1.日時:平成15年1月30日(木)14:00〜15:40
2.場所:内閣府309号特別会議室
3.懇談会出席者
太田達男((財)公益法人協会理事長)
加藤秀樹(構想日本代表)
神田秀樹(東京大学教授)
中里実(東京大学教授)
中田裕康(一橋大学教授)
橋本博之(立教大学教授)
水口弘一(中小企業金融公庫総裁)
山岡義典(NPO法人 日本NPOセンター常務理事/法政大学教授)(50音順)入山映氏、関幸子氏は欠席。
4.議事概要
【公益法人制度の抜本的改革の基本方向についての全般的議論】
○冒頭、事務局より、前回の懇談会の際に議論した検討資料からの変更点の紹介と、「社会貢献性」の判断について、法人制度上の具体的制度として考えられる仕組みのイメージの説明があった。
(→ NPOについては、後者と考えている。NPO法は他の特別法とは異なる。)
- 現行のNPO法制度については、この非営利法人制度の中に発展的に解消される可能性が高いと考えられるとあるが、タイムスパンとして具体的にどう考えているのか。新しい制度ができて、様子をみてからということなのか、法改正までにNPO法を解消するということなのか。
(→ ワンセットで考える。)
- NPOについて、今般の改革とは別扱いという意見はこの場でも出ていない。一般法と特別法とで扱いが異なるとしても、実際には今般の改革の対象ということを確約いただきたい。
(→ 確かにこの制度は、税が連動しないと意味がない。以前からの議論でも、公益性があると認識された場合に税優遇をするというスキームとして分かりやすいのは、全部税法で規定して課税庁で判断するという姿。公益性については民間で評価するのが理想的な姿。ただし、社会貢献性を実質的に課税庁で行うことはいかがかとの意見がある。その場合、どこか別のところで判断しなければならないが、その判断にどういう意味があるのか。税以外にどのような効果を付けるのか。一定の要件を充たしている法人について、国民に公開し、分かりやすくするという効果が考えられるが、登録そのものには意味はなく、それが税制に結びついた上でどう考えるか。)
- 今回NPO法人制度も一緒になる可能性は高い。NPO法が議員立法なので、「発展的に解消される可能性が高い」と遠慮深く書かれているが、NPO法の附帯決議でも将来民法改正によって非営利一般法が成立することを目指している。民法が変わればNPO法も新しい姿になる。NPO関係者がどのように理解しているか分からないが、立法過程から見れば今回の改革によりNPO法が完成するものと考えられる。
- 個人的に違和感はないが、気になるのは、根本のところ。国が登録の形で社会貢献性を決めるのは改革の趣旨に抵触しないか。市民の活動のどれが公益か公益でないかを国が決めるのはやめようというのが改革の基本理念。何が公益か、社会貢献かを市民が決めるのが改革の趣旨。登録も行政行為であり、行政が社会貢献でないと判断するのでは、改革の基本のところと抵触することになるのではないか。また、仮に税の恩典がない場合、何が恩典になるのか。名称使用制限となると、誰かが名称を使った場合に、罰則を科すのか、差し止めをさせるのか、作り方が難しい。税以外の措置があり得るのか詰めているか。
(→ 第三者機関については、イギリスのチャリティ委員会のようなものが仕組めるのか、メンバーをどうするのかは、かなり難しい問題。
- 判断主体をどのように構成するかによって違ってくる。第三者機関にして民間人を入れた登録制とすることにより、国が「社会貢献性」を決めるといった懸念は薄れるのではないか。
- 第三者機関であっても、登録は行政行為であり、民間の人が登録を受けるということに違和感が残る。
- 国の関与を一切やめるという前提なら登録制は抵触するという議論も成り立ちうるが、そういった前提は特に固まってはいないのではないか。もっと色々な観点から考えてよいのではないか。
- 従来は徹底した自由裁量であった。それを今回、登録制ということで、おそらくイギリスのチャリティ法の仕組みで、透明性の高い仕組みができている。これだけでも大進歩。判断主体を国以外にするというわけではない。国は一切関与しないということであれば、税優遇も一切しないというのが一番いい。そういう選択肢も考えられるが。
- 登録は行政行為。行政行為と民間の間に第三者機関という位置付けがあるのではないか。行政から離れた第三者機関が評価して認定する。その判断を税務当局が勘案して、課税するか否かの判断をする。法的にリンクはしないが、実質的にリンクするというのはあり得る。登録というのがないともたないというのも分かるが。
- 登録や申請に対する処分は、行政行為になる。届出と認可の中間くらい。何のために登録があるのかということになるが、行政機関が登録法人の情報を分かりやすく加工し、流通させるということで説明がつくか。何万件もある法人をプロの目で見てチェックしないといけなくなるが、そのような仕組みが行政コストを考えると機能するのか。登録制度でも要件を書ききれば届出制に近いものを作れるが。登録について撤回、取消しができるとなると認可に近いものとなるので、事務局のプランが一貫したスタンスに立っているのかという疑問がある。登録制といったも、具体的な仕組みによっては、許可制が形を変えたものに過ぎないということになってしまう。また登録の仕組みが人的物的に機能するか疑問。
- 税の問題は、あらゆる方面に配慮しているのであろうが、曖昧な表現になっている。抜本改革をやっているのだからもう少し決めてもよいのではないか。他の機関で検討しているからここで議論しないというのはおかしい。
第三者機関については、民間と違い難しい。企業の格付け機関は自然発生的に生まれてきて、やや行きすぎの面もあるように思うが、最後にマーケットが判断する。機関の構成を具体的に検討すべき。
また今頃「社会貢献性」というのは遅れているのではないか。民間会社でも今や社会貢献投資を行っている。「社会貢献」よりは「公益」の方がまだよいと思う。
「社会貢献」については、「公益」が使い古された言葉なのでこのようにしてみたが、適切な言葉があれば他にあるかなお検討する。)
- 公開されている税調の議事概要を読むと、SPCを使って公益法人がみんな租税回避行為をしているかのような発言がある。大多数の公益法人はそんなことを考えたこともなく、公益法人のイメージを著しく傷つけるものだということをこの場で述べておきたい。
- 米国の内国歳入法でも、英国のチャリティ法でも、行政に認められたものは寄付金の優遇まで認められるもの。寄付金の優遇措置まで認められている公益法人(特定公益増進法人)は我が国では千法人くらいしかない。今回の制度で議論している登録制は寄付金の優遇までは考えておらず法人税等の非課税だけなのであろうから、英米のケースとは次元が随分違うのではないか。
そう考えれば、「社会貢献性」の登録を行う機関は、英国チャリティ委員会の600人ほどは必要ないのではないか。- 「登録」とはいうものの、登録主体が相当強い権限を持っている。事後チェックをすること自体は別によいことであるが、すべからくその登録主体が行うのは相当行政負担ではないか。
基準を満たし続けているか登録主体がチェックし、満たしていなければ取消しということについては、違和感がある。相当ヘビーな措置であり、強力な機関でないとできない。- 一点問題提起したいのだが、登録の取消しの要件と更新する際の要件があまり異なっていると、取消し要件を満たしていなくても更新の際に緩やかな基準で更新を拒絶できるといった事態が生じてよろしくないのではないか。両者は併せて考えた方がよいのではないか。
(→ 現段階で方針が決まっているものではないが、「登録」という行政行為であってもヘビーな事後チェックを措置している例はいくつか存在するので、著しくバランスを欠いた案でもないと思われる。また、更新に当たり問題がある場合は、問題発生した時点で対処してしまえばよいのではないか。税制優遇が乗ることも希望的に考えると、登録したままではよくない。)
【「財団法人の抜本的改革の論点(その2)」(非営利財団制度等)について】
○資料の説明の後、以下のとおり議論を行った。
(→ 中間法人法制定の際は、特に準則財団については需要もなく必要もないという仕切りがされていたが、ある程度需要はあると整理し直す。)(→ 公益法人と中間法人を切り分けたとしても、現在の公益法人には同窓会的組織があるのだから、全く同じ問題が発生する。)
- 準則財団が脱税に使われるという問題は、そもそも公益法人と中間法人を切り分ける案(パターン2)であれば発生し得ない問題。私の案であれば残余財産分配の問題も発生しない。今回非営利財団を準則で作るのを認めるということだが、小手先の措置に過ぎない。非営利非公益財団は財産隠匿や税制規律の観点から問題があるからこそ、我が国ではこれまで公益法人でしか財団がなかったのである。改革で公益性を認められない財団の救済措置として非公益財団を設けないというのであれば、財団を社団に移行させてしまえばよいのではないか。
(→ 登録制度の登録を予定する形で設立することになるのではないか。つまり、出えん者が財団に登録を義務付けるようにすることが考えられる。この場合、一度、登録されて公益性のある財団となったものが登録から外れたとき、その財団をどういう風に観念するかが問題となる。非常に悩ましい。特に現在ある財団で登録基準を満たさないものをどうするかということについては難しい。)
- 現行の法人の移行問題と新制度のあり方の問題は分けて議論した方がよい。現行の財団を社団に移行させるというのは検討しうると思う。新制度においては、何で財団が必要かという点から詰めることが必要。同窓会・町内会的組織で寄付者意志をどこまで保護することが必要か、信託で十分ではないかといった議論もできる。
ちなみに中間法人の立法過程では、非公益財団形態のニーズが全くないとまでは結論は出ていないものと思う。
あと、ドイツやスイスでは社団法人は準則で設立できるが、財団法人は設立に当たり行政のチェックが必要となっている。この辺りなぜ違うのか調べてみるとよいのではないか。- 先程の発言のうち、現行法人からの移行の場合は確かにどの制度でも問題は発生するが、新制度において公益性を取り消された場合に限っては差が生じる。
- 登録制度の枠組みでいけば、法人の設立と登録との間に時間が空くので、財団においても非公益目的のものの設立を認めることが必要になる。財団の悪用というのは具体的にどのようなことなのか。非営利社団の基金についても同様に発生する問題ではないのか。財団制度固有の問題があるのなら、その悪用防止については、法律で手当てする必要がある。
- 非営利非公益財団の設立を認めた場合、公益性のある財団を設立するプロセスはどうなるのか。
(→ 新しい非営利法人もまた経済活動の主体であることを考えれば、一定の額が必要なのではないかと考えている。)
- 社会貢献のない財団の設立を認めた場合、その経済的効果はどうなるのか。社会貢献のない財団にどんどん財が流れていくのか、いかないのか。流れるなら問題があるのか、ないのか、検討しなければならない。
- NPO法人にとって問題があるとすれば、新しい非営利法人制度において基金の扱いをどうするかということが一番の問題である。現行の中間法人制度では社員が無限責任である場合には基金がいらない。新しい制度においては、社員のうち何人かは無限責任社員を置くこととし、一定以上の基金を持つ場合は無限責任社員がいなくてよい、というようにできないか。
(→ 営利法人の世界でも、資本金について見直すなどの会社制度の見直しをしているようである。)
- 既に1万近くあるNPO法人が、基金を積み立てられなければ解散させるというのはありえない。それなら公益法人なんかと一緒になりたくないと言う人が出てくる。
- 自主的に積み立てるのはよいことだが、基金を法人格取得の条件とすることは、NPO法人は反発する。一番の問題点となる。課税非課税の問題と関連するのかもしれないが。
(→ 次回開催日は未定)
文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当