中央省庁等改革の推進に関する方針(抄)


平成11年4月27日
中央省庁等改革推進本部決定
VIII その他
第4 国家公務員制度改革
 中央省庁等改革に併せ、「公務員制度改革の基本方向に関する答申」(平成11年3月16日公務員制度調査会)等を踏まえ、以下の方針により国家公務員制度の改革を推進する。
   
1.  新たな人材の一括管理システムの導入
 政府全体としての適材適所の人材活用を進めるため、本府省課長級以上の幹部職員及び課長に準ずる幹部要員の人材情報についての総合的な管 理システムである人材情報 データベースを構築し、内閣官房及び各府省における人材登用、府省間人事交流の推進 などに活用する。その際、登録される人材  情報の内容、利用の在り方、個人情報保護の 在り方等について十分検討する。
 また、新たな府省内における人材管理の一括化、内閣総理大臣が各府省幹部職員に対して行う内閣の重点政策等に関する研修等の措置について、その着実な推進を図る。
   
2.  多様で質の高い人材の確保
 多様で質の高い新規学卒者等を適切に採用するとともに、行政課題の変化等に応じて必要な人材を弾力的かつ機動的に公務部内外から確保できるよう所要の措置を講ずる。
  (1)  採用試験の改革
 人物面を重視した評価の推進、理工系区分の大括り化等の採用試験の改革について、人事院に対し要請する。
  (2)  新たな任期付任用制度の整備等
 内閣官房及び各府省に行政の外部から特定分野に関する専門的知識等を有する人材を任期を限って採用し、給与等の適切な処遇を行えるよう、新たな任期付任用制度の整備を図る。また、専門的分野のスタッフ職等への公募など中途採用の拡大に資する仕組みの整備に努める。
  (3) 人事交流の推進
 新たな府省間における人事交流を積極的に推進することとし、そのための基準を策定する。また、国と地方の相互・対等の交流を促進することとし、各省庁は交流実績を公表する。さらに、官民人事交流について、その適切な促進に努める。
  (4) 移籍に関する仕組みの整備
 他府省への移籍(転籍)を可能とする仕組みを整備することとし、運用に当たっては、各府省人事担当部局による連絡協議の場を設ける。
  (5) 幅広い人材の採用、計画的・総合的な人材育成等
 各省庁は、試験区分の見直しを踏まえつつ、理工系の能力を有する人材を適切に幹部候補として確保するなど幅広い人材の採用に努めるとともに、職員の計画的・総合的な育成システムの構築を図る。
 また、大学院への進学等自己啓発を目的とする長期の休業制度の導入や専門資格取得支援の充実等により職員の自主的な能力開発を積極的に支援する。
   
3. 能力、実績等に応じた処遇
  (1) 人事運用の弾力化
 各省庁は、年次の逆転を含め、採用試験の種類、事務系・技術系の別、性別等にとらわれない職員の意欲・能力・適性に応じた的確かつ柔軟な昇進管理に努め、以下のような弾力的な人事運用を推進することとし、推進状況についてフォローアップを行う。
   
@  II・III種試験採用者等について、各省庁の実情にあった選抜方法を整備し、積極的な登用を進める。
A 技官について、キャリアパスの柔軟化を検討し、事務官と技官の別によるポストの固定化をできるだけ排し、適材適所の人事運用を推進する。
B  男女共同参画の推進に向け、環境整備に取り組むとともに、女性の登用の促進を図る。
  (2) 能力・実績、職務・職責に応じた給与制度
 勤続年功的要素を縮小し、能力・実績をより的確に反映する方向での給与体系の見直しや、職務・職責をより的確に反映する給与制度の構築を図る。
  (3) 人事評価システムの整備
 勤務評定制度の見直しを進めること等により、客観性・公正性の高い人事評価システムの整備を図る。
  (4) 複線型人事管理への移行等
 職員の適性・志向等に配慮しつつ、スタッフ組織の人材確保にも重点を置いた複線型の人事管理への移行を推進する。このためスタッフ職の処遇等について所要の条件整備を図る。
   
4. 高齢化への対応と退職管理の適正化
 公務部門における65歳までの雇用に積極的に取り組むとともに、再就職について、その公正性、透明性の確保を図る。
  (1) 在職期間の長期化等
 能力・実績重視型の人事管理、複線型人事管理の導入等の条件整備を行うことにより、在職期間の長期化を可能とする人事システムを構築し、早期退職慣行の是正を図る。
 また、「国家公務員法等の一部を改正する法律案」成立後、再任用制度の適切な運用に努めるとともに、人事システムの見直しを進めつつ、各職種の実情、民間企業における動向等を踏まえ、定年の延長について検討する。
 これらに併せ、自らの能力を活かした早期の転身の円滑化を図るなどにより退職パターンの多様化を進める。
  (2) 再就職状況の公表、人材バンクの導入等
 権限等を背景とした押し付け的な再就職あっせんは行わないこととし、再就職の公正性、透明性を確保するため、再就職状況の公表を進めると ともに、再就職後の行為規制等の導入の適否について検討する。また、透明な仕組みの一つとして、公務員の人材情報と、企業等からの求人情報を集め、両者の 調整等を通じて再就職を支援する人材バンクの導入を図る。
  (3) 退職後所得の在り方の検討
 公務員制度改革の方向及び民間企業における退職金制度の見直しの動向等を踏まえ、退職手当制度の見直しに取り組むなど退職後所得の在り方を検討する。
   
5. 中央人事行政機関の機能等人事行政の在り方
  (1) 人事管理に関する計画の策定など総合的・計画的な人事管理等の推進
  中央人事行政機関としての内閣総理大臣について、総合的かつ計画的な人事管理、政府全体について整合性のとれた人事行政等を推進するため、政府全体を通ずる人事管理に関する計画を策定する等により、その統一保持上必要な総合調整機能の充実を図る。
  (2) 規制の緩和等
 中央人事行政機関の人事管理上の規制について引き続きその緩和を行うこととし、以下の措置について人事院に要請する。
@ 内閣官房及び新たな府省において、指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸について任命権者が責任をもって決定できることとする。
A 行政職俸給表(一)9級以上への昇格について、特別の事例を除き、人事院は一般的な基準を設定し、具体的な運用は任命権者が実施するなど各種協議事項の縮小、包括承認の拡大等により給与事務の簡素化を進める。
   
6. その他の改革方策
 以上のほか、政策の企画立案機能と実施機能の特性に応じた人事管理等について、公務員制度調査会の答申を踏まえつつ、所要の施策の具体化を図る。
   
7. 今後の改革推進の在り方
 新たな行政システムに対応した公務員制度改革の着実な実行のため、人事院と緊密な連携を取りつつ、計画的な取組を進める。このため、政府 全体としての検討・推進体制を整え、早期に成案を得て着実にその具体化を図る。さらに、今後の推進状況を踏まえつつ、新体制移行後も引き続き、政府全体と して改革を総合的かつ計画的に推進する。 また、各省庁においても、人材活用の多様化、柔軟化等を始めとする人事運用の改善について、計画的に取り組み、 着実に進めるものとする。