1.日時:平成14年11月22日(金)10:00〜12:00
2.場所:内閣府309号特別会議室
3.懇談会出席者
入山映(笹川平和財団理事長)
太田達男((財)公益法人協会理事長)
加藤秀樹(構想日本代表)
神田秀樹(東京大学教授)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネージャー)
中里実(東京大学教授)
中田裕康(一橋大学教授)
橋本博之(立教大学教授)
水口弘一(竃村総合研究所元社長)(50音順)山岡義典氏は欠席。
4.議事概要
○ 藤本内閣府国民生活局市民活動促進課長よりNPO法人制度の現状につき以下のとおり説明ののち、議論を行った。
【NPO法人制度】
(→ NPO法には、次の3つの特徴がある。認証主義を採用していること、情報公開を前提とした市民による監督(選択と監視)、最後の是正手段としての所轄庁の監督(この監督を行うには相当なハードルがある。)である。現行の認証制度については、平成11年度にアンケートを取ったが、団体側は6割が現状を肯定、これに対し行政側は8割が否定的で準則主義への移行を目指すべきとの意見だった。理由としては、行政庁の認証を受けたことをもって信用力を与えられているかのような悪用が懸念されること、認証の基準の中には不明確な部分もあることなどが挙げられている。活動分野の12分野の該当性は不明確であるし、不特定多数の利益とあるがその判断は難しい。「主たる目的」とあるが、何をもって「主たる」と判断するのか。また、「営利を目的としない」とあるが、書面での審査だけでどこまで判断できるのか。
悪用の例としては、名刺に大きく「内閣総理大臣認証」と書いたりして認証を過度の宣伝材料にしているようなものもある。実際、内閣府に、「内閣総理大臣認証とあるが、信用できるのか」という問い合わせがよく来る。形式審査をしているのであって、活動の実態まで認証しているわけではないと説明している。
以上を踏まえると、認証主義は中途半端なところがあり、実態審査までできるような許可なり認可なりに変えるか、あるいは準則主義に変えた方が良いのではないかと思う。改革の方向として許可に変えるということではないのであれば、準則主義にするのではないか。また、評価が重要であると考えている。評価には自己評価、第三者評価とある。NPO法人や中間支援組織などの民間機関が自発的に、積極的に取り組むことが期待されるが、その前提として情報公開が重要である。実効性を高めるためインターネット化を進めることや、現在、自由な様式を統一化することを考えていくことも重要であろう。)(→ 1点目の「主たる」の判断は難しい。「従たる」であれば特定非営利活動以外の事業も可能なので、それが悪用されるケースもあることから判断が難しい。宗教や政治を主たる目的としてはやっていない点については、確認書の提出が義務付けられているので、それが判断材料となる。また2点目の評価の話については、経産省の調査ではNPO法人自身も46%が評価は必要と考えていた。具体的にどういう評価をやったらよいかノウハウは、まだ十分蓄積されていない。アメリカでは寄附者に対するサービスとして順位付けを行うものもある。NPO法人としては順位付けされるのを嫌がるところもある。)
- お墨付きの弊害等を考えると準則主義にすべきではないか。そこで聞きたいのだが、「主たる」の範囲は何か。NPO法人の評価を誰がするのか。
○ 適正性確保及び財団法人制度につき、事務局資料説明の後、以下のとおり議論を行った。
- NPO法人の全国統一的な評価基準を作ろうという話はある。ただ、評価されるのが嫌だという法人もあり、自己チェックという形で行おうという流れもある。
- 非営利法人は営利法人と違って市場メカニズムの判断で決まらない。評価の判断基準は個々の分野で変わる。ODA、地方自治体、社会福祉(介護)、教育等、事業評価が必要と考えられる主なものだけをみても様々な分野にわたっており、統一的な基準は無理。また、国際的、唱道的なNGOも評価するのは難しい。そもそも何のために評価するのか。これには2つあり、仕事をどのように効率的に行うか改善効果を狙う評価と、この事業には意味があるのかという評価である。
- 市場機能で評価していくのも難しい。例えば、日本の国債についても評価機関によって評価が分かれており、NPOはさらに評価が難しい。また、評価することによって、よいNPO、悪いNPOみたいなものができるのは違うような気がする。
【適正性確保】(→ 基金の規模については、現行の中間法人は300万円である。大規模については、商法特例法で、これは監査の人数や外部監査の導入等についての基準であるが、資本金5億円以上又は負債200億円以上である。公益法人の指導監督基準の話であるが、資産100億円以上若しくは負債50億円以上又は収支決算が10億円以上の法人については公認会計士の監査を受けるようお願いしている。事後チェックについては、中間法人のように準則であれば所轄庁といったものがないので、裁判所が事後チェックを行う。この場合、誰が裁判所に訴訟を提起するのかが問題となる。中間法人では、債権者、社員等の利害関係人、法務大臣である。行政が何らかの形で公益を認定する場合は、所管庁が改善命令等を行い、最終的には解散となるのではないか。)
- ガバナンスで基金制度の導入の話があったが、基金はどのぐらいの規模を考えているのか。大規模法人に対する特例措置とあるが、大規模とはどのぐらいのスケールを考えているのか。事後チェックは誰がいつどのように行うのか。
(→ 中間法人で基金制度を導入したのは、制度の濫用に対する措置として有限会社の規定との並びも参考にしたからではないか。)
- 法人を準則主義で設立できるようにするのであるから、自己責任体制で運営できるようにするのは当然。基金制度については、現行の中間法人制度が間違いだと思っている。他の非営利法人制度で基金をはっきりと要求しているものはないと思う。したがって、今般の改革で本当に必要なのだろうか。あとは、資料にあるような方向でガバナンス、ディスクロージャーを設ければいいのではないか。
(→ 一般市民が裁判を使おうとするインセンティブが乏しいという指摘があったので問題点として記載した。ここでは記載しなかったが、裁判の手続的公正さや効果の高さは承知している。)
- 有限会社との並びを意識したのはそのとおり。説明の仕方はいろいろあって、債権者保護のため、営利法人たるべきものが中間法人に流れ込むのを防ぐため、制度の濫用を防ぐためといったような説明ができる。有限会社との並びを考えれば300万円となるが、そうでないなら300万円とは限らない。中間法人との関係でいけば、基金を必要としない無限責任法人制度の導入についてどのように考えるべきかというのも重要な論点である。
- 社団と財団によって考え方は違うのではないか。財産が少額であれば、公益信託でジョイント基金を作ることも考えられる。例えば、財団の最低基金は50億とし、それ以外は公益信託で救う。財団にはプライムレートの割合で事業支出をすることを義務づける。事後チェックについては、設立時に何を要求するかによって事後チェックの在り方は変わるのではないか。
- 非営利法人一般法で一つの類型とするというのは一つの考え方と思う。営利法人というのはオーナーシップを出資者に与えるというのが基本的な考え方にあり、その上でガバナンスを規定。他方、非営利法人というのは出資者でなく社員にオーナーシップを与えている。中間法人法で300万円という基金を設定しているのは疑問。財産がゼロでよいかは疑問であるが、基本財産が300万円である必要はないのではないか。現実的には、中間法人法が見直されるということを期待しつつ、大体は中間法人制度にあわせることで、非営利法人一般法は一本化できるのではないか。ただし、最低基金は最初からなしでいいと思う。
監査、債権者保護、評価に関する基本的な考え方としては、中間法人法が参考になるが、法律上規定する必要はなく、監査を受けているかいないかといった事項について法人の側でディスクローズすればよいのではないか。準則主義に基づく法人なら、事後チェックも中間法人と同じレベルになるのだろう。有限会社のような法人が流入してくるとの議論があるが、それほど入ってくるか疑問。ただ、公益性の認定を担保する措置として、一般非営利法人より多少高いレベルのものが必要というのは分かる。制度として当然のこと。- 2点確認したい。300万円という金額が必然的ではないというのは同感。ただし、有限会社から流入するおそれがあるとの意見が強かったことから、中間法人法では有限会社並びとなったのではないか。このような流入が起こらないとする根拠は何か。また、公益性を加味した法人は考えていないということか。
- 最低資本金を300万円としたのは平成2年のことであり、それまでは有限会社の最低資本金は10万円であった。その制度が間違っていたというつもりはないが、その後は、最低資本金を見直そうという流れ。本来的には有限会社法を見直すべき問題。営利法人と中間法人とは、オーナーシップの点も含め本質的に異なるもの。従って、財産的な基礎がゼロかどうかはわからないが、中間法人法の仕組みが守られている限りにおいて最低基金はなくてもいいと思う。ただ、この場で批判する話ではないが。
また、公益性のある法人は、銀行、証券取引所等営利会社にもいくらでもあり、国の関与も準則のものから個別法で規制しているものまでまちまち。法人格について規制するという形態もあると思うが、今回の改革は公益法人という制度を見直すという趣旨のものであるため、準則主義というのは正しいと思う。
これまでの公益性の効果は、つきつめれば税とお墨付きの2点。横割の制度としての公益性を認める場合には、公益法人のように目的で規定する方法とNPO法人のように別表などで列挙する方法によることが考えられるが、これができないなら、区別がつかず、営利法人と非営利法人の2類型となるし、可能であれば、法律上、2階建てとするのか営利法人も含め3類型とするのかはともかく、非営利法人の中に公益のあるものを認識することが制度として可能になる。- 行政委託型法人にも目を向けた民主的コントロールの制度が別に議論されていれば全体としての改革の方向も理解できる。一国民の立場からはその話と今回の改革がどう結びつくのかがトータルで見えてこない。
裁判による事後チェックについては迅速性がないとの説明があったが、一方で裁判は手続の究極の公正性が確保されており、最終的な担保として持ってくるのであれば制度設計として議論する必要があると考えるがどうか。【財団法人制度】
- 然るべき人がきちんとみていればいいのであって、国民全てがインセンティブを持って訴えを起こすのがよいというような話には多分ならないのではないか。
- 事後チェックにもいろいろなレベルがある。中間法人法や商法では、裁判所による法人格の剥奪があるが、別の形の事後チェックとしては、監査請求等により理事の責任を問う方法もある。また、公益性を有する法人であれば公益性の認定の取消しということも想定されるが、その場合でも法人格が取り消されるわけでない。それぞれ分けて議論する必要がある。
- 公益性をどうやって担保するのかについてはいろいろな可能性がある。事後チェックの基準をどうするのか、また、裁判所への申立権を、行政庁、検察官、第三者機関、一定の団体、利害関係人、一般市民などのうち、誰に認めるのかなど、考える必要がある。また、一般市民が裁判という金や手間をかかる手段をとるのか、善意の市民を装って不正な利益を得ようとする人が出てこないかなど、個別的に考えていく必要がある。
- 基本的な改革の考え方として、民間の非営利活動を促進・支援しようというのか、お上が活動をチェックし、余分なことはしないようにしようというのかによってスタンスが変わってくる。
ディスクロージャーやガバナンスに関しては、団体の支持者の層を増やしたいというのが団体側のインセンティブとして存在する。けしからん団体は出てくるだろうが、それは、公序良俗に反したり、法に触れたりするようなケース。さらに言えば、非営利なら基本的に税優遇を認め、非営利性にひっかかったら、徹底的に追及するという話ではないか。- 米国のgive awayとself dealing禁止の制度については、かなりよい制度だと思うので、積極的に輸入されたらよい。
(→ 設立時のチェックを本当に準則にしてよいのか疑問がある。)
- 3点意見を申し上げる。
財団形態のこういう非民主的決定過程や迅速性のメリットを奨励する立場で進めるべき。理事監事に訴訟適格を与えておけば十分。
@ どんな制度を作っても、税金逃れ、強制執行逃れ等悪用する者はいるのだから、悪用を意図して制度を作るのはもう止めたらどうか。悪用については放念されたい。 A 財団という形態は猛烈に仕事ができる形態。シンクタンクや助成財団を見ればわかるが、民主主義によらず、エリート、有識者を集めてなんでもできる。世界中に財団形態があるのはこのようなメリットがあるから。のみならず、このような形態であることを理解した上で出捐者も出捐しているのだから、出捐者の意向は尊重されるべき。ただ、設立後は出捐者の支配はないほうがよい。裏切られてしまったらお気の毒ということ。 B 社団と財団の混在形態というのは、現在もあるし将来的にもあり続けるだろう。社団は会費依存型であり、今日の不況では資金が集まらない。企業財団などは例えば資本が30億円あれば運用で電話と職員2、3人は調達できて、あとは景気により寄附が集まればいろいろできるという流動性がある。 - 税金逃れは必ずある。しかし、あまりにチェックばかりするのはどうか。事情は法人によりケースバイケース。前向きに作るということが重要。
- 財団は有意義な制度だと理解。制度として残すのは意味がある。問題は、既に設立されているものより、これから設立したい者の発意が機能していない点。選択の幅が入り口で規制されている。設立申請に当たり、最初財産が3億円必要といっていたのが、理由も基準もなく、担当者の考えで突然6億円にされたりする。主務官庁の裁量が大きく、設立が事実上困難となっている。設立は認証制でなく準則主義にしていただきたい。
もう一点、低金利の現在、小規模財団にとって基本財産の取り崩しができないのは致命的。取り崩し可能なように制度化していただきたい。- 財団を非営利法人の中で、独立させて位置づけるのはよいと思う。遺言に基づき作られるという歴史もある。公益信託より大きな形態として必要。
悪用について、資料では単なる非営利財団の悪用の可能性について指摘されているが、今の議論では公益財団の悪用の話になってはいないか。であれば議論のすれ違いがある。
悪用を考えるべきでないというが、民法典制定後100年余りで運用が逐次厳しくなっていった原因の一つとして、悪用されたという事実がある。悪用されうることを見越した上で最小限の効率的な縛りを設けておかないと同じことの繰り返しになる。
非公益の財団を認めるべきか、という点については、本当に必要かということ。一般化しなくても、必要なものについては、個別的な制度を認めることで足りるのではないか。一般化すると、債権者から逃れるために作られるという恐れもある。
準則主義で公益性を有する財団を作るとした場合、公益性の担保をどこでどうするのかという課題がある。- 許認可がよくないという実例を挙げると、共管の主務大臣に法人設立許可を求めたとき、どちらが先に許可印を押すかということでもめたこともあった。また、ある教授が寄附を集めて研究のための法人を作るというときに、財団は設立に手間がかかるということで株式会社にしていた。許認可ではなく準則でいいのではないか。
- 国内の問題だけで済むなら、悪用については、相続税逃れも否認してしまえばよい。問題は国際的スケールまで広がった場合。財団法人に収益事業以外の課税がされないことをよいことに海外に子会社を買って税金逃れをしている。課税逃れを商品として紹介する業者も出てくる可能性がある。犯罪ではないが望ましい話ではない。
- そういう高度な技術を用いてプライベートバンキングビジネスということでやっている人はいると思うが、使われるのは財団ばかりではない。そのことをもって公益法人制度を準則に緩和できない理由にはならないのではないか。
- 濫用されたときに措置が講じられる仕組みができればいいのだが。
- これからの公益法人は、株の保有も当たり前、基本財産の増減も当たり前。基本財産が認定要件に満たないからお取り潰しということでは、法人制度の意味が薄れる。出捐者意思を明示した上でもっと自由にしていいのではないか。
- 設立当初はある程度のスケールを要求してもいいが、その後基本財産を取り崩し、5年で使い切って解散という在り方もよいのではないか。寄付者意思尊重ということで、法人の中に意思が溶け込むのが財団だと思うのだが、未来永劫化石になるまで溶け込んでいていいのか。英国でも従来その辺りは厳格に考えられていたが、今般の改革案では弾力的にしていこうとしている。
(→ 事業型財団は、果たして社団とどこが違うかという問題はあろう。)
- 財団は金を積むところから進むので、社団と全く同じでいいのかはよく分からない。だからといってだめだからガチガチの制度を作るのはどうかと思う。事後チェックに幾つかレベルがあるというのには私も同感。営利法人に対する市場の評価が中心的なチェック体制だと思う。そのためのツールとして情報公開がある。財団法人も同様であり、どうやって濫用を食い止めるかは、それこそ広い意味での事後チェックによるのではないか。
- 基本財産の制限は非現実的。基本財産1億円で公認会計士を雇えというのも難しいが、基本財産100万円で準則の法人を作りたいという人を止める理由があるのか。
- 金額をもの凄く低くすると別の目的を持って財団を作る人がでてくる。それでは意味がないのではないか。
- 50万円でも事業によっては全く意味がないわけではないだろうが、それくらいの規模なら公益信託でもいいかと思う。
- 財団の財産収入は収入全体の2.9%ともの凄く少ない。
- 事業型財団が多いということだ。
(→ 次回の懇談会は、11月28日(木)16:00〜18:00に開催予定(テーマは移行、税制)。)
(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)