1.日時:平成16年10月25日(月)15:00〜17:40
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
岩原紳作(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会理事・総務部長)
(宇賀克也東京大学教授、加藤秀樹構想日本代表、金子宏東京大学名誉教授、中田裕康一橋大学教授は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 松田事務局長、西室長、横田参事官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 報告書の審議(1)
5.議事概要
○ 報告書の審議(1)
事務局作成の報告書のたたき台を基に討議が行われた。主な意見は次のとおり。<改革の意義について>
- 民間非営利活動の促進という観点が明確になっておらず、この点は「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」(平成15年6月27日閣議決定)より後退しているのではないか。公益性を有する民間非営利活動を奨励すべく政府として一層の支援措置を講じるのだ、と明記すべき。また、個人のみならず民間非営利団体の役割の重要性についても触れるべき。
- 公益的活動は、個人だけが担うのではなく、営利法人も含めて民間部門全体が担って活発化するものであるから、その点に配慮して記述すべき。
- 案の基本方針の書き振りは、読んでいて改革の方向性が感じとりにくいものになっている。"何のためにこれをやるのか"ということが一般人に理解しやすい、強調された文章にすべき。
- 公益的活動を民間の力で担保するという意味合いが弱い文章ではないか。官ではもはや公益を担いきれないのであって、民間による公益的活動を促進しよう議論しているのに、「公益性の有無に関わらず」というのは、この点をすりかえようとしているのではないか。
- 報告書は全体的にパッションが感じられるよう、人間味のある文章とすべき。また、高齢化社会に加えて少子化というキーワードを改革の意義の中に明記すべき。
- 報告書を人間味のある文章とするには、例えば、座長が工夫するということも考えられる。
<新たな非営利法人制度について>
- この案では、細かい点では現行の中間法人制度より改善がなされているが、非営利活動の促進になるとは誰も思わないのではないか。むしろ、準則主義にした代わりにガバナンス等の規律が必要になった、とだけ世間にはとられるのではないか。
- 準則主義で法人を設立できるというのは画期的である。今までは主務官庁による型にはまっていたが、自分達の目線、意思で活動できるようになる。また、拠出金(仮称)制度については、初めて提案されるものなので、報告書では新鮮味とメリットが明確になるようすべき。
- 今回の新たな非営利法人の提案というのは、非常によい制度と考える。法人による自発的な活動なのだから法人の自由にできるようにすべきという議論があるが、ガバナンスといっても特段厳しいものでもなく、この程度の規律は備えておかないといけない。
- これまで100年以上変えることのできなかった制度にやっとの思いで手をつけるのだから、世の中の動きが早くなって、この制度が時代遅れになった場合は見直すことがありうるということを明記しておいたほうがよい。実態と制度の間に齟齬が生じたときに、柔軟に変えられることが重要。
- 社会のニーズが変われば、この制度も変わらざるを得ないだろう。今回の改革も社会の変化が一つの根拠と言えるだろう。
- 制度構築後、運用面で不便が出てくるかもしれない。NPO法のように、附帯決議で何年後かに見直しを行うことを定めるべき。
- 大規模な法人に関する特例として、純資産額5億円以上の法人に会計監査人による監査を義務付けることは、財団法人にとっては厳しいのではないか。事業型の法人と異なり、財団、特に助成型の財団は純資産が多額であっても実際に動く金は少ない。金額基準を決める際には配慮が必要。最低10億円程度とするのがよいのではないか。
- 公益性を有する法人は利益を目的とせず、判断主体が取消等の権限を有し、また監事が必置、というように何重にもチェックの仕組みがある。これらの仕組みの運用状況を見極めたうえで、限定的に代表訴訟を考えるべき。常務役員のみを訴追の対象に限るとか、役員が連帯して責任を負うのではなく、関係する役員だけが責任を負うというように、軟着陸する方策は考えられないか。代表訴訟を設けなくてもガバナンスはかなり強化されている。一般的な非営利法人を含め、同時にさまざまな仕組みを導入するより、状況をみつつ仕組みの導入を考えるべき。
- 内部通報制度は有効な浄化装置といえるだろう。特に、自己資金で活動を行う財団には外部からのチェックが効きにくく、自ずとアカウンタビリティのメカニズムが弱くなる。内部からのチェックの仕組みを残しておく必要はある。
- 非営利法人で考えれば、代表訴訟は団体内部のガバナンスの一環であり、理事が法人に対して与える損害を回復するための制度としては必要。
- 代表訴訟にしろ、内部通報にしろ濫用されなければどっちもどっちだろう。
- @残余財産の扱い、A理事、評議員の任免、B財団法人の目的・事業の制約の3点を議論したい。@については、残余財産を非分配、すなわち同種の団体もしくは国・地方公共団体に帰属させると定款で定めた場合、寄付者の信頼に応えるためにもこの部分は変更できないようにすべき。Aについては、理事が理事を選び、評議員が評議員を選ぶようにした上で、評議員には理事の解任権を与えるべき。Bについては、財団法人は公益性のあるものに限り設立を認めるようにすべき。
- Aについては、委員の間でも歩み寄りができたのではないか。Bについては、何らか制約を設けるべきではないかと個人的には感じる。@については、技術的に何か工夫できるかもしれないが、寄付者の意思の尊重という意味では公益だけに限られない。また、残余財産の分配だけでなく、法人の目的の変更についても問題となる。
- 財団法人において、理事と評議員の任命に関する現在の仕組みは形骸化している。提案の仕組みの方が機能するだろう。また、寄付した人に財産が戻ってくると、相続税の問題も生じる。
- 公益のために寄付をする人の意思を尊重するためにも、残余財産の非分配については変えられないようにすべき。
- 寄付者には、非分配という定款に賛同して寄付してもらうことになろう。
- 残余財産を非分配とする点について、定款を変更できないとすることが法制的に可能かどうか、よく検討すべき。
- 残余財産の非分配ということを登記事項とすれば、低コストで実効性を担保できる。
- いったん残余財産を非分配としたら、これを変更できないとすることは法制上可能と考える。公益性が認められた法人が公益性を失った場合でも、残余財産を非分配とする部分を変更できないとすることは法制上可能と考える。
<公益性を取り扱う仕組みのあり方について>
(判断主体のあり方について)
- 判断主体について、特定の大臣の下に委員会を設置することについては、委員会の独立性を確保するという観点から、この点はよく議論すべき。
- 判断主体として公正取引委員会のような独立した委員会も、必ずしも望ましいとは言えないという指摘もあった。
- 8条委員会といっても、機能的には3条委員会に近づけることは可能。
- これまで判断主体について、受益者に近いところに置くべきという議論がなされ、イギリスのチャリティ委員会についても紹介された。こうした点が報告書にどのように反映されているか。
- 活動範囲が複数の県にまたがる場合でも地方で判断できるよう、全国を5〜6くらいの区域に分けて判断してもよいのではないかという人もいる。
- 国と地方の関係は、役割分担に基づく並列的な関係だと考える。全体的なトーンが議論に沿っていないのではないか。「民間の考え方」という場合の「民間」とは何か。行政と民間とが対立的に捉えられていないか。
- 地方における判断主体は知事で変わらないが、国での判断主体は主務大臣ではなくなるということもあり、案文では国の方に力が入ってしまっている。「民間」としては、受益者や法人関係者などが想定されよう。イギリスのチャリティ委員会の仕組みは日本にそのまま当てはまらないため、判断主体の機能を中心に議論してきた。3条委員会となると大掛りになり、実現が難しくなる。
- 国はどのくらいのものを取り扱うのか。よほど大規模な法人だけか。
- 国所管分の中には地方支部局が所管するものもある。国が担当するか地方が担当するかは議論があろう。
- 事後チェックが必要となると、常勤職員による事務局は不可欠。事務局のイメージについて、ある程度書き込むべき。
- 証券取引委員会と同様、公益性の判断に関する業務も専門性が必要。
- 判断主体の説明として、機能、作業量、構造・仕組みといった順に説明すべき。イメージは最後にもってくる方がよい。
- 公益性の判断を民間にアウトソースという案も出ていたはず。民間を活用するという案も検討すべき。
- 判断主体の機能として不服審査の処理という場合、誰からの不服をどのように処理するのか。また、委員会について大臣からの独立性を確保という場合の大臣とはどの大臣か。
- 公益性の判断は特定の大臣が行うということか。
- 特定の大臣と委員会を合わせて判断主体としている。また、不服審査の処理としては、公益性が認められなかった場合等における、法人の不服申立てに対しての行政上の対応を考えている。
- 大臣が公益性を判断することについてはこの会議での議論の大勢にはなっていない。
- 本来は3条委員会とすべきところを、行政組織の膨張抑制のために8条委員会ということであれば、委員会の独立性を担保する旨明確にすべき。
- 大臣が判断するというのは必ずしも適切ではないのではないか。
- 公権力としての意思表示である以上、形式上、行政を分担管理する大臣の下でということにならざるを得ない。ただし、どのような形で大臣と委員会が業務を分担するかは論点。具体的には、委員会が行政権限まで独立行使できるようにするか、実質的な意思決定を行うにとどめるかが論点となろう。いずれにせよ、実現可能性も見極めながら考えていく必要。
- 地方で拠点を持つ法人については、国も関与の権限を持つべき。自治体の中には個性が強すぎ、必ずしも適切な判断がなされないことも考えられる。せめて不服申立てについては、国にも持ち込めるようにすべき。
- 国の委員は常勤でないと勤まらないだろう。地方の委員も常勤にするのか。
- 判断主体の事務量は膨大なものとなることが予想される。どのようなものにしていくか、よく検討していきたい。
(判断要件のあり方について)
- 不特定多数の解釈は緩やかにするという理解でよいか。
- その理解でよいと思う。
- 少数であっても良いと考えてよいか。
- 二人も多数に含まれると理解している。
- 共益的な事業の取扱いについて、二つの案が提示されているが、それぞれどういうことか。
- 一つは、公益目的と関係がある範囲にとどめるという考え方であり、もう一つは、公益目的との因果関係を問わず、量的な面で共益的な事業が従であれば可とする考え方である。二つ目の方が客観的であり、これを基本としつつ、公益的事業に支障がない等一定の制約を付してはどうかというもの。
- この二つの案に重なりはないのか。
- 重なる面はあろう。一つ目の案だと個別的に判断する必要が生じる。二つ目の案は現行に近い考え方。
(活動実績の取扱いについて)
- 初めから一般の非営利法人として活動しようとしている法人は研鑽を積む必要はなく、公益性の判断を受けたければ若干条件があるという、それだけの話。
<その他中間法人・NPO法人制度等について>
- 新たな非営利法人制度に中間法人制度を統合しようとしているから、「公益性の有無に関わらず」新たな非営利法人を設立できるようにする、ということになるのだろうが、それで公益的活動の促進になるのかどうか疑問。残余財産分配可の非営利法人制度の創設に対するニーズは公益法人側に殆ど無いのにこれを創設するというのは、先に中間法人制度との統合ありきだから、ということなのではないか。中間法人制度を統合して残余財産分配可となれば、現行の公益法人はそのような新たな非営利法人制度には入りたがらないのではないか。それなら、中間法人制度を統合すべきではない。
- この有識者会議には、公益性を有する非営利活動の促進のために参加している。閣議決定の「基本方針」に示された議論の枠組みを超えてでも、理想を追究するのがこの有識者会議のミッションと理解している。中間法人制度との統合が公益的活動の促進に対してどのようなネガティブなインパクトを与えるのか、検討すべき。中間法人制度との統合により新たな非営利法人制度に様々な形の法人が入ってくるために、公益的活動を目指す法人が入りにくくなる恐れがある。このような点について、閣議決定の「基本方針」の段階できちんと議論されていたのかどうかは疑問。中間法人制度との統合は見直すべき。
- 新たな非営利法人制度によって法人格を取得した法人の中から、一定の要件を満たしたものを公益性を有する非営利法人として判断して奨励していくという仕組みにする、という閣議決定の「基本方針」の枠組みに従って議論している。使い勝手のよい新たな非営利法人制度には、中間法人制度が包含される、ということ。
- 閣議決定の基本方針が前提であっても、一般的に、公益的活動を目指す非営利法人は情報開示を強化すること等を考えるべきではないか。また、原則課税の中間法人を統合してしまうと、原則非課税のNPO法人制度を将来統合しようとしても、NPO法人が新たな非営利法人制度に入ってこられなくなってしまうのではないか。誰も入ってこないような制度を作るのは無意味であり、よく議論すべき。
- NPO法人制度との統合はしないという政治決定があったのなら、中間法人制度を統合することへの説得力はないのではないか。しかも、新たな非営利法人制度は社会福祉法人等も対象にしておらず、その理由も示されていない。これでは、中間法人制度を統合するのは新たな非営利法人を原則課税にするためだ、という憶測が流布する。
- 中間法人制度との統合については、次回にも議論する。
- 中間法人制度との統合についての懸念が生じるのは、主に課税の問題と残余財産の分配の問題の2点。前者については、非営利法人なら非課税であるとはこの場では言い切れない。後者については、定款で残余財産分配不可とすれば定款中のその部分は変更できないこととするなど、検討の余地あり。
- 政府税制調査会では、原則非課税とか原則課税とかいうような神学論争は行われないだろう。
- 本案は、中間法人制度との統合について、改革の意義において触れずに新たな非営利法人制度の最後の方で触れるという論旨の組立てになっているので、中間法人制度を無理やり統合しようとしているかのように見える。
- 一般の非営利法人について、原則課税ということを議論するのは問題だと思うが、民間非営利活動を活発化する方向で税調でも議論してほしい。
- 非営利法人の創設に当たっては中間法人よりは、小規模だが公益的な活動を行うNPO法人のような法人を念頭に置くべき。新しい制度が中間法人やNPO法人とどのような関係にあるのか、もう一度議論する必要があるのではないか。
- 民法34条で作られる法人とNPO法人は根拠法が異なる。公益的な活動を行うことを目的とする法人は数多くあるが、34条で作られる法人が全てをカバーしているのではない。民法34条に基づく法人を改革するからといって、NPO法人や特別法に基づく公益法人が当然影響を受ける訳ではない。またこれらの法人に影響させない方針であることを明確に示すことに問題はない。
- 一般的な非営利法人制度を創設するとどうしても中間法人と抵触し、両制度を並存させることは論理的に考えられない。どういう形で統合するかを考えるべき。
- 民法34条からすればNPO法人は民法の特別法の法人であるが、法律は別であり、民法34条がなくなってもNPO法には影響しない。NPO法人はNPO法を基に運営していけばよいのであって問題はない。
- NPO法人と非営利法人は法律的には別の根拠で作られているが、活動が似ているということだろう。ただ、片や認証、片や準則でできるというのは大きな違いだろう。
- そこを大きな違いと見るかどうかは、受け取り手により異なる。
- 簡単に認証を受けられるのだから、準則と認証は大きな違いとして強調する必要はないという意見も理解できる。ただ、2つの制度があり、使いたい方を使うということでよいのではないか。
- 報告書をまとめるに当たっては、必ずしも法律的に正確に書くのではなく、あえて報告書に書かないという配慮もあり得る。中間法人制度を非営利法人制度に統合することについては、閣議決定を前提に考えればやむを得ないと考える。
- 中間法人制度を非営利法人制度に統合するのは仕方ないが、NPO法人制度との関係はどうするのか。NPO法人制度を統合するかどうかは、仮に、10年後や15年後にNPO法人制度が問題となったとしたら、そのときに議論すればよい。
- NPO法人制度はまだ法律施行後10年も経ってないし、成長過程にある。また、公益法人制度のように問題も顕在化していないところであり、当会議で議論すべきではないと考える。
- NPO関係者は皆疑心暗鬼になっているので、統合しないということを報告書にも明記すべき。
- NPO法人法は民法の特別法というのであれば、普通は何らかの影響を受けると考えるだろう。NPO法人の中には事業報告書等を所轄庁に提出しない法人も多いし、ガバナンスが緩んでいる法人が続出するなど、問題が増えている。このため、近いうちに、それに対応するようなガバナンスが求められるのではないか。
- NPO法人制度については、当会議での議論がうまく伝わっていないためにNPO関係者が不安になっているが、しっかりと準則で非営利法人ができるということが分かれば安心すると思う。NPOというのは、普通、課税されており、課税されてよいからといって活動している。これから法人化しようという人には非営利法人制度とNPO法人制度という2つの入口ができることになる。多様性のある活動を促進するということをきちんとNPO法人関係者に伝えればよい。認証でなく準則で法人を設立できるというのは、市民社会の中に大きなインパクトを与える。
- NPO法人制度を新たな非営利法人制度と別の制度としてしまってよいのか。NPO法人関係者は公益性のあるミッションを認めてほしいと考えている。NPO法人制度は認証のため取引コストがかからず使い勝手がよい。準則で法人格がもらえるのと同じように公益性が認められれば取引コストがかからないが、公益性の判断のために非営利法人として実績を積まなければいけないとなれば、取引コストがかかるためこちらの制度を選ばないのではないか。
- これまでの公益法人のように、公益法人になるまでに3年とか8年とかかかるというのは、これからはあり得ないのではないか。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)