1.日時:平成16年10月12日(火)15:00〜17:40
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
岩原紳作(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
金子宏(東京大学名誉教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会理事・総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(宇賀克也東京大学教授、加藤秀樹構想日本代表、河野光雄内外情報研究会会長・経済評論家、関幸子(株)まちづくり三鷹事業部プロジェクトグループマネジャー、田中清(社)日本経済団体連合会常務理事、田中弥生東京大学助教授は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 松田事務局長、西室長、横田参事官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 移行について(2)
○ 非営利法人ワーキング・グループの検討状況報告(4)5.議事概要
○ 移行について(2)
事務局から、資料1「移行について」について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。<(1)現行公益法人の移行に当たっての基本的考え方及び(2)新たな非営利法人(仮称)への移行方法>
- 現行公益法人からの移行における基本パターンとしては、パターン2(資料2 P.11)がよいのではないか。新たな判断主体が、現行の主務官庁の意見を参考にしつつ、自らの責任で公益性を有すると判断した場合に本免許となり、それまでの間は、仮の形で公益性を有する非営利法人として扱うことにより、判断の責任が判断主体に一元化され、明確になるのではないか。
- 現行の公益法人のうち、その公益性が問題とされるような法人の中には一般の非営利法人への移行を望む法人がかなりあるのではないか。中間法人法には組織変更の規定が設けられず、また、資産の含み益への課税の問題や、登記の変更等移行に伴うコストの問題があるため、中間法人化をあきらめた法人が多かった。今回公益法人の移行を検討するに当たっては、組織変更規定を設け、税法上あるいは登記等の問題が起きないようにすべき。
- 判断主体の処理能力を考えれば、パターン1ではかなりの日数を要すると思われる。技術的にはパターン2が妥当ではないか。
- パターン2を採る場合、法人にとっても、判断主体にとっても、相当の準備期間が必要であり、新法成立から新法施行までの期間を相当長くとる必要がある。この場合、いち早く公益性を有する非営利法人になれるはずの法人を新法施行まで待たせることにもなる。また、パターン2で、新法施行時に集中的に公益性を判断すると、事実上主務官庁の判断が強くなり、判断主体の判断が形式的になるおそれがある。いずれのパターンにも利害得失がある。
- パターン2は、新法施行時に仮免許を与え、判断主体が本免許を与えるということではないか。
- 仮免許の意味を明らかにして議論する必要がある。
- 新法施行までの準備期間の問題は、施行後公益性を有する法人とみなされる法人とはどのような法人で、これに対しどのような法律が適用されるのかという問題に関連する。現行の公益法人が、例えば財団の理事会と評議員会の権限分配等を手当しないまま、公益性を有する法人とみなされるのか、それとも最低限新法の要求する形を整えた上で公益性を有する法人とみなされるのか、検討する必要がある。
- 形を整えた上で、公益性を有する法人とみなされるとしたら、準備に2年は必要ではないか。新法成立から1年というのは厳しい。
<(3)新たな非営利法人以外の法人類型への移行等及び(4)移行に当たっての財産等の取扱い>
- かつては公益的な事業とされていた事業であっても、今日では一般の法人でもできるようになった事業は随分あるが、だからといってこのような事業がなくなってもいいかというとそうではない。営利法人に移行する場合は、内部留保的なものは吐き出させてもよいと思うが、ある程度事業を継続するに必要な分は継承可能とするような配慮が必要ではないか。
- 公益法人の営利部門を分離して株式会社をつくる場合、株式を売却して得たお金は公益法人に残しておき、その代わり株式会社は営利部門の事業を継承することになるのではないか。
- 公益法人が財産を持って事業を行っている場合、当該財産は公益法人として作られた財産なので勝手に処分することはできないが、株式会社に移行し出資により集めた資金で今まで事業に使っていた公益の財産を買い取ることにより、資産は株式会社に移ることになる。その代わり売却代金が公益のところに入り、公益法人として形成された財産として処分制限がかかり、解散時に類似目的の法人等に帰属することになるのではないか。これは1つのパターンで他にもパターンはあるだろう。
- その考え方では、組織変更の時に事業を買い取る資金を調達する必要があるが、果たして資金調達は可能だろうか。むしろ、公益部分を目的で拘束し、時間をかけて買い取る、あるいは社会に帰属させる方法の方がマイルドではないか。
- 収益が上がる事業なら株主を集めることはできるのではないか。
- 公益法人から営利法人への移行のニーズがあるのであれば、税法上の問題や登記や契約上の地位の承継等の問題等があることから、組織変更の規定を作り、法人格を維持したまま移行させるのがよいだろう。このような組織変更の規定を設けることは全く不可能というわけではなく、中間的法人から営利法人に移行した例として保険相互会社のケースがある。その立法作業は大変困難なものになるが、できないことはない。
- 公益法人として形成した資産の扱いについては、移行時の純資産部分を公益目的に使用させるという拘束をかけることでよいのではないか。
- そうすると、移行後の法人は資産を2つに分けて経理することになるのか。
- 保険業法では、従来の保険相互会社で蓄積された、組織変更時の社員に本来帰属すべき財産は特別財産のような形で、その使用について拘束をかける立法をしている。同様の考え方はここでも可能だろう。
- 拘束のかけられた財産を株主に分配したら、法律上無効であるといえるのか。また、分配してしまった場合に、法人に取り戻す手段はあるのか。
- 拘束財産を使ってはならない目的に使うような利益処分を株主総会で決議した場合は、商法の規定に基づき当該決議は無効となり、流出した分の回収は可能である。また当然役員は責任を問われ、場合によっては刑事罰を受けることになる。
- 株式を発行して会社に新しい資金が入ってくるが、そうすると何を拘束するのか。もともとあった財産を拘束するのか、あるいは新たに入ってきた資金を拘束するのか。また、資金を類似目的に寄付すれば、公益性の拘束は外れると考えるのか。
- 既存の純資産部分にまず拘束をかけて、流出させると規制がかかる。新たに株主が払い込んだ分は普通の会社の資本と同じ規制を受けることになる。
- ゴルフ場の例でいえば、ゴルフ場を経営する公益法人が営利法人に組織変更した後も事業を続ける場合、営利法人の財産としてゴルフ場が必要だが、当該ゴルフ場は公益法人として保有してきた財産だから無償で移すことはできない。株主から集めたお金でゴルフ場をいわば買い取り、代わりにそのお金が拘束財産となる。
- そのお金を類似目的の法人に寄付すれば、公益性についての役割は果たしたことになり、判断主体のコントロールから外れることになる。
- 株主から払い込みを受けた段階で、そのまま類似目的に振り替えることにより、組織変更の当初から判断主体がコントロールしないということも選択肢とはあり得るか。
- 純資産分を全部類似目的に寄附すれば、当然それでその企業の特殊な性格はなくなり、通常の一般営利法人になる。
- 組織変更後の法人に拘束財産が残る場合、その財産の使用については判断主体がコントロールするのか、あるいは罰則によって担保するのか。
- 制度の作り方次第だろう。拘束財産が本当に類似目的に使用されたか判断主体が確認することになるのだろう。そうでない限りは絶対流出させてはいけないという規制を受けることになる。
- 整理すると3つの問題があるのではないか。@どういう形で金を集めて、今まで公益法人の下にあった財産をどういう形で営利法人の下で使えるようにするか、A組織変更の法律をつくり、法人格の同一性を担保するかどうか、B公益法人として形成された財産が何らかの拘束を受けるとすると、そこに判断主体のコントロールが及ぶかどうか。
- 財団法人から社団法人への移行は法的に可能か。
- 政策判断の問題ではないか。組織変更規定がないのは、規定を作るニーズがそれほど大きくなく、また、規定を作るのが非常に困難であることが要因ではないか。かつて人的会社と物的会社の間の組織変更について検討したが、非常に面倒であり、実際は新たに会社を作るのと変わらないということで、結局規定は作られなかった。ただ、税務上の扱いや契約上の地位の継承等の便宜から、ニーズが強いのだとしたら、作ろうと思えば作れる。理論上はありえないことではない。
(← 資料4の8ページにあるとおり、中間法人法を検討した際、財団法人から社団たる中間法人への組織変更についても議論した。中間法人法で組織変更の規定が設けられなかったのは財産承継が問題であったことが理由であり、財団法人から社団法人への移行が法制上難しいと言う理由ではなかったと言われている。)○ 非営利法人ワーキング・グループの検討状況報告(4)
能見非営利法人ワーキング・グループ座長から資料3「非営利法人制度の創設に関する試案の骨子」及び資料4「非営利法人制度の創設に関する試案」について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。(民法第1編第2章の改正について)
- ノスタルジアかもしれないが、民法には、非営利法人制度に係る何らかの規定が残るとよい。国際的に見ても、市民法としての民法には、法人に係る規定が必要なのではないか。
- 直接民法に基づいて設立される法人の制度がなくなるので、民法に規定を残すのは難しいが、全ての法人制度に共通するような事項があれば、それぐらいは民法に残るかもしれない。
(設立の登記について)
- 非営利法人であることを示す名称は登記事項となるが、非営利法人が公益性の判断を受けたことについて、何らかの形により登記簿上で明らかにして欲しい。
- 非営利法人が公益性の判断を受けた場合の登記簿の記載については、1階の制度と2階の制度との相違を詰めてから考える必要がある。登記事項にできればよいが、できるかどうかはまだ判断できない。
(社員について)
- 社員が無限責任を負うタイプは設けないが、これは、ニーズがあまりないため。現行の160程ある無限責任中間法人はどのような活動を行っているのか。
(← 登記簿等を基に調査を行っている。)(社員名簿について)
- 社員名簿に関し、氏名と所属先は閲覧に供してもよいと思うが、自宅住所についてはどうか。
- 閲覧できるのは社員と権利行使をするために必要な債権者のみである。
(← ワーキング・グループの議論では、社員を特定するのに足る氏名・住所ということであった。)(社員総会・評議員会について)
- 現行の公益法人は、予算主義で運営しているが、本試案の非営利法人は、財団の評議員会の権限に予算の承認がないことなどからして、予算主義でなくなったのか。
- 事業計画を実施するための予算はもちろん必要。社員総会は、次年度の予算の方針だけ承認すればよいのではないか。
(残余財産の帰属について)
- 残余財産非分配の非営利法人類型を設けないということだが、残余財産の非分配を定款で定め、かつ、当該事項を変更できないと定款で定めるとすることは、法律上可能か。そうした方が法人が活動しやすいと考える。
- そもそも、変更不可能なルールなどあり得ないのではないか。
- 定款や寄付行為の変更ができないのは適当でない。残余財産の分配について、変更の要件を加重することを法定するというのは、あり得るかも知れない。
- 残余財産の取扱いに大きな意味を持たせて、そこから法人制度を設計していくのは、視点が逆ではないか。残余財産の問題は、全体の問題の一部に過ぎないのではないか。
- 残余財産非分配の非営利法人があってもよいが、要は各法人の方針の問題。
- 税制上の措置が講じられるかどうかが、公益的活動のほか、残余財産の分配・非分配を根拠に決められるのであれば、残余財産の取扱いについては明らかにしておくべき。
(一般の財団形態の非営利法人の創設について)
- 非営利の財団形態の法人を認めることはプラス面とマイナス面があると考えられるが、悪用されるおそれが強いことから、財団形態の法人は公益性がある場合に限るべきではないか。
- 大きい財団と小さい財団とでは大分考え方が異なるのではないか。小さな法人の場合、実際に公益的な活動を行っていたとしても、公益性の厳しい要件が適用されるよりも非営利活動ができればよいと考えている。仮に脱税とかの悪用のおそれがあるならば、税法の規定で対処できるのではないか。
- 悪用の例としては、例えば、相続税逃れのため、家族から成る法人が、家族の別荘を財団の財産として自己の財産から切り離し、社員である家族で使用するということなどが考えられるのではないか。
- 公益を目的とする法人に財産を寄附した場合、寄附により特定関係者の税負担が不当に減少する結果となるときは法人自体に贈与税が課されるという規定があるので、一般の非営利法人にも同様の考え方を適用すればある程度問題は解決できるのではないか。また、公益性を有する財団形態の法人しか認めないこととすると、社団と財団で仕組みが異なり、制度設計上問題が生じるのではないか。
- 非公益の財団形態の非営利法人を認めるべきではないかという意見を、公益法人関係者は以前主張していた。
- それは公益性を広く解するべきという考えではないのか。
- 公益性を広く解したとしても、公益性を有するとは言えない法人がでてきて、一般の財団形態の非営利法人を認めるのは、そういう法人を救う意味がある。
- これからの財団を考えると、公益性のない財団形態の法人に対するニーズもある。例えば、自宅が重要文化財になっている場合に、公益性がある場合には自宅を公開しなければならないが、公益性はなくてよいから公開せずにいたいということもあり得る。
- 一般に公開しないで、非営利の財団形態の法人と言えるのか。
- 非営利は公益ではないので、一般に公開しなくてもよい。例えば、重要文化財までいかない住宅を個人の財産から切り離して財団化するということもあってよいのではないか。
- 非営利の財団を作ろうというそもそもの意図は、人のために使うということではないのか。
- 非営利の財団形態の法人を認めることは、社団形態の法人にはない効用がある。資産の流動化や現行財団法人が公益性要件を満たさない場合の受け皿となり得る。公益性はないけれど、個人の財産から切り離して税が課されないということがあってもよいのではないか。
- 一般の財団形態の非営利法人の場合も、固定資産税がかからないということは認められないのではないか。具体的なメリットがないと、一般の財団形態の法人を認める意味がないのではないか。
(評議員会について)
- 理事の選任権は理事会が持ち、理事の解任権を評議員会が持つという制度が望ましいのではないか。
(最低保有財産規制について)
- 設立時及び存続中に300万円以上の純資産を保有しなければならないとされているが、例えば、現在10億円保有している財団が移行した場合に、差額分は運用財産としてもよいのか、それとも、手がつけられない財産となるのか。
- そのような財産が法人の自由となるのがねらいである。ただし、寄附行為者の意思で金額について拘束性を及ぼすような寄附行為があった場合には、法人の自由にすることは困難と考える。
(役員の責任について)
- 報酬がない役員については、責任が全くなくなるのか。
- 定款等でそのように定めておけば責任が免除されるが、定款等に定めがなければ責任を負うこととなる。
- 仮に、定款等で責任は報酬の何年分という限定をすれば、無報酬の役員の責任限度額はゼロまで減らせることとなる。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)