1.日時:平成14年12月10日(火)10:00〜12:00
2.場所:内閣府309号特別会議室
3.懇談会出席者
入山映(笹川平和財団理事長)
太田達男((財)公益法人協会理事長)
加藤秀樹(構想日本代表)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネージャー)
中里実(東京大学教授)
中田裕康(一橋大学教授)
橋本博之(立教大学教授)
水口弘一((株)野村総合研究所元社長)(50音順)神田秀樹氏、山岡義典氏は欠席。
4.議事概要
事務局から、公益法人制度の抜本的改革の基本方向についてペーパーが提示され、フリートーキングを行った。
(→特別法の法人は視野に入れる必要はないと考えているわけではないが、まず形を整えた上でそれとの関係で考えるべきと理解している。)
- 事務局の考え方について2点問題がある。第1点目は、公益法人、NPO法人、中間法人を一括りにすることについてである。公益法人とNPO法人は類似性があるので、一括りにしても問題ないが、中間法人と公益法人には相違点が多い。公益法人は公益活動を行う義務があり、共益法人には共益に活動する義務があり、根本が違う。公益法人は残余財産の私的還流が認められないが、中間法人は残余財産の私的還流が認められる。また、ガバナンス、コンプライアンス、ディスクロージャーといった点において公益法人は開かれた組織であるが、共益法人は特定の構成員を対象とする閉鎖的な組織である。さらに、中間法人の社員の責任については、無限責任を基本にしており、一部を有限責任にするため基金制度を設けている。公益法人の場合、社員を無限責任とすることなど考えられない。また、社会福祉法人等の特別法により設立される法人の基本法は民法であり、非営利法人に一括りにすると、公益に準拠する基本法がなくなってしまう。近い将来、広義の公益法人制度をどのように仕組むかを検討することも考えると今のままでは検討が不十分である。公益性の柔軟な見直しに関しては、要件を満たさない法人は、法人格を失わせ、けじめをつけさせることも必要である。引続き活動を行いたいのであれば一旦解散させ、残余財産を公益に寄付させてから、あらためて非営利かつ非公益の法人を設立すればよい。そのような法人を財産を持ったまま非営利法人として存続させるのはかえってよくない。こういう話は、より専門的に別途議論すべき。
第2点目は、財団法人のみ行政庁の関与が必要であるという理屈が理解できない。行政庁の関与が財団法人の設立時に必要であるとするならば、非営利法人に一括りにして準則にする理屈が成り立たない。法制上、財団法人に必要とされるガバナンス規定等を十分に設ければ良いのではないか。- 非営利法人に一括りにして準則主義という点については反対しない。財団法人に行政庁が一定の関与をすることについては、論理矛盾である。
- 今までは公益法人の設立のハードルが高かった。民意による小さな公益活動する組織が設立しやすい制度にすべき。こういう観点から、財団のみ行政庁の関与があるとするのは問題。
- 公益でない財団とはどのようなものを想定しているのか。
- 財団として資産を作って、同窓会のために使うのは一例。ただし、法制上認めるのは問題ではあるが。
- 設立準則というならば社団と財団を分ける必要はない。どんなものが出てくるかはわからないが、だからといってアプリオリに否定する必要もないのではないか。
- その案にした場合、法制度として成り立つのか。そのような制度では財団が相続税のがれに利用されてしまう。何を念頭に置いて制度を仕組むか検討しなければならない。何だって良いという制度では乱用のおそれが大きい。
- 財団については、事務局のペーパーにあるように行政庁の一定の関与を設けるかその要否を検討するということであって、現段階で確定するというものではない。検討課題違いは3つある。1つは、活動実態が社団と財団とではあまり変わらないという点に着目するのか、濫用の可能性の違いに着目するのかのどちらに重点を置くかである。これまでの議論には、すれ違いが生じているのではないか。2つ目は、社団は結社の自由や個人の自由な活動という理念が背後にあるのに対して、財団はそれが無い。3つ目は、財団と公益信託との近接性から、公益信託は主務官庁制の下にあるということとの関係を整理しなければならない。さらに、財団の場合、財産が固定化されて不動産が動かなくなるということもある。別に扱うか、一本化するのか、まずは要否を検討するということではないか。
- 行政庁が関与しないと公益性を認めないというのは問題である。
- 濫用のおそれについて、それらを排除するための判断をどこかが行うべき。
- 登記の段階で排除しようというのは準則ではない。僭称して登記する可能性はあるのであって、それを誰かが関与しなければならないというのは、準則主義とは言わない。一定の実績をみた上で税優遇に値することや、非営利法人を名乗らせるに値すると判断することは別の話であり、設立時に行政は関与する必要はない。
- 現行制度の弊害を考えると設立の段階でのチェックはやめてもらいたい。
- 法律上に要件が書いてあり、裁判所が事前にチェックするというのでも今とは全然違う。
- 役所が公益性の判断を行わないという理念を基本法で打ち立てて、それを一貫すべき。濫用の話は別の方法で排除出来るのではないか。社団と財団は今の公益法人制度では同じようなものだが、会社と対比すると、社団は人のかたまりであり、財団は、財のかたまりで扱いが違うが、後者のようなものがあってもいいのではないか。公益性の認定と濫用のチェックの問題は違うのであって、濫用のチェックについては法人を作る段階ではわからないのではないか。作るときは準則で濫用の歯止めを別途作るということではないか。
- 財団を作る目的が明確でないと問題である。誰のものでもない財産について、法人を作った瞬間に相続税の対象とならない。そのような法人を作ること自体が濫用である。
- 法人の設立の要件について法律上明確に規定できれば、行政庁の裁量が狭いものとなるのではないか。
- 法律論をするとどうしてもワーストケースが先に出てくる。公益法人を作ろうという方に力点をおくべきではないか。ただし濫用防止についての仕組みも必要。
- 私人の公益的活動を国家がどれだけ後押しするかという理念の問題と立法技術の問題がある。国家が公益的活動を税以外でも何らかの後押しを行うことをよしとするのかやめるかの対立でないか。民法の中で何か書くべきというのは技術の問題である。
- 民法第34条を廃止すると特別法の法人は親元がなくなるが、それとのバランスはどう考えるのか。特別法の法人が認可のままでよいのか、どういう段取りなのか説明しないとわかりにくい。
(→公益性を判断する際には主務官庁の縦割りや裁量性の弊害は排除する。このため、事業官庁ごとに認定を行うことや、明確な基準を設けないということはなくなる。判断主体は課税庁、それ以外の行政機関、第3者機関のいずれかである。)
- 公益性のある法人と非営利法人との間には法律上重要な相違がある。類似している点に着目するか、相違点に着目するかの問題。公益性を付与するためにはその基準が必要であって、例えば財産の私的還流や理事の関与などがある。私は相違点の方が多いと思うが、2階建てにする(非営利法人類型をつくって、その上で公益性の判断を行う)のと2つの法人類型に分けるのではそんなに変わらないかもしれない。しかし、これは、相当難しい法律問題である。議論の結果、中立的な意見としてまとめるのなら納得できるが、今方向性を決めるのはどうか。
- 方向としては、非営利法人を一元化するということでよいと思う。しかし、公益法人と中間法人の相違点に着目すれば、2つの法人類型が必要となるという考え方の指摘については、なお考慮が必要である。財団のところは、行政の関与が残るという考え方もあるが、改革は、許可主義から準則主義の導入、事前チェックから事後チェックへの転換で検討している。社団と財団のあり方については、今般の改革の趣旨を尊重しつつ深堀りして検討してはどうか。
- 事前チェックや指導監督等の仕組みから事後チェックに移ることは大きな制度改革の流れ。設立時ではなく、事後的に措置をするということにすればよいのではないか。
- 財団に対して、特別なガバナンスを定めさせてもよいのではないか。
- 公益性の付与にあたっては、税法上で仕組むか、法人制度上仕組むかについて検討されているが、理屈抜きにして税法上で公益性を付与する仕組みを日本で導入すべきでないと申し上げる。その理由は、公益性について税が要件を定めることについては違和感があること、さらに、公益性を有する法人の組織要件やガバナンスを税法で決めることは不可能であると考えるからである。
- 課税の優遇条件は税法でしか書けないのではないか。ただし、認定を課税庁に丸投げされて裁量のある判断をさせられるのは厳しい。課税に関係するポイントについては課税庁で見ることはできるが、法人格濫用のおそれの有無等の判断については、法人制度上でやってもらった方がソフトでよい。そのような点については、税法では要件のかけようもないし、課税庁もチェックはできない。法人制度でスクリーニングをしてもらったものに対して、課税庁が判断する方がよいのではないか。
- 法人制度として、公益性認定について触れなくてもよいのか。
- アメリカでは、私法を無視して課税制度を作っているが、日本では、法人制度で公益認定という形で、税優遇の候補を絞っておいてもらうのがよい。特に財団は然り。
- 理念として、公益性認定に対して、税優遇以外のメリットを付与するか否かという問題を検討しなければならない。世間的に見ても、メリットを税優遇のみとすることについては、割り切れているかどうか。仮に割り切れているというのであれば、制度的には課税庁に公益性判断を委ねることになる。ただし、この場合は、課税庁の人的資源の問題があるとともに、課税庁が公益性の判断を行うことに伴い、法人の活動が萎縮してしまうのではないかという懸念がある。他方、制度を3階建てにすること(非営利法人について公益性認定を行い、さらに税優遇を行うための判断を行う)には、2重の手間が生ずるのではないかという問題があり、その場合、公益性認定と税優遇の判断をリンクさせることも検討すべき。英国のように、審査の際、認定部局が課税庁の意見を聞くようなこともありうる。
- NPO法人制度のように、極めてチェック機能が働きにくい認証主義が導入されたことにより、一見して不適切な事業を行っている法人についてまで税優遇が与えられてしまう可能性が生じている。自由な活動を行う法人類型があってもよいとは思うが、税優遇については、慎重に判断されるべき。なお、財団については、2階(公益)から上の部分であると考える。
- 準則主義である以上、設立時に法人の適不適を判断することはできない。事後的に何らかの公権力により是正されるほかないが、そこは課税庁に頑張ってもらうしかない。課税庁以外の行政庁に、法人の実績を判断することはできない。
- 特別の優遇を与える対象については、適切な要件を定める必要がある。
- 税優遇の要件は非営利かつ共益ではないという要件ではだめか。
- 税優遇の要件は非営利かつ共益ではない要件では不十分。また、公益性認定のメリットは税優遇だけに限られないのかもしれない。
- 公益性認定について組織要件などの基本的な部分は私法、その上で税優遇要件については税法で規定するのではないか。
- 「非営利」については定義する必要がある。共益ではないことに加え、本来事業の範囲10項目ぐらいを決めればよい。その上で、非営利法人を僭称しているか否かについては、課税庁が判断し、改善しないものについては取りつぶすこととして、告発義務を関係者に義務付ければよいのではないか。ただし、その判断については、課税庁以外の行政官庁では、約3万法人をチェックすることも期待できないし、すべきでもない。
- 非営利法人で一元化し、共益を排除して税優遇を与えるということは、一種の公益性の定義をしていることで、公益法人とそうでない法人の2つの類型を作ることと同義ではないか。
- 非営利法人で共益でない者は除くという意見については、税優遇を受ける法人と受けない法人の2つの類型を作るということではないか。法人制度に公益性を盛り込むという意見については、税優遇以外に公益性認定をする意義を認めるか認めないかということだが、それは、公益性について国家がコミットするしかないという問題になるということではないか。
- 法律の中で、公益性のある法人について規律を設ける必要がある。税法だけでそのような規律を設けることに違和感がある。また、公益法人は寄附者からの財産により事業を運営することに鑑みれば、法人の運営が厳しくなるべきと考えている。事業の中身については、共益を排除するということで明確になるかもしれないが、こぼれてしまう法人が多くなることも考えられる。イギリスのチャリティ法改革案やアメリカでも細かく規定している。
- 公益性認定による効果、実益については、社会に対するPR効果により、寄附金が集めやすくなるという実務上の効果がある。また、税優遇を受ける候補になることができるというのも効果として上げられる。
- 課税庁が公益性の判断をすることには消極的である。公益性の認定の法的効果は名称独占(登記も含む)と税にアプライできることの2つが考えられる。国家のお墨付きをどう評価するのかという問題はあるが、この2つ以外に法的効果はあるか。
- 法的効果は国家のお墨付きではない。準則で設立し、自ら厳しい運営を行い、それによって寄附を集める。
- 今までは行政に対してのみ説明責任があった。これからは市民に対する説明責任が必要である。
- 法律上国がお墨付きを与えるという制度ではなく、市民が評価するだけであれば名称独占の法的効果はなく、法的効果は税だけである。
- 活動実績を誰が評価するかということである。税以外に他の行政機関の関与はいらない。
- 行政庁が公益を判断する仕組みを法人制度上行い、さらに課税庁が判断するのであれば、今と実質上同じである。税の優遇を受けたいところが課税庁にチェックしてもらえばいい。公益性の判断は市民に問うべき。団体の活動実績をディスクローズして、市民にロイヤリティーをつけてもらえばよい。公益性の判断主体を明確にすべき。
- 課税庁が判断する場合、認定が厳しくなるのではないか、また法人が認定を受けたいために萎縮してしまうのではないか、課税庁が判断を行うための人員等、コストがかかるという問題が考えられる。
- 課税庁の裁定は裁判で争う道が残されている。課税庁の判断を受けて税を払う仕組みは現在でもすでにある。新しい公益の認定を行うことにより課税庁の事務量が過重されたり軽減されたりすることはない。今よりディスクローズすることによりもっと多くの市民の目にさらされ、市民によるチェック機能も働くことになる。
- 公益という枠組みを法人法制上、仕組むべきである。法人制度上、公益という枠組みを作っても、法人は準則で設立できるのだから、今と同じではない。税は法人制度と切り離して別途検討すべき。
- 今までの公益法人の概念を壊すことが重要。今までの公益法人の既得権をなくし、公益法人を名乗らなくても、公益活動を行うことができることが重要である。税の恩典については、課税庁が認定すればいい。あとは国民が評価すればいい。
- 設立すること自体のチェックをすることより事後のチェックを行う方が重要。税だけでチェックしようとすると困難なケースもある。活動のチェックは法人法制でやってほしい。
- 行政法の世界では、アカンタビリティーや透明性を高めることによりトレイサビリティー(追跡可能性)を高めることが重要と言われている。ガバナンスがきつい類型に財産をおくようにすれば、トレイサビリティーが高まるため、その財がより適正に使われる可能性が高まる。それに税の要件を満たすだけの規律がかかればよりその可能性が高まる。名称独占ということよりも国として「民間非営利活動を現在の社会・経済システムの中で積極的に位置付ける」のだから、ガバナンス等がしっかりしている法人類型がある方がいいのではないか。
- 移行の問題については、移行するという法人に対し、インセンティブを与えなくてもいいのか。今いる法人をどうするのかは最大の問題である。今いる法人を整理しないといけない。
(→次回は、12月13日(金)10時から、引き続き検討を行うこととなった。)
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)