1.日時:平成16年10月29日(金)10:00〜12:30
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
金子宏(東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会理事・総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(岩原紳作東京大学教授、宇賀克也東京大学教授、加藤秀樹構想日本代表は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 松田事務局長、西室長、横田参事官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 報告書の審議(2)
5.議事概要
○ 報告書の審議(2)
事務局作成の報告書のたたき台を基に討議が行われた。主な意見は次のとおり。<新たな非営利法人制度について>
- (営利・非営利を通じた)法人制度の基本的な事項については、民法におけるとよい。新たな非営利法人制度(いわゆる1階部分)において、残余財産非分配の類型を設けることについては、寄附を募りやすくなるというメリットもあろうが、制度が複雑になる。寄附を募りやすいといっても、寄附を求めるのなら、公益性の判断を受ければよいのではないか。それに、残余財産非分配という仕組みにしても、社員の親族への分配という事態が発生するのを防止する実効的な手段が無く、実質的に規制できないのではないか。制度を複雑にして混乱を招くより、法人の自治に任せればよいのではないか。
- 残余財産の非分配を定款等で定めてその変更を禁止し、その旨を公示する、というのなら、複雑ではない。定款に違反すれば、理事の責任が問われるということになる。
- 理事の責任ならば、類型を法律上分けるようなことをしなくても、定款で定めればよい。
- いわゆる1階部分の法人は、いわゆる2階部分の法人の予備軍と認識。1階部分でも寄附は多いし、その寄附は公益目的に使用されることを想定し、つまり、残余財産の非分配を前提に行われるもの。このことから、新たな非営利法人制度と中間法人制度との統合は無理があるし、統合しようとするから、制度が複雑になる云々の議論になるのではないか。NPO法人制度を統合しないのなら、中間法人制度も不統合でよい。中間法人からいわゆる2階部分へと移行できるように中間法人制度を改めることも考えられる。中間法人制度を統合すると、NPO法人が新たな非営利法人制度に入ってきにくくなる。中間法人制度との統合は再検討すべき。
- 中間法人制度との統合は疑問。中間法人は、ゴルフ場経営やSPCなど、色々なものがごった煮のように入り込んでいるのが現状。今回の公益法人制度改革は公益法人の不祥事への対応という面もあるのに、そのような中間法人を統合するというのは、新たな非営利法人のイメージを曖昧にし、社会からの批判を受けるのではないか。
- 中間法人制度を新たな非営利法人制度に組み入れても、規律のしっかりとした仕組みにしてあれば、害は無いのではないか。
- 公益・共益・非営利の概念は、連続的であり、それをあえて法人類型として区分することは適当ではないのではないか。むしろ、各々の法人が自分のとるべき位置づけを自分で選んだほうがよいのではないか。
- それなら、中間法人制度のみを統合してNPO法人制度は存置する、というのは理屈が立たないのではないか。あまりにも一般的な非営利法人制度というのは、かえって作りにくいのではないか。
- NPO制度を存置するというのは、政治的な経緯によるに過ぎないもの。いわゆる1階部分は、非営利という括りなので、もちろん中間法人制度も包含されるし、非営利法人には様々な種類があってよい。
- ノン・プロフィットといえば、国際的には残余財産の非分配ということを意味している。残余財産の分配・非分配で法人類型を区分し、中間法人制度を統合しないことでよいのではないか。
- 米国の幾つかの州では、税法上、非営利法人でも残余財産の分配を認めているケースがある。中間法人制度を存置して法人類型を区分すると、ある法人が異なる法人類型に移行しようとしても、一旦解散したり、複雑な移行手続を踏む必要が生じるので、定款の変更で済ませられるのならば、その方が自由で簡便。
- この有識者会議の初めの頃に、いわゆる1階部分は非営利法人の自由度を拡大する、というイメージで出発したはず。
- 公益・共益・非営利の連続性は、実際に現場で生じていること。本案なら非営利法人の門戸が拡大するうえ、今後の時代の変化にも対応していける。
- 中間法人の統合に対する懸念は、原則課税に注目しているのであろうが、政府税制調査会は原則課税・非課税という議論に拘っていないと聞く。当会議として税制上の措置が懸念されるのなら、その旨を政府税制調査会に伝えるべく、報告書に盛り込むべき。
- NPO法人をはじめ、いずれ様々な非営利法人が入ってこられるような幅広い制度にすべき。
- 政府税制調査会が原則課税・非課税という議論に拘ってないのなら、税制上の措置について報告書に盛り込む必要は無いのではないか。
- 中間法人は営利法人と非営利法人の中間にあり、本当に非営利法人だとはいえないから、新たな非営利法人制度に統合しない方がよいのではないか。中間法人を統合すれば新たな非営利法人も原則課税になるという懸念もある。法人類型間の移行が簡便でないとはいうが、それは現状の各種非営利法人制度だって同じこと。中間法人から新たな非営利法人になりたいのなら、当該中間法人は、一旦解散するなり、移行手続を定めてそれに沿うなりすればよい。
<公益性を取り扱う仕組みのあり方について>
(判断主体のあり方について)
- 判断要件の目的の不特定多数等を判断する際に、判断主体において委員会の意見を求めることにより判断することとすると、特定の大臣が判断主体であるということになるのか。
(← 実質的な判断の仕方と国家行政組織としてどう規定するかという問題があるが、実質的な判断は委員会が行うという方向で検討したい。)- 判断主体は委員会であるとすべき。
(← 委員会の中で実質的な判断が行えるように報告書にも記述したい。)- 委員会の構成員は学者や実務家等となるのではないかというのが共通認識。
- 委員会としては国家行政組織法の8条機関をイメージしているのか。新しい制度を作ろうとしているときに、既存の8条機関とかの形をイメージして作業するとうまくいかないこともある。求められる機能、役割と作業量を想定した上で委員会を考えることが適切。
(← 今のところ3条機関でなく8条機関として考えている。ただし、8条機関といっても諮問的なものから強制調査権を持つものまで多様なので、様々な工夫をしながら相応しい組織を今後検討していくことが必要。)- 8条機関といっても色々な類型があるので、求められる機能等に適した類型を考えていこうとしている。
- 8条機関は色々バラエティがあり、適切に対応できる工夫をすべき。法律で公益性の判断要件を定めて、その下に具体的基準を作成することになると考えられるが、判断主体が具体的な基準の策定を行うこととすべき。
- 判断主体の機能の中に、不服申立てや事後チェックに関する相談ということを明示すべき。指導監督と相談は異なる。
- 民間活力の活性化や行政の膨張抑制の防止といった観点から、しかるべき民間団体に対して判断主体の機能を移すことを考えてはどうか。
(← 公益性は多様であるため、関係者の意見を色々と反映させて、それなりの委員会の体制をとる必要がある。例えば、専門委員として幅広く民間参加を募るといった方法なども考えていきたい。何らかの機能を民間団体へアウトソースすることについて、公権力の行使をアウトソースするのは困難だが、情報などのサービス機能を民間でやってもらうことがあり得るかもしれない。)- 例えば、建築許可をするのに民間でやらせている例もあると聞いている。
- 具体的にどの権限をアウトソースするかを示すのは無理だが、公益性判断の仕方について官民で協力してやっていく旨を報告書に書くのは可能ではないか。
(← 民間有識者からなる委員会が判断することとなっており、民間の協力を得ていくという旨は報告書に出ているのではないか。ただし、公権力の行使については官民協力してやっていくことにはならないのではないか。)- 新しく作る委員会のイメージは、公益性の判断内容が多様なため、特定の少人数の民間有識者にメンバーを固定するのでなく、例えばプール制のようにして、案件ごとに専門性のある委員が判断するという仕組みとすべきではないか。
- 公益性の判断対象が多様なので、判断をする側も柔軟性を持つべき。委員が判断する際に専門家の意見を聴けるようにすることや下部組織を作ることなども検討すべき。
- 少人数の委員がすべてを判断できるわけではないので、当然そうすべき。
- 手続を整理し、公益性の判断の前に意見を述べることができるようにすべき。
- 民間有識者から成る委員会には、色々な意見が反映されるように、ある程度人数がいた方がよい。
- 委員会の判断は下からの積み上げ作業となるだろうから、事務局が必要。
- 委員会が判断する際に多様な意見を反映させることには賛成だが、特に地方では、大勢の委員を確保できるかどうかという問題があるのではないか。
- 地方にも委員会のメンバーになりたい人は多いと思う。地方は地方に任せてくれということもあるので、心配には及ばないのではないか。また、権限等を与えることにより、人材も育つものである。
(判断要件のあり方について)
- 共益の取扱いについて、考え方Aの公益目的を実現するために必要な範囲内で共益的な事業を行うというのが本来の趣旨だろうから、考え方Bがより客観的なのは分かるが、Bのみを重視するということではなく、例えばABの両方の要素で判断主体が判断するなどとするべきではないか。
- 一般的に「収益的事業」は税法上の収益事業33業種と考えられており、間違えやすい。「付随的事業」という性格を明確にするべきではないか。
- 営利企業として行うことが社会通念上適当と認められる事業を、公益性を有する法人の主たる事業とすることは適当ではないというのは、言い過ぎではないか。例えば、銀行は営利企業がやっているが、最近ではNPOが女性の社会活動促進のためのバンクを作っている。どういうものを公益性とするかは、市民が考えるべきではないか。公益性を有する事業をあえて狭めて書く必要はないのではないか。
- 「同一親族の割合等」とあるが、同一親族だけでなく同一企業、同一官庁など入るのであれば、国民が誤解しないようにきちんと書くべきではないか。
- 同じグループだけの集団だからといって公益性のある法人ではないとはいえないとされていたが、ガバナンスの観点から、専門性ある集団が同一のグループとみなされて、この要件により抜け落ちてしまう可能性があるのではないか。
- 「手元流動性」という文言については、「内部留保」とした方がよい。
- 将来的には公益法人が株式会社を持つことはあっていいと思う。そういう意味で株式保有の制限の書きぶりについてもう少しトーンを落としたほうがいい。
- 営利部門を子会社にすれば、経理が完全に分かれ明確になるなどのメリットがある。ただしそれを情報公開する必要がある。
- 公益的な非営利法人が利益を上げることに熱中するようなことがあれば、マーケットを錯乱するおそれがある。そっちに精を出してもらっても困る。慎重にするべき。
- 子会社を持たせれば経理全体が透明になるというのが最大のメリット。別会社をつくるので、親の公益法人が営利活動に精を出すということは逆になくなるのではないか。
- 別会社にしたとき、子会社の取締役が公益法人の影響を受けてはならないというルールが必要。
- 公益法人が子会社を持つことを認めた場合、日本の風土を考えると、親会社である公益法人の実力者が実質的に子会社を支配してしまうことが起きるので問題ではないか。
- 例えば、地域環境保全をする公益法人があって、その公益法人が環境保全事業をしている株式会社の株式を持つことはおかしいことではないのではないか。
- 残余財産について、「濫用的な利益分配の防止」という文言があるが、残余財産として利益を分配することは濫用的でなくても適切ではないと思われるので、「実質的な利益分配の防止」とするべき。また、少数意見だと思うが、当初の出えん分に限っては残余財産を設立者に戻してもいいのではないか。
- 公益性を有する法人が拠出金制度を導入することについて、問題があってもイヤイヤ認めてあげるというような書きぶりとなっている。また、拠出金制度を導入することは問題があるとされているが、整合性をとる必要があるとの議論であったはずであり、書き換えが必要。
- 拠出型の場合、拠出額に応じて議決権があるとするのか。そういう場合に公益性を認めていいのか。
- 議論が分かれるところだろうが、連動しないという方向でいいのではないか。まず、拠出金制度を認める類型を作ることが先であると考える。
- 2階に上がらない限り議決権との連動については法人の自由。公益性を認めてもらいたい場合は、議決権を拠出金に連動させないとする旨定款で定めることが考えられる。
- 株式保有について厳しい制限を課すと柔軟な対応が困難となる。それよりも株式保有が不適当なケースを挙げるべき。
(適正運営確保のあり方について)
- 国民が不適切な法人を発見した場合には、判断主体はその通報を受け付けるということをはっきりさせるべき。
- 寄附者や国民一般からの代表訴訟を報告書に取り上げるべきか。
- 公益性のある法人は判断主体がチェックするので、報告書で取り上げる必要はない。
- 規模の大きな法人には、多少費用がかかっても外部監査は必要。
- 公益性に関する事後チェックは、一定期間毎に行うのではなく、効率的に行うこととすべき。
- 事後チェックに関し、判断主体の質問検査権を規定すべき。
- 決算報告などは毎年報告されるべき。報告がないような場合には立入検査も必要。また、将来的には、会計基準を分かりやすいものとすべき。
(その他)
- NPOを新制度に含めないとするならば、その点をもっと明確にすべき。
- NPO法人を残すことについての法的整理は前回議論があった。
- NPO法人が別の法律であることは確か。
- NPO法人は独自の機能と事業をもっており、NPO法人を残すことについてより説得的な説明にする必要。
- NPO法人は別とする結論だけならばよい。
- NPO法人は別でいたいと思っているのだろう。今の時点であまりNPO法人については触れるべきではない。
- NPO法人という名に誇りを持っている人もいる。新制度では準則で法人が設立でき、公益性も認められやすいということが分かれば、状況も変わってくるだろう。いずれにせよ、新しく法人を作ろうとする人には選択肢が広がる。ただし、NPO法人は残すべきというよりも現時点では両立させておくとすべき。
- NPO法人は残すということで、それ以上考える必要はない。
- NPO法人は心配しており、有識者会議としても配慮している旨触れておくべき。
- いずれにせよ、法人格の選択肢が広がり、非営利活動の拡大に役立つ。
- NPO法人の扱いについては、当面の間並置するとすべき。
- 単に残すというだけの言い方がよい。
- 当面は別という言い方では、将来は吸収されてしまうと思われてしまうので適切ではない。また、新たな非営利法人を英語にどう訳すか。
- 例えば、一般の非営利法人は「一般非営利法人」、NPO法人は「特定非営利法人」、公益性が認められた非営利法人は「公益法人」として整理できる。また、NPO法人は一般の非営利法人と公益性が認められた非営利法人の間に位置付けられるのではないか。
- 税ということではなくても、非営利活動の促進について、もう少し踏み込むべき。
- 税調でも非営利法人に対する課税は白紙から検討するようであり、その点はあまり触れなくてもよい。
- 有識者会議としての熱意は伝えるべき。
- 非営利活動の促進については、前書きの部分で強調することも一案。
- 個別の税制に触れる必要はないが、民間の非営利活動を促進する方向でまとめ、あとは税調で議論してもらえばよい。また、NPO法人について、新制度に含めるべきではないとすべきではない。
- 現時点では、単にNPO法人は残すという形にした方がよい。
- あり方としてNPO法人を残すべきという話ではないだろう。
- NPO法人関係者は自分たちは独立していたいということだろう。単に別ということでよい。
- NPO法人もよい制度であれば移ってきたいと思っているが、中間法人と一緒になると原則課税になるのではないかと懸念している。いずれにせよ、NPO法人は新制度には関係がないという形にはしないほうがよい。
- NPO法人は単に別にするということではないか。
- NPO法人は単に平行して残るだけのこと。
- NPO法人の中には、よい制度になるなら入りたいというところもある。NPO法人に対する評価に触れる必要はない。NPO法人は残すというだけでよい。
<現行公益法人の新制度への移行のあり方について>
- 第21回の会合において、公益法人が株式会社に組織変更する場合、新たな法人が公益法人の財産をいわば買い取り、同じ法人が別会計でその買取代金を管理する仕組みが検討されたが、別会計とはいえ、同じ法人の中にその財産があると、長期的には営利目的に使用する財産と混合してしまい、営利法人としての本来の目的に使用されるのではないかとの危惧がある。むしろ公益信託や寄附の形で処理してしまうほうが適切ではないか。
- 公益法人として築いた財産を買い取ったお金は特別会計等何らかの形で紛れないよう管理する必要があるが、それをどう担保するかは次の問題であり、公益性の判断主体がチェックする形や、信託の形で管理する形等いくつかの選択肢がありうる。
- 新制度施行時に現行公益法人を、一旦公益性を有する非営利法人とみなす場合、新制度における公益性の判断要件への適合状況について、判断主体が事後的にチェックするものと考えるのではなく、みなした後現行法人は判断主体の公益性判断を受けるものと考えるべき。
- 移行に当たっての財産の承継に関して課す条件は、残余財産の帰属先の制限と、財産の使用目的の制限であることを明らかにすべき。
- 現行の公益法人には合併・分割の規定がなかったが、新制度で新たに合併・分割の規定が設けられる意義は大きい。このような規定が整備されることは強調してよいのではないか。
- 現行の公益法人が新たな制度で公益性を認められなかった場合、一般の非営利法人以外に、NPO法人や営利法人といった移行先の選択肢は考えられないのか。
(← 非営利法人以外への組織変更がどこまで可能なのか、受け手側の法人制度の問題もあり、検討が必要。)- 現行の公益法人が公益性の認定を受けないのであれば、一般の非営利法人となるのが大前提だろう。非営利法人以外の法人に移行したいのであれば、法人を解散して、新たに設立することになるのではないか。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)