1.日時:平成14年11月1日(金)14:00〜16:00
2.場所:虎ノ門第10森ビル4階
3.懇談会出席者
入山映(笹川平和財団理事長)
太田達男((財)公益法人協会理事長)
加藤秀樹(構想日本代表)
関幸子((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトグループマネージャー)
中里実(東京大学教授)
中田裕康(一橋大学教授)
水口弘一((株)野村総合研究所元社長)
山岡義典(NPO法人日本NPOセンター常務理事/法政大学教授)
(50音順)神田秀樹東京大学教授・橋本博之立教大学教授は所用により欠席。
4.議事概要
(1)石原行政改革担当大臣挨拶
(2)根本内閣総理大臣補佐官挨拶
(3)意見交換
○論点整理、意見募集の結果について事務局より説明を行った後、公益性やパブリックコメント、大綱のイメージ等について以下のとおりフリートーキングを行った。
- 年度末を目途に取りまとめる大綱はどの程度の詳しさのものか。法案要綱に近いものなら、この短期間で議論し尽くすことは困難。方向性を示すという程度のものか。
(→詳しいものをこの短期間でまとめることは不可能と思う。与党の議論も煮詰まっておらず、まず骨格を固めることが最重要。)- 特別法に基づく非営利法人についての扱いをどうするのか。
(→今回、具体的な対象とするのは公益法人、中間法人、NPO法人。それ以外の法人については、今回の制度改革を踏まえて、それぞれの制度ごとの検討となるのではないか。)- パブリックコメントについては、母集団が少ないこともあり、その中で意見の数が多いからどうこうと言うことは適当でない。出てきた意見については、懇談会でウェイト付けを行った上で判断材料としていけば良いのではないか。
- パブリックコメントには、幅広い意見が出てきていると認識。制度的にはすっきりした方が良いと考えるが、自らが属する団体がスムーズに移行されるのかも懸念しているという正直な現場の気持ちが反映されている。様々な幅のある意見があることを踏まえ、時間をかけて議論をしていくことが必要。また、法人側からの視点だけでなく、市民からみてどうかという視点も必要。
- 公益や共益の意味の捉え方についても人によって差がある。特定の地域の人たちを対象とした活動であっても十分公益性を有するものもあるのではないか。まず公益とは何かという認識を統一することが必要。
- 公益性を積極的に定義するという呪縛から離れるべき。非営利であれば公益だという推定が働くようにした上で、メンバーシップのものを除けばよいのではないか。公益の定義は時代によって変わるものであり、定義は不可能。
- 公益については文章で定義せざるを得ないのではないか。メンバーシップのものを除くというだけでは範囲が広すぎる。イギリスでは、チャリティ制度の抜本改革を行っており、現在パブリックコメント中。公益の定義についても再整理が行われているので、参考にすべき。
- 公益法人という存在に対しての税の措置はある。公益性を条文に定義するというのは立法技術的に難しいと思われるので、公益に当たらないものを除外するという方法もあろうし、NPO法のように、公益は定義せずにこういう活動は支援すべきという性格のものを列挙するという方法もある。税制という意味では、課税の網をいったんかぶせて、減免するものを抜き出す方が筋である。
- 公益を法律上定義するのではなく、プロセスの中で公益性が存在することを示していくという方法もあり、この方が民主的ではないか。公益の判断は、実情が良く分かるローカル単位で実施していくことが望ましいと考えている。
- 熊本と北海道の公益が違っては困る。公益についての基本的な共通ルールはやはり同じとすべきであり、その上でローカル的な要素を加味するということではないか。
- 公益性について、現在の許可制の下では、行政庁の広い裁量が認められているが、基準を明確化することにより、事後チェックで対処していくことが可能となる。 また、公益については、抽象的に議論するよりも、どのような効果と結びつけるかという観点が重要。税と結びつけるのであれば、国税の立場からはローカルレベルの判断は受け入れにくいだろうし、法人の名称についても、地域単位とするか、全国単位とするかによって、判断が変わってくる。
- 認証主義に肯定的な意見が多かったとのことだが、他方、NPO法人については機能不全を起こしているとの指摘もある。NPOに関しては、認証主義により、形式的な審査がされているだけであるにもかかわらず、役所からお墨付きを与えられたかのようにふるまう法人があるようだ。認証制度は問題の先送りになるのではないかと懸念している。
○法人の改革パターンについて事務局より説明した後、法人の改革パターン、税制等についてフリートーキングが行われた。
- 現行公益法人については改革後どうなるのか。パターンによって異なるのか。
(→パターン@の場合は一旦全て非営利法人となる。パターンAの場合は、公益性が引き続き認められたものだけ非営利公益法人となる。)- パターン@の場合、公益性判断は更新のような仕組みを考えているのか。
(→そのとおり。一度認められれば永久となるとは考えていない。)- 事業態様に着目するのがパターン@ア、@イAで、組織態様に着目するのがパターンA、@イ@。事業態様に着目すると財産処分が問題として残る。
- 現行のNPO法人は別枠なのか。
(→パターン@であれば非営利法人。パターンAであれば非営利公益法人となる。今のNPO法人は認証制度であり、事実上準則的に行われている。)- NPO法が認証主義を採用しているのは、準則では税制優遇がないためであり、認可と準則の間をとった妥協の産物。
- どんな制度も最初は上手くいくが段々固くなる。また、現場に近くなるほど過剰防衛しがち。自由にやらせると悪いことをするというが、暴力団が株式会社を設立しているケースはいくらでもある。器で判断するのではなく、行為で判断してほしい。この原則は貫くべき。社会的ステータスは危険。お墨付きをありがたがる悪しき風潮。これを打開するためにもあえて自由な制度を採っておいた方がよい。
- 入口には組織要件が必要である。後のウォッチは情報公開とか、評価機関でやっていくことになる。
- 自分が非営利といえば、勝手に非営利となれてしまうのは本当によいのか。準則主義の下では、登記の際審査を受け、公証人の定款認証を受けていると言っても、それは形式的なもの。非営利法人となれば将来税の免除があるかもしれないというのはメリット。そのメリットが、自分がそう思うというだけで与えられるのは混乱する。
- 準則で非営利法人となるのは既に中間法人制度で達成されており、議論は不要。
- 税優遇を受ける可能性というメリットがあっても、資金調達手段に制約があるというデメリットもあるので、バランスは取れているのではないか。
- 準則で税を免除しても、問題あれば後で遡って取り消せばよい。
- 営利法人であれば、決して非課税の道はないのに、非営利法人だと非課税の可能性があるというのはおかしい。不公平である。
- 準則では立証責任を課税庁側に負わせることとなり、問題。恩典を受ける側が立証するのが原則。
- 本体事業と関連のないものについては税制上の免除をやめて、本体事業か否かは法人側が申告して立証責任を負えばよい。ただ一歩進んで、非営利であれば、メンバーシップ的なものを除いて、税の免除の推定を受けるとすればよい。
- 推定を受けるということは、課税庁側に立証責任を負わせるということだが、課税庁側に立証責任を求めるのはおかしい。利益を受けるものが立証責任を負うという法律の大原則に反している。
- 現状でも公益法人やNPO法人は非課税法人となっているではないか。
- 今回制度を抜本的に改革するのだから、税制も当然きちんと見直されるべき。今の制度はおかしい。ただし、ガバナンスやディスクロージャーでチェックが働くのであれば全くあり得ないということでもないかもしれないが。
- 準則主義で税を優遇できるかについて議論する必要があるが、非課税となり得るというのはきついかもしれない。
- 財団法人から株式会社へ転換した経験から申し上げると財団としての法人格を捨てたのは、やりたい事業があっても所管官庁の理解を得られず、時代の変化に対応できない状況が続いたため。非課税を捨てて、本当にやりたい方を選んだ。市民から見ると、組織がどこであれ、必要なサービスを提供してくれるというところに公益性があると判断する。準則主義にして課税という方法もある。今の公益法人は、非課税に甘えて合理的な経営をしていない。もともと公益事業であれば、利益はでないはずであり、その部分にのみ課税されることになる。利益がでるようであればその分使うということもできる。透明性が公益を担う事業者としてのディスクロージャーで担保され、その上で、顧客満足度といった事業評価を市民が行うことにより、税が減免されるような仕組みにできないか。公益事業と収益事業をミックスすると効果が大きい。
- 余っている金を使い切ってしまうというのは単年度会計を行っている役所と同じになりかねず、両刃の剣となる。
- 米国では、準則で設立されるNPOとベンチャーの区分が明確でなく、双方の要素を有することにより、経済効果や雇用吸収効果が大きくなっている。
- 今パブコメ中のイギリスのチャリティ制度の大改正の中で、公益を目的としたカンパニーもチャリティー認定するという提案も含まれている。
(→法人格の取得を公益性と切り離す点についてはどのように考えるか。法人そのものは、簡便に作れることとし、その上でいわゆる公益性判断が行われるという方向か。)- パターン@イAで公益性判断を更新する場合について、そのデメリットをどう考えているか。例えば萎縮効果、取消訴訟対応、取り消されたにもかかわらず引き続き活動した場合の対応等。あと公益性が認められていた期間とそうでない期間では残余財産処分の取扱が異なっているが、どう取り扱うのか検討しておくべき。
- 財産処分の取扱が一番難しいところだ。
- 公益性とは何ぞやというのも大きな論点。
(→公益性については、次回引き続きテーマとして御議論頂く。次回の懇談会は、11月13日(水)10:00〜12:00に開催予定(テーマは公益性判断)。)(文責:内閣官房公益法人制度改革推進担当)