1.日時:平成14年11月28日(木)16:00〜18:30
2.場所:内閣府309号特別会議室
3.懇談会出席者
入山映(笹川平和財団理事長)
太田達男((財)公益法人協会理事長)
神田秀樹(東京大学教授)
関幸子(鰍ワちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネージャー)
中里実(東京大学教授)
橋本博之(立教大学教授)
水口弘一(竃村総合研究所元社長)(50音順)加藤秀樹氏、中田裕康氏、山岡義典氏は欠席。
4.議事概要
○ 移行及び税制につき、事務局資料説明の後、以下のとおり議論を行った。
【移行】
(→ 準則主義で残余財産分配禁止規定を設ける場合、実効性があるかどうかという問題が残る。現行制度は、官庁の許可制下にあるから、寄付者の意思が保護されている。現行の規律との兼合いから、どのように制度を仕組むかが問題である。)
- 移行については、公益性を誰かが認定・判断するということが暗黙の前提となってしまっているのではないか。そもそも、「公益か公益でないか」を議論しない、ということであれば、移行の問題は出てこないはず。「公益」についてどのように考えるのかを先に議論しなければ、移行なり税制なりの検討をしても意味はないのではないか。
- 今まで公益法人だった法人が新制度において公益性がなくなった場合、民法の原則から言えば解散になるのが道理。しかし、それではいくら何でもあんまりだから、新制度の下においても旧来の公益法人の財産を、何らかの形で承継するということもありうるのではないか。
- 民法第34条を根拠に法人を設立し、主務官庁の許可制の下、公益活動していた法人が、法律が変わったからといって、国が公益法人に対し非営利法人へ移行すべきだと言って、一旦解散手続きを踏ませ、残余財産を類似団体へ寄付又は国庫帰属等と今と同じ手続きで行うことが適当なのか。
- そもそも法人に移行を強制してよいのかという指摘がある。既存のものには手をつけないという考え方もあるが、他方、大きな制度改革の流れとしては、移行させるべき。
- 公益法人から公益法人への移行はできるであろうが、公益法人から非公益法人への移行については、法律が変わるからといって解散させるのはあんまりではないか。そのため、移行時の条件をどのように設定するかが問題となる。現行の手続きにおいては、公益法人が解散する場合には主務官庁の認可が必要であるとすれば、組織変更の場合にも、主務官庁の認可を検討すべきではないか。また、残余財産分配禁止規定が実効性が無いという指摘もあるが、準則で設立され、民事の範囲であれば、残余財産の分配禁止規定の規律に反すれば、制度上無効となる。議論すべきは、残余財産分配禁止を条件にすれば法人格の承継を認めてもよいかどうかということではないか。実務の話は別に考えて、法人制度を変える場合、組織変更規定を設けるのは礼儀であり、残余財産分配禁止程度の規律で組織変更による移行を認めてあげるくらいしないといけない。
- 移行に当たって財産を全て処分させるというのでは、法律上理屈が通ったとしても、社会通念上あまりよくない。憲法違反でなければ財産を全て処分させることもできるかもしれないが、常識的に考えれば不適切ではないか。
(→ 中間法人の残余財産は公益法人の規律と同じく、最終的には国庫帰属となっているはず。残余財産の分配禁止については、定款に記載することで問題ないのではないか。)
- 残余財産分配を禁止する旨を定款に記載すれば、実効力はあるのではないか。ただし、公益法人から新制度における非営利法人に転換した場合、法人の活動中に公益でないことに財産が使われる可能性はやはり残る。
- 寄付者の意思を徹底させるのであれば、移行先が公益性が認定された法人以外の場合は、財産を全部取り上げることになるが、その点について、残余財産分配禁止規定を設けて移行を認める場合は、現行制度における主務官庁が認可するかたちで割切るしかないのではないか。
- 残余財産分配禁止のみの規律でよいとの割切りもあるのではないか。他方、営利法人の場合は、法人の目的から、残余財産分配を禁止することは無効となる。非営利法人についても、この規律を設けることができるかどうかについては検討が必要。
(→ 公益法人から新しい非営利法人への移行措置としては、残余財産の分配禁止など、一定の条件を付して組織変更を認めることについて検討することで良いということでよろしいのではないか。(→特に異論はなし。))
- 税の恩典を受けて貯まった財産をそのまま移行させることについては、理屈が立たない。公益法人が公益目的に活動しているがために税の恩典を与えたのだから、そのまま承継を認めることは慎重に検討しなければならない。
- これまで公益法人として認めてきた法人がこれまでの事業を行い続ける限りにおいては、非営利法人へ移行するとしても、税の恩典を自由に使用してもよいのではないか。
- これまで、法人の形式に着目して税優遇が与えられてきたが、新しい制度において、法人の実態が変わらないからといって、これまでの税の恩典を自由に処分してもよいということにはならないのではないか。
- 国が設立許可を与えたのに、今更、遡って課税をするのは問題である。
- 現行の公益法人から新法人への移行の出口を主務官庁の許可とすることにより、寄附者等の意思の尊重については、寄附者等に代わって国が判断するものと見なすことができるのではないか。
- 営利法人への移行は、法人の自由意志に任せるという考えか。この場合、現行制度においては、営利転換指針により当然解散することとなるが、その際は、主務官庁が現行の指導監督により対応すれば良い。
- 新制度において将来公益法人になりたいものは定款の規定や財務構造を変えて、新公益法人に合致する場合は公益が認められるようにすべき。
【税制】
- 税については、法人の問題と寄附の問題があって、切り離して考えるべき。寄附税制については、ある程度の税優遇を認めることには賛成だが、寄附文化奨励を前面に出しすぎるのは問題。法人本体への課税については、法人の活動によって利益が出るのであれば、一律に非課税とするのは、準則主義を原則とした場合、他の類型の法人と比べて公平上問題。収益事業にかかる税率は揃えて、現在課税対象となる33業種も今よりは広げるべきではないか。また、会費とかまでは課税できないまでも何らかの恩典を受ける以上青色申告と同じようにガラス張りの経理とかが必要ではないか。これに加えて、乱用防止規定を設ければよい。
- 現実の話として、法人税法の「公益法人等」にはいろいろあるが、当該法人が適切な活動をしているかどうかは、国が認証しているかどうかは関係ないのではないか。ディスクロージャーとかして証明すれば済むのではないか。人格のない社団や準則主義で設立される労働組合等も「公益法人等」に入っているし、納得できない。確かに収益事業に対する税率は普通法人並があり得るかもしれないが、その場合はみなし寄附の損金算入限度額を50%とかに引き上げ課税のバランスに配慮すべき。
- 実質を見るのか形式を見るのか。形式で判断している現在の状態が実質に合っていないというのであれば、一旦元に戻って検討してはどうか。別表第ニの見直しを考えるとしても、これまでの公益法人課税の考え方や理屈を踏まえて議論をするべきである。今までが非課税だからとか、理屈から見て緩いものが含まれているから準則主義で非課税、というだけではもたない。
- 諸外国の例を見ても法人格の取得と税の優遇とは別々に仕組まれているところが多い。事前の規制が良くないからということから始まると、広く法人格を与えて税は別の話という方がいいのではないか。課税庁が税を見るよりは新しく制度を仕組むときに、法人制度の中に公益性の判断を踏まえた方がいい。
- 法人税の課税は、法人の実態を見て判断すべきものだが、現実問題としては、全ての法人の実態を把握できるわけではない。従来の税制は別表第二で形式により 判断してきたが、その前提となる制度が変わることにより、公益法人に対して何に着目して税優遇を行うかについて今後どのように考えていくかが問題である。
- 準則主義により法人を設立することが可能となり、法人運営に対する行政から規制が無くなるのであれば、税優遇にはこだわらない。営利法人でも公益サービスはできる。ただし、現実問題として、ほとんどの公益事業は収益の上がるものではないため、税優遇にこだわる必要はない。(非営利公益法人についても)普通法人と同様に申告という形で課税し、営利事業と本来の公益事業を課税庁に説明した上で免税を受けるとする方が、制度としてシンプルであり、適当ではないか。
- 新制度における税制の考え方は、「非営利法人の支援を目的とする」ということに改めて欲しい。「非営利」「担税力」という点に着目し、本来事業について考えてみると、「非営利」かつ「専ら会員の利益を図るものではない」というものを非課税とすることは可能ではないか。
- 「非営利」をどのように定義するかという問題だが、フリンジベネフィット等による流出の問題については、そのような行為を営利行為と課税庁が判断するしかない。それでも解決しないのであれば、裁判で解決すればよいのではないか。
- 内部留保については、法人の業態を考えずに、一律に内部留保を蓄積することを否定することは問題。法人に一定額以上内部留保を蓄積した場合はそれを放出させる旨義務付けるとか、内部留保を事業費の数年分に限るなどの規制の方法はあるのではないか。その上で「非営利性」について明確に定義することにより、問題は解決する。
- 内部留保の問題は、誰のものでもない財産が増えていき、それが非課税となってしまうということである。
- 相続税が絡むので、内部留保の問題は注意が必要である。不正行為さえなければよいが、徴税の論理からすると問題である。
- 内部留保についてはいろいろなしばり方があるが、助成型法人と事業型法人を一律に扱うべきではないのではないか。同様に、財団と社団では取扱いが異なるべき ではないのか。
- 非営利性について、課税庁がフリーハンドで判断するのは困難ではないか。
- 寄付税制については、NPO法人や特定公益増進法人の制度を見直し、明確な基準を設定し国税庁が判断することでよいのではないか。
- 法人が1年間にどのような事業を行ったかという結果に対し、税優遇の判断を行うとしてもよいのではないか。仮に要件を満たしていなければ、遡って課税すればよいのではないか。
- 現行制度では、民法に基づく指導監督により、行政庁が公益法人を縛っていたから説明がついていたが、準則主義によって設立される法人ということとなると、非課税を通せるかは疑問がある。
- 公益性認定と税優遇を連動させた上で、必要な要件を組織要件として私法で規定することにより制度上担保すれば十分で、行政のチェックは不要。そして、法人に税優遇の判断に資料を提出させ、翌年度以降にこれを国税庁がチェックすればよいのではないか。
- 公益性認定と税優遇は連動しない方がよいのではないか。連動させると、法人は行政の事前チェック等の規制を受けることとなり、準則主義に転換する意義が薄れるのではないか。
- 税優遇については、公益性と連動すべきであり、税優遇の要件と公益性の要件は一致するのではないか。具体的には、法人税法の別表第二に準則主義で設立される新公益法人を盛り込めばよいのではないか。
- 準則主義で設立される法人を別表第二に入れることはできない。税優遇を与えるためには、何らかの認定が必要であり、どのような手続きを経るかということが問題ではないか。
- 準則主義で設立される法人に、無条件に税優遇を与えることは不適切である。一方、税優遇を与える法人の状況については、税務署がチェックするのではないか。
- 行政がチェックするという仕組みは不適切である。「非営利」かつ「担税力」に着目して課税することは、挙証責任が法人にあることが担保できればよいのか。
- 非営利法人を僭称するものについては、裁判所でチェックすればよいのではないか。
- 行政執行が容易となるという観点からすれば、例えば内閣府が税優遇の候補法人を公益性認定でセレクトし、課税庁のチェックを受けた上で税優遇を与えるという方法もあるのではないか。
(→ 次回の懇談会は、12月10日(火)10:00〜12:00に開催予定(テーマは骨子案の検討)。)
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)