1.日時:平成16年9月29日(水)10:00〜12:40
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
岩原紳作(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
加藤秀樹(構想日本代表)
金子宏(東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会理事・総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(宇賀克也東京大学教授、田中弥生東京大学助教授は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 村上行政改革担当大臣、金子前行政改革担当大臣
松田事務局長、西室長、横田参事官、岡本企画官、野口調査官4.議事次第
○ 個別事項討議(2)
○ 移行について(1)5.議事概要
金子前行政改革担当大臣及び村上行政改革担当大臣による挨拶の後、資料1〜3に沿って討議が行われた。主な意見は次のとおり。
○ 個別事項討議(2)
<(1)公益性を有する財団形態の法人に固有の必要な規律について>
(評議員構成の制限について)
- 評議員の構成については、評議員の権限を決めた上で検討すべきであるが、一定の制約が必要になるのではないか。
(残余財産の帰属について)
- 社団よりも厳しい規律を設けるべき。出捐額の範囲内であろうとも、設立者に帰属させるべきではない。
- 残余財産の帰属先として、類似の団体や国・地方公共団体だけではなく、公的資金のプールといったものについても検討すべき。
- 残余財産の帰属先を一定の範囲に限るといった場合の一定の範囲としては、NPO法で規定されているものを念頭に置いている。
- 少数意見になるが、できるだけ多様な形態を認めるという観点から、出捐者に出捐分に係る残余財産が帰属しても良いと思う。
(基本財産(仮称)制度について)
- 非営利一般の財団の最低保有財産としての基本財産を300万円としてみたが、公益性のある場合についてはどう考えるか。また、非営利一般では基本財産の処分制限について法人の自治に任せるとしているが、公益性のある場合はどうか。
- 基本財産とはどのようなイメージのものか。
- 基本財産に美術品も含め、その美術品があってはじめて法人としての存在意義があるような場合、基本財産を自由に処分できるとすると、法人存立の理由が失われるようなことも考えられるが、それはどうか。
- 設立者が基本財産を処分してほしくなければ、寄附行為にそう書いておけばよい。状況が変化して基本財産を処分したいとなった場合には、寄附行為を変更すればよい。また、一定の金額については、処分制限をかけるといったことも考えられる。
- 基本財産について、一律に金額で決めてしまうというのもいかがなものか。
- 財団に寿命があっても良く、基本財産に手をつけることが認められても良い。また、基本財産を担保に借入れが出来るよう途を開くべき。財団として必要な一定の資産額を下回ってしまった場合、公益性を実現する手段が失われたとして、公益性を失った非営利法人と整理することも考えられる。
- 基本財産の取り崩しについて、理事会の決定は必要。
- 基本財産を使い切ってしまうような財団があってもよい。そう考えると、基本財産の処分制限をかけるべきではない。法人の自治に任せればよい。
- 不慮の事故等があった場合、どのように考えるか。
- 重過失があれば、理事の責任となろう。
- 特定の財産に制約を設けるかどうかは、基本的に自治に任せるべき。本来の目的に反して財産を処分してしまった場合、どう考えるかであるが、寄附行為を変更した上で行われた場合には、理事等の責任を問うことは難しい。
- 基本財産が死蔵されているのではないか、時限のある財団を認めてもいいのではないか、という二つの指摘がある。一般に財団の当初の使命が生きているのは30年と言われる。財産を使い切ってしまう財団を検討しても良いのではないか。
- 基本財産を使い果たして解散した財団もある。財産を使いきってしまう財団は検討に値する。最近では1円でも株式会社が設立できることを考えると、財団の基本財産はなくてもよいと言える。
- 公益性のある場合の基本財産をどう考えるか。
- 今は金利が低く、運用収入はほとんどない。法人の自治に任せればよい。
- 金利が上がってきた場合にも通用する、普遍的な考え方にすべき。
- 財団はその財産しか活動の原資がない。公益性のある財団でも、財産を使いきってしまうタイプがあってもよい。基本財産として考えているのは300万円程度であり、その程度も維持できないということであれば、300万円という額は、財団の存続について考えるきっかけにもなる。
- 現在の制度の中で、財団が財産を使い果たしてしまうことは可能だったのか。
- おそらく理事会で解散を決定した上、財産を使い果たすことについて主務官庁の許可を取ったのではないか。
- 最終的には若干財産が残り、類似団体に寄附したようである。
- 現行でも、必ずしも解散しなくても、基本財産の一部を取り崩すことは認められている。
- 実務的には、300万円という額が提示されれば、財団を作るほうも逆に財団を作りやすくなるのではないか。財産を使いきってしまう財団はあってもよい。ただし、寄附行為の変更について、法人の自治に完全に委ねてしまうということで本当によいのか。
- 公益性のある場合、寄附行為の変更について、法人の自治に委ねず、判断主体が関与することもありうるだろうが、公益性の中身の観点から行われるものであることに留意すべき。
- いずれにせよ、なぜ300万円なのかは説明できるようにしておくべき。
- 最近、参入は緩くしようという流れにあるが、一度法人が設立されれば債権者保護も重要。300万円というのはずいぶん小さいという印象。法人設立後の債権者保護について、どのように考えたのか。
- 債権者保護も加味した上で300万円という考えに至っている。財団である以上、財産は必要であろうし、準則で財団が設立できることから濫用されないよう配慮する必要もある。これらは非営利一般の場合であるが、公益性のある場合であっても要件を加重する必要はないのではないか。また、公益性が認められた場合であっても、金利だけで運営するよう強く求める必要はない。さらに、公益性との関係で一定の財産が必要かどうかについては、基本的に法人の自治に任せればよい。他方、設立者や寄附者の意思に反しないかという視点があり、寄附した以上何も言えないとする考えもあるが、一方で何らかその意向を汲み上げる仕組みも考えられるのではないか。
- 非営利一般の財団について最低財産保有規制をどう考えるかという問題と、公益性のある財団の場合に従来の財産保有規制をどう考えるかという問題とがある。社団の場合には社員がいるが、財団の債権者は財団の財産で担保するしかない。それをどう考えるか。最低限300万円くらいないと活動できないのではないか。そうした意味で最低300万円は維持すべきであろう。ただし、300万円を下回ったら直ちに法人格を取消すというのではなく、法人を存続させるのであれば、一定の期間中に300万円を回復すべきと考えるのではないか。そうすれば、使いきりの財団を認めることとも矛盾しない。後者については、寄附行為のあり方は法人の自由度を高め、その中で財産を使い切るタイプも認めるべきであろう。ただし、設立時に予想できなかった低金利となり、それで寄附行為を変更するということをどう考えるか。
- 法人の債務は、大きな活動を行えばそれだけ大きくなる。一律に300万円とするかどうか。
- 参入を緩くしてやることも重要であるし、債権者などの利害関係者のことも考える必要がある。しかし、法人の設立ということについて、あまりに軽く考え、社会的に責任を果たすべき存在であるという認識が十分でないケースも見受けられる。
- アメリカでは、いったん寄附した場合、その寄附金の扱いは基本的に法人の自由だが、ドナー・アドバイズド・ファンドという制度があり、寄附者も寄附後に物が言えるようになっている。ただし、寄附者は法人に対してアドバイスする権利はあるが、決定する権利はあくまで法人にある。これは法律で決まっている。
- 寄附者の意思を尊重しなければならないという寄附があるかどうか。寄附を一種の信託としてみることも一つの考えではあるが、日本では寄附の扱いがあいまいである。一般的に寄附者が寄附先にアドバイスしたいということをどう考えるかということか。
- 300万円というならば、その根拠は何なのか、今後議論が必要だろう。
(情報開示事項について)
- 評議員の氏名を情報開示するのは賛成。住所を開示しなければならないのは、或る人を特定するために必要というのであれば、特定できるような属性を開示すればよいのではないか。
- 評議員の住所まで開示するのは、投資の勧誘が増えるなどの問題があり、難しいのではないか。また、通称の氏名を使用している場合はどう考えるべきか。
- 通称を使っている人は多いのではないか。本当に必要があって住所も特定しようとすれば、すぐ特定できるものなのでどちらでもよいが、住所・氏名の開示を義務化するというのはいかにもお役所的ではないか。
- 評議員の住所の開示は不要。氏名と最小限その人の属性を一つ開示すれば十分だが、それも必要ない気がする。理事の氏名だけ開示すれば十分であり、評議員の氏名の開示の義務化は不要と考える。
- 新制度で評議員会の役割が大きくなる場合も住所の開示が不要かは疑問。登記をするときに住所が必要で、住所も開示させれば同一性を確認できる。評議員を含め、どういう人が法人を運営しているのかが最低でも分かるようにすべき。
- 登記所に行けば住所も分かるが、大きな問題が起こり得るので、あえて積極的に開示する必要はない。
- 法人に寄附をするかどうかを判断する際に、どのような人が評議員であるかは重要な要素となることから、評議員の氏名の開示は必要。住所は問題があるかもしれないが、調べれば分かるもの。
- 理事の氏名を開示すれば十分であり、寄附したい人がいれば団体に聞けばよいのではないか。また、開示すべきかどうかは、評議員会の機能とも連動する。
- 評議員会は執行機関でなく、評議員会には、執行機関である理事会をチェックする権能を認める方向で検討している。寄附者の視点は重要で、法人が寄附を受けたければ、義務付けなくても法人が評議員の氏名を自主的に開示するのではないか。
<(2)内部留保に係る規律のあり方について>
- 内部留保は、会計専門家でも意見が分かれ、何が内部留保かを明快に示すのは困難という問題がある。そもそも収支余剰の累積が多い法人が問題とされたのが発端。現行指導監督基準の算式では収支余剰の累積と全く関係がないものを規制しており問題。内部留保の適正な水準をどうするかも困難だが、運用収入以外に収入のない財団でどの程度内部留保が必要か試算したところ、例えば、10年間同じ金額の事業を継続するためには事業費・管理費の3年分程度が必要という結果がでた。また、内部留保に係る規律を考える際には、@正味財産額とその成り立ち、A毎年の収支余剰額、B毎年の事業費・管理費、C貸借対照表上の資金の使用状況、D将来の収入減や費用増の可能性、E公益的な事業の性格といったものを総合的に判断すべき。結論としては、内部留保を事後チェックの対象とするのはいいが、金額とその内容、法人の内部留保についての方針を情報開示させ、判断主体がチェックすることとすればよいのではないか。
- 内部留保を死蔵させないで、例えば、毎年純資産の5%は公益的事業に支出しなければならないという米国のペイアウトルールのような仕組みを導入するというのは議論の余地があるのではないか。留保してはいけないというより、支出しないといけないこととすべきではないか。
- いわゆるペイアウトルールは、その適正な水準について議論があるところ。内部留保の定義や水準については、もう少し検討が必要ではないか。
○ 移行について(1)
- 移行に当たっての公益性の判断は新たな判断基準を適用すべきだが、新たな判断基準だと公益性を認められない現行の公益法人にも、一定のチャンスを与えるべき。
- 2万6千の公益法人の相当部分が移行するとなると相当の期間が必要。いずれにせよ新しい公益性の判断基準で判断すべきであり、非営利法人となって公益性の要件を満たしているような法人は早めに審査することも考えられる。要件を満たしていない法人にも様々な助言をして要件を満たすようにするため、ある程度の期間が必要。その場合、同時期に公益性の審査が集中することも考えられることから、判断主体の処理能力も踏まえつつ、不公平にならぬようどのような審査の順番にするか考える必要がある。
- 現行の公益法人には新しい法体系の下で、公益性を有する非営利法人という位置付けで仮免的なものを与え、移行期間内に審査して順次本免許に切り替える、審査で基準を満たさない法人は修正して基準を満たすか、あるいは一般の非営利法人になる、ということになるのではないか。
- @移行期間をどれくらい考えるか、A移行期間が過ぎた後現行の公益法人はどうなるか、B現行の主務官庁が移行に当たってどのよう役割を果たすのか、の3点の組み合わせで考えるべき。移行期間が過ぎても公益法人として生き残れるのなら、期間は短くてもよいが、そうでないなら一定の期間は必要。移行期間内に全法人を移行させ、事後的に基準を満たさない法人を1階に落とす、あるいは、仮免許を与えるとするならば、その判断は専ら判断主体が行うことになる。その場合でも、現行の主務官庁の持つ情報や責任を全く無視することはできない。主務官庁と判断主体の連携をどの時点で、どう考えるかがポイント。
- 主務官庁は定期的に法人をチェックしているのだから、その結果を使って責任を持って推薦すればよいのではないか。いずれにせよ、法人が継続的に事業をできるようにしないと大変なことになる。
- これを期に活動をやめたいと考えている法人もあろうし、社会的に見て存続させるべきではない法人もあると思われることから、現行の2万6千の公益法人がそっくりそのまま公益性を有する非営利法人に移行するというのはおかしい。
- 公益性の判断基準が明確になれば既存の公益法人は動き始めるのではないか。現に、すでに公益的な部分と共益的な部分を分けて組織立てをしようとしている法人の話も聞いている。基準が示されれば、法人の運営を見直す動きが出てくると考えられる。しっかりとした基準を作り、その基準の下でもなお公益性のある法人として活動したい法人は移行させた上で、事後的に公益性を判断することがよいのではないか。全ての公益法人が移行しなければならないという趣旨ではない。
- 2万6千の法人のうち問題のある法人は決して多数ではなく、頑張って公益活動を行う法人も多い。移行に費やすエネルギーも無視できないことから、全ての法人を一律に取扱うのではなく、頑張っている法人に対しては、要件を一定程度緩和して移行させてもよいのではないか。移行にあたっての法人の負担を軽減する措置が必要であり、すぐに公益性を有する法人になれる方式も考えるべき。他方、何らかのチェックを経た上でないと移行させるべきでない法人もあるだろうから、現在の主務官庁が、公益性を有する非営利法人にそのまま移行させる法人と、何らかのチェックを経て移行させる法人とに振り分けることとしてはどうか。
- 制度改革を機会に、法人が公益性の純度を高めていかないと生き残れないようにする考えもある。
- そのまま新たな公益性を有する法人に移行させる法人が多い方がよく、振り分けのためには主務官庁の意見を聞く必要もある。また、営利転換する法人も出てくるだろうから、移行期間はかなり長い期間に設定する必要がある。
- 主務官庁の推薦で移行できる法人を振り分けるとすると、現に監督している主務官庁は大部分移行させてしまうのではないか。移行させるとしても仮免にとどめるべきだろう。ただ、仮免を一度与えると、1階に降りろというのは実際上なかなか困難だろうが。
- 例えば、財団の評議員会を新たな仕組みとする場合、全ての財団法人は寄附行為の変更が必要となる等、新しい判断基準を適用するといっても様々な問題がある。新たな判断基準を全て適用して移行させるのか、あるいは、一部の基準を満たすことで移行させて、移行後に順次残りの基準に適応させるのかについて検討する必要がある。
- 移行しない法人を解散させることが理論上できるのかという問題、すなわち、設立許可の撤回が可能かどうか、財産の主体をなくすことが可能かどうかという問題がある。この点について問題がないか確認した上で、次に新たな基準をどの程度移行時に適用するかを検討すべき。
○ その他
- 閣議決定の理念を正面から受けとめ、本当の意味での民間の活動を支援するための制度を作るべき。その際、法人に対する支援の一番のポイントとなるのは税制。非営利は非課税の原則を貫き、また公益性のある非営利法人には寄附控除を与えるべきであり、法制度と一体として提案すべき。また、中間法人は非営利法人に含めないか、含めるにしても手をつけないこととすべき。
- 判断主体について、独立した判断主体を作ることが重要であり、審議会方式では2つの段階で判断が下され、独立した、中立の機関であるとはいえず、現行の審議会をそのまま当てはめることには反対。
- 本会議は法人制度について検討する場。税の検討は税調に委ねるべき。本会議において公益性の認定の仕方とその基準を徹底して議論することが、税制につながる。
- 判断主体については、証券取引等監視委員会のような新しいモデルを考えていくべき。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)