1.日時:平成14年12月13日(金)10:00〜12:00
2.場所:内閣府309号特別会議室
3.懇談会出席者
入山映(笹川平和財団理事長)
太田達男((財)公益法人協会理事長)
中田裕康(一橋大学教授)
水口弘一(竃村総合研究所元社長)
山岡義典(NPO法人日本NPOセンター常務理事/法政大学教授)(50音順)加藤秀樹氏、神田秀樹氏、関幸子氏、中里実氏、橋本博之氏は欠席。
○移行について
(→ 移行について、一つの考え方として、新制度において公共性を認められない法人に移行する場合には、現行制度の公益性が免除されたと考え、あえて残余財産の分配禁止まで求める必要はないのではないかというものもあるが、このような考え方についてどのように考えるか。)
- 公益法人が税の優遇によって得た利得や寄付、出資金は公益目的に利用されるべきものであると考える。移行措置の実際としては、移行時に法人の正味(残余)財産について公益信託を設定させ、少なくとも一定期間に公益目的に使用させ、これを受け入れないのであれば社員に買い取らせたり類似目的の法人に寄附する等の方法は検討に値すると思う。
また、公共性を認められない法人への移行を認める条件として、解散時の残余財産の分配禁止を挙げられているが、実際には共益のために利用されてしまう可能性があって、実効性の観点から問題であり、さらに検討の必要があるのではないか。
さらに、公益法人を強制的に移行させることについては、本来の公益活動をきちんと行っているような法人にまで適用することは不適切ではないか。なお、移行を強制する期間については、1年にするか10年にするかにより、移行の手法も代わってくる問題であり重要である。- 公益信託の活用は移行後も公益性を保つための手段として、検討に値する。ただし、「公益」という概念が社会環境の流れの中で変質する場合はどうすればよいか。例えば、公益法人の中で互助会や共済事業を行っている法人について、新制度において公益性が否定された場合、この財産について公益信託とすることについては、会費を支払っている利用者に不利益を与えることにならないか。
- 公益性が認められない法人については、既にある営利転換指針による移行や中間法人への移行を検討すればよい。互助会などについては、法人と会員との関係に鑑みれば名目は「出資」だったとしても実質的には契約関係であり、会員を法人の債権者として考えればよいのではないか。
- 互助会的な法人については、一旦行政が設立許可をしたものについて、強制的に非営利法人に移行させることをどのように考えるのか。
- 公益性を喪失したものについて強制的に移行させてもよいかもしれない。行政代行的な法人については、行政改革の趣旨も踏まえ、本来あるべき姿にすればよい。しかし、私人の良いことをしたいというニーズを満たす手段としての本来的な公益法人について移行を強制することは、国家として強制的に個人の善意を取り上げてしまうこととなりかねない。
○その他(公益信託)について
- 公益目的のために寄付を受けた財産について、移行により社員が自由に使ってしまって良いということにはならない。収益事業収入による財産については、寄付等により形成された財産よりも緩く考えても良いかもしれないが、寄付や出資によるものについては厳しいしばりをかける必要がある。
- 移行時点で現在の公益法人制度として公益性があると判断されるものについては新制度において公共性が認められる法人に移行させればよい。また、移行に伴い、定款も変更されることが考えられるが、どの程度の変更までが許容されるのか。その際、現行ではギリギリのところで公益性が認められない法人なども、定款を変更して新しい公共性のある団体に転換していくようにするのが一番よい。制度が変わったら現行で認められる公益性を剥奪するというのは適当ではないのではないか。今日では公益性が認め難い公益法人などは現行制度の下で一定期間を設けて、その中で処理した上で移行させるべき。現行制度で処理できないからといって、移行時に処理してしまおうというのは不適切。
○前回の懇談会以降の資料修正を踏まえた上での全般的議論について
- 公益信託も新しい制度に平仄を合わせて改正していくべき。
(→ その場合どういう法的効果を認めることになるのか。)
- 「『公益性』という名前に隠れて、法人が公益だから非課税にしろと言うのは問題である。公益ということばを用いることに反対である。」という意見がある。このため、「公益性」に代えて「公共性」という新しい言葉を用いることについてどう考えるか。
- この際、手垢のついた「公益性」に代えて新しい言葉というのは一つの選択としてありうると思う。その判断について、税の観点だけなのか他の要素を入れるのかが問題。税の観点だけということもあり得るが、社会全体の効率性を考えた場合、法人法制で別途仕組んだ方がいい。このことについては効率性の面と理念の面と2つの面から理由付けられると思う。
まず効率性の面であるが、税制だけで仕組むとコストがかかることと非常に限られた法人しか対象にならない可能性がある。また、寄附を選ぶ対象として何か決めておいた方がよいと思うし、そのためにガバナンスやディスクロージャーを義務付ければ安心である。さらに、単に税優遇だけとすると公益的活動の推進という側面が矮小化する懸念があり、法人法制で仕組めば制度的にいいことをしたいという気持ちを高めることができるのではないか。
理念としても、個人の幸福追求権という権利を国家として大切にして支援するといったこともあるのではないか。(→ 公益認定は明確な基準に基づいて行う。アメリカと比較して日本の課税庁が厳し過ぎると決めてしまうのは、如何か。論点整理のパターン1アのように、税法で全て仕組む場合、税の優遇を受ける法人の基準を税法で全て書ききることができるのか、という疑問はある。)
- 名称独占は風当たりが強そうだが、国民に対してしっかりしたガバナンスやディスクロージャーをやっているということを示すという点では効率性の観点から意味があるのではないか。
- 改革のパターンとして、非営利法人を準則設立とした上で、課税上の優遇措置は課税庁が認定する案は、公益税制独占主義につながり反対。準則設立の法人を公益性の法人と中間法人的なものの2制度設けて、前者は事後チェックを厳しくして税優遇措置を付与する案がよいと思う。
(→ 公益法人とそれ以外の非営利法人とを分け、準則で公益法人を設立できるという考え方において、公益性とそうでないものを分ける基準は申請がベースになるのか。)
- イギリスでは、チャリティ委員会が公益性を認定し、その際、一定の場合には課税庁の意見を聞くというような仕組みであるが、こうした仕組みが考えられないか。
(→ ここで想定している立入検査は最終的な処分をするにあたっての資料収集である。日常的に監督を行うというような意味合いではない。まさに事後に行うもの。準則で公益の類型を作るなら、裁判所がやることになる。ここでは、仮にどこかの行政庁等が行うとする場合に、最終手段として、立入検査等の手法を想定して書いている。)
- 基準は全て法律に書く。基準に合致しているものは公益法人になる。法体系が2つになる。同じ法律の別の章ということもあり得るが。
- どの法人も公益法人になりたいと言うのではないか。
- 公益性のある法人には厳しい規律をかける。厳しい規定を定款におく。準則だと、定款で規定するほかない。
- 準則で法人格を取得できるようにすると、常に僭称する法人は出てくる。法人類型として、専ら関係者の福利厚生を行うものとそれ以外のもので区別するとする。非営利性の定義は難しいが、営利配分しないこと、と定款で明記するだけでいいのか。業界団体のような団体は関係者の福利厚生以外のことを1%でも行っていればいいのか、50%なのか。また、関係者の定義は何か。専ら関係者の福利厚生を行うものとそれ以外のものの定義を詰めていけば、2つの法人の差がどのようなものかはおのずと明確になってくる。その上で、非営利性を判断するための規律として、内部留保を何年分以上ためてはいけないとか、give awayの原則などを仕組むことについては、法人法制上仕組むのか、税法上仕組むのかが課題。
認定を行う「主体」については一体どこを想定しているのか。課税庁ならいいが、他の行政庁が改善命令や立入検査を行うのは賛成できない。規律に違反した際に誰が告発するか、裁判所の権限を決めておくだけでいい。行政がそれ以上、関与する必要はない。(→ 法人には法人税を納税する義務がまず第一にあり、免税を受けるためにはそれを認定する仕組みが必要。営利法人等他の法人類型との横並びの点から考えれば、関係者に告発義務を課して裁判所の判断を仰ぐというしくみだけでは免税の要件としては足りない。少なくとも現行の法人税法の基本的な考え方は、所得があるところに課税するということであり、法人が非営利活動を行おうがどうであろうが、税は取るという建前がまず大きくあって、その原則からスタートした上でどのような法制度を作れるのかを議論すべきなのではないか。)
- 基準を満たさなくなった場合は、満たしていないことを告発するよう理事等に義務を課す。数年続いたら、公益性のある法人にはいられなくなるようにし、あとは裁判所の判断を仰ぐということでいいのではないか。
(→ 税で仕組んだ時に、厳しいディスクローズやガバナンスを税法上に書けるのかという問題があろう。)
- 準則の場合に法人が言っている内容と実態が乖離していることをどう考えるかという話と実態に即して税をまけるという話は別の話である。公益性を唱えながら、活動実態が伴っていない場合に、それをどこが判断するかというと行政庁ではないのではないか。
(→ 労働組合は行政庁の認証がからんでいる。公益法人は業務の幅も広い。労働組合やマンション管理組合は事業の内容が非常に限られている。労働組合が準則で非課税となっているから公益法人も、というのでは説明がつかないのではないか。税の優遇を受けるためには何らかのチェックを受けるべき。)
- 準則で自ら名乗った公益法人を非課税にすることについて、国民の合意が得られるのか、ということについては異議がある。対価性のない収入も課税するということか。労働組合やマンション管理組合は準則で非課税だが、それはどうして認められているのか。
(→ 免税を受けるためにはそれを認定する仕組みが必要。仮に課税庁にそれをやらせる、ということであれば、世のため人のために役立っているということを課税庁において判断する以外にないのではないか。
- ある一定の要件を満たした非営利法人は税優遇があるということはあるが、それに適合しているのか否かをチェックする主体が何かということに尽きるのか。活動の実態をチェックすることを課税庁以外にできる機関があるのか。今の公益法人について行政庁は見れていない。準則であってもディスクロージャーを厳格に求める等の縛りをたくさん掛けて、厳しく見ればいいのではないか。
現行の税法では、税の優遇を講ずるに当たっての必要な担保措置をみたしているかどうか、他の法人との間で十分な担保措置が仕組めているかどうかという点が重要なポイント。何らかのコミットがあるから税をまけているというところが現行の税法の哲学である。)(→「公共」はあくまで仮置きの言葉であり、社会貢献というのはわかりやすい気がする。)
- 公益法人改革として今整理しようとしていることは、事前チェックを止めて事後チェックにするという方向である。事後的に僭称が発覚した法人に対しては懲罰的に課税する制度を持ち込んでもよい。そこまで事後チェックを厳しくかければ問題にはならないのではないか。アメリカの大学のように、入口は緩くして、入ってからの縛りを厳しくかけて、ふさわしくない者は後でお引き取りいただく、という方法が望ましい。
- 入口での指導監督をうるさくやってもこの始末だから、この際新たな制度を仕組むにあたっては設立は簡便にして法人の活動が能書きどおりになっているか見ることにしよう、定款に謳っている内容と異なる場合、これをきちんとしましょうということになる。それにはインターネットによるディスクロージャーを行うことが有効。その上で実態判断は課税庁が行うことになるのではないか。行政庁が実態と能書きの乖離をきちんと見るというのは幻想に近いのではないか。
- 準則により非課税というのでは国民は疑問をぬぐいきれない。入口で緩くして基準に該当するかを見るといっても、何らかの資格を見る以上、日常的なディスクロによる監視に加え、何かあった時に報告徴収をして取消に至るという手段は必要である。他方、準則で非課税は問題であるが、免税ということであれば、定款による一定の記載がなされている団体は収益事業以外は免税という考え方もあるのではないか。
- NPO法人で収支報告書の提出義務である年間収入額8000万円以上を超えている法人等あまりない。免税となった法人は500万円以上は出すということ等考えられる。
- 新制度においては「公益」という言葉は使わない方が良いと思う。ただ、「公共」という言葉にすると、より役所寄りのイメージが強い。
NPO法の第1条では、「市民が行う自由な社会貢献活動」とうたっている。「公共」より「社会貢献性のある活動」といった表現の方がよいのではないか。
(→ 今後の調整により、また改定される可能性があることを申し添えたい。今後、検討し議論をまとめたい。)(→ 年内の懇談会は、今回で終了。年明けも引き続き議論いただくこととなった。)
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)