第2回 公益法人制度改革に関する有識者会議

−議事概要−


1.日時:平成15年12月16日(火)9:30〜12:05

2.場所:内閣府5階特別会議室

3.有識者会議出席者

(座  長)福原義春((株)資生堂名誉会長)
(座長代理)能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
岩原紳作(東京大学教授)
宇賀克也(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
金子宏 (東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(加藤秀樹構想日本代表は所用により欠席。)
(50音順)
(政府側)金子行政改革担当大臣、堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官

4.議事次第

(1)当面の主な検討項目について
(2)識者ヒアリング(小松隆二東北公益文科大学学長)
(3)識者ヒアリング(中田裕康一橋大学教授)
(4)改革の意義について

5.議事概要

(1) 当面の主な検討項目について
資料1について、事務局から説明があり、特に委員からの意見等はなく、了承された。なお、座長より、 改革の意義、公益性の位置付け、公益性を取り扱う仕組みといった各論ごとの細かな検討項目については、今後、座長が座長代理と事務局と相談の上、 議論に資するためのたたき台を提示したい旨の発言があった。
 
(2) 識者ヒアリング(小松隆二東北公益文科大学学長)
 小松学長から「公益の歴史的展開と現代」について資料2に基づき説明があり、その後、質疑応答を含め、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
  • 官庁主導型の公益法人や、民間主導的な公益法人があるが、どちらに問題があると考えるか。今の公益法人の抱える問題点の中で、何が最も問題と考えるか。その解決のために何をすべきか。
  • 公益性の絶えざる確認が必要であり、その際、「自分を超える」という視点が基本。この視点を失っている公益法人が多いのではないか。また、官主導であるから問題で、民主導だから問題ないということではなく、「自分を超えているか」という観点から、目的、機能をしっかり果たしているかどうかが大切ではないか。
  • データを基にした議論をした方がよく、官主導だから良くなく、民間イニシアティブ型だから良いといった議論は短絡的ではないか。
  • 公益的な活動が市民から見えにくく遠いものとなってしまった原因として、例えば、財団が研究者等に対し助成しているが、そうした活動があまり世の中に知られていないといった点があるのではないか。
  • 明治、大正の実業人が、財を成して公益活動を行った背景には、国づくりといった考え方があったのではないか。
  • 戦後は、個々人ではなく経済界がまとまって国と一体となって復興に当ったが、その後、個々人の公益より、財界と政府の公益の役割が大きくなったのではないか。
  • 中国や台湾では、昔から「公」ということが国民の支えになっている。他方、日本では「思いやり」はあるが、よりどころにする考え方がなく、バラバラのイメージが強い。
  • 公益とは、自分を超えて協力して連帯することであり、それは結果として自分にも返ってくることにつながるのではないか。
  • 明治期の公益的活動とは財を成した実業人など余裕のある者が私財を提供するといった財団法人的なイメージがあるが、一方、現在のボランティア活動などは皆が自ら活動するといった社団的なイメージがある。こうした点も踏まえて、法制を検討することが重要と思う。
 
(3) 識者ヒアリング(中田裕康一橋大学教授)
 中田教授から「公益法人制度の問題の概観」について資料3に基づき説明があり、その後、質疑応答を含め、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
  • 二軸論(営利−非営利という軸と公益−非公益という軸)という切り口によって問題が整理され、良かったと思う。
  • 中間法人・NPO法人については、この場で議論するのか。
    (→まず現行の公益法人をどうするのかという議論を行うこととし、その過程の中で中間法人やNPOについても念頭におくことになると考えている。議論としては、広い視野から御意見をいただきたい。)
  • 一番の課題は、非営利の中に公益性があるものを切り分けるかどうか。この場合、いずれにしてもガバナンス等を議論していく中で、NPO法人に関しても議論としては入ってくることになるのではないか。
  • 国家による公益性認定の機能として、公共的な事務の分担と私人の公益的活動の支援という切り口の提示があった。このような二つの機能を、同じ器にのせるのは難しいとも考えられるが、法技術的に切り分けることは可能なのか。
  • このような公益性認定の機能については、法律的に区分をするための基準としては抽象的に過ぎると考えている。むしろ、ものの見方として捉えることが適切。
  • 非営利の積極的意義とは何かということが問題。公益的な団体や共益的な団体、さらには、資産流動化のために法技術的に法人格を活用するものもある。このように、多様なものが非営利にはあるが、どのように全体を一つの理念の下に捉えるか。更に、このような非営利法人から公益的な法人を切り出す意義があるのかどうかが問題だが、自分はあると考えている。
  • 非営利法人制度について、法技術的に捉えるという視点と、主たる目的としては私人の公益的活動を支援するという視点の2つがあることを示したが、これらは対立するのではなく、両立しうるかもしれない。
  • 非営利について単に営利を目的としないと捉えるのではなく、積極的な理念を頭において考えないと議論が混迷するのではないか。そのたたき台として、「非営利の法人の自由な設立を認めることにより、社会を活性化し、文化と科学の発展を図り、併せて福祉の増進を図る」という捉え方ができないか。
 
(4) 改革の意義について
 事務局から、資料4について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
  • 改革を行いどのような経済社会にするか説明が必要。民主導・自律型の経済社会、個人の力を活かす社会を実現すべき。行政に依存しない自立した個人がNPO等を組織しながら公を担うこと等必要ではないか。
  • 政府は公益のうちナショナル・ミニマムの部分を担い、民が多様な部分を担うべき。民間公益活動を大いに促進する制度づくりが必要。
  • 公益法人に関する問題は問題として、きちんとした規律をかけていくべき。ガバナンスの強化も一般的に必要。
  • 非営利法人制度ができると民法から公益法人という法令用語がなくなるのか。また、非営利法人制度の中から公益性の強いものを切り分け、税の関係で優遇するなら、これは税制の問題。公益性の強いものを非営利法人の中から切り分けることの意味として税のほかに何かあるだろうか。
  • 税以外に特別扱いする意義としては、公益法人という肩書きを持つと一般社会からの信頼が得られる、寄付を集めるところは信頼が厚くなるという具体的なメリットのほか、法人で働く人が誇りを持てること等があり、公益法人という制度は何としても残したいと考えている。
  • 本年6月の閣議決定によれば、現行の公益法人制度を一旦全て非営利法人制度で受け止め、公益性の強いものは税の優遇も含め別途取り扱うこともありうるものと理解している。税の優遇が一番大きい課題だが、税の優遇を受けるためには様々な要件を満たさなければいけなくて、ガバナンス等も含め一般の非営利法人制度とは違った仕組みが必要かもしれない。
  • いわゆる2階の制度を作るとした場合、民法ないしは非営利法人法で規定するのか、それともそれ以外のいわゆる個別法で規定するのかについては、これからの議論ではないか。
  • 一般的な非営利法人制度を検討していった結果、中間法人を法律としてどのように調整するかは次の課題ではないか。
  • 民間非営利活動と言ったとき、公益性の有無にかかわらない非営利法人をイメージしているのか、公益性を有する法人をイメージしているのかにより議論が異なりうるので、民間非営利活動や非営利法人といった用語の使い方には留意する必要があると思う。

(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)


-
もどる