間が終われば公益性がなくなるとすると、法人活動を萎縮させる効果があり得ることから、更新制度を位置付けることには消極的。
- 毎事業年度の事業報告書等の確認をきちんと行えば、それでよいのではないか。
- 公益性を有する法人の営利競合等に関し、例えば、電気事業やバンクを地域で行う財団法人やNPOが現れ、ノン・プロフィット・カンパニーが増えているなど、営利事業と公益事業が融合してきている。公益的事業の幅が広がってきており、営利事業と融合を図るべきというニュアンスを打ち出すべき。
- 公益性の判断に伴う主な効果として、公益性を有することを示す呼称の使用に加え、登記簿上で公益性を有する旨がはっきり分かるようにすべき。
- 定款で拠出金の拠出を求める法人について、公益性を有する場合には、議決権と拠出金額が連動しないようにすべき。
- 公益性を有する非営利法人が付随的に行う収益的事業については、税法上の収益事業ではない旨を端的に明らかにすべき。
<現行公益法人制度の新制度への移行のあり方>
- 現行の公益法人から新制度の一般的な非営利法人に移行する場合、公益法人として形成した財産の取扱いが問題。すでに、公益信託とか別会計にするといった考え方が会議において提示されている。こういった措置は技術的に可能であろうが、その場合、非営利法人の定款に手のつけられない財産があることを書く必要があるのではないか。
(← 確かに当該財産について何らかの制約が課されないとおかしい。どのように制約を課するか検討が必要。)- 公益性が否定され、一般の非営利法人に移れといわれた場合、NPO法人や営利法人への移行を希望する法人も出てくるかもしれないが、このようなケースはどのように扱うのか。
(← 素朴に考えれば、法人を解散した上で、新たに法人格を取得するか、現行の営利転換指針に従うことになろうが、手続きの簡素化ができないか検討する必要がある。ただ、営利法人等への組織変更は法制上難しいのではないか。)- 現行の公益法人にもいろいろあり、本来的に営利法人としてやったほうがよいような法人もある。このような法人は非営利法人となるよりは、営利法人になりたいというかもしれない。行政改革の観点から営利法人に移行させるべきとの意見もあり、判断主体が営利法人への移行を促すこともあるのではないか。
- 判断主体は公益性の有無を判断するが、営利法人に移行せよという指導まではしないのではないか。
- 現行の公益法人が非営利法人以外の法人に移行する場合の組織変更について触れる必要があるのではないか。営利法人への組織変更規定を設ける方が、解散して新たな法人を設立する手間が省け、よいのではないか。
- かつて公益法人の営利転換について検討したが、非営利法人から営利法人への組織変更は、理論上不可能ではないのかもしれないが、法制上かなり難しい問題があるということだった。むしろ実質的に考えて、いったん法人を解散し、新たな法人に承継させる場合の具体的な問題について検討し、これに対する個別的な手当てが可能であれば、それを考えるのが現実的だろう。
- 営利法人に移行するために法人を解散すれば即時に財産を失うし、一般の非営利法人に移行しても、当面財産を処分しなくてもよいが、区分経理しなければならないとか、解散時に他の同種の法人等に寄附しなければならないといった制約を受けることになる。また、実際には制約のある財産を資金が足りなくなったときに使ってしまうということがあり得るのではないか、という問題もある。
- 時代の変化に伴う公益性の判断基準の変化により公益性が否定されて、公益性を有する法人から一般の非営利法人となっても、同一の目的・事業を継続する場合、当該法人が集めた資金はこの目的・事業のために集めたのだから、その目的には拘束されるが、同じ事業を続け当該資金を使うことにはなんら問題はない。たまたま公益性の認定が外れただけで、同じ事業を継続しているのだから、特段の制約は受けない。他方、公益性を否定された法人が営利法人に移行しつつ、同じ事業を継続する場合は、公益性を有する法人として蓄積した財産を株主に売り、株主が支払った対価が公益分野に残り、同種の団体等に寄附した場合に処分は終了することになる。
- 確かに悪意により公益性を失ったのではなく、基準が変わっただけで公益性を失った場合に事業が継続できなくなるのは気の毒だ。
(← 公益性を失った法人の財産のところでも同様の議論があり、例えば考え方B(公益目的に使用されるべき財産を、公益性の喪失時点で区分した上で、当該区分された財産について、その処分を公益目的に限る規律を課す方法)でも、公益性を失ったが、目的・事業には変更がない場合は、その後も同じ公益的活動を継続して行うことは可能だろう。)- かつては公益であったが、基準が変わったために今は公益の範疇に入らない場合に、かつて形成した財産を凍結あるいは同種の団体に寄附させるのは、現実問題として難しい。
- 考え方A(公益目的に使用されるべき財産を、公益性の喪失時点で区分せず、法人を解散した場合の残余財産の帰属者に係る制約を課す方法)は、解散時まで財産の制約を課すとしているが、制約とは分配してはいけないということか、使用してはいけないということか。
(← 公益性を失っても法人としては解散していないので、引き続き残余財産については解散時まで帰属者に係る制約をかけ続けるという趣旨。)- たとえば、○○産業協会という業界団体があり、かつては公益法人であったが、○○産業の発展のためにという目的を掲げていたことにより、共益と認定された場合、それまで協会が蓄積した財産は、○○産業の発展のために業界の各社から会費を集めて蓄積された財産であるから、同じ目的に使ってもよいが、分配はできないということではないか。
(← 考え方Aは解散時の残余財産の帰属者が制約されるもの。法人の存続中は考え方A・Bいずれも判断主体がチェックすることになるが、そのチェックの中身の問題ではないか。明示されてはいないが、公益性を失っても、同じ目的の範囲内で従来の財産を使用する分には問題がなく、目的の範囲を超えて社員に分配してしまうことや解散時に社員に分配することは認められない。つまり、いったん公益性の認定を受けた法人は公益性を失っても引き続き制約を受けることになる。)- 今回の改革の一つの目的は、不具合のある法人を改革することだったはず。不具合のある法人が公益性を失って一般の非営利法人になって、公益法人時代に蓄積した財産で、分配はできないとしても、自由に事業ができるとすると、国民は納得するだろうか。公益性を失った場合は、財産を凍結し、同種の団体に寄附する制度にする必要があるのではないか。基準が変わったことにより公益性を失った法人については、従来の財産を用いて同種の事業を継続してもよいと思うが、不具合のある法人を野放しにすることもできないのではないか。考え方A・Bの二者択一ではなく、どの法人にどの考え方を適用すべきかは、判断主体が決めるべきではないか。
- 一般の非営利法人となる場合は考え方A、営利法人に転換する場合は考え方Bということ。今まで公益法人として主務官庁から認定されてきた背景もあることから、公益に使用してきた財産を、基準が変わったからといって遡及して召し上げるのは酷。
- 考え方Aだと実際は移行後の法人の財産と混同して使用される。公益性のある法人として蓄積した財産を解散時に寄附させるとしても、それ以外に生じた果実はどのように扱うのか。当該財産を運用し、その結果なくなってしまった場合はどうするのか。
- 理論的には公益性を失った場合は財産を凍結すべきだろうが、凍結して、同種の団体等に帰属させるのは厳しすぎるのではないかという思いもある。
- 非営利性の問題と公益性の問題があるが、いずれにしても公益性を有する法人として蓄積した財産を個人に帰属させることは認められないという点は一致している。次に、何を帰属させてはいけないのかという切り分けの問題と、切り分けた分をどう使うかという問題があり、これは今回の会合以前にも議論してきた。今日、新しい法人となった後、解散するまでの間、切り分けた分を従来の事業に使ってよいかという論点が新たに出てきた。公益性を失った場合でも、共益的な事業を行い、切り分けた財産が実質的に構成員に分配されてしまうことのないようチェックできるのであれば、従来の事業に継続して使用してよいのではないか。
- 公益性を失って一般の非営利法人になったら安楽死するというのではなく、再び公益性の認定を受けようとする法人もいるだろうから、事業が継続できなくなるのは問題。
- 考え方Aについての解釈が統一されていないのではないか。
- 考え方AとBは両立すると思う。要は新たな法人に引き継いだ財産がどのように使われ、それをどう判断主体がチェックするかではないか。公益性を失っても事業が継続できるとすると、実は構成員に分配されるのではないかと懸念する国民もいるだろう。公益性を否定され、一般の非営利法人となる法人が存在することを見込んで、この改革に取り組んでいるのに、一般の非営利法人には判断主体のチェックが及ばず、かつ公益性を有する法人として築いた莫大な財産をそのまま使用できるというのでは改革の趣旨に反する。考え方Aしかないとするのはどうかと思う。
- 改革により公益性を失った法人が一般の非営利法人になり、活動が衰退してしまったのでは意味がなく、従来の事業も含めて自由に一般の非営利法人として活動したほうが社会経済的によいこともある。このことと、公益性を有する法人として形成した財産を拘束することとの整合をどうとるか、考える必要がある。
- 公益性を有する法人として蓄積した財産の原資は何かという問題だろう。原資としては、@当初の設立者が出捐した分、A収益事業の結果生じた分、B寄附によって得られた分、C税の優遇により得られた分がある。@とBはある目的のために得られたのだから、同じ目的・事業なら継続使用は許されるのではないか。Cについては、単年度で処理され残っていないという意見もあるが、蓄積されているとも考えられる。Aの収益事業は本来公益目的のために許容されるのだから、その結果生じた分を公益以外に使えるとしたら問題。
- 業界団体の会費などはBと同じ扱いだろう。
- 今般の改革を意識して、法人を公益と共益に分けようとしているところもある。このような動きは大事にすべきであり、法人を分けて損したということのないようにすべき。また、たとえば学会などで図書室を作るために会費を蓄積して築いた財産がある場合に、共益だからといって取り上げるのは酷。原資を区分して、第三者機関が判断することができる余地を残すべき。
- 財団・社団間の組織変更について検討すべき。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)