1.日時:平成16年7月15日(木)9:30〜12:00
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
岩原紳作(東京大学教授)
宇賀克也(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
加藤秀樹(構想日本代表)
金子宏(東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会理事・総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(能見善久東京大学教授は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 松田事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 全体的討議(1)
5.議事概要
○ 全体的討議(1)
事務局から、資料1「全体的討議用メモ」について、また、関委員から「関委員提出資料」について、それぞれ説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次のとおり。【 I 非営利法人(仮称)制度】
<社団について>
(ガバナンスについて)
- ガバナンスについて、社員総会を最高意思決定機関としているが、理事会くらい置いた方がよい。原則として理事会を置くこととし、例外を設けるとした方がよいのではないか。必ずしも理事会を置かなくてもよいと考えており、例えば、年間収入が何百万円以下はよいとか、規模を考慮しないといけない。大きい法人が理事会を設けないことは問題。
- 理事は必置、監事は任意、代表訴訟は措置するとあるが、これらの関係はどのように考えればよいか。監事のチェックが不十分なら代表訴訟という順序になるのではないか。また、監事は置いたとしてもコストはかからない。
- 社団であれば業務執行機関として理事は必要。監事の有無と代表訴訟には必然的な関係はない。例えば、有限会社でも監事は任意だが社員による代表訴訟を認めている。大きい団体になると社員による監視が効かなくなるので監事が必要というように、非営利法人の規模等を考えて監事を置いたり置かなかったりということはありえる。また、社団であれば社員に代表訴訟を認めるというのがこの案。
- 代表訴訟については、少数派社員の保護という観点からあってもよいが、非営利法人で代表訴訟を認めると、理事の引き受け手がいなくならないか心配。
- 公益法人の理事は著名な方には名誉職的になってもらっている面もある。代表訴訟が認められると、理事になりたくない人が増えるだろうが、一方、ある程度少数派社員の保護も必要。
- 代表訴訟は、株式会社、有限会社、中間法人や保険相互会社の制度に含まれている。社団である以上、構成員がチェックして、理事が法人に損害を与えたときは損害賠償を求められるようにするという趣旨であり、営利法人と非営利法人に違いはないと考える。営利法人の場合も、理事に過失がなければ責任は負わないし、非営利法人の場合でも過失なく責任を負うことはない。平成13年の商法改正により取締役の責任の制限が導入された。一定限度に賠償額を制限するということもありえようが、代表訴訟は制度としては必要。
- 公益法人の役員は、かつては名誉職だったが、煩雑なことが多い。社会奉仕のようなことをして賠償を求められても大変。また、理事になっても法人の活動内容をよく知らされていない。
- 主務官庁による監督と許可が一体となり、それを甘受してきた法人のガバナンスが脆弱になってきたことを考えると、大変でもガバナンスを強化すべき。一人の著名な方が多数の法人の役員を引き受けること自体がガバナンスを脆弱にさせる要因になっていた。
- 例えば、法人を設立する際に主務官庁から役員のリストを求められるが、知らない人ばかりになると説明が大変という事情もある。
- 何十万人も株主がいて権利行使が困難な株式会社と異なり、非営利法人は数百人の組織なのだから、文句をいうことが可能。非営利法人に代表訴訟は必要ないのではないか。理事・監事・外部監査を全部義務付けるのでなく、これらを組み合わせれば十分という気がする。
- 規模をどの程度にするかは問題だが、規模に応じて外部監査を求めるということは必要。
- 法律論としては、社団であれば総会が最高意思決定機関としているが、場合によって規模が大きいと、例えば、総会が現実的ではない保険相互会社や生協は総代会を設けるなど工夫をしている。営利法人についても、株主総会が形骸化しているのは問題ということで、それを実質的に機能させるための色々な工夫をしている。例えば、委任状の制度や書面投票の制度などで、理事会・監事・総会について全体としてガバナンスが機能するよう工夫している。
- 社団法人形態である以上、社員が理念的には最高の地位にあるべきだが、実際は社員が多い場合に形骸化することがあるので、色々と工夫をしている。
- 総会が最高意思決定機関ということ、すなわち総会がすべてを決めるということが、事業運営上マイナスに働くことが多い。総会は基本的意思決定機関として、業務執行は理事・理事会に任せることが現実的で、その方がきちんと仕事ができるのではないか。
- 法律的には、「最高」と「万能」の意思決定機関という考えがあり、「最高」の意思決定機関というのは総会が決めた内容に理事会も従うということを意味し、総会がすべてを決めるという「万能」という意味ではない。
(← 「I 非営利法人(仮称)制度」は、公益性の有無に関わらない団体に妥当するルールを書いたもの。社員数が2人から数千人という法人があり得る中で、理念として最低限のルールを書いている。社団は社員の集まりなので社員総会を最高意思決定機関としているが、定款によって、法人のタイプに合わせて色々と対応が可能である。それを前提に、最も核となる事項を示したもの。また、公益性を有する法人にあっては、後で議論していただくが、理事会を必置とすると書いている。)(定款の変更、解散、合併について)
- 準則で非営利法人の設立を認めることから、休眠法人が多くなることが考えられるし、違法行為にコミットする法人も出てこようから、休眠法人に関する整理、裁判所による解散命令制度等は必要。
- 株式会社等営利法人では、一定期間取締役選任の登記がなされていない等、法人であれば当然なされることが履行されていない場合、形式的に登記所が法人を整理するので、非営利法人についても同様の制度を設けてはどうか。
(情報開示について)
- 公益性の認定を受けていない一般の非営利法人でも、非営利で分配しない法人が会費等の収入部分について非課税とされることも考えられる。この場合、一般市民にもある種のステークが生じることから、情報開示の対象を法人関係者や債権者に限定するのではなく、要望があれば一般市民にも開示しなければいけないこととなるのではないか。
- 株式会社では株主・債権者に開示するだけでなく、決算を公告により社会一般にディスクローズすることが求められている。また、会社法の改正作業の中では有限会社も含め一般的に決算公告する方向で検討されている。同様に一般の非営利法人についても計算書類を公開することも考えられるのではないか。
- 今議論しているのはあくまで一般の非営利法人であり、公益かどうかは考えず、人々が集まって何かするときに最低限何が必要かということを検討している。公益性を認定される場合や、広い意味での公益性を有する場合については、公益性を有する非営利法人の仕組みのあり方の項で検討すべき。
(中間法人法上の中間法人の統合について)
- 現行の中間法人は「社員に共通する利益」を図ることを目的とするとしているが、この非営利法人はこれよりも広いものになる。現在の中間法人には無限責任中間法人もあるし、移行の問題もあるが、形式的に言えばより一般的な法律ができるということで、中間法人を統合する方向になる。
- 非営利法人というと、現行の中間法人をイメージする人もいれば、公益活動を中心に行っているものの、ガバナンスの関係から公益性の認定を受けない、公益性を有する非営利法人の予備軍のような法人をイメージする人もいる。これらを全て非営利法人が包含するとすれば、情報開示などの規律を一律に定めることはできないのではないか。
- 非公益法人に適合する制度の中で一定の業績を積んだからといって、それが公益に適合するとは限らない。最初に1階で一定の業績を積んだことが公益の証明になるかといえば、必ずしもそうではない。これは公益性の判断にあたって実績を要件とするかどうかにも関連する。非公益法人として登記をしたことが公益になるということについては矛盾がある。
- 中間法人としてゴルフ場を経営する法人が、うまく再建して公益法人になるかといえばならない。ただ、新しい公益活動を行う団体が非営利法人になり、一生懸命公益活動をやれば公益性を認定されるという話とは違う。
- 活動については、公益性の判断要件の議論であり、非営利法人の議論ではない。また、新設の法人については、実績を当然の前提としないということがこの会議での一般的な考えだったはずで、この考えと今の議論がどのように結びつくのか。
- 1階は非公益というより、非営利であれば全て含むというだけのこと。その中で一定のものが2階に上がっていくのだろう。
- やはり公益性認定の当初の段階で実績を要件とすべきではないということだろう。
- 今は法人格の取得について議論しているのであり、公益性の判断と一緒に議論すべきではない。公益性や活動の中身の評価については、公益性を有する法人のあり方のところで議論すべき。非営利法人制度は法人格を得るための枠組みであるから、中間法人が包含されるのは当然。
<財団について>
(公益性を要件としない財団形態の法人制度について)
- 公益性を要件としない財団を一般的に全て認めてよいか、何らかの絞りをかけるのかについては、ワーキング・グループでは両論があり、議論している状況。社団であれば、人々が集まって自由に活動すること自体に意味があるが、財産の集まりが何でも自由にできるということをどうやって積極的に位置付けるのか。また、技術的に使おうと思えば使えるだけに、非営利の財団の制度を作った場合、悪用されることがあるかもしれない。それを何とか防がないと非営利法人制度全体に悪影響を及ぼしかねない。ただし、どこで切り分けるかは難しく、現在検討しているところ。
(ガバナンスについて)
- 評議員会が大方機能していないのが実態だが、法人の運営に関わる人が多いとチェックが働くし、応援団も増えるという側面がある。非営利の財団でも、理事会と評議員会は置くべきだろう。
- 評議員会が理事、理事長を選任できる機関であるかどうか、現状のやり方では疑問がある。
- 非営利法人ワーキング・グループでは、基本的な意思決定を評議員会に任せ、評議員を含め、役員人事についても評議員会で決めるという案だったと思うが、そうなれば今までの評議員会より重みのある機能を果たすことができると思う。
- 監事について社団と財団で規定が異なるのは、社団であれば社員が様々な形でチェックできるが、財団では社員のチェックがなく、しかも、新たな非営利法人制度では主務官庁がないことから、できるだけ自律的なガバナンスを高める必要があることによる。
<その他>
- 全体的討議用メモについて、何をビジョンとして議論をしているかということが打ち出されていない。市民の自由な活動の促進や、新しい国民のニーズを積極的に支援する制度だということを打ち出すべき。
- 今回の全体的討議用メモは、今後報告書を作成するための材料をすべて羅列するものであり、ビジョンというのは最終的に取りまとめる報告書に必ず盛り込まれることとなる。
- 中間法人法を統合する方向とあるが、これは大きな問題。NPO法人や人格なき社団をどうするのかといった点についても検討が必要ではないか。ガバナンス等についても、税制上等でどの程度の優遇措置があるのかということとの見合いで考えるべき。
- 中間法人については、以前も整合性から考えて統合した方がよいという議論があった。NPO法人については、当会議のテーマではないと考えている。法的な整合性については報告書を出すときにレビューすべきだが、当会議で決めるのは困難ではないか。税制上の措置については、当会議が、税調に対していかに説得力のある議論ができるかによる。
(税制上の取扱いについて)
- 今後は公的な仕事も民間で引き受けてもらうということなら、今までよりも支援を強化すべきだろうが、税優遇については、誰がどのような基準で裁くのかということが問題。今は主務官庁が判断しているが、どういう権限と責任体制で実施できるかが一番の根本で、皆が信頼できるようにならないといけない。基準も明確でないといけない。
- 本来は、税の取扱いをどうするかといったことを先に決めるべきだった。公益的な法人についてはこのような税優遇がなされるという想定をして、それならこういうガバナンスや情報開示が必要だという議論。イギリスでは税制を先に決めている模様。しかしながら、我が国では同じことができないのだから、当会議で組織作りをして、これなら大丈夫と税調を説得していかないといけない。
- 税制上の取扱いについては、税調が担当機関であり、当会議が細かいことを決めるよりは、今の税制を念頭に置きながら税調と協議していくのが実際的。税調に対して説得力のある提案をすることで、公益活動を促進していくということが必要。
【 II 考え方Aに基づく公益性を取扱う仕組みのあり方】
<1.基本的視点について 2.公益性の判断要件のあり方について>
- 手続きの簡素化・迅速化は、公益的活動を促進する観点から重要。また、税制上の措置に係る手続きと公益性に係る判断の手続きとを一体とするのも、手続きの簡素化として重要。
- 判断要件の客観化・明確化は、精緻にすればするほど実際の判断が硬直化する一方、客観化・明確化が不充分であればあるほど判断主体の裁量が拡大し、税制上の優遇措置も期待できなくなる。どの程度まで客観化・明確化を進めるべきか。
- 税務当局は、制度の濫用を防ぐ観点から、税制上の優遇措置を制限し、運用の厳格さを追及するもの。客観性・明確性の不充分な現行の主務官庁制から離れて客観的・明確なルールに基づき統一的に判断できる主体へと移行し、事後チェックも的確に実施するとすれば、税務当局の姿勢も、公益的活動の促進の観点から、もう少しおおらかものになろう。
- どの程度の優遇措置を念頭に議論を展開するのか。非営利法人に高い自由度を認めるような判断要件では、税制上の優遇措置の拡大は、公平性の観点から、簡単には認められない。肝心なのは、判断要件に基づいて判断を行う主体が、きちんとした責任を負えるかどうか、その判断が誰からも信用されるものになるかどうかだ。
- 判断要件を客観・明確に書き切っても、必ず抜け道が生ずるのが現実であり、ある程度まで客観化・明確化したならば、それ以上は寛容な運用をする視点が欲しい。具体的な行為の公益性の有無は、霞ヶ関で分かるものではなく、できるだけローカルなレベルで判断するべき。ただし、そのような場合には、判断が一律なものになりにくく、国税上の優遇措置が認められにくくなる。判断主体が判断にきちんと責任を持つことにより、国税当局の肩の荷を降ろせないか。
- 判断要件は、税制上の優遇措置のことも考えれば、極力客観化・明確化すべき。基礎自治体も判断主体になるようにし、非営利法人のサービスの受益者である一般市民も判断主体のメンバーに含めるべき。また、国税上の優遇措置以外にも、地方税の分野で公益的活動の促進になる措置があるのではないか。税制体系全般についての提案をしてはどうか。
- 現行の公益法人は税制上の優遇措置の拡大を主張するが、現在でも税制上の優遇措置を受けており、税負担が重いというのは本当なのか。活動がうまくいかないのは、税制上の優遇措置以外にも人の問題等があるのではないか。
- 公益法人に対する税負担は重いとは思わないが、寄附金控除の制度には問題あり。特定公益増進法人制度等の運用が厳格すぎる。新しい制度では、判断主体が責任をもってきちんとした判断・事後チェックを行うのであれば、それで寄附金控除を認めてよいのではないか。
- 現行の公益法人等の約半分程度が寄附金控除等の税制上の優遇措置を受けられるようになることを想定し、これを念頭において判断要件を検討してはどうか。寄附金控除については思い切って厳格さを緩めるべきではないか。現在の寄附金控除制度はいわゆる三階建てになっているが、二階建てにすべき。公益性を取り扱う仕組みは柔軟なものとし、非営利法人にある程度の自由度を与えるものであるべき。また、公益性は非営利法人の行為に着目して判断すべきだが、公益性に係る判断の際に活動実績の確認を行わないことにすると、判断結果についての判断主体の説明責任が重くなるため、判断が非常に保守的になりがち。判断を行いやすくするためにも活動実績の確認を行うべき。初めての公益性に係る判断の際にはいわば仮免許で認め、活動実績が出てきた後に再度活動実績によりチェックするというのは、いいアイデア。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)