1.日時:平成16年7月28日(水)10:00〜12:30
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
岩原紳作(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
加藤秀樹(構想日本代表)
金子宏(東京大学名誉教授)
関幸子((株)まちづくり三鷹事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会理事・総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(宇賀克也東京大学教授、河野光雄内外情報研究会会長・経済評論家、 能見善久東京大学教授は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 松田事務局長、西室長、長屋参事官、横田企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 全体的討議(3)
5.議事概要
○ 全体的討議(3)
前回に引き続き、資料1「全体的討議用メモ」に沿って討議が行われた。また、事務局から、資料2「個別事項討議用メモ」について説明が行われ、これも踏まえて討議が行われた。主な意見は次のとおり。<2.公益性の判断要件のあり方>
(3)規律について
(内部留保のあり方について)
- 内部留保は、一事業年度の資金に加え、建物の立替えなどの積立金や各種引当金を加えた水準とすべき。
- 減価償却では、償却費が積み立てられないケースや新たに事務所を構えようというケースに対応できない。
- 内部留保の水準が妥当かどうかは、結局、判断主体がその内部留保を公益事業に使うということを認めるかどうかという問題である。
- 会計の専門家に、どの数字に着目し、何がどうなると好ましくないか考えてもらってはどうか。
- 内部留保を規制するとなると、使ってしまおうという話になるので望ましくない。ただし、内部留保が一定水準を越えると、その部分は課税対象となりうるという問題もある。
- 課税という話はちょっと違うのではないか。
- 不当な留保に対して税を課すべきという議論がアメリカであり、税調でも同様の議論がなされたことがあるが、結局答申には盛り込まれなかった。アメリカでは一時期そのような課税がなされたようだが、現在はないようである。
- 現在、借入れをするには総会にかけることとなっており、基本的に借金するなという指導がなされている。そうした中で大きな事業を行おうとすると、内部留保によるしかない。そうした意味でも、内部留保については弾力的な扱いとすべき。
- だからといって借入金を容易に認めるのは不適当。返済できなければ基本財産に手をつけざるを得ないし、基本財産を超えるような借入れをしていた場合にどうするかという問題も生じる。
- 判断主体が合理的と認めるケースには、議論のあった各種積立てのほか、法人の規模に応じた扱いなどもあり得る。どのようなケースがあるか整理すべき。
- 過大な内部留保をしておいて残余財産の処分が自由ということは問題があるが、残余財産は不当に使われないというのであれば、内部留保は法人の裁量に委ねた方が好ましい。事後チェックとして内部留保に着目することはあっても、法律で何かを縛るという性格のものではない。
(管理費の水準、財産的基盤の確保について)
- 管理費水準、財産的基盤については資料の内容に異存はない。
- 公益事業が適切に行われているかが重要であって、管理費の水準がどうかというのは二次的な現象。公益事業がきちんと行われていない場合において、管理費の水準が過大かどうかチェックするという話。
- 公益事業に投下された額と管理費や公益的でない事業に投下された額の割合をチェックするということも考えられるのではないか。
- 数字だけの問題ではないのではないか。
- 数字だけではだめだが、一定の数値的な根拠がないと、恣意的になってしまう。
- 事業の中身により管理費の割合は異なるし、人件費を事業費に計上するか管理費に計上するかで数字はずいぶん違ってくる。あまりきちっとした基準は作れないのではないか。
- しっかりした会計基準が出来上がれば、あまりひどい数字の操作にはならないのではないか。
- 会計基準ができても、数字の作り方にいろいろあることに変わりはない。
- 人件費も含めて何が事業費や管理費の項目になるのかは専門家に検討してもらうべき。一方、常識的に見て、事業の結果と管理費がバランスのとれたものとなっているかという観点から管理費のあり方を示すべき。
- 今回の改革でガバナンスは強化されるのであり、管理費のあり方もその中で解決されると考える。外部監査などによりガバナンスを強化すれば管理費は上がる。その一方で管理費を制約するというのはいかがなものか。
- 大きな財団・社団、小さな財団・社団とは何か。規模の問題についても秋以降に考えていく必要。
- 法人運営上、借入金についての融通性がある程度ないと苦しい。
(株式保有等について)
- 株式保有については、収益部門を切り離して本来部門と分けて考えるのが筋だと考え、むしろ株式保有を認めて、収益部門を株式会社として完全に分離し、課税後の株式会社の収益を公益法人に寄付してもらうという仕組みを考えてもよいのではないか。
- 公益法人が投資として株式を持つことはあってもよいが、子会社を作ってそこから収益を上げようとすると、そちらが本業になってしまったり、そちらで大きな損失があった場合に公益活動が阻害されるようなこともあるので、否定的に考えるべき。
- それは営利子会社も含めて全体で営利事業の割合を規制することで解決できるのではないか。営利部門を子会社にすれば、経理上完全に分離するため透明性が高まり、他の営利会社とも課税上の公平性が確保されるというメリットがある。ただし、本体に寄付する際の課税上の扱いについては検討すべき点がある。また、営利子会社の情報公開も必要だろう。
- ただし、収益事業を行うということにはいずれにせよリスクは残る。
- 何か事業を行わないと公益事業のための資金が集まらないというのが実情。移行の問題を考えると、営利部門を切り離すことができるとしておく必要があるのではないか。そうすれば、公益事業は本体で継続しつつ、本体からの収益事業切り離しにより問題が解決できるのではないか。
- 以前、石油公団が多くの子会社を設立し、一部の人のために社長ポストをたくさん用意したという話があった。こうした面を考えると、公益法人が会社を作らなくても、公益法人とは無関係な会社ができて、そこが公益法人に寄付をするという形でもよいのではないか。また、移行の問題についても、収益部門を市場に売却するなどして公益法人から完全に無関係な法人とし、その後収益が上がれば寄付をしてもらうということにすればよい。
- 今後は、公益事業を行うための資金を確保するため、収益事業に力点がおかれることもあるだろうし、収益部門が大きくなることもあるだろう。その際、透明性を確保しつつも営利的な動きがしやすいようにしておくべきであり、一律規制するのには反対。法人が選択できるようにし、後はガバナンスが働くようにすればよい。
- 収益事業は公益法人自らが行いうる事業の範囲内で考えるべきという指摘は重要。公益法人自らが行いうる収益事業を、子会社で行うことについては何ら問題はない。ただし、公益法人がたくさん子会社を作って一種の事業コンツェルンのようなものになってしまってはいかがかと思う。子会社を含めてグループ全体で営利事業が従たるものにとどまっているかチェックすべき。
<3.適正運営の確保のあり方>
〔ガバナンスのあり方〕
(意思決定機関、執行機関及び監事のあり方について)
- 今の監事には、本当に会計の中身が分かる人もいれば全く分からない人もいる。例えば監事二人ならそのうち一人は税理士や公認会計士が入ることとするべきではないか。
- 一定規模以上の法人について、公認会計士あるいは税理士との関わりを義務付けるか、又は望ましいとするような方法もある。
- 現実としては公認会計士を入れないと監事の引き受け手もいないということもある。理事・監事は名誉職的であるという面も考慮する必要。なお、監事には業務監査についての意見を述べるという機能もある。
(役員の責任について)
- 法律的規制を緩和して社会的監視を強化するという観点からは、国民や寄付者に対する責任は必要。
- 理事になって頂くことによって、法人への理解が深まり、その上で活動して頂くという面がある。代表訴訟的なものまで加わると役員の成り手がいなくなるおそれ。
- 非常勤理事は報酬がほとんどない。その一方で善意で行った結果が訴訟の対象となってしまうと引き受け手がなくなるだろうが、他方、それでは何をやってもいいのかということもある。
- 公益法人の役員は非常勤的な人と専務的な人があり、専務的な役員については、日常的に業務を行っており好ましくない行為があれば責任追及できるようにした方がいいのではないか。
- 資金調達する公益法人はアカウンタビリティが働く。一方、資金調達せず、自己資金で活動する公益法人は外部チェックがかかりにくく、社会の目が重要。
- 自己資金で活動する法人については、経理的におかしいときでもチェックが難しい。
- これから小さな公益法人が生まれてくる可能性が高い。また、役員の責任に権限と報酬が伴っていない上に、代表訴訟の対象となると、躊躇する人は多くなる。規模に応じて制度の運用を柔軟にすることも考えられる。いずれにせよ、代表訴訟の対象をあまり広げすぎることは、実態に合っていないのではないか。
- 理論的なステークホルダーは国民全体であるが、役員の責任をそこまで広げるのはどうか。
- 代表訴訟制度は、他の制度でも準用されており、一般的に法人である以上、社員が役員の責任を追及できることは必要と考えるが、公益法人については、理事の立場に見合った制度に工夫する余地がある。例えば会社法では、社外取締役について代表訴訟制度における責任限定を広く認めている。実態に合ったリーズナブルな制度にするために、同じような工夫ができるのではないか。
- 考え方として、これまでの公益法人の不祥事や行政との癒着に対する規制強化と、パブリックによる非営利活動をしやすくするという2面がある。営利法人制度の中での工夫を参考にすればよいが、理事として相応しい人材が確保できるわけではない。小さい法人が非営利法人に参入してくることが見込まれ、小規模の公益的な法人が増えてくることに留意すべき。
- 規制強化と国民の公益活動の活発化は、両立できるのではないかと考える。
- 法人自体のガバナンスが強化され判断主体がチェックすることとなる中で、それに加えて代表訴訟類似制度を導入することは行き過ぎではないか。全体のバランスの中で検討すべき。
(外部監査について)
- 外部監査を導入する方向でよいと思うが、一定規模の取扱いは検討が必要。
- 外部監査があれば、代表訴訟類似制度は不要ではないか。
〔情報開示のあり方〕
特に意見等はなし。〔事後チェック(監督)のあり方〕
- 一定期間ごとに公益性の有無を見直す仕組みについて、どれだけ公益性を有する法人ができるかによるが、1万や2万となったときに、例えば2年ごとにきちんと事後チェックを行うというのは非現実的。きちんとした情報開示がなされていれば簡単な見直しで済むが、情報開示がなされていなければ立入検査を行うといった対応が必要ではないか。
- 公益性判断は永遠のものではないとの考えの下、国民の同意があれば更新制ができない訳ではないが、判断主体の陣容との関係で、実際上何万という法人ができたときに更新制度が実施できるのか懸念。効率を考えれば、定期更新というよりも、いつでも公益性の見直しができるということで絶えずチェックしているという対応をすべき。
- 公益性を有する法人が、既存の法人は除き、突然1万法人増えることはないのではないか。
- 更新制度となると、既存の法人も含めてということになる。新規に公益性が認められる法人も考えれば、比較的短期間に数万規模になるのではないか。
- 原理原則としては、更新制度は当然実施すべき。運用の話は行政当局の話にすぎない。
- 公益性があると思って始めた事業が10年後に公益性がなくなっている例や、公益性のある事業を行うと定款に書いてあるのに全く脱線した事業を行っている例などもあり、そのようなことが生じていないか確かめていくことが必要。
- 従来の主務官庁制が準則主義になるので、事後チェックの主体の大きさに応じて、必ず一定期間ごとの更新をすることとすべき。
- 更新制度というと人によってニュアンスの差がある。例えば、5年後に公益性判断がなくなるのか、または、公益性は長く続くけれど毎年のチェックに加えて重点的にチェックをするのか、色々な方法がある。期限付きの公益性認定ということも考えられるが、制度が固くなるし、更新時に判断主体が簡単に公益性の更新を否定するのは現実的でない。法人の長期的な事業を考えれば、当然に認定が切れるのではなく、普段のチェックをきちんと行い、更に何年かに一度詳しくチェックする仕組みがよいのではないか。
- 公益性を取り消すのは必要だが、そのために更新制度が本当に必要なのかを考えないといけない。判断主体への通報があったところのように毎年検査すべき法人もあるだろうし、5年ごとに事後チェックを行えばよい法人があるなど、法人によっても違いがある。一律に数年に一度公益性の有無の確認をしなければならないという必要はない。
- イギリスのチャリティ委員会では職員600人弱で18万〜19万の法人を監督している。規模の大きい法人や通報のあった法人のチェックを行うなど、効率性を考えているようだ。
- 例えば総収入が100万とか200万円以下の法人まですべてチェックしなくても、実質的な問題はないのではないか。
- 現在の特定公益増進法人を維持するために、2年に1度チェックを受けるための業務負担が大きい。団体の存続に関わる更新制度になると、馬車馬のように対応しなければいけない状況も生まれかねない。団体の実態も理解してほしい。
- 公益性に更新という言葉はマッチしないと考えるが、法人側に立ってどのような仕組みとすべきかを考えるべき。また、検査など行政の話は行政側が考えるべき。
<4.判断主体のあり方>
- 判断と事後チェックとを同一組織で行うのは危険。仮に単一の組織で行うにしても、その中で公益性の判断に関わる部署と事後チェックに関わる部署とを分け、相互牽制させるべき。また、判断主体は、法人の向上を促すためのアドバイス的な機能も有するべき。
- 現行公益法人の移行措置については、財産移行など技術的な問題もあり、難しい課題だが、新制度へ移行しやすい仕組みにすべき。税制上の取扱いにも留意が必要。移行に係る法人が大量であろうから、小規模な法人については自動的に新制度に移すといった決断をしないと、判断主体等が捌ききれなくなるのではないか。大規模な法人については、移行についての事前相談を行うべき。また、移行後に事後チェックをどれだけきっちりかけられるかどうかが重要。
- 移行措置は、今回の改革の成否に関わる問題。現行公益法人で新制度への移行を希望するものは、3〜5年間程度は新制度で公益性を認められたものとみなし、その間に公益性の判断や事後チェックを行う、という方法が賢明なのではないか。
- 移行措置を考える際には、財産移行の取扱いが問題。これまで公益法人であったものが新制度発足に当たって営利法人や一般的な非営利法人になった際に、これまで公益法人として形成してきた財産を分配できるようにしてよいのかどうか。また、移行期間の長短で、制度設計も変わり得る。いろいろ選択肢があるが、どこまで強制できるのかという点がある。また、新制度で公益性を認められたものとみなされて経過期間が過ぎた後に、公益性が認められないこととなった場合にどうするか。
- 判断主体は、行政委員会とすべき。行政組織の膨張抑制の観点も理解するが、時代のニーズがある組織は設置すべきであり、本会議として提案すべき。審議機関では、大臣との二重の判断になり、独立性が確保しにくいのではないか。
- 行政委員会は理想的であるが、設置が難しいのであれば、審議機関でもよい。その場合、制度や運用をできるだけ行政委員会の仕組みに近づけられるか、例えば、委員の任命について国会の同意を得ることとして権威を高めることができるか、公益性の基準の細目の策定にどれだけ関与できるか等の点を含めて、検討してほしい。
- 事務局において検討したいが、行政組織の新設は、スクラップ・アンド・ビルドの原則に基づいて認められており、行政委員会の新設は厳しいのが現状。一方、審議機関には様々な例があり、審議機関の判断にのっとって大臣が処分を行ったり、事後チェックや不服審査に関与する審議機関もある。制度の仕組み方しだいで必要な機能を発揮させるようにできるものと考えられる。
- 判断主体はなるべく法人活動の現場に近いところに置かれるべきであり、地方公共団体を本来の判断主体とすべき。公益性の判断基準が明確であれば、判断主体はたくさんあってもよい。
- 地方公共団体に公益性の判断を行わせることで、国と地方公共団体とで判断基準が異なってしまったり、地方公共団体ごとに判断基準ができてしまうのはよくないのではないか。
- 行政委員会は理想的に見えるが、それでも相当に中央集権的な行政機関になる。その上、少人数の官庁が政治等の介入を排除して独立性を保っていくのは、かなり難しいのが実態。また、国と地方公共団体との関係が中央集権的なものとならないように、制度設計に当たっては、公益性の判断は、本来地方公共団体が行うものとすべき。法人の活動地域が複数の地域にまたがる場合でも、主たる活動地域の地方公共団体が公益性の判断を行うべき。地方公共団体間で公益性の判断基準に差が生じるかもしれないが、それこそが地方分権の意義。その際、国税の取扱いがどうなるかは検討課題。
- 地方ごとに、公益として何を重点的に取り上げるかは異なると見ている。この改革の意義は法人の自主性・自律性の向上にあると考えており、そのためには、法人の活動の現場に近い地方公共団体で公益性の判断を行うべき。自分達の公益を自分達で判断していくことが重要。
- 国における判断主体と地方公共団体における判断主体との間の連携のあり方も課題。また、地方公共団体における判断主体でも民間人を構成員とするのなら、適切な人材を地方でも確保できるかどうかが課題。
- 公益性の判断に係る国と地方公共団体との間の温度差は、判断の事例を積み重ねて行くことで統一を図っていくことになるのではないか。
<5.その他>
(公益性の判断に伴い付与すべき具体的な効果について)
- 公益性判断に伴う質的な効果が挙げられ、かつこれが公益的な活動を促進するということが資料には記載されているが、実際上、ガバナンスを強化し、また更新制度を導入したとき、全体としての母集団を増やす効果も減らす効果もあると思う。こういった量的な効果をどう考えるかについても、議論が必要ではないか。
- 公益性を有する法人が減ることになっては、改革の意味はないのではないか。
- 数の増減については、どのくらいの時間のスパンで考えるかの問題だろう。あるところでは浄化作用が働き、一時的に新制度の導入の段階では公益性を有する法人が減るが、徐々に増えていくという曲線を描くというシナリオも考えられる。
- 現行の公益法人のうち一部は、新たな公益性を有する法人に移行できないかもしれないが、それは大きな数にはならないのではないか。既存の公益法人に加え、新たに非営利法人の中から公益性を認められる法人が出てくるだろうから、現状の公益法人より数が増えるのではないか。
- 資料2に挙げられた効果のうち、税制上の特例措置以外は、公益性を認定されたことに付随して生ずる効果といえるが、税制上の優遇措置は単に効果というべきものではなく、政府の支援と位置付けられるべきではないか。
(拠出金の拠出を求めることができる社団形態の法人について)
- 拠出を求める法人であっても、当然公益性のある事業を行うこともある。その場合、他の法人と同じ基準で公益性を判断すべき。
- 拠出を求める法人の場合、拠出は、いわゆる資本取引として理解してよいのか。
- 株式会社ではないので資本取引という用語はミスリーディングだろうが、性質はそれに相当するものだとすれば理解しやすい。
- 公益法人の場合、資本概念がなく、資本取引という会計上の従来の考え方とは完全に一致しないだろう。税制上の扱いは分からないが、拠出額の範囲内でしか戻ってこないのであれば、利益は出ないので、課税の問題はないのだろう。むしろ、拠出を求める法人を認めると、残余財産の分配を認めないという規律の脱法に使われる可能性がある点に留意が必要。
- 運用の仕方によるが、大部分の活動資金や活動のための財産を拠出でまかない、残余財産となるものを少しにして、実際には拠出分が原則戻ってくるというタイプの公益法人も工夫すればできることになる。公益法人も社債を発行する代わりに拠出金で資金を集めることは認めてよいと思うが、行き過ぎると残余財産分配禁止を潜脱することもあり得るので、何らかの形でチェックする必要があるのかもしれない。
- 残余財産分配禁止を潜脱することがありうるからといって、拠出を求める法人を不当とするのではなく、いろんな形態での公益への参加があってよい。拠出金と残余財産との関係については、法人の財産からまず一般の債権者に対し返済がなされ、残額があれば拠出金が返還され、さらに残額があれば残余財産の問題になるということだろう。
(財団形態の法人に必要な規律等について)
- 他国では公益活動を行うが、他から介入されず、また税の優遇も要らないというタイプの財団があり、全く自由に運営している。将来的にはこのようなタイプの財団もあってもよいのではないか。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)