1.日時:平成16年6月2日(水)10:00〜12:30
2.場所:虎ノ門第10森ビル3階会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
岩原紳作(東京大学教授)
宇賀克也(東京大学教授)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
加藤秀樹(構想日本代表)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中弥生(東京大学助教授)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(河野光雄内外情報研究会会長・経済評論家、金子宏東京大学名誉教授、
田中清(社)日本経済団体連合会常務理事、能見善久東京大学教授は
所用により欠席。)(50音順) (政府側) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 「議論の中間整理」に対して寄せられた意見について
○ ガバナンス・情報開示のあり方(1)
5.議事概要
○ 「議論の中間整理」に対して寄せられた意見について
事務局から、資料1−1「有識者会議「議論の中間整理」に対して寄せられた意見の骨子」について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次の通り。
- この「議論の中間整理」に対して寄せられた意見は、今後どのように反映されることとなるのか。
- ほとんどの意見は既に当会議で検討されているが、最終的な報告書を取りまとめる際に、寄せられた意見をできるだけ取り入れるよう図っていきたい。
(← 寄せられた意見については、個別に回答はしないという前提で提出していただいているため、個別には回答しないが、今後の審議や報告書を取りまとめる際にこれらの意見も十分尊重して検討を進めていただきたい。)○ ガバナンス・情報開示のあり方(1)
事務局から、資料2「説明資料(ガバナンス・情報開示のあり方)」について説明があり、その後、討議が行われた。主な意見は次の通り。[1.ガバナンス・情報開示のあり方(総論)]
- ガバナンスや情報開示を強化することに不都合はないだろうが、法人の規模によってその在り方は異なるべき。
- ガバナンスを考える上では、@公益性を有する法人として社会や支援者に対する責任、A法人債権者の保護、という二つの視点がある。また、ガバナンスの強化に伴うコストや萎縮効果とのバランスを考える必要がある。
- コストのかからない、萎縮効果のないガバナンスのあり方を考えることも重要。
- 指導監督基準をベースに追加的なものがあるか考えていけばよいのではないか。
[2.ガバナンスのあり方]
【理事の「内部的」コントロール関係】
(1)意思決定機関、執行機関及び監事のあり方について
- 社団形態を念頭において法人制度ばかり検討されるのはおかしい。社員のない財団などでは規律のあり方は異なるはず。
- 財団のあり方については、非営利法人ワーキング・グループで検討中である。
- 社団法人や財団法人以外にも、基本財産や社員をもたないタイプの法人も考えられるのではないか。
- 出資型という財産のない非営利法人についても既に意見が出されている。
(← 出資型については非営利法人ワーキング・グループで検討を始めたところ。次回報告したい。)- 米国の企業財団の中には、基本財産を持たず毎年企業が資金を拠出して運営されるものもある。基本財産のない出資型でもない類型についても検討して欲しい。
- 社員総会は実態として機能していないことがほとんどではないか。実際の社団法人は理事会設置型が多く、これを中心に考えるべき。
- 理事会を設置している法人は多いが、規模が小さい法人では必ずしも理事会をおく必要はないのではないか。
(2)役員構成の制限について
- 利害関係者について一定の制約は必要だが、同一業界といってもどこまで同一業界と捉えるかは不分明。
- 役員構成には一定の制約を設けるべきであることを明確にすべき。
- 非営利法人のガバナンスと公益法人のガバナンスはそれほど異なるものなのか。
- ガバナンスについて、@法人債権者の保護という観点からは共通であろうが、A公益性を有する法人として社会や支援者に対する責任という観点からは、仲間内の集まりである法人と公益的な法人とでは、情報開示の範囲等は異なるだろう。
- 情報開示以外の意思決定や組織のあり方については同じではないか。
- 非営利活動を促進する観点から、あまり萎縮させないことが重要ではないか。ただし、税等優遇がある場合には情報公開等に差が出てくるだろう。
- 今後増えてくる新しい制度の下での公益法人は規模が小さいもの。公平性・公共性を重視するあまり現場と乖離した基準とならぬよう注意すべき。萎縮させないあり方が必要。
- 公益性は、あくまでその活動の結果が世の中の役に立ったかどうかで判断されるべきで、あらかじめ公益性のある法人を認め、一般の非営利法人と公益性のある非営利法人に断絶を設けるような仕組みとすべきでない。
- 一度制度が出来上がると運用は厳格になっていく。極力柔軟性を欠くことのない仕組みにすべき。
- 一定の税優遇がないと成り立たない活動もあり、設立段階から公益性を認められる道も必要。
- そうなると非営利法人と公益法人を分けて考えることになるのか。
- 特増では、認定されないとできないというジレンマを抱えた活動もある。
- 助成財団は最初から非課税でなければ成り立ち得ない形態。公益活動を活発にする観点からは実績を求めないほうがよいのではないか。
- 原理原則として実績が求められることは譲れない。その上で実務上の工夫をすることは可能だろう。既存の公益法人は既に実績があるのでそれで判断すればよい。新規に設立する法人については、助成財団であれば活動実績がなくても既存の助成財団と比較することによって書面上公益性を判定することは可能だろう。ただし、小さい社団的なものはその活動は千差万別で比較の対象に乏しく実績を見なければ公益性を判断できない。その場合でも1〜2年程度の活動実績で早めに判断してやることはできるのではないか。いずれにせよ、原理原則と運用は分けて考えるべき。
- 実務上の工夫として、新規に設立される法人に公益性に関する仮免許を与えることは考えられるだろう。助成財団は仮免許すらいらないだろう。小規模な社団的なものは仮免許を与えておいて1〜2年で実績を見ることにすればよいのではないか。仮免許はいいアイデアだと思う。
- 実務上工夫をするというのでは恣意が働くのではないか。また1年程度で実績を判断できるとは限らないのではないか。公益活動を活発化する観点から、設立時に要件が整っていれば公益性を認め、きちんと事後チェックを行って要件を満たさなくなったものは認定を取り消すという形を原則とすべき。
- 最初から公益法人になりたいところはそうすればよいし、最初は非営利法人でスタートしたいところはそうすればよい。重要なのは法人がそのどちらかを選択できるようにすることである。
- 法人格を取得することはミッションではない。いったん法人格を取得するとそのままとなってしまうのが現在の問題点。例えば5年毎のチェックをクリアしなければならないとすれば、浄化作用は働くのではないか。
- 法人格と公益性を分けることが議論の始まりではないか。入口から非営利法人、公益法人を分けるというのは、結局優遇措置のある公益法人を準則主義で設立できるという話になるが、優遇措置を与えるかどうかは行政的な手続きに則って行われるべき。公益法人を準則で設立することは、税等の優遇措置を念頭に置くとあり得ない。
- そのために公益性の判断主体について検討し、そこで非営利法人の中で公益性があると判断されれば優遇措置があるということで検討しており、最初から公益性のある法人とない法人との二つに分けることを想定しているわけではないと思う。
- 公益性の判断機関の性格についてはイメージが共有できているが、判断基準については今後更に検討を深める必要がある。なお、NPOについてはこの会議で検討する話ではないと考えている。
- 指導監督基準が最大限の制約であるとして、その中で必要なものは何か検討すべき。
(3)役員報酬等の制限について
- 役員は仕事に対する報酬を貰うのであり、法人が社会に対してどのような活動をしたかということとは分離して考えるべきで、公益法人だから役員報酬は低くなければならないという考え方は誤り。例えば、閣僚の報酬水準を超えないなど、役員報酬が不当に高すぎないとする規律はあっていいが、仕事に対する報酬という視点が必要。
- 公益性を有する法人の役員の中には、ある程度ボランティアでやろうという人がいて当然。英国では理事(トラスティー)は原則無報酬でなければならないとされている。役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下というNPO法の規定はあってもよい。具体的な金額については、情報開示で一般社会の評価に委ねるべき。
- 常勤の役員といっても、フルタイムの役員もいれば、週の数日のみ勤務する役員もおり、一律の基準を作ることは難しいが、例えば、法人の資産額あるいは年間支出額等を基準として、役員の報酬の多寡を判断するなど何らかの目安をつくってはどうか。
- ある業界団体では加盟各社の平均賃金を超えないというように、自主規制的に職員の報酬を決定している。
- 役員報酬がなぜ高額であってはいけないかを考えるべき。管理費と本来の事業費の比率の問題が根底にあり、管理費が過大で、その大部分を人件費が占めているなら、それは社会的に見て不当ではないか。
- 予め制度の中に役員報酬に関する制約を設けるか、制約を設けずガバナンスの機能する仕組みを設計するかのいずれかだろう。従来は前者であったが、今の流れは後者であり、そのほうが柔軟な制度になるのではないか。
(4)役員の責任について
- 公益性を有する法人の役員に国民一般に対する責任など追加的な責務を課すことは理想論としては理解できるが、日本ではそこまで成熟していない。
- 法人に対する責任、出捐者に対する責任、第三者に対する経済的責任について考える必要がある。
- 現行の民法上の公益法人の役員の責任は、営利会社の取締役の責任よりも軽く、例えば、第三者に対する責任なども規定がない。営利会社に対する取締役の責任は、委任関係に基づく善管注意義務からくる責任が法律に規定されているが、公益法人に対する理事の責任は法律上明確に示されていないのが現状であり、きちんと規定すべき。
- 一部の法人では理事会が形骸化している実態がある。公益性を有する法人のガバニング・ボディをしっかりさせるためには責任規定を設けるべきと思うが、一方で責任が重くなると役員を引き受けることを躊躇するようになってしまうという問題もある。
【理事の「外部的」コントロール関係】
(5)外部監査の導入について
- 公認会計士や監査法人を雇うと大変なコストがかかるので、小規模な法人にはその金銭的な負担を考慮し、外部監査を義務付けるべきではない。その一方で、小規模な法人を全くチェックしないことも問題。会計士等がボランティアで監査を行えば、小規模法人であってもガバナンス能力の向上が見込める。
- ボランティアを強要することもできないので、外部監査強制は一定規模以上の法人に限定すべき。財務の監査は通常法人内部の監事が行っており、監事には会計士等が就任していることが現実には多いのではないか。
- 監事による内部監査は形式的なものであり、真の監査ができていないのが現状。外部監査を導入すれば、例えば、職員が役員に対し言いにくいことも会計士が指摘してくれるなどの成果が期待できる。実質で見る必要があり、責任と権限と義務が一体化していないと監査は有効に機能しない。ボランティアによる無給の監査は形式的なものなるおそれがあるため避けるべき。
- 非営利法人にとってボランティアは追加的なものと考えるべき。スタッフも原則有給で存立するべきで、その上でボランティアを募ればよい。監査に関しても同様。
- 株式会社のうち会計監査人の監査を強制されるのは、資本金5億円以上あるいは負債額200億円以上の会社であること、また、農協に関しては中央会だけが外部監査を要求され、一定規模以上の農協の監査は中央会の監査士が行うこと、一部上場会社の監査費用は標準で1千万円と言われていることを考えると、会計監査人による監査を要求するのは一定規模以上の法人に限定すべきではないか。
- 準則主義による法人設立を認め、また、従来の主務官庁による監督に代わる機能を法人のガバナンスで代替しようというときに、外部監査にどれだけ期待するかだろう。
- 会計監査人による監査を強制することは法人の負担上難しいという場合、代替的な案として税理士による監査が考えられる。現在法制審議会で商法の見直しを議論しているが、その中で中小会社について税理士に会計の役割を担ってもらう案も検討される予定。税理士が主体的に会社の会計事務を行うものと位置付けられた場合、公益法人において同じ形で使えるか検討の余地がある。ただし、税理士であっても小規模法人にとってはそれなりの負担になる可能性がある。
- ボランティアによる監査は責任の問題と関連する。従来は民法上役員の責任が規定されていなかったため、監事がボランティアで監査していたのではないか。責任規定を設ける場合、どこまでボランティアに期待できるか疑問。
- 英国では一定規模以上の登録チャリティに外部監査が義務付けられている。
(6)代表訴訟類似の制度等について
- 代表訴訟は、法人の構成員によって起こされるものであり、財団法人ではそもそもありえないのではないか。理屈が立つのなら代表訴訟類似の制度があってもよいが、訴権を有するのが寄付者等、特に一般国民というのであれば、住民訴訟制度に近い。税制上の特例措置が与えられる公益性を有する非営利法人については、納税者である一般国民に訴権を認めてよいかどうかではないか。
- 住民訴訟は、地方公共団体の住民であれば、財務会計等について訴訟を提起できるというもの。日弁連では、国の財務会計等についての国民訴権が議論されているが、中長期的な検討課題。
- 代表訴訟の訴権を有する者の範囲は、法人の役員が誰に対して義務・責任を負っているかにもよる。公益性を有する非営利法人に対する代表訴訟類似の制度は、理屈の上ではありえるが、現実的には難しいのではないか。団体に訴権を与えるというようなことはあり得るかもしれないが。
- 代表訴訟類似の制度ではなく、英国のチャリティコミッションのように、公益性の判断主体への国民による通報とこれに基づく判断主体による調査等の事後チェックという仕組みでよいのではないか。
- 住民訴訟制度は、住民と地方公共団体との信託関係がその根底にある。これと同程度に一般国民と公益性を有する非営利法人との信託関係があるとはいえまい。税制上の特例措置を受けている法人について納税者の立場からのチェックは考えられるが、税制特例措置を受けているあらゆる者や補助金を受けている者にも同様に納税者による訴訟提起を認めなければバランスを失ってしまう。訴権を有するのが寄付者というのであれば、まだ理解できるが、国民一般については、他の制度との整合性がなく難しいのではないか。
【残余財産の帰属関係】
(7)残余財産の帰属について
- 非営利法人ワーキング・グループにおいては、残余財産の帰属について、中間法人制度に近い緩やかな規律を考えているところ。さりながら、公益性を有する非営利法人については、実質的に社員に帰属させることを認めるのは適当ではない。この点、現行の民法第72条の規定は緩い。公益性を有する非営利法人の財産は、公益的活動に用いられるのが筋であり、残余財産の帰属先を規制することは必要。
- 公益性を有することにより優遇措置を受けられるのであれば、残余財産の非分配は、制度上明確に打ち出すべき。公益性を失って一般の非営利法人に戻った場合でも残余財産の非分配を定款上変更できないようにすべき。帰属先は、現在は、類似の団体に引き継ぐにしても、主務官庁の指導によって事実上決められてしまうのが実態であるが、例えば、国庫に帰属した残余財産を第三者機関にプールしておき、公募で新たな帰属先を決められるようにしてもよいのではないか。
- 公益性を有する非営利法人がいわゆる拠出型である場合にはどう考えるのか伺いたい。拠出分は拠出者に戻すことにしてよいのではないか。拠出分以外の残余財産については、分配の制限が必要。
- 残余財産の分配制限は法律上明定すべき。公益性を有する非営利法人がその公益性を失い、一般の非営利法人となる場合には、残余財産を引き継ぐことを認めないという考え方もあろうし、残余財産の帰属について厳しい制限を課すのであれば、一般の非営利法人から公益性を有する非営利法人になるときに相当な覚悟をしてもらうという制度になる。
- 残余財産の帰属の取扱については、社団と財団とで分けて考えるべき。
〔なお、時間の都合により、議論は次回に継続することとされた。〕(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)