1.日時:平成16年5月17日(月)13:30〜15:45
2.場所:内閣府3階特別会議室
3.有識者会議出席者
(座 長) 福原義春((株)資生堂名誉会長) (座長代理) 能見善久(東京大学教授)
石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)
勝又英子((財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
加藤秀樹(構想日本代表)
金子宏(東京大学名誉教授)
河野光雄(内外情報研究会会長・経済評論家)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネジャー)
田中清((社)日本経済団体連合会常務理事)
東ヶ崎邦夫((社)日本アイソトープ協会総務部長)
中田裕康(一橋大学教授)
(岩原紳作東京大学教授、宇賀克也東京大学教授、田中弥生東京大学助教授は所用により欠席。)(50音順) (政府側) 堀江事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事次第
○ 法人レポート
5.議事概要
(1)法人レポート(石川睦夫(財)住友財団専務理事・事務局長)
石川委員から資料1に基づき説明があり、その後、質疑応答が行われた。主な意見は次のとおり。
- 実際の公益活動は助成対象者が行っているとすると、助成型の財団はある意味で政府に代わって公益活動の対象を選別するという機能を果たしているのではないか。
(← ある活動に対して助成することは、こういう活動をしてほしいという提案を助成型財団がしているようなものであり、資金を供給する財団と、財団の提案に適う活動を実際に行う助成対象者とが公益活動を共同で行っていると考えることができる。)
(← 助成対象事業の成果はしっかり追跡している。また、主務官庁に対してはどれだけ助成しているかということは報告するが、主務官庁が助成対象事業の内容に立ち入ることはない。)- 公益活動について国が細かいところまで監督するのは好ましいことではなく、助成型の財団が国と助成対象者の間に入ることにより、いわば自律的に公益活動が支援されているという形態は、助成型の財団の大きな意義なのかもしれない。
- 助成型の財団自体が助成事業の公益性を判定しており、その判定の仕方や助成した後のモニタリングは、公益性判断要件などの検討の参考になるのではないか。
- 民間の財団が民間の公益活動を支援するときに、助成対象者の自主性・独立性を損なうようなことあってはならない。きちんとした財団としてのガイドラインを作り、助成金交付後は助成対象者の自主性に任せ、結果については助成金額に見合った成果があったかどうかを財団が検証するプロセスが必要。どの段階で干渉になるか考えることは民間の活動を支援していく上で重要。
- 内部留保の取扱いについて、どのように考えているのか。
(← 内部留保について、算式を定めることは困難であり、1つの基準で簡単に割り切れないと思う。正味財産の中身や留保金に関する方針などを開示することにして、一般社会にその妥当性を判断してもらうしかないのではないか。)(2)法人レポート(東ヶ崎邦夫(社)日本アイソトープ協会総務部長)
東ヶ崎委員から資料2に基づき説明があり、その後、質疑応答が行われた。主な意見は次のとおり。
- 営利法人として行いうるものを公益法人として行っている理由は、営利を追求とするとなると、採算の取れない事業は行わないことになるが、安全確保のため採算を度外視してもやらなければならないものがあるためか。
(← 設立時に株式会社ではなく公益法人という法人形態を選んだのは、利潤ではなく社会の安全を最も重視すべきという考え方による。)- 株式会社であっても構成員が利益の追求を目的としないという考えを共有していれば公益法人と同じようなことができるのではないか。一方、見返りを求める人からの出資を受けると、採算に合わないものはやらないということになるのではないか。
(← 当初考えたとおりに機能している場合には株式会社でも運営できるであろうが、会社や株主に対し利益の追求をせずに社会のために事業を行うよう制度的に強制できない以上、公益法人という形態を選択することに意味があると考える。)- 株式会社形態では、採算の取れないものは切り捨てられていくのではないか。その意味で公益法人には意味があるのではないか。
- 公益的な活動の担い手の多様性を確保していくという観点から、事業や組織の面から見て限界的な例も検討していくべきではないか。従来のタイプと異なるワーカーズコレクティブについても検討できればよいのではないか。
- 一手販売というのは、一般の財であれば通らないであろう。アイソトープの特殊性という一点で説明可能なのであろうが、一手販売といった場合にはよほどしっかりしたガバナンスが必要。内部留保も大きいようだが。
(← 独占しようという考えはなく、参入希望者に技術力があり、公益を損う恐れがなければ歓迎である。そのためのノウハウも含め情報を公開する。相当程度の専門知識が必要だが、他者を排斥してはいない。)
(← 内部留保については、将来処分しなければならないアイソトープ廃棄物を40年間累積してきたことによる引当金が積みあがっているものである。実際の内部留保としてはマイナスである。)- 核燃料サイクル機構も同じ悩みを抱えている。確かに廃棄物は負債だろう。内部留保が大きい理由は理解した。いずれにせよ、しっかりしたガバナンス、ディスクロージャーを継続して欲しい。
(← 事業報告書、決算書はもちろん、理事会の議事録、常務理事会の議事録などについても公開している。)(3)法人レポート(田中清(社)日本経済団体連合会常務理事)
田中清委員から資料3に基づき説明があり、その後、質疑応答が行われた。主な意見は次のとおり。
- 公益法人全体の改革の議論の中で、公益法人の一つとして経団連も対象には入っているが、この会議のこれまでの検討状況をどう思っているか。
(← 経団連では、企業活動が経済の発展に貢献するための全体的な基盤整備を働きかけるなどしているが、これが公益でないとなると、経済関係で何をもって公益というのかということになる。また、ガバナンスは重要だが、ただ強化されればされるほどよいのかというと、そのための費用をどう考えるかが問題となってくる。税については、原則課税ということになると諸団体の活動は非常に停滞していくことになり、また、公益活動を控えて収益の上がる活動もやっていかなければならないということで、いろんな法人が大変なことになると思う。)- 今やっているような非営利法人の改革を経済団体としてどう見ているか。
(← 業界団体についても、経団連と法人の目的はそう変わらず、環境問題、消費者保護等といった公益的な活動が多い。公益活動をやっていくために業界が語らうことが「共益」であるというのであれば、公益と共益との分離もつかない。最終的に公益につながるのであれば公益法人としてみるべき。仮に、どうみても共益だという活動があれば、それは活動全体の中でバランスをみて判断するということではないか。)(4)法人レポート(勝又英子(財)日本国際交流センター常務理事・事務局長)
勝又委員から資料4に基づき説明があり、その後、質疑応答が行われた。主な意見は次のとおり。
- 官庁からの委託事業の場合には収益事業として課税されても、補助金であれば課税対象とはならないのではないか。補助金という形を選択せず委託研究を選択するというのは、役所が決めるのか、法人が決めるのか。
(← 法人の自主性を確保するため、補助金は受け取らないことにしている。例えば、2国間の賢人会議の事務局の運営について受託しているが、外務省におけるこうした事業も委託事業であり、本来、ある組織およびその活動を補助するという性格の補助金事業とは異なる。)- 今回の改革で課税強化されるとの議論が出ているが、それほど税収が上がるとも思われず、財務省もそのようなことを意図しているのではないのではないか。
(← 会費収入や寄付金収入に対して課税されないかと懸念している。特定公益増進法人の審査も年々非課税対象事業と簡単に認めないようになっており、全体的に課税収入を上げようとしているのではないか。)- 補助金であれば課税されないが、委託契約を結ぶと課税されるのか。
(← 税務署の理解はそのようである。)- 財務省ときちんと税を徴収しようとする国税庁との感覚は必ずしも一致しないのかもしれない。
(5)その他
関委員から資料(「財団法人まちづくり公社から株式会社まちづくり三鷹へ」)が配布され、それに基づき説明があり、その後、質疑応答を含め、討議が行われた。主な意見は次のとおり。
- 株式会社まちづくり三鷹は、営利法人としての形態をとって公益的な事業を行っているということが分かった。
(← 中心市街地活性化法は、営利法人が公益活動を行ってもよいとの考えであるとも理解できると思う。)
(← このまちづくり三鷹の経験から、法人における安定経営や資金調達を可能にするために、出資型の非営利法人の類型を提案したい。すでに、ワーカーズコレクティブの組織もこの出資型で非営利法人の動きとなっていると思う。)- 株式会社まちづくり三鷹は、三鷹市出資の株式会社であることから、三鷹市の活動の一環なのではないか。市の出資した法人ではなく、純粋な民間が出資することにより組織される法人の場合には議論が異なるのではないか。
(← たまたま大半が三鷹市の出資となっているが、民間からの出資受入れを増やすことも検討している。なお、三鷹市を含め、株主に対して配当は行っておらず、すべて再投資にまわしている。また、必ずしも地方自治体が出資したものが成功しているわけではない。)- 民間の出資者にどのように報いるかが問題。出資の大半は三鷹市だが、こういう法人が実績を積んでくると、民間出資の呼び水となるのではないか。
- 出資型の非営利法人を設けるべきとの意見については、会社法との関係で、配当請求権等をどう考えるかといった議論もあるので、商法学者の意見なども聞きながら検討すべき。
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)