第4回公益法人有識者ヒアリング議事概要

公益法人有識者ヒアリング

1 日時: 平成14年5月27日(月)12:30〜15:00
 
2 場所: 内閣府2階227号室
 
3 出席者: 浅村  裕 ((財)助成財団センター 専務理事)
鎌田裕十朗 (NPO法人 日本医療救援機構 理事長)
関   幸子 ((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトマネジャー)
田中  清 ((社)経済団体連合会 総務本部長)
山岡  義典 (NPO法人 日本NPOセンター 常務理事・法政大学教授)
(50音順)

4 議事概要
(1)熊代内閣総理大臣補佐官挨拶
(2)意見表明
(浅村氏)
別添資料A及び資料Bに沿って説明)
  • 公益法人の設立許可基準が明確化されておらず、主務官庁が所管行政の範囲に限定して自由裁量で行っている。設立は準則主義へ転換すべきである。
  • 企業の再編等で企業財団が合併しようとしても、主務官庁の縦割り行政が弊害となり非常に困難。主務官庁制を廃止すべきである。
  • 政府の指導監督基準は、法人の「器」を整えることに主眼を置き、公益活動を促進するという観点に欠けており、法人の自己責任と自律性を持った事業運営にとって問題である。
  • 公益法人の設立者が事業内容の変更を希望して寄付行為の変更申請を行っても、財団の設立後は設立者の意思は配慮されず、ほとんど認められない。
  • 財団の基本財産運用は、銀行や国債などに限定されており、資産運用の面で機会損失を生んでいる。基本財産の取崩しも含め、法人の自己責任による柔軟な資産運用ができるようにすべき。
  • 現在行われているインターネットによる情報公開については、公益法人の財務諸表など専門家でなければわからないものがあるので、一般の人に理解できるよう更なる工夫が必要。例えば、公益法人現況調査表をベースにするなど、アメリカのIRS(内国歳入庁)に提出するFormも参考になろう。
  • 行政改革の観点からいえば、公益法人設立の準則主義による行政の透明性と公正さの確保と、徹底した公益法人の情報公開によって政府にかわって一般社会に公益法人の監視を委ねることで、真の小さな政府の実現に資するといえる。
(鎌田氏)
資料2に沿って説明)
  • 日本では寄付が少ないわけではないが、町内会を通して寄付を集めたり、歳末たすけあい運動、ユニセフ等、特定の団体に寄付が集中しているのが現状。NPOは新聞広告、ダイレクトメール等を活用し、活動内容をアピールするべきだが、経費と手間がかかる。
  • NPOのクォリティを上げるためには企業と同じように情報公開を徹底すべき。
  • NPOの活動の透明性、効率性、事業評価についてもっと詰めるべき。
  • NGOが政府の補助を受けることはかまわないが、透明性と厳格なチェックが必須である。
(関氏)
資料3に沿って説明)
  • (財)三鷹市まちづくり公社を株式会社へ移行した理由は、@小さい組織によるガバナンス、意思決定までの時間が短縮できるなど、戦略性が拡大すること、A株式会社化することにより、民間企業と自治体との橋渡し、民間企業と市民との橋渡しができることがあげられる。
  • 設立許可にあたっての公益性の判断が官庁の担当者レベルで決まってしまうのは問題。また、複数の官庁にまたがる法人の設立は、主務官庁制が弊害となり困難である。
  • 公益性は、組織でなく、実質的な事業で担保すべきであり、公益法人存続のための改革は必要ない。公益法人のみが公益性を担保する時代ではない。
  • 公益は時代とともに変化しており、時代の使命に合わないものは淘汰されるべき。
  • 税優遇の呪縛により、かえって法人活動の自律性・カバナンスの自由度が縛られてしまう可能性もある。税優遇のみがメリットを与えるものでは必ずしもない。
  • 指導監督を強化するのではなく、情報公開することによる社会評価に移行すべき。
  • 公益活動を行う法人・団体を行政が支援するルール(寄付税制の拡充、委託・発注のルール化など)が必要。事業を一緒に組むというのは、最大の支援策である。
(田中氏)
資料4に沿って説明)
  • 業界団体は、環境問題、消費者保護等、経済社会に貢献しており、「業界団体=互助団体」のイメージは誤り。各企業では取り組めない公益的な活動を団体を作って行おうというものであり、理事のうち同一業界の関係者が占める割合が1/2以下でないといけないとする指導監督基準は、活動の実態からいって馴染まない。
  • 公益法人制度自体は必要であり、公益法人という器を活かし、より高次元の公益活動が実施できるようにすべき。悪いことをすれば事後的に罰せられるようにすればよく、公益法人の自主性は尊重すべき。
  • 公益活動を行っているのであれば、今後も公益法人は税制面で配慮されるべきである。
  • 社団であっても評議員会を設ける、外部監査を義務付けるなど、法人の適正な運営を確保する仕組みが必要。
  • 介護施設など民間事業者との競合の例もあることから、社会福祉法人、医療法人等の広義の公益法人も見直しの対象とすべき。
  • 他の法人形態との関係を考える場合、資産の承継等に際しての税制上の配慮を中心に移行措置の整備が必要。
  • 各企業は、特徴を活かして社会的な課題に取り組んでいる。その際に、NPOは有力なパートナーとなっている。企業とNPOの関係は、支援から協働へと進んでいる。NPOによるチェック・評価を通じて、社会が求める企業像をとらえようとする企業もある。
(山岡氏)
資料5に沿って説明)
  • 民法34条を「営利を目的としない法人については、別に非営利法人基本法によって定める。」旨の規定に変更し、同時に民法の他の公益法人条項を廃止したらどうか。民法に規定すると硬直的になって、なかなか変えられない。
  • 「非営利法人基本法」を定め、現行の中間法人制度に準じた「一般非営利法人」(公証人の認証及び登記によって設立)と、特定非営利活動法人制度に準じた「特定非営利法人」(所轄庁の認証及び登記によって設立)の類型を設ける。いずれも現行の法人概念よりもひろげる。また特定非営利法人には社団型以外に財団型の組織も加える。さらに民法の諸規定に代わるものとして、社会福祉法人や学校法人などの特別法による公益法人にも共通する法人運営の原則的規定を定める。さらに、市民が問題提起する仕組みとして非営利法人審査会を設ける。
  • 既存の財団・社団は、所管を主務官庁から所轄庁に移した上で、3年以内に「一般非営利法人」か「特定非営利法人」か「営利法人」を選択し、変更手続きをするか解散・合併する。
  • 既存の中間法人及びNPO法人は1年以内にそれぞれ一般非営利法人および特定非営利法人に変更手続きする。
  • 現行の特定公益増進法人制度と認定NPO制度を統合し、裁量によらない形の認定特定非営利法人制度を設ける。
(4)意見交換
次のような意見があった。
  • 現行の制度では公益法人が中間法人等に移行する場合、財産が承継できない。移行しても法人の活動目的が変わらず、公益的な活動を行うのであれば、承継できても良いのではないか。
  • 中間法人等であっても、公益的な活動を行っているものについては、税制上の優遇措置があっても良いのではないか。
  • 商法上の株式会社と比較して、公益法人は理事等の役割が法令に細かく規定されていない。
  • 現行の中間法人制度に準じた「一般非営利法人」は原則課税とし、現行の特定非営利活動法人制度に準じた「特定非営利法人」は、非課税として情報公開を徹底すべき。
  • 非営利団体の設立は準則主義とすべき。しかし、税の問題は別で、税優遇を受けるのであれば、それだけの公益性が必要。
  • 一旦、公益法人が設立されると当該法人が解散するまで税の恩典を受けられる。日本もアメリカの制度と同様に、毎年業務状況などについて申告を行い、法人が目的どおり公益活動しているかを判断したうえで、公益活動を行っている法人のみ税の恩典が受けられるようにすべき。
  • そもそも公益法人に対し、年間収入がプラスであれば原則課税するという考えは馴染まない。公益法人で単年度で使い切れなかったものと営利法人の収益とは別の概念である。
  • NPOが根付いていない日本の現状を鑑みると、非営利法人の原則課税は時期尚早であり、機運に水をかけることになる。
  • 情報公開なくして準則主義で原則非課税というのは問題。「情報公開を行うことを約束するから非課税」、「税金を払っても良いから情報公開しない」という2本立とし、選択制にすれば良い。
  • アメリカでは内国歳入法で、情報公開しないと税優遇なしとの原則が決まっている。
  • 官庁が指導監督するのではなく、情報公開することにより一般市民が監視するようにすべき。規制と監督は小悪をなくすが、巨悪を生む。
  • 約2万6千の公益法人に対して指導監督を徹底させることは不可能である。司法当局による調査を誰もが請求できるアメリカのように、一般市民など公益法人本来の受益者が監視するようにすべき。

(文責:行政改革推進事務局)


-
もどる